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明細書 :強誘電体のドメイン観察方法および装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3986930号 (P3986930)
公開番号 特開2004-085399 (P2004-085399A)
登録日 平成19年7月20日(2007.7.20)
発行日 平成19年10月3日(2007.10.3)
公開日 平成16年3月18日(2004.3.18)
発明の名称または考案の名称 強誘電体のドメイン観察方法および装置
国際特許分類 G01N  21/27        (2006.01)
G01N  21/21        (2006.01)
H01L  21/8246      (2006.01)
H01L  27/105       (2006.01)
FI G01N 21/27 A
G01N 21/27 E
G01N 21/21 Z
H01L 27/10 444C
請求項の数または発明の数 7
全頁数 9
出願番号 特願2002-247883 (P2002-247883)
出願日 平成14年8月28日(2002.8.28)
審査請求日 平成17年3月15日(2005.3.15)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】岸田 英夫
【氏名】岡本 博
個別代理人の代理人 【識別番号】100089635、【弁理士】、【氏名又は名称】清水 守
審査官 【審査官】横尾 雅一
参考文献・文献 特開2000-356588(JP,A)
特開平01-141323(JP,A)
H.Kishida, K.Fujinuma, H.Okamoto,Electromodulation spectroscopy in ferroelectric CT complex : TTF-CA,Synthetic Metals,2001年 3月15日,Vol.120, No.1/3,p.909-910
調査した分野 G01N21/00-21/61
JSTPlus(JDream2)
特許請求の範囲 【請求項1】
強誘電体試料に電場を印加することにより、180度分極方向の異なるドメインに、各々異なった光学スペクトルを生成させ、前記強誘電体試料表面の各点における光学スペクトルを測定し、前記各点における分極方向を特定し、前記強誘電体試料のドメイン構造を可視化するとともに、強誘電ドメインの向きに応じて、1f信号の符号が変わることにより、180度ドメインを区別できるようにしたことを特徴とする強誘電体のドメイン観察方法。
【請求項2】
請求項1記載の強誘電体のドメイン観察方法において、前記強誘電体のドメイン構造の可視化を顕微鏡下で行うことにより、分極マッピングを行うことを特徴とする強誘電体のドメイン観察方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の強誘電体のドメイン観察方法において、前記印加する電場は交流電場であることを特徴とする強誘電体のドメイン観察方法。
【請求項4】
(a)光源からの光を分光器で分光し、顕微鏡に導入し、該顕微鏡内部で偏光子を通して強誘電体試料に照射する手段と、
(b)前記強誘電体試料に電場を印加する手段と、
(c)前記強誘電体試料からの反射光を検出する反射光検出手段と、
(d)該反射光検出手段から得られる電流信号を電圧信号に変換する手段と、
(e)該電圧信号を入力するデジタルマルチメーターとロックインアンプと、
(f)該デジタルマルチメーターとロックインアンプとに接続されるコンピュータを備え、
(g)前記デジタルマルチメーターで反射光量Rを読み取り、前記ロックインアンプで入力電圧の周波数fに同期した成分f、またはfの2倍に同期した成分2fをΔRとして読み取り、前記コンピュータによってΔR/Rを各波長について計算し、電場変調反射スペクトルを得るとともに、強誘電ドメインの向きに応じて、1f信号の符号が変わることにより、180度ドメインを区別できることを特徴とする強誘電体のドメイン観察装置。
【請求項5】
請求項4記載の強誘電体のドメイン観察装置において、前記印加する電場は、前記ロックインアンプから発振させた交流電圧をアンプで増幅し、トランスを通してから印加することを特徴とする強誘電体のドメイン観察装置。
【請求項6】
請求項5記載の強誘電体のドメイン観察装置において、前記電場の印加電圧は1kV/cmであり、周波数は1kHzであることを特徴とする強誘電体のドメイン観察装置。
【請求項7】
請求項4記載の強誘電体のドメイン観察装置において、前記反射光検出手段は、光電子増倍管であることを特徴とする強誘電体のドメイン観察装置。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、強誘電体のドメイン観察方法および装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
強誘電体は、内部にドメイン構造を有しており、各々のドメインにおける自発分極の方向はドメイン毎に異なっている。このドメイン構造の観測は、従来、偏光顕微鏡を用いて行われている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これまでの方法では180度分極方向の異なるいわゆる180度ドメインを観測することは困難であった。これを可能にする方法としては、特開2000-310799が開示されており、これによれば、強誘電体のドメイン観察のために、レーザー光を必要とし、また、透明な強誘電体しか観測できなかった。
【0004】
本発明は、上記状況に鑑み、レーザー光を必要とせず、通常のランプ光で観察が可能であり、また反射型、透過型のいずれにおいても、強誘電体のドメインの観察が可能であり、観察可能範囲を強誘電体全般に広げることができる強誘電体のドメイン観察方法および装置を提供することを特徴とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕強誘電体のドメイン観察方法において、強誘電体試料に電場を印加することにより、180度分極方向の異なるドメインに、各々異なった光学スペクトルを生成させ、前記強誘電体試料表面の各点における光学スペクトルを測定し、前記各点における分極方向を特定し、前記強誘電体試料のドメイン構造を可視化するとともに、強誘電ドメインの向きに応じて、1f信号の符号が変わることにより、180度ドメインを区別できるようにしたことを特徴とする。
【0006】
〔2〕上記〔1〕記載の強誘電体のドメイン観察方法において、前記強誘電体のドメイン構造の可視化を顕微鏡下で行うことにより、分極マッピングを行うことを特徴とする。
【0007】
〔3〕上記〔1〕又は〔2〕記載の強誘電体のドメイン観察方法において、前記印加する電場は交流電場であることを特徴とする。
【0008】
〔4〕強誘電体のドメイン観察装置において、光源からの光を分光器で分光し、顕微鏡に導入し、その顕微鏡内部で偏光子を通して強誘電体試料に照射する手段と、前記強誘電体試料に電場を印加する手段と、前記強誘電体試料からの反射光を検出する反射光検出手段と、この反射光検出手段から得られる電流信号を電圧信号に変換する手段と、この電圧信号を入力するデジタルマルチメーターとロックインアンプと、このデジタルマルチメーターとロックインアンプとに接続されるコンピュータを備え、前記デジタルマルチメーターで反射光量Rを読み取り、前記ロックインアンプで入力電圧の周波数fに同期した成分f、またはfの2倍に同期した成分2fをΔRとして読み取り、前記コンピュータによってΔR/Rを各波長について計算し、電場変調反射スペクトルを得るとともに、強誘電ドメインの向きに応じて、1f信号の符号が変わることにより、180度ドメインを区別できることを特徴とする。
【0009】
〔5〕上記〔4〕記載の強誘電体のドメイン観察装置において、前記印加する電場は、前記ロックインアンプから発振させた交流電圧をアンプで増幅し、トランスを通してから印加することを特徴とする。
【0010】
〔6〕上記〔5〕記載の強誘電体のドメイン観察装置において、前記電場の印加電圧は1kV/cmであり、周波数は1kHzであることを特徴とする。
【0011】
〔7〕上記〔4〕記載の強誘電体のドメイン観察装置において、前記反射光検出手段は、光電子増倍管であることを特徴とする。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0013】
ここでは、強誘電体のドメイン構造及びその分極方向を可視化する方法および装置を提供する。
【0014】
本発明では、測定対象としての強誘電体試料に自発分極による内部電場にさらに電場を印加することで、180度分極方向の異なるドメインにおいては、実効的な電場強度(=内部電場+印加電場)に差ができる。光学スペクトルは一般に電場強度に依存するために、各々のドメインで異なった光学スペクトルを示す。
【0015】
具体的には、電場印加前は等価に観測されていた両ドメインにおいて、電場印加により(光学)吸収ピークの(エネルギー)位置が反対方向にシフトする。この機構を利用し、強誘電体試料表面各点における電場印加による光学スペクトルの変化分を測定することで、各点における分極方向が特定できる。さらにこれを顕微鏡下で行うことにより、分極マッピングが得られる。
【0016】
以下、具体例な強誘電体のドメイン構造の観察方法について説明する。
【0017】
図1は本発明の実施例を示す強誘電体のドメイン観察システムの構成図、図2はその強誘電体試料の設定部の模式図である。
【0018】
この図において、1は強誘電体試料、2はクライオスタット、3は強誘電体試料をx,y,z軸方向に可動自在な位置決め装置、4は第1の電極、5は第2の電極、6は顕微鏡、11は光源、12は分光器、13は偏光子、14は強誘電体試料1への入射光、15は強誘電体試料1からの反射光、16は検出器、17は電流電圧変換器、18はデジタルマルチメーター、19はロックインアンプ、20はコンピュータ、21は画像表示装置、31は交流電源、33はオーディオアンプ、34は高電圧トランス、35は第1電極4への給電線、36は第2電極5への給電線である。
【0019】
以下、その詳細について説明する。
【0020】
強誘電体試料として有機強誘電体であることが知られる一次元有機結晶TTF-CA(テトラチアフルバレン-クロラニル)(1)を、反射面を上にして、クライオスタット(2)上に固定する。 その強誘電体試料(1)の表面には、電極(4,5)としてカーボンペーストを一定間隔(例えば~0.5mm)に塗る。電場の印加方向は、図2に示すように、主にa軸(一次元軸)方向とした。
【0021】
上記のように電極付けした強誘電体試料(1)を、顕微鏡(6)下測定用光学クライオスタット(2)にセットし、低温測定を行った。TTF-CAは81K以下で強誘電相に転移するために77Kにて測定を行った。なお、クライオスタット(2)付きの強誘電体試料(1)は、位置決め装置(3)で試料位置を動かすことにより、マッピングを行う。
【0022】
光源(11)にはキセノンランプを用いた。この光を分光器(CT-25)(12)で分光し、顕微鏡(6)に導入する。顕微鏡(6)内部で偏光子(13)を通して強誘電体試料(1)に入射光(14)を照射する。強誘電体試料(1)に印加する電場は、ロックインアンプ(19)から発振させた交流電圧をオーディオアンプ(33)で増幅し、高電圧トランス(34)を通してから印加する。その印加電圧は、例えば1kV/cmの交流電場であり、その周波数は例えば1kHzである。
【0023】
強誘電体試料(1)からの反射光(15)を検出器(16)としての光電子増倍管を用いて検出する。検出器(16)により取り出した電流信号は、電流電圧変換器(17)で電圧信号に変換する。この信号をデジタルマルチメーター(18)とロックインアンプ(19)に入力し、デジタルマルチメーター(18)では反射光量Rを読み取り、ロックインアンプ(19)では入力電圧の周波数fに同期した成分f(またはfの2倍に同期した成分2f)をΔRとして読み取る。このRとΔRをそれぞれコンピュータ(20)に取込み、ΔR/Rを各波長について計算していけば電場変調反射スペクトルを得ることができる。
【0024】
変調スペクトルの光学測定において、
x:変調パラメーター,f(x):光学的応答
とおくとき、xを微小変化させると、
【0025】
【数1】
JP0003986930B2_000002t.gifJP0003986930B2_000003t.gif
【0026】
【数2】
JP0003986930B2_000004t.gifとなる。
【0027】
電場変調反射スペクトルとは、上記式において、
f(x)≡R(x)
x≡0,δx≡F0 cosωt(印加電場)
としたときのΔR/Rである。印加電場を摂動と考えて、3次以上の項を無視して書き下すと、
【0028】
【数3】
JP0003986930B2_000005t.gifとなる。
【0029】
変調測定において、周波数ωの応答を1f、周波数2ωの応答を2fという。すなわち、この場合においては、
【0030】
【数4】
JP0003986930B2_000006t.gifということになる。1fは電場に比例する応答をみており、2fは電場の2乗に比例する応答を見ていることになる。
【0031】
反転対称な系では、R(F)=R(-F)となる。これは、R(x)が偶関数になってしまうため、1fは観測されないということになる。逆に、2fは反転対称な系でも観測することができる。
【0032】
1f、2fを定性的に考えると、図3から、1fは「電場の向きに応じて観測される応答」と解釈できる。すなわち、図3の印加電場が+のときは1f信号も+、電場が-のときは信号も-となり、電場の符号と信号の符号が一致している。また、2fは「電場の向きに関係なく電場強度のみに依存して得られる信号」と解釈できる。すなわち、図3の通り、電場強度が、+,-のいずれにおいても、2f信号は同じ符号を示す。
【0033】
図3は本発明の電場変調測定での1f,2fの信号を示す図である。
【0034】
実際の測定では、印加できる電場の大きさは限られているため、反射率の変化は通常10-6~10-3程度である。したがって、このような微小な変化を直接に測定するのは難しいので、交流電場(F=F0 cosωt)を印加し、それに同期した信号を検出する(ロック-イン検出法)ことにより、反射率の変化量の測定精度を上げている。
【0035】
このように反転対称性の破れている強誘電体においては、1f信号が観測されるので、強誘電ドメインの向きに応じ、1f信号の符号(正負)が変わるために180度ドメインが区別できることになる。
【0036】
(具体例)
TTF-CA結晶の電場変調顕微分光~イオン性相における強誘電性分極構造の直接観測について説明する。
【0037】
電荷移動(CT)錯体TTF-CAは、TC =81Kで中性イオン性転移を起こす。低温相であるイオン性相では、DA分子が二量体化を起こし、反転対称性が破れて強誘電性分極が生じる。これまで、TTF-CAの可視領域における電場変調反射(以下、ERと略す)スペクトル測定を行ってきた〔参考文献:藤沼 他、日本物理学会2001年秋の分科会、19aRE-2.第57回年次大会、24aYD-9.H.Kishida et al.,Synth.Met.120,909(2001)〕。
【0038】
その結果から、イオン性相において電場を印加すると、ドナー分子とアクセプター分子間の電荷移動量ρが変調されることが示唆されている。このとき、ρに応じて反射スペクトルが変化する。ER測定は交流電場を試料に印加して反射率変化ΔR/Rを検出するもので、ER信号のうち印加電場と同じ周波数成分を1f、倍の周波数成分を2fと呼ぶ。1f成分は、試料の分極の向きが信号の正負に反映されるので、この性質を利用することにより、TTF-CAのイオン性相における分極構造を直接的に観測できると考えられる。
【0039】
ここでは、顕微鏡下において測定領域を小さく絞ってER測定を行い、ミクロな分極構造について調べた。
【0040】
図4は約27μm□の領域で測定したもので、それぞれ正(a)、負(b)に対応する1f信号のスペクトルを表す。
【0041】
このスペクトルの矢印のエネルギーにおける信号強度の分布図(分極マッピング)を作成したのが図5である。この図5に示すサイズは、340×300μmである。
【0042】
この分布図からは、互いに逆向きの分極のドメインはマクロに共存し、正の信号を示す分極のドメインが結晶の大部分を占めることがわかる。
【0043】
ここでは、1f成分から得られた分極分布図と、2f成分の信号強度の分布図を合わせて、ドメイン構造とドメインウォールのダイナミクスについて述べた。
【0044】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々の変形が可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
【0045】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように、本発明によれば、レーザー光を必要とせず、通常のランプ光で観察が可能であり、また、反射型、透過型いずれの強誘電体においてもドメインの観察が可能であり、観察可能範囲を誘電体全般に広げることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例を示す強誘電体のドメイン観察システムの構成図である。
【図2】 本発明の実施例を示す強誘電体の設定部の模式図である。
【図3】 本発明の電場変調測定での1f,2fの信号を示す図である。
【図4】 本発明の具体例を示す27μm□の領域で測定したERスペクトル(1f)を示す図である。
【図5】 本発明の具体例を示す1f成分の信号強度の分布図を示す図である。
【符号の説明】
1 強誘電体試料
2 クライオスタット
3 位置決め装置
4 第1の電極
5 第2の電極
6 顕微鏡
11 光源
12 分光器
13 偏光子
14 強誘電体試料への入射光
15 強誘電体試料からの反射光
16 検出器
17 電流電圧変換器
18 デジタルマルチメーター
19 ロックインアンプ
20 コンピュータ
21 画像表示装置
31 交流電源
33 オーディオアンプ
34 高電圧トランス
35 第1電極への給電線
36 第2電極への給電線
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4