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明細書 :レーザ用光学媒質、レーザ、及びレーザ用光学媒質の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3780338号 (P3780338)
公開番号 特開2004-111705 (P2004-111705A)
登録日 平成18年3月17日(2006.3.17)
発行日 平成18年5月31日(2006.5.31)
公開日 平成16年4月8日(2004.4.8)
発明の名称または考案の名称 レーザ用光学媒質、レーザ、及びレーザ用光学媒質の製造方法
国際特許分類 H01S   3/16        (2006.01)
C30B  29/46        (2006.01)
FI H01S 3/16
C30B 29/46
請求項の数または発明の数 10
全頁数 7
出願番号 特願2002-273126 (P2002-273126)
出願日 平成14年9月19日(2002.9.19)
審査請求日 平成14年9月19日(2002.9.19)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304021288
【氏名又は名称】国立大学法人長岡技術科学大学
発明者または考案者 【氏名】加藤 有行
【氏名】飯田 誠之
【氏名】ナジャホフ ヒクメット
個別代理人の代理人 【識別番号】100072051、【弁理士】、【氏名又は名称】杉村 興作
審査官 【審査官】金高 敏康
参考文献・文献 特開平08-134440(JP,A)
特開平07-122364(JP,A)
特開2001-257408(JP,A)
Jpn. J. Appl. Phys.,日本,2000年 3月18日,vol.36/Part 1, No.6A,3517-3521
Journal of Luminescence,Elsevier B.V.,1985年,vol.33,135-140
Journal of Physics and Chemistry of Solids,Elsevier B.V.,2003年,64,1815-1819
Applied Physics Letters,米国,American Institute of Physics,2004年 8月 9日,vol.85, no.6,923-925
調査した分野 H01S 3/16
C30B 29/46
JICSTファイル(JOIS)
特許請求の範囲 【請求項1】
Eu(M:Ga,Al及びInの少なくとも一種、(x,y,z)=(1,2,4)又は(2,2,5))なる化学式の希土類硫化化合物の結晶体からなることを特徴とする、レーザ用光学媒質。
【請求項2】
前記希土類硫化化合物はEuGaであることを特徴とする、請求項1に記載のレーザ用光学媒質。
【請求項3】
前記希土類硫化化合物はEuAlであることを特徴とする、請求項1に記載のレーザ用光学媒質。
【請求項4】
前記希土類硫化化合物はEuInであることを特徴とする、請求項1に記載のレーザ用光学媒質。
【請求項5】
前記希土類硫化化合物はEuGaであることを特徴とする、請求項1に記載のレーザ用光学媒質。
【請求項6】
前記希土類硫化化合物はEuAlであることを特徴とする、請求項1に記載のレーザ用光学媒質。
【請求項7】
前記希土類硫化化合物はEuInであることを特徴とする、請求項1に記載のレーザ用光学媒質。
【請求項8】
前記希土類硫化化合物を構成するEu内の光学遷移を用いることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一に記載のレーザ用光学媒質。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一に記載のレーザ用光学媒質を含むレーザ。
【請求項10】
EuS粉末と、Ga粉末、Al粉末、及びIn粉末の少なくとも一種とをHS雰囲気中で固相反応させて、Eu(M:Ga,Al及びInの少なくとも一種、(x,y,z)=(1,2,4)又は(2,2,5))なる化学式の希土類硫化化合物の粉末を作製した後、ヨウ素輸送法により、前記化学式を有する前記希土類硫化化合物の単結晶を作製することを特徴とする、レーザ用光学媒質の製造方法。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、波長可変可視域固体レーザに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の固体レーザとしては、バンドギャップ間の遷移を利用した半導体レーザ(GaAs及びGaNなど)、並びに母体中の不純物中心の遷移を利用したレーザ(Al:Tiなど)が知られている。前者の半導体レーザは、母体の光学遷移を利用するため、光学利得が非常に大きいという利点を有するが、母体固有の発振波長でしか発振することができないという問題がある。後者の不純物中心レーザは、フォノンが関与する遷移を利用することによって波長可変性を呈する場合もあるが、不純物の光学遷移を用いることから、十分な光学利得を得ることができないという問題がある。
【0003】
一方、希土類元素を不純物としてではなく、構成元素として含む化合物は古くから知られているが、現在までにレーザ用光学媒質として研究されているものは、PrCl(Appl.Phys.Lett, 22(1973)87)及びNd0.5La0.512(Appl.Phys.Lett, 23(1973)519)による赤色~赤外域での誘導放出を観測した例が報告されているが、波長可変性を有しないという欠点があった。
【0004】
したがって、現状においては、大きな光学利得を有し、波長可変性のレーザを提供することができないでいた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、可視域において大きな光学利得と、波長可変性とを有する新規なレーザを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成すべく、本発明は、
Eu(M:Ga,Al及びInの少なくとも一種、(x,y,z)=(1,2,4)又は(2,2,5))なる化学式の希土類硫化化合物の結晶体からなることを特徴とする、レーザ用光学媒質に関する。
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討を実施した。その結果、チオガレート化合物CaGaのCaをEuで100%置換してなるEuGaは、極めて高い光学利得を有し、可視光域の広い範囲で波長可変性を呈すること見出した。また、EuGaのGa部分をAl及びInで置換したEuAl及びEuInも同様の高い光学利得性並びに波長可変性を呈することを見出した。さらには、上述した希土類硫化化合物を所定の割合で含むような希土類硫化化合物においても、同様の高い光学利得性及び波長可変性を有することが判明した。
【0008】
したがって、これらの希土類硫化化合物からレーザ用光学媒質を構成することによって、可視域において大きな光学利得を有するとともに、波長可変性を有するレーザを提供することができるようになる。
【0009】
なお、本発明における「結晶体」とは単結晶のみならず、微結晶や多結晶などをも含むものである。
【0010】
本発明のその他の特徴、及び本発明のレーザ用光学媒質の製造方法については、以下において詳述する。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を発明の実施の形態に基づいて詳細に説明する。
本発明のレーザ用光学媒質は、Eu(M:Ga,Al及びInの少なくとも一種、(x,y,z)=(1,2,4)又は(2,2,5))なる化学式の希土類硫化化合物の結晶体から構成される。具体的には、上述したEuGa、EuAl及びEuInの単結晶を例示することができる。また、EuGa、EuAl及びEuInの単結晶を例示することができる。さらに、これらの希土類硫化化合物を所定の割合で含んでなるEu(Ga,Al,In)((x,y,z)=(1,2,4)又は(2,2,5))の単結晶を例示することができる。さらには、これらの微結晶や多結晶などをも例示することができる。
【0012】
上述した本発明のレーザ用光学媒質は、波長441.5nmの光で励起した場合、室温において約20%の発光量子効率を示し、77K以下の低温において約100%の発光量子効率を示す。なお、このような低温での発光量子効率が約100%であることから、このときの発光減衰時定数(470ns)が輻射寿命に対応する。
【0013】
本発明のレーザ用光学媒質は、その発光及び発光励起スペクトルはCaGaにEuを添加したスペクトル(Jpn.J.Appl.Phys.,36(1997)L857)に類似していることからCaGa:Eu同様に、化合物母体又は局所的フォノン終端型のEu内遷移であることが分かる。したがって、フォノン終端型レーザに対するMcCumberの理論(D.E.McCumber:Phys. Rev. 134(1964)A299)から室温及び低温(77K)での光学利得スペクトルを計算すると、室温での最大光学利得Gmaxは光子エネルギー2.27eVで、Gmax=1650cm-1となる。また、77Kの低温では、光子エネルギー2.28eVで、Gmax=10200cm-1となる。
【0014】
また、本発明のレーザ用光学媒質は、Eu内の光学遷移を用いており、例えばEuGa単結晶の場合、光学利得が100cm-1以上の波長領域が室温で521nm(緑色)~593nm(橙色)であり、77Kの低温で518nm(緑色)~599nm(橙色)である。したがって、可視域の広範囲をカバーする。したがって、本発明のレーザ用光学媒質は、可視域において大きな光学利得を有するとともに、波長可変性を有することが分かる。
【0015】
なお、従来のチタンサファイアレーザの波長可変範囲が635nm~1115nm(理科年表(丸善)参照)であることを考慮すると、本発明のレーザ用光学媒質は短波長側に波長可変域を有することが分かる。したがって、高密度光記録などにおいて好適に用いることができる。さらに、本発明のレーザ用光学媒質を青色発光素子などと組み合わせることによって、照明用の白色発光素子を実現することができるようになる。
【0016】
本発明のレーザ用光学媒質は、以下のようにして製造することができる。
最初に、EuS粉末と、Ga粉末、Al粉末、及びIn粉末の少なくとも一種とをHS雰囲気中で固相反応させて、Eu(M:Ga,Al及びInの少なくとも一種、(x,y,z)=(1,2,4)又は(2,2,5))なる化学式の希土類硫化化合物の粉末を作製する。次いで、ヨウ素輸送法を用い、前記希土類硫化化合物の粉末を結晶化する。
【0017】
EuGa結晶体及びEuGa結晶体を作製する場合は、EuS粉末及びGa粉末を用いる。なお、EuGa結晶体はヨウ素輸送法における温度勾配を例えば900℃→700℃とし、EuGa結晶体はヨウ素輸送法における温度勾配を例えば900℃→700℃とすることによって得ることができる。
【0018】
EuAl結晶体及びEuAl結晶体を作製する場合は、EuS粉末及びAl粉末を用いる。なお、EuAl結晶体はヨウ素輸送法における温度勾配を例えば900℃→700℃とし、EuAl結晶体はヨウ素輸送法における温度勾配を例えば900℃→700℃とすることによって得ることができる。
【0019】
EuIn結晶体及びEuIn結晶体を作製する場合は、EuS粉末及びIn粉末を用いる。なお、EuIn結晶体はヨウ素輸送法における温度勾配を例えば900℃→700℃とし、EuIn結晶体はヨウ素輸送法における温度勾配を例えば900℃→700℃とすることによって得ることができる。
【0020】
上述した希土類硫化化合物を所定の割合で含んでなるEu(Ga,Al,In)((x,y,z)=(1,2,4)又は(2,2,5))結晶体を作製する場合は、EuS粉末と、Ga粉末、Al粉末、及びIn粉末とを適量配合することによって、所定の希土類硫化化合物の粉末を得、その後ヨウ素輸送法を用いることによって結晶化させる。
【0021】
【実施例】
EuS粉末の1.84g及びGa粉末の2.36gをHS雰囲気中、955℃で24時間加熱し、固相反応を実施した。得られた粉末に対してX線回折による評価を行なったところ、EuGaによる回折線のみが観察された。また、EPMA解析を実施したところ、前記粉末はEuGaなる組成を有することが判明した。次いで、このようにして得たEuGa粉末の1.0gに対してヨウ素輸送法(ヨウ素密度23mg/cm、温度勾配900℃→700℃)を施すことにより、EuGa単結晶を作製した。なお、得られた単結晶の形状は、500μm×500μm×200μmの粒状、及び500μm×500μm×5mmの棒状であった。
【0022】
次いで、上述のようにして得た棒状のEuGa単結晶を液体窒素中に浸漬し、QスイッチパルスNd:YAGレーザを基にしたパラメトリック発振光(ピーク波長500nm、繰り返し周波数10Hz、パルス幅2ns、励起密度10MW/cm)を用いて強励起した。図1は、EuGa結晶のレーザ発振スペクトルを示すグラフである。図1から明らかなように、563nm付近の液体窒素による誘導ラマン散乱以外に、552nm付近において前記EuGa単結晶からの指向性のある光が観測された。
【0023】
図2は、上記EuGa単結晶の室温及び77Kにおける光学利得を示すグラフである。図2から明らかなように、上記EuGa単結晶は、77Kの低温において10200cm-1の光学利得を呈し、室温において165cm-1の光学利得を有することが分かる。さらに、光学利得が100cm-1以上の波長領域が室温で521nm(緑色)~593nm(橙色)であり、77Kの低温で518nm(緑色)~599nm(橙色)である。したがって、可視域の広範囲をカバーし、上記EuGa単結晶は、可視域において大きな光学利得を有するとともに、波長可変性を有することが分かる。
【0024】
なお、上述した製造方法に従って、EuAl単結晶及びEuIn単結晶、並びにEuGa単結晶、EuAl単結晶、及びEuIn単結晶を作製し、その発光スペクトルを調べた結果、上記同様の特性を有することが判明した。
【0025】
図3は、同様の過程を経て作製したEuGa単結晶の、室温、77K及び12Kにおける発光スペクトルである。図3の発光スペクトルがEuGa単結晶の発光スペクトルと形状が類似しており、フォノン終端型の遷移であることから、EuGa単結晶同様、EuGa単結晶も可視域において大きな光学利得を有するとともに、波長可変性を有することが分かる。
【0026】
以上、具体例を挙げながら発明の実施の形態に基づいて本発明を詳細に説明してきたが、本発明は上記内容に限定されるものではなく、本発明の範疇を逸脱しない限りにおいて、あらゆる変形や変更が可能である。
【0027】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、可視域において大きな光学利得と、波長可変性とを有するレーザ用光学媒質を得ることができるので、この光学媒質を用いることにより、可視域において大きな光学利得と、波長可変性とを有する新規なレーザを提供することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のEuGa単結晶からなるレーザ用光学媒質のレーザ発振スペクトルを示すグラフである。
【図2】 前記EuGa単結晶の室温及び77Kにおける光学利得を示すグラフである。
【図3】 本発明のEuGa単結晶からなるレーザ用光学媒質の発光スペクトルを示すグラフである。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2