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明細書 :電磁波検出体及びその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3610374号 (P3610374)
公開番号 特開2004-101397 (P2004-101397A)
登録日 平成16年10月29日(2004.10.29)
発行日 平成17年1月12日(2005.1.12)
公開日 平成16年4月2日(2004.4.2)
発明の名称または考案の名称 電磁波検出体及びその製造方法
国際特許分類 G01T  1/04      
FI G01T 1/04
請求項の数または発明の数 3
全頁数 8
出願番号 特願2002-264996 (P2002-264996)
出願日 平成14年9月11日(2002.9.11)
審査請求日 平成14年9月11日(2002.9.11)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】391012338
【氏名又は名称】埼玉大学長
発明者または考案者 【氏名】時田 澄男
【氏名】金子 正夫
【氏名】高藤 清美
個別代理人の代理人 【識別番号】100076613、【弁理士】、【氏名又は名称】苗村 新一
審査官 【審査官】中塚 直樹
参考文献・文献 特開平11-258347(JP,A)
特開2002-156455(JP,A)
特開2000-241548(JP,A)
特公昭49-015716(JP,B1)
特開2002-214354(JP,A)
特開昭62-293178(JP,A)
特開昭62-297774(JP,A)
特開2000-346945(JP,A)
調査した分野 G01T 1/02-04
特許請求の範囲 【請求項1】
有機媒体を多量に含みながら固体状態を保つような架橋高分子材料又はその成形物に色素及び酸発生剤を含む有機溶液を含有させてなる電磁波検出体。
【請求項2】
有機媒体を多量に含みながら固体状態を保つような架橋高分子材料又はその成形物に有機媒体を多量に含有させた後、色素及び酸発生剤を含む有機溶液中に浸漬せしめて該有機媒体を該有機溶液で置換することを特徴とする電磁波検出体の製造方法。
【請求項3】
有機媒体を多量に含みながら固体状態を保つような架橋高分子材料又はその成形物に水を大量に含ませた後、有機媒体中に浸漬せしめて水を有機媒体に実質的に置換し、次いで、色素及び酸発生剤を含む有機溶液中に浸漬せしめて該有機媒体を該有機溶液で置換することを特徴とする電磁波検出体の製造方法。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、照射された電磁波を色変化により容易に観察できる、紫外線やγ線などの電磁波検出体及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
放射線は、医療、工業、農業等、種々の産業分野で広く利用されている、放射線を取り扱う医療、研究施設さらには原子力発電所などの放射線利用施設では、人体への効率的な被曝提言対策と徹底した漏洩対策が求められている。また、放射線照射を利用する滅菌加工等を行う施設においては、照射した放射線量を短時間に的確に把握する必要がある。
【0003】
このような要請に応えるべく、例えば、特開2000-241548公報等に記載されているように、従来、酸発生剤と特定の色素の有機媒体溶液が電磁波照射により着色現象を示すことに注目し、特定の色素の開発が活発に行われている。電磁波やγ線などによる発色反応は、酸発生剤が電磁波により分解してプロトンを発生し、発生プロトンが色素と反応して発色することを原理とする。このとき酸増幅剤が共存していてこの分解の過程で新たに酸が発生するような条件を設ければ、発色反応は加速度的に促進される。
【0004】
例えば、典型的な系として、N-トシルオキシルフタルイミド(1)(化1)を酸発生剤かつ酸増幅剤とし、発色剤をフルオラン系色素のフルオラン1b(化2)とした場合には、次の反応式(化3)で示される発色反応が生じる。
【0005】
【化1】
JP0003610374B2_000002t.gif【0006】
【化2】
JP0003610374B2_000003t.gif【0007】
【化3】
JP0003610374B2_000004t.gif【0008】
酸発生剤のN-トシルオキシルフタルイミド(1)は2-プロパノール溶液中で紫外線やγ線などの照射により分解して酸を発生し、発生した酸がさらにN-トシルオキシルフタルイミド(1)を分解するので、酸が増殖的に増える。この酸が発色剤のフルオラン1b(無色)と上式のように反応して着色生成物(赤色)を生ずる。この生成物の量は、紫外線やγ線などの照射量に比例するので、その照射量に応じて着色の度合いが強くなるため、照射量を色の観察により知ることができる。
【0009】
このような反応を溶液中では行うことは知られているが、これを固体中や膜中で行うことは従来できなかった。このような系をシリカゲルや固体高分子膜のような吸着剤に吸着して用いようとしても、その過程で酸発生が起こり発色してしまうので、紫外線やγ線などの照射量を検出する目的には適さない。また、微量の水分によりやはり酸が発生して着色してしまうので、取り扱いが難しい。
【0010】
本発明者は、水分に触れることなく、有機溶液の性質を保ちながら固体化することが重要であることに着目し、先に、溶液化学反応を固体中で行わせる方法について提案した(特願2001-275999)。しかしながら、そこでは、水又は有機化合物の液体を多量に含む固体や膜の一般的作成方法について記載しているが、本発明におけるような、酸発生剤と色素を含む有機媒体溶液の電磁波による発色反応が可能となるような固体や膜の製造方法についての認識は全くなかった。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、酸発生剤と色素の有機媒体溶液の着色により、照射された電磁波を色変化により容易に検出するためのデバイス(固体や膜)を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、酸発生剤と色素の有機媒体溶液の着色により、照射された電磁波を色変化により容易に検出するためのデバイス(固体や膜)について、水や有機の液体を多量に含む高分子固体を本発明の目的に利用するという観点から鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成するに到ったものである。
すなわち、本発明は、有機媒体を多量に含みながら固体状態を保つような架橋高分子材料又はその成形物に色素及び酸発生剤を含む有機溶液を含有させてなる電磁波検出体である。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の電磁波検出体は、有機媒体を多量に含みながら固体状態を保つような架橋高分子材料又はその成形物に有機媒体を多量に含有させた後、色素及び酸発生剤を含む有機溶液中に浸漬せしめて該有機媒体を該有機溶液で置換することにより製造される。
【0014】
また、本発明の電磁波検出体は、有機媒体を多量に含みながら固体状態を保つような架橋高分子材料又はその成形物に水を大量に含ませた後、有機媒体中に浸漬せしめて水を有機媒体に実質的に置換し、次いで、色素及び酸発生剤を含む有機溶液中に浸漬せしめて該有機媒体を該有機溶液で置換することにより製造することもできる。
【0015】
本発明に使用される、有機媒体を多量に含みながら固体状態を保つような架橋高分子材料としては、固体内部に溶媒を安定的に保持できる構造、例えばマクロな構造全体にわたって3次元ネットワークを作りうる、天然または合成の高分子材料やその誘導体が挙げられる。
かかる高分子材料としては、特に限定するものではないが、疎水的な主鎖と親水的な側鎖を持つ天然又は合成の高分子材料又はその誘導体が好ましく、また、3次元ネットワークを形成し、なおかつ安定な形状を保持するためには、水素結合や他の共有結合が可能な官能基、例えばカルボキシル基、水酸基、アミノ基、アミド基、スルホン基などを有するものが好ましい。
【0016】
かかる好ましい天然高分子又はその誘導体としては、カラゲニン(carrageenan)、アガロース(agarose)、寒天、キチン、キトサン、セルロース、デンプン、アミロース、アミロペクチン、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸、マンナン、グルコマンナンなどの多糖類やその誘導体及びゼラチン、コラーゲン、カゼイン、アルブミン、フィブロイン、ケラチン、グロブリン、などのタンパク質やその誘導体などが挙げられる。
【0017】
また合成高分子としては、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリメタクリルアミド、ポリメタクリル酸、ポリビニルアルコール、ポリビニルピリジン、ポリビニスルホン酸及びアミノ化、スルホン化、ヒドロキシル化したポリスチレン並びにこれらを部分的に架橋した高分子材料などが挙げられる。
【0018】
本発明に使用する酸発生剤は、検出を目的とする電磁波により酸を発生する物質なら何でもよい。例示すれば、クロロフォルム,塩化ジフェニルヨードニウム、N-トシルオキシフタルイミド誘導体、またはこれらの官能基を有する高分子化合物、tert-ブチルオキシベンゼン誘導体、p-トルエンスルホネ-ト誘導体、N-メタンスルホニルオキシフタルイミド誘導体、N-トシルオキシコハク酸イミド誘導体、N-トシルオキシ-1,8-ナフタルイミド誘導体、N-メタンスルホニルオキシ-1,8-ナフタルイミド誘導体などが挙げられる。
【0019】
本発明に使用する色素としては、酸と反応して発色するものなら何でも良い。例示すれば、フルオラン系色素、インドリルフタリド系色素、トリフェニルメタン系色素、トリフェニルメタノール系色素、フェノチアジン系色素、ベンゾジキサンテンエンドペルオキシド系色素などが挙げられる。
【0020】
本発明に使用する有機媒体としては、クロロフォルムや塩素化有機溶媒、アルコール類などが挙げられる。アルコール類は水と混ざるので、直接架橋高分子材料又はその成形物中の水を置換するのに用いられるが、クロロフォルムや塩素化有機溶媒は水と混ざらないので、予め水をアルコールなどの水と混ざる溶媒で置換してから、酸発生剤と色素の混合溶液で置換すればよい。
【0021】
本発明において、架橋高分子材料に有機媒体を多量に含有させて含溶媒固体を形成するには、当該高分子材料を所定の溶媒に添加し、これを加熱・溶解して当該高分子材料の溶液とする。
高分子材料に対し、使用する溶媒は、得られる含溶媒固体中に少なくとも20重量%以上、好ましくは50重量%以上、さらに好ましくは80重量%以上、一層好ましくは90重量%以上、より一層好ましくは95重量%以上である。
【0022】
加熱温度は、高分子材料の種類、添加量、溶媒の種類等によって変わりうるが、通常40~200℃、好ましくは50~150℃、さらに好ましくは60~100℃程度である。また、加熱する手段は特に限定するものではなく、オイルバスやウオーターバスによる加熱、電気ヒーターによる加熱、近赤外線や遠赤外線を用いる赤外線加熱、高周波加熱(マイクロ波加熱)(所謂電子レンジ)等が採用できる。これらは、高分子材料の種類や量に応じて適宜選択するが、例えば一般に高分子材料の使用量が少なく、例えば1質量%以下程度の場合は、電気ヒーター等による加熱だけで、充分に溶解が可能であるが、例えば2質量%以上の場合は、電子レンジ等の高周波加熱の使用がより良好な結果を与える。なお、溶媒としては上記したように、水単独使用の他、種々の有機媒体と水との混合媒体である水系溶媒が好ましく用いられる。
【0023】
以上のごとくして、加熱溶解の後に、当該溶液を冷却すると、その溶媒を大量に含んだ含溶媒固体が得られる。すなわち、当該高分子材料は、ある種の3次元ネットワークを作って固体化し、かつ、固体でありながら、そのネットワークの内部に大量の当該溶媒を安定的に保持する。従って、この固体の中に含有される溶媒中に溶存したイオンや分子の輸送過程(すなわち、拡散係数により表示される。)は、純液体中と実質的に同程度の挙動を示すので、純溶媒中の溶質と、同様な化学反応を、当該固体中で行わせることができるものと推定される。
【0024】
冷却温度は、特に限定するものではないが、通常、-30~35℃、好ましくは-10~30℃、さらに好ましくは0~30℃程度である。また冷却方法は、自然放冷によってもよいし、または氷や冷却媒体を用いる強制冷却のいずれでも構わない。
【0025】
上記含溶媒固体は、剛性も高く、それ自身かなりの強度を有する。本発明においては、高分子材料を溶媒に添加、加熱溶解した後に、適度な粘性を保持している状態で、通常の高分子材料の溶融成形と同様な、射出成形、押出成形、流延成形、注型成形することができる。また、適当な基体(例えば電極等であってもよい。)上に、当該溶液を刷毛塗りやスプレー又はスピンコート等により塗布したり、又はディッピング等により当該基体上に薄膜を形成することができる。
以上のごとく、加熱、溶解液を、成形してから冷却、固体化すれば、任意の形態に成形することができる。例えばブロック状、板状、薄膜状、線材状、繊維状、或いは他の任意の形状を作ることができる。
また、長時間本発明の電磁波検知体を保存する場合には、媒体が蒸発しないように、プラスチックやガラス板間に挟んでシールするか、あるいは高分子溶液に浸漬して高分子の薄膜をラミネートすればよい。
【0026】
本発明の電磁波検出体を使用することのできる電磁波は、それにより酸発生剤が分解するものなら何でも良く、例えば紫外光、電子レンジなどからのマイクロ波、γ線、他の放射線などが挙げられる。
【0027】
【実施例】
以下に本発明の構成を実施例により具体的に説明する。
実施例1
水に2重量%のアガロースを添加し、電子レンジで注意深く加熱して溶解した。これを20×10×2mmの型に流し込み、厚さ2mmのハイドロゲル膜を作成した。これを2-プロパノール中に浸漬し、途中4回プロパノールを交換して、水をプロパノールに置換した膜を得た。
この膜を0.01M濃度の酸発生剤のN-トシルオキシルフタルイミド(1)と1mM濃度の色素フルオラン1b(2)の2-プロパノール溶液に浸漬し、この溶液と置換すると酸発生剤と色素の2-プロパノール溶液を含んだ膜が得られた。これにそのまま電磁波を照射した。電磁波を照射すると、酸発生剤が分解して酸を発生し、この酸が色素と反応して赤く着色した。
ブラックライトにより紫外光を照射したときの可視部スペクトルの経時変化を図1に示す。500nm前後に2つに分かれた吸収極大が現れ、赤く発色した。照射時間とともにこの吸収が増えるので、膜の色変化を肉眼で観察するだけで照射量の程度を知ることができる。
【0028】
実施例2
実施例1において,酸発生剤のN-トシルオキシルフタルイミド(1)の代わりにベンジル-p-トルエンスルホネートを、色素フルオラン1b(2)の代わりに3,3-ビス-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)フタリドを、2-プロパノールの代わりにアセトニトリルを、2重量%のアガロースの代わりに4重量%のカラゲニンを用いた他は実施例1と同様に固体膜を作成した。光源として真夏の晴天日の太陽光を照射すると、照射量とともに531nmに吸収極大が現れ、ここにおける吸収が時間とともに増加し,また赤く着色した。
【0029】
実施例3
実施例1と同様にハイドロゲル膜を作成した。ハイドロゲル膜を予めアセトンで置換した後、0.01M濃度の酸発生剤のN-トシルオキシルフタルイミド(1)と1mM濃度の色素2,4,2’,4’,2”,4”-ヘキサメトキシトリフェニルカルビノールを含む2-プロパノール溶液に浸漬して固体膜を作成した。水銀ランプからの光を照射すると、538nmの吸収極大が現れ,そこにおける吸収が時間とともに増大し,膜は赤く着色した。
【0030】
実施例4
実施例1において酸発生剤は用いず、色素フルオラン1b(2)の代わりにベンゾビスインドロアクリジンエンドペルオキシドを、また媒体としてクロロフォルム(酸発生剤を兼ねる)を用いた他は実施例1と同様に膜を作成した。アガロースのハイドロゲル膜を予め2-プロパノールに浸漬して水をプロパノールに置換した後に、色素のクロロフォルム溶液に浸漬して置換した。これにγ線照射すると、青く着色した。
【0031】
【発明の効果】
本発明の電磁波検出体は、照射された電磁波を色変化により容易に観察することができ、電磁波検出体の色変化を肉眼で観察するだけで照射量の程度を知ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】酸発生剤のN-トシルオキシルフタルイミド(1)と色素フルオラン1b(2)の2-プロパノール溶液・アガロース固体膜系の電磁波検出体の紫外光照射による可視部スペクトルの経時変化を示す。
図面
【図1】
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