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明細書 :殺菌剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3726135号 (P3726135)
公開番号 特開2004-115453 (P2004-115453A)
登録日 平成17年10月7日(2005.10.7)
発行日 平成17年12月14日(2005.12.14)
公開日 平成16年4月15日(2004.4.15)
発明の名称または考案の名称 殺菌剤
国際特許分類 A01N 65/00      
FI A01N 65/00 A
請求項の数または発明の数 5
全頁数 10
出願番号 特願2002-282487 (P2002-282487)
出願日 平成14年9月27日(2002.9.27)
審査請求日 平成14年9月27日(2002.9.27)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504145308
【氏名又は名称】国立大学法人 琉球大学
発明者または考案者 【氏名】安仁屋 洋子
【氏名】高嶺 房枝
【氏名】市場 俊雄
個別代理人の代理人 【識別番号】100072051、【弁理士】、【氏名又は名称】杉村 興作
【識別番号】100100125、【弁理士】、【氏名又は名称】高見 和明
【識別番号】100101096、【弁理士】、【氏名又は名称】徳永 博
【識別番号】100086645、【弁理士】、【氏名又は名称】岩佐 義幸
【識別番号】100107227、【弁理士】、【氏名又は名称】藤谷 史朗
【識別番号】100114292、【弁理士】、【氏名又は名称】来間 清志
【識別番号】100119530、【弁理士】、【氏名又は名称】冨田 和幸
審査官 【審査官】吉住 和之
参考文献・文献 特開2003-342190(JP,A)
Chemical & Pharmaceutical Bulletin,1986年,Vol.34,No.3,p.1039-1049
Planta Medica ,1995年,Vol.61,No.4,p.365-366
Planta Medica,1999年,Vol.65,No.5,p.444-446
調査した分野 A01N 65/00
CA(STN)
REGISTRY(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
モモタマナの葉を水で抽出した抽出物を有効成分とする殺菌剤。
【請求項2】
前記抽出を、80~100℃で行うことを特徴とする請求項1に記載の殺菌剤。
【請求項3】
前記抽出を、窒素雰囲気下で行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の殺菌剤。
【請求項4】
前記モモタマナの葉を水で抽出した抽出物の濃度が6.25~46000μg/mLであることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の殺菌剤。
【請求項5】
前記抽出物は、モモタマナの葉100質量%から14~46質量%の割合で得られたものであることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の殺菌剤。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、殺菌剤に関し、特にモモタマナの葉を水で抽出した抽出物を有効成分とする殺菌剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、植物由来の抗菌物質が明らかにされ、中でも緑茶については多くの研究があり、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)及び多くの下痢起炎菌の発育を阻止するカテキンはよく研究されている。また、病原性グラム陽性菌に対する抗菌活性が、多くの植物、例えばミ ロバランノキ(Terminalia chebula)において報告されている(非特許文献1参照)。
【0003】
これに対し、モモタマナ(Terminalia catappa L.)は、ミロバランノキと同じシクンシ(Terminalia)科に属し沖縄等に自生する植物であるが、該モモタマナから殺菌物質を分離したとの報告はこれまでなされていない。
【0004】
一方、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)に対して有効な薬剤としては、バンコマイシンが存在するのみであり、新規な殺菌剤の開発が要望されている。
【0005】
また、殺菌剤・抗菌剤の中には、殺菌・抗菌効果を有するものの、変異原性を有するため、使用に制限のあるものがある。従って、新規な殺菌剤を開発するに当っては、変異原性にも充分留意する必要がある。
【0006】
【非特許文献1】
グローバー・アイ・エス(Grover IS)及びバラ・エス(Bala S),”ネズミチフス菌におけるターミナリア・チェブラ(ミロバラン)の抗変異原活性(Antimutagenic activity of Terminalia chebula (myroblan) in Salmonella typhimurium)”,「 インディアン・ジャーナル・オブ・エクスペアリメンタル・バイオロジー(Indian Journal of Experimental Biology )」,1992年,30号,p.339-341
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明の目的は、変異原性を有さない新規な殺菌剤、特にMRSAに対し有効な殺菌剤を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、モモタマナの葉の抽出物が殺菌効果及び抗変異原活性を有することを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
即ち、本発明の殺菌剤は、モモタマナの葉を水で抽出した抽出物を有効成分とすることを特徴とする。
【0011】
本発明の殺菌剤の他の好適例においては、前記抽出を、80~100℃で行う。
【0012】
本発明の殺菌剤の他の好適例においては、前記抽出を、窒素雰囲気下で行う。
【0013】
本発明の殺菌剤の他の好適例においては、該殺菌剤が液状の場合、前記モモタマナの葉を水で抽出した抽出物の濃度が6.25~46000μg/mLである。
【0014】
本発明の殺菌剤の他の好適例においては、前記抽出物は、モモタマナの葉100質量%から14~46質量%の割合で得られたものである。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明を詳細に説明する。本発明で用いるモモタマナ(Terminalia catappa L.)は、シクシン(Terminalia)科の高木で、別名「コバデイシ」とも呼ばれる。該モモタマナは、沖縄、小笠原諸島、東南アジア及び南太平洋の海岸等に広く生育している。
【0017】
本発明では、上記モモタマナの葉を採取し、で抽出した抽出物を用いる。抽出の前処理として、モモタマナの葉を破砕することが好ましく、破砕により効率よく抽出を行うことができる。抽出に用いる溶媒は、抽出効率及び安全性の観点から、水である。
【0018】
上記抽出は、80~100℃で加温して行うのが好ましく、80℃未満では、抽出効率が低く、100℃を超えると、抽出物が化学変化することがある。
【0019】
上記抽出は、空気、酸素を窒素で置換し、窒素ガスを充満した容器中、即ち窒素雰囲気下で行うのが好ましい。窒素雰囲気下で抽出を行う方が、空気中で抽出を行うよりも、安定性及び抽出効率が良い。
【0020】
抽出後は、遠心分離により固相と液相に分離したり、又はろ過を行うことにより、モモタマナの葉の残骸と抽出液とを分離する。なお、抽出液中には後述するようにポリフェノール類が存在するため、抽出液は酸性を示す。そこで、使用目的に応じてNaOH水溶液等で抽出液を中和してもよい。
【0021】
上記抽出物は、水抽出液としてそのまま用いてもよいが、抽出物を精製して用いることもできる。例えば、加温下で抽出液を減圧濃縮した後、凍結乾燥を行って、抽出物の精製品を得る。
【0022】
例えば、窒素雰囲気下で、上述の好適温度範囲で、を用い、モモタマナの葉1gに対し10mLを用いて抽出を行った場合、得られた抽出液を乾燥させると、0.14~0.46gの抽出物が得られる。従って、好適抽出条件下で得られる抽出物の割合は、モモタマナの葉100質量%に対し14~46質量%である。
【0023】
上記抽出物は、エロモナス ハイドロフィラ(Aeromonas hydrophila)、エロモナス キャビエ(Aeromonas caviae)、エロモナス ソブリア(Aeromonas sobria)、バチルス メガテリウム ATCC 6630(Bacillus megaterium ATCC 6630)、バチルス ズブチリス(Bacillus subtilis)、エンテロコッカス フェカーリス ATCC 29212(Enterococcus faecalis ATCC 29212)、エンテロコッカス アビウム R252(Enterococcus avium R252)、病原血清型大腸菌O111(Enteropathogenic Escherichia coli O111)、プロテウス ミラビリス(Proteus mirabilis)、プロビデンシア ストゥアーティ SY2(Providencia stuarti SY2)、シュードモナス エルギノーザ ATCC 27853(Pseudomonas aeruginosa ATCC 27853)、セラチア マルセッセンス(Serratia marcescens)、チフス菌(Salmonella typhi)、パラチフスA菌(Salmonella paratyphi A)、パラチフスB菌(Salmonella paratyphi B)、フレクスナー赤痢菌(Shigella flexneri)、ソンネ赤痢菌(Shigella sonnei)、黄色ブドウ球菌ATCC 25923(Staphylococcus aureus ATCC 25923)、黄色ブドウ球菌 FDA 209P(Staphylococcus aureus FDA 209P)、黄色ブドウ球菌 MRSA J3(Staphylococcus aureus MRSA J3)、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)、コレラ菌 C154 (クラシカル)(Vibrio cholerae C154 (classical))、コレラ菌 A-85 (E1-Tor)(Vibrio cholerae A-85 (E1-Tor))、エルシニア エンテロコリチカ血清型O-3(Yersinia enterocolitica sero type O-3)等に対して抗菌及び殺菌効果を有する。本発明で用いるモモタマナの葉を水で抽出した抽出物は、上記のようにグラム陽性菌のみならず、グラム陰性菌に対しても強い活性を有するため、該抽出物は感染症治療薬としても有効である。
【0024】
特に、本発明で用いるモモタマナの葉を水で抽出した抽出物は、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)に対しても抗菌及び殺菌効果を有するため、該抽出物はMRSA治療薬として有効である。また、MRSAに対する消毒液としても有効である。MRSA用薬剤として用いる場合、モモタマナの葉の水抽出液は、濃縮してペースト化、乾燥化又は乳化等が可能なため、剤型は特に限定されず、錠剤、粉末、液体であってよい。
【0025】
本発明の殺菌剤は、有効成分である上記モモタマナの葉を水で抽出した抽出物を含み、必要に応じて他の成分を含む。他の成分としては、殺菌剤を液状で用いる場合は、水、エタノール、プロパノール、グリセロール等の溶媒が挙げられる。ここで、液状殺菌剤中のモモタマナの葉を水で抽出した抽出物の濃度は、6.25~46000μg/mLが好ましく、6.25~6000μg/mLがより好ましく、12.5~1000μg/mLが特に好ましい。6.25μg/mL未満では、殺菌効果が充分でなく、46000μg/mLを超えると、殺菌効果が飽和する。また、本発明の殺菌剤を錠剤等の固体状で用いる場合は、他の成分としては、通常の医薬用配合剤が挙げられる。
【0026】
また、上記モモタマナの葉を水で抽出した抽出物は、変異原性を有さず、むしろ抗変異原性(変異阻害活性)を有する。従って、該抽出物を有効成分とする殺菌剤は、副作用が少なく、安全である。
【0027】
本発明で用いるモモタマナの葉を水で抽出した抽出物は、上記のように種々の菌に対して殺菌効果を有し、更に抗変異原性を有するため、種々のアイテムに配合することにより、人体に対し安全で且つ殺菌性を発現させることができる。ここで、アイテムとしては、化粧料、フィルター等が挙げられる。
【0028】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、 本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0029】
(抽出液の調製)
60℃の温風で乾燥させたモモタマナの葉を、5mmのワイヤメッシュを具えたブレンダーで破砕した。該破砕物1gに蒸留水10mLを加え、37℃で1時間振盪した。次に、10,000×gで10分間遠心した後、上清を採取し、10% NaOH水溶液を用いて、該上清のpHを7.0±0.1に調整した。最後に、孔径0.22μmのメンブレンフィルターを用いて濾過し、濾液を10%水抽出液として使用した。
【0030】
(凍結乾燥標品の調製)
破砕されたモモタマナの葉530gを蒸留水5300mLに加え、90℃で1時間インキュベートした。次に、濾紙(TOYO, 5C)を用いて濾過し、濾液を70℃で減圧濃縮後、凍結乾燥を行った。該凍結乾燥標品を適宜秤量し、蒸留水に溶解させて使用した。
【0035】
(抗菌活性テスト)
(1)ディスク法
表1に記載の各菌をミューラーヒントンブロス(Difco)で培養し、生理食塩水で106cfu/mLに調整し、ミューラーヒントン寒天培地に接種した。予め乾熱滅菌したディスク(直径8mm、東洋ろ紙)に、上記10%水抽出液50μLを滴下し乾燥させた。次に、該ディスクを、前記被験菌を接種した倍地上に置き、37℃で一晩培養した。培養後、ディスク周囲に出現した阻止円の直径を、ノギスを用いて測定した。結果を表1に示す。
【0036】
(2)最小発育阻止濃度(MIC)
日本化学療法標準法(日本化学療法学会編(1981):最小発育阻止濃度(MIC)測定法再改定について, Chemotherapy 29: 76-79)に準拠して、最小発育阻止濃度を寒天平板希釈法にて測定した。接種菌量は106cfu/mLで、培地にはミューラーヒントン寒天培地(Difco)を用いた。なお、MICは細菌の発育を阻止する最も低い濃度で表した。結果を表1に示す。また、上記凍結乾燥標品を用いMICを測定し、タンニン酸(Tannic acid)及び没食子酸(gallic acid)のMICと比較した。結果を表2に示す。
【0037】
【表1】
JP0003726135B2_000002t.gif【0038】
表1の結果から、モモタマナの葉を水で抽出した抽出物は、病原性グラム陽性菌及びグラム陰性菌に対し抗菌性を有し、食中毒等の腸管下痢症の起炎菌、シュードモナス、セラチア、MRSA等の院内感染菌の増殖を阻害することが分かる。
【0039】
【表2】
JP0003726135B2_000003t.gif【0040】
表2の結果から、モモタマナの葉を水で抽出した抽出物は、タンニン酸及び没食子酸に比べ、エロモナス、バチルス、プロテウス、プロビデンシア、ブドウ球菌、赤痢菌及びコレラ菌に対して抗菌活性が強いことが分かる。
【0041】
(MRSAに対するMIC値測定)
表1及び表2の結果より、モモタマナの葉の水抽出液が黄色ブドウ球菌に抗菌活性を示すことが明らかになったので、表3に示す7株のMRSAに対して上記と同様の方法でMIC値を測定し、バンコマイシン等の8種の薬剤と比較した。結果を表3に示す。
【0042】
【表3】
JP0003726135B2_000004t.gif【0043】
表3より、モモタマナの葉を水で抽出した抽出物は、概ねバンコマイシンに次いで低いMIC値を示し、抗菌活性が強いことが分かる。
【0044】
(生菌数の測定)
抗菌テストでモモタマナの葉の抽出物に対して感受性であった、グラム陽性菌の黄色ブドウ球菌 MRSA J3、黄色ブドウ球菌 FDA 209P及び表皮ブドウ球菌と、グラム陰性菌のフレクスナー赤痢菌、 パラチフスA菌及びコレラ菌 C154とを被験菌とした。対数増殖期の培養菌を1:105まで希釈した。この菌浮遊液1mLに上記10%水抽出液を等量加え混合した後、37℃でインキュベートした。適宜取り出し、希釈後生菌数を混釈法により、ミューラーヒントン寒天培地を用いて測定した。結果を図1に示す。
【0045】
図1より、0.63%以上の濃度のモモタマナ葉水抽出液で24時間処理することにより総ての菌が死滅することが分かる。また、この結果から、上記発育阻止能が殺菌によるものであることが分かる。
【0046】
(抗変異原試験)
Ames法により変異原性を試験した。変異原にはアジ化ナトリウム(NaN3)と代謝酵素賦活型の2-AFを使用した。菌株はネズミチフス菌LT-2(Salmonella Typhimurium LT-2)株由来TA97a、TA98(フレームシフト試験株)、TA100(塩基対置換試験株:カリフォルニア大学バークレイ校のAmes BN博士より分与)を用いた。新鮮培養菌0.1mLに変異原0.1mL及びモモタマナの葉の水抽出液0.1mLを加え、37℃で20分間インキュベートした後、0.5mMのヒスチジン/ビオチン含有の上層軟寒天培地2mLを加え、予め作製した最小培地からなる下層培地に重層した。37℃で48時間培養した後、出現した復帰変異株のコロニーを計数した。同時に、陽性コントロール(変異原のみ)、陰性コントロール(モモタマナの葉の抽出液のみ)についても試験した。S9依存性の変異原2-AFの場合は、0.5mLのS9、0.1mLの菌液、変異原0.1mL及びモモタマナの葉の抽出液を加え、同様に行った。コントロールはS9の代わりにリン酸緩衝液を使用した。復帰変異株の計数は48時間後に行った。活性は、次の式を用いて求めた。結果を図2に示す。
【0047】
式:活性(%)=(a-b)×100/(a-c)
(式中、aは変異原の作用のみで誘導されたコロニー数、bは抽出液存在下の変異原の作用で出現したコロニー数、cはモモタマナの葉の水抽出液の作用のみで出現したコロニー数である。)
【0048】
図2より、直接作用性変異原NaN3によって生じる塩基置換型の復帰変異株の生成が最大68%阻害され、S9依存性の2-AFによって生じるフレームシフト型変異株の生成が最大100%阻害されることが分かる。この結果から、モモタマナの葉の水抽出液は、変異原性を有さないだけではなく、むしろ抗変異原活性を有することが分かる。
【0049】
【発明の効果】
本発明によれば、種々の菌に対し抗菌・殺菌作用を有し、特にMRSA殺菌作用を有し、変異原性を有さず、むしろ抗変異原活性を有する殺菌剤が提供でき、かかる殺菌剤を用いることにより、殺菌性が高く、人体に対して害の無い化粧料、フィルター等の様々な商品が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 生菌数の測定結果である。
【図2】 抗変異原試験の測定結果である。
図面
【図1】
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【図2】
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