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明細書 :超平坦p型酸化物半導体NiO単結晶薄膜の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4014473号 (P4014473)
公開番号 特開2004-091253 (P2004-091253A)
登録日 平成19年9月21日(2007.9.21)
発行日 平成19年11月28日(2007.11.28)
公開日 平成16年3月25日(2004.3.25)
発明の名称または考案の名称 超平坦p型酸化物半導体NiO単結晶薄膜の製造方法
国際特許分類 C30B  29/16        (2006.01)
H01L  21/363       (2006.01)
FI C30B 29/16
H01L 21/363
請求項の数または発明の数 6
全頁数 6
出願番号 特願2002-254050 (P2002-254050)
出願日 平成14年8月30日(2002.8.30)
審査請求日 平成16年11月2日(2004.11.2)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
【識別番号】500037942
【氏名又は名称】太田 裕道
発明者または考案者 【氏名】細野 秀雄
【氏名】太田 裕道
【氏名】神谷 利夫
【氏名】平野 正浩
個別代理人の代理人 【識別番号】100108671、【弁理士】、【氏名又は名称】西 義之
審査官 【審査官】鮎沢 輝万
参考文献・文献 R.E.BENENSON et al.,Transport study of Li-implanted NiO single crystal films,Nuclear Instruments and Methods,1981年,Vol.182/183,p.769-775
調査した分野 C30B 1/00-35/00
H01L 21/363
Science Direct
特許請求の範囲 【請求項1】
基板温度を100℃以下に保持し、気相成長法により、耐熱性単結晶基板上に多結晶p型酸化物NiO薄膜を成膜し、次いで、600~1500℃でアニールして単結晶とすることを特徴とするp型酸化物半導体NiO単結晶薄膜の製造方法。
【請求項2】
気相成長法におけるターゲットとしてLiを含有するNiO焼結体を用いることを特徴とする請求項記載のp型酸化物半導体NiO単結晶薄膜の製造方法。
【請求項3】
耐熱性単結晶基板としてYSZ(イットリア安定化ジルコニア)を用いることを特徴とする請求項記載のp型酸化物半導体NiO単結晶薄膜の製造方法。
【請求項4】
p型酸化物半導体NiO単結晶薄膜が原子レベルで平坦なテラスとサブナノメータ(nm)のステップから構成されていることを特徴とする請求項1記載のp型酸化物半導体NiO単結晶薄膜の製造方法。
【請求項5】
p型酸化物半導体NiO単結晶薄膜がアクセプターとしてLiを30at%以下含有することを特徴とする請求項1記載のp型酸化物半導体NiO単結晶薄膜の製造方法。
【請求項6】
p型酸化物半導体NiO単結晶薄膜の室温の導電率が10-4S/cm以上であることを特徴とする請求項1記載のp型酸化物半導体NiO単結晶薄膜の製造方法。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、有機ELディスプレイ等の表示デバイス等のホール注入電極や、発光ダイオード(LED)、レーザーダイオード(LD)、紫外線検出器のp型層として使用できるp型酸化物半導体NiO単結晶薄膜の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
NiOは反強磁性金属単結晶基板として磁気素子(特開平10-36956号公報)や高密度磁気記録媒体用の配向性下地膜(特開平7-97296号公報、特開平9-125233号公報)として用いられることが知られている。また、発光ダイオードやレーザーダイオード(LD)などの透光性接触部として用いることが知られている(特開平2001-7398号公報)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
NiOはp型酸化物半導体の一つであり、例えば、n型酸化物半導体ZnOと組み合わせたヘテロ接合LEDが提案されているが、従来のNiO薄膜は、多結晶体の集合体であり、表面の凹凸が大きい。そのため、例えば、NiO多結晶薄膜上にZnO薄膜を成長させても、ZnOの結晶性が悪くなり、ヘテロ接合を製造することができないという問題があった。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、p型酸化物半導体NiO単結晶薄膜、特に表面が原子オーダーで平坦なp型酸化物半導体NiO単結晶薄膜の製造方法を提供する。
【0005】
すなわち、本発明は以下のものである。
【0006】
)基板温度を100℃以下に保持し、気相成長法により、耐熱性単結晶基板上に多結晶p型酸化物NiO薄膜を成膜し、次いで、600~1500℃でアニールして単結晶とすることを特徴とするp型酸化物半導体NiO単結晶薄膜の製造方法。
)気相成長法におけるターゲットとしてLiを含有するNiO焼結体を用いることを特徴とする上記()記載のp型酸化物半導体NiO単結晶薄膜の製造方法。
)耐熱性単結晶基板としてYSZ(イットリア安定化ジルコニア)を用いることを特徴とする上記(1)記載のp型酸化物半導体NiO単結晶薄膜の製造方法。
(4)p型酸化物半導体NiO単結晶薄膜が原子レベルで平坦なテラスとサブナノメータ(nm)のステップから構成されていることを特徴とする上記(1)記載のp型酸化物半導体NiO単結晶薄膜の製造方法。
(5)p型酸化物半導体NiO単結晶薄膜がアクセプターとしてLiを30at%以下含有することを特徴とする上記(1)記載のp型酸化物半導体NiO単結晶薄膜の製造方法。
(6)p型酸化物半導体NiO単結晶薄膜の室温の導電率が10-4S/cm以上であることを特徴とする上記(1)記載のp型酸化物半導体NiO単結晶薄膜の製造方法。
【0007】
本発明の製造方法で得られる超平坦p型酸化物半導体NiO単結晶薄膜は、薄膜表面が原子オーダーで平坦であるので、例えば、LEDまたはLD用の結晶材料を結晶性良く堆積させることができ、自らがホール注入電極の役割をする。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の製造方法において、p型酸化物半導体NiO単結晶薄膜の基板には、耐熱性単結晶である、酸化物単結晶基板、Si基板、SiC基板、CaF基板などを用いる。酸化物単結晶基板には、例えば、YSZ(イットリア安定化ジルコニア)、サファイア、MgO、ZnOなどがある。これらの基板の表面平均二乗粗さRmsは、1.0 nm以下のものを用いることが好ましい。Rmsは原子間力顕微鏡で、例えば、1μm角を走査することによって算出できる。
【0009】
基板の表面は、通常、その製造工程における光学研磨による研磨痕があり、結晶そのものにもダメージが入っている。このような基板を大気中もしくは真空中で1000℃以上に加熱することによって表面拡散を起こさせ超平坦化した表面が得られる。超平坦化した酸化物単結晶基板の表面には結晶構造を反映した構造が現れる。すなわち、数100nm程度の幅を持つテラスとサブナノメータ(nm)程度の高さを持つステップからなる構造で、一般に原子状に平坦化された構造と呼ばれる。
【0010】
テラス部分は平面状に配列した原子からなり、若干存在する欠陥の存在を無視すれば、完全に平坦化された表面である。ステップの存在により、試料全体で完全平坦化された表面とはならない。この構造を平均二乗粗さ測定方法による粗さRmsで表現すれば、Rmsは1.0nm以下のものである。Rmsは、例えば、原子間力顕微鏡で、例えば、1μm角の範囲を走査することによって算出した値である。
【0011】
Si基板、SiC基板も酸化物単結晶基板と同様な加熱処理や化学的エッチングを用いて表面Rmsが1.0nm以下のものを用いなければならない。Rmsが大きい、表面の荒れた基板上には、超平坦p型酸化物半導体NiO単結晶薄膜を形成することができない。
【0012】
これらの超平坦化基板の上にp型酸化物半導体NiO単結晶薄膜を成膜する。成膜方法には、パルス・レーザー蒸着法、スパッタリング法、CVD法、MO-CVD法、MBE法などを用いることができる。成膜上、最も重要なパラメーターは基板温度である。成膜時の基板温度は100℃以下でなければならない。100℃を超える場合には、p型酸化物半導体NiO薄膜の組成ずれや粒成長が起こりやすくなり平坦化が阻害される。真空チャンバー内から薄膜を取り出す際に結露が生じるため、下限温度は0℃である。成膜時の基板温度はより好ましくは10~50℃である。
【0013】
これにより、表面が原子オーダーで平坦なp型酸化物半導体NiO薄膜が得られる。原子オーダーで平坦という概念は、単結晶基板を用いる場合には、表面が原子レベルで平坦なテラスと分子層ステップから構成されていることを言い、厳密にいうと表面粗さでは定義できないが、平均二乗粗さ測定方法による粗さが1nm以下、より好ましくは、0.5nm以下である。
【0014】
基板温度が100℃以下で成膜したp型酸化物半導体NiO薄膜は三次元的に堆積された粒子が観察されるのみで、原子レベルで平坦なテラスと分子層ステップの構造は見られないが、これを高温でアニールしてp型酸化物半導体NiO単結晶薄膜を製造する。アニール温度は600℃~1500℃が好ましい。600℃未満では原子が十分に薄膜表面でマイグレーションすることができず、p型酸化物半導体NiO単結晶薄膜は得られない。また1500℃を超える高温ではほとんどの基板材料と該NiO薄膜の化学反応が起こるために好ましくない。
【0015】
当該NiO単結晶薄膜の導電率はアクセプターであるLiの濃度を変化させることにより制御することができる。例えば、Liを全く加えない場合には10-4S/cmの導電率を示すが、Liを10at%ドーピングすることにより、導電率は0.3S/cmになる。ドーピングは、焼結体ターゲット中のLi濃度を変化させることにより制御できる。アクセプターとしてのLi濃度は30at%以下でなくてはならない。30at%を越えるLiをドーピングするとNiOではない化合物であるLiNiOに変化してしまうからである。
【0016】
また、600℃以上でアニールする場合、NiO薄膜中に添加したLiイオンなどが蒸発しやすい。こうしたLiイオンの蒸発を防ぐためには、NiO薄膜表面を、YSZ単結晶基板などで覆うことが好ましい。アニール中の雰囲気は大気または酸素ガスが好ましい。真空中や不活性ガス中ではLiイオンの蒸発が起こりやすいためである。
【0017】
【実施例】
以下、実施例により、本発明を説明する。
(実施例1)
YSZ単結晶基板(111)面(明浄金属(株)社製、10mm角)を大気中1350℃に加熱して、原子状平坦面を作製した。レーザー・アブレーション用超高真空容器(入江工研(株)社製)に、このYSZ単結晶基板を設置して温度を室温に保持した。容器中に3×10-3 Paの酸素ガスを導入し、KrFエキシマーレーザー光(ラムダ・フィジクス(株)社製レーザー発光装置)を10at% Liを含有するNiO焼結体ターゲットに照射、ターゲットから30mm離して対向させた基板上にNiO:Li薄膜を堆積させた。膜厚は300nmとした。次に、作製したNiO:Li薄膜を真空容器から取り出し、アニール中のLi成分の蒸発を防ぐため当該薄膜上にYSZ単結晶板を乗せて薄膜表面を覆い、大気中、1300℃で30分間アニールした後、室温まで冷却した。
【0018】
アニール後の薄膜の光電子分光により測定したLi含有量は単位体積当たり原子数で1×1020cm-3であった。X線回折装置(理学電機製:ATX-G)により、試料の回折パターンを測定した。図1にXRDパターンを示す。YSZ (111)基板上にNiO (111)が強く配向して成長していることが分かる。またNiO (111)回折ピーク周辺に見られる小さな回折ピークはペンデル縞と呼ばれる等厚干渉縞であり、薄膜表面が原子レベルで平坦であることを示している。
【0019】
4端子法により測定した導電率は0.3S/cmであり、室温におけるゼーベック係数(Seebeck係数)は+0.6mV/Kであった。p型酸化物半導体と言える。図2に、得られた薄膜表面の原子間力顕微鏡像を示す。原子レベルで平坦なテラスとステップからなる超平坦構造が観察された。原子間力顕微鏡を用いて1μm角の範囲を走査して求めた表面の平均二乗粗さRms値は1nmであった。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、実施例1で製造したNiO単結晶薄膜のXRDパターンを示すグラフである。
【図2】図2は、実施例1で製造したNiO単結晶薄膜の微細表面構造を示す原子間力顕微鏡像により示す図面代用写真である。
図面
【図1】
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【図2】
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