TOP > 国内特許検索 > 電磁撹拌装置及び電磁撹拌方法 > 明細書

明細書 :電磁撹拌装置及び電磁撹拌方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4134310号 (P4134310)
公開番号 特開2003-220323 (P2003-220323A)
登録日 平成20年6月13日(2008.6.13)
発行日 平成20年8月20日(2008.8.20)
公開日 平成15年8月5日(2003.8.5)
発明の名称または考案の名称 電磁撹拌装置及び電磁撹拌方法
国際特許分類 B01F  13/08        (2006.01)
B22D  11/115       (2006.01)
F27D  23/04        (2006.01)
C21C   7/10        (2006.01)
FI B01F 13/08 Z
B22D 11/115 A
B22D 11/115 D
B22D 11/115 E
F27D 23/04
C21C 7/10 S
請求項の数または発明の数 10
全頁数 8
出願番号 特願2002-023074 (P2002-023074)
出願日 平成14年1月31日(2002.1.31)
審判番号 不服 2005-015522(P2005-015522/J1)
審査請求日 平成14年1月31日(2002.1.31)
審判請求日 平成17年8月11日(2005.8.11)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
発明者または考案者 【氏名】谷口 尚司
【氏名】上野 和之
【氏名】大久保 光浩
【氏名】安藤 努
【氏名】舞嶽 孝二
個別代理人の代理人 【識別番号】100072051、【弁理士】、【氏名又は名称】杉村 興作
【識別番号】100101096、【弁理士】、【氏名又は名称】徳永 博
【識別番号】100086645、【弁理士】、【氏名又は名称】岩佐 義幸
【識別番号】100107227、【弁理士】、【氏名又は名称】藤谷 史朗
【識別番号】100114292、【弁理士】、【氏名又は名称】来間 清志
【識別番号】100119530、【弁理士】、【氏名又は名称】冨田 和幸
参考文献・文献 特開昭54-163729(JP,A)
特表昭64-500526(JP,A)
特表2002-538586(JP,A)
調査した分野 B01F13/00
B22D11/115
C21C7/00
F27D23/04
特許請求の範囲 【請求項1】
所定の容器と、
前記容器の外周面に沿って設けられた回転磁界発生コイルと、
前記容器の前記外周面において、前記容器の軸方向に沿って設けられた軸方向移動磁界発生コイルとを具え、
前記回転磁界発生コイルと前記軸方向磁界発生コイルとは互いに異なる磁気回路を構成するとともに、前記容器内の融体に対してそれぞれ回転運動及び軸方向運動を生ぜしめることを特徴とする、電磁撹拌装置。
【請求項2】
前記回転磁界発生コイルと前記軸方向移動磁界発生コイルとは、それぞれ独立に制御することを特徴とする、請求項1に記載の電磁撹拌装置。
【請求項3】
前記回転磁界発生コイル及び前記軸方向移動磁界発生コイルは、前記容器内に容れられた融体を覆うようにして設けることを特徴とする、請求項1又は2に記載の電磁撹拌装置。
【請求項4】
前記回転磁界発生コイルは、前記容器の前記外周面に沿って設けられた複数のコイルからなることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一に記載の電磁攪拌装置。
【請求項5】
前記軸方向移動磁界発生コイルは、前記容器の外周面を周回するとともに、前記容器の前記軸方向に沿って設けられた複数のコイルからなることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一に記載の電磁攪拌装置。
【請求項6】
所定の容器内に所定の融体を容れる工程と、
前記容器の外周面に沿って設けられた回転磁界発生コイルによって、前記融体に回転運動を生ぜしめる工程と、
前記容器の前記外周面において、前記容器の軸方向に沿って設けられた軸方向移動磁界発生コイルによって、前記融体に軸方向運動を生ぜしめる工程とを含み、
前記回転磁界発生コイルによる前記回転運動と、前記軸方向移動磁界発生コイルによる前記軸方向移動とは、互いに異なる磁気回路を通じて生ぜしめることを特徴とする、電磁撹拌方法。
【請求項7】
前記回転磁界発生コイルと前記軸方向移動磁界発生コイルとは、それぞれ独立に制御することを特徴とする、請求項6に記載の電磁撹拌方法。
【請求項8】
前記回転磁界発生コイルは、前記容器の前記外周面に沿って設けられた複数のコイルからなることを特徴とする、請求項6又は7に記載の電磁攪拌方法。
【請求項9】
前記軸方向移動磁界発生コイルは、前記容器の外周面を周回するとともに、前記容器の前記軸方向に沿って設けられた複数のコイルからなることを特徴とする、請求項6~8のいずれか一に記載の電磁攪拌方法。
【請求項10】
前記回転磁界発生コイルによる前記回転運動と、前記軸方向移動磁界発生コイルによる前記軸方向運動との重畳によって、前記容器の外周部において前記融体に対して下降流を生じさせ、前記容器の中央部において上昇流を生じさせることにより、前記融体の液面を平坦に保持するようにしたことを特徴とする、請求項6~9のいずれか一に記載の電磁撹拌方法。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、非接触で融体を強力且つ均一に撹拌することができるとともに、前記融体の表面の変形を抑制することのできる電磁撹拌装置及び電磁撹拌方法に関し、特に、(1)合金製造(特に密度が大きく異なる合金成分を均一に混合する場合)、(2)金属基粒子分散複合材料製造、(3)金属中介在物の徹底的分離による超清浄金属素材製造、(4)高精錬機能による高純度金属素材製造、などの金属製造分野において使用することのできる電磁撹拌装置及び電磁撹拌方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の金属融体の非接触攪拌を実施する装置は、(1)固定磁界式誘導電気炉、(2)回転(円周)方向移動磁界による電磁攪拌装置、(3)軸方向移動磁界による電磁攪拌装置、(4)永久磁石の回転による攪拌装置の4つに分類できる。
【0003】
(1)は金属の加熱・溶解と攪拌を目的とするが、金属融体の上下に2つの旋回流が形成され、融体全体に亘る攪拌ができないという問題がある。(2)は連続鋳造における鋳片未凝固部の電磁攪拌等に利用されているが、容器内の金属融体の攪拌に適用すると、液面が回転によって大変形するために大きな電力を投入できないという欠点がある。また回転運動のみでは融体が剛体回転に近い挙動をするため、融体の混合が十分ではない。これらの問題は邪魔板の設置によって回避し得るが、邪魔板の溶損が新たな問題となる。
【0004】
(3)はASEA-SKF炉の攪拌方法を利用したものであるが、精錬材としてのスラグが偏って、湯面が露出するという問題がある。また、規模が大きいため、汎用性に劣るという問題もある。(4)は、近年フランスのVives教授によって提案された攪拌法であり、永久磁石を螺旋状に配置した回転筒を容器周囲で回転させ、融体の回転方向と軸方向に同時に駆動力を発生させることによって、液面の変形を抑制しつつ大きな攪拌を得ることをねらっている。しかしながら、本発明による実験の結果、融体の回転運動に比して軸方向の運動には大きな抵抗があり、十分な効果は得られないことが判明している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、融体を非接触で、その全体に亘って均一かつ強力に撹拌することのできる、新規な電磁撹拌装置及び電磁撹拌方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成すべく、本発明は、
所定の容器と、
前記容器の外周面に沿って設けられた回転磁界発生コイルと、
前記容器の前記外周面において、前記容器の軸方向に沿って設けられた軸方向移動磁界発生コイルとを具え、
前記回転磁界発生コイルと前記軸方向磁界発生コイルとは互いに異なる磁気回路を構成するとともに、前記容器内の流体に対してそれぞれ回転運動及び軸方向運動を生ぜしめることを特徴とする、電磁撹拌装置に関する。
【0007】
また、本発明は、
所定の容器内に所定の融体を容れる工程と、
前記容器の外周面に沿って設けられた回転磁界発生コイルによって、前記融体に回転運動を生ぜしめる工程と、
前記容器の前記外周面において、前記容器の軸方向に沿って設けられた軸方向移動磁界発生コイルによって、前記融体に軸方向運動を生ぜしめる工程とを含み、
前記回転磁界発生コイルによる前記回転運動と、前記軸方向移動磁界発生コイルによる前記軸方向移動とは、互いに異なる磁気回路を通じて生ぜしめることを特徴とする、電磁撹拌方法に関する。
【0008】
本発明の磁気撹拌装置によれば、融体を容れるべき容器の外周面に沿って、回転磁界発生コイルを設けるとともに、前記容器の外周面において、前記容器の軸方向に沿って設けられた軸方向移動磁界発生コイルを設けている。したがって、前記容器内に容れられた前記融体には、本発明の電磁撹拌方法に基づき、前記回転磁界発生コイルによって回転運動が生ぜしめられるとともに、前記軸方向移動磁界発生コイルによって、軸方向運動が生ぜしめられる。この結果、前記融体中には、前記回転運動と前記軸方向運動とが重畳した強力な流速運動が生じ、前記融体は強力かつ均一に撹拌される。
【0009】
また、上述したような回転運動と軸方向運動とが重畳した流速運動が生じた状態においては、容器の外周部において融体に対して下降流が生じ、前記容器の中央部において前記融体に対して上昇流が生じる。この結果、前記融体の液面を平坦に保持することができ、前記回転磁界発生コイル及び前記軸方向移動磁界発生コイルに対して大電流を投入して、前記融体に対して大きな流速運動を生ぜしめることができる。また、前記融体が前記容器から溢れ出すのを防止することもできる。
【0010】
なお、本発明の好ましい態様においては、前記回転磁界発生コイル及び前記軸方向移動磁界発生コイルを独立に制御する。これによって、前記融体に対して回転運動及び軸方向運動を独立に制御して印加することができ、前記融体の撹拌の程度を自由に設定することができる。したがって、前記容器の軸方向におけるリニア撹拌から回転撹拌まで、撹拌モードを自由に変化させることができる。さらに、このような独自の制御によれば、前記融体の、前記容器内の外周部及び中央部において下降流及び上昇流を簡易に生成させることができ、前記融体の液面を平坦に維持することができる。
【0011】
また、前記回転磁界発生コイル及び前記軸方向移動磁界発生コイルは、前記容器の前記外周面において、前記容器内に容れられた融体を覆うようにして設けることが好ましい。これにより、前記融体の全体に亘って、より強い流速運動を生ぜしめることができ、前記融体の全体をより均一かつ強力に撹拌することができる。
【0012】
本発明は、主として上述したような金属製造分野において用いることができる。特に、融体中に大きな速度勾配を形成することができるため、前記融体中に介在物粒子の凝集及び肥大化を促進することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を発明の実施の形態に則して詳細に説明する。図1は、本発明の電磁撹拌装置の一例を示す概略図である。図1に示す電磁撹拌装置は、円筒形の容器1と、この容器1の外周面に沿って設けられた回転磁界発生コイル(以降、「Rコイル」と略す場合がある)2と、容器1の外周面において、軸方向に沿って設けられた軸方向移動磁界発生コイル(以降、「Lコイル」と略す場合がある)3とを具えている。Rコイル2によって、容器1内に容れられた融体に対して回転運動が生ぜしめられ、Lコイル3によって、前記融体に対して軸方向運動が生ぜしめられる。
【0014】
容器1には、例えば、内径55mm、高さ150mmのプラスチックなどからなる金属製容器を用いる。Rコイル2には、例えば、2極式の矩形状のコイルピースを用いる。Lコイル3には、例えば、円形コイルピースを用いる。
【0015】
これらのコイルは、図示しない冷却用オイルを満たした環状容器内に設置し、通電による過熱を防止する。Rコイル2には50Hzの3相交流電源から電圧調整器を経て通電し、Lコイル3には周波数可変のインバータを経て任意周波数の3相交流を通電する。
【0016】
なお、Rコイル2及びLコイル3の数は特に限定されず、容器1内に容れて撹拌すべき融体の種類及び量、並びに撹拌のモード及び強度などに応じて任意に設定する。図1においては、Rコイル2及びLコイル3の数は、それぞれ6個に設定している。また、容器1内には融体4が容れられており、Rコイル2及びLコイル3は、容器1の外周面において、融体4を覆うようにして設けられている。
【0017】
図2は、図1に示す容器1内に溶融Gaを高さ100mmまで満たし、前記溶融Ga液面の半径方向の高さ分布を深針法で測定した結果をグラフ(a)として示した。また、図2には、Rコイルのみに通電して前記溶融Gaに対して回転運動のみを生ぜしめた場合、及びLコイルのみに通電して前記溶融Gaに対して軸方向運動のみを生ぜしめた場合における半径方向の高さ分布を、それぞれグラフ(b)及び(c)として示した。
【0018】
なお、図2の横軸は、数値“0”が容器1内の半径方向の中心を示す。また、予備実験により軸方向移動磁界の周波数は、本実験条件では1300Hzが最適であることを確認した。
【0019】
溶融Gaに対して回転運動及び軸方向運動を生ぜしめた場合においては、図2のグラフ(a)から明らかなように、液面はほぼ平坦であるが、溶融Gaに対して回転運動のみを生ぜしめた場合は、グラフ(C)から明らかなように、その液面は容器1の中央部において大きく凹むことが判明した。また、溶融Gaに対して軸方向運動のみを生ぜしめた場合は、グラフ(b)から明らかなように、その液面は中央部において盛り上がっていることが分かる。
【0020】
図3~図5は、上述した現象を模式的に示す図である。図3は、本発明に従って融体に対して回転運動及び軸方向運動を生ぜしめた場合である。この場合においては、図3から明らかなように、容器の外周部において融体に対して下降流が生じ、この下降流は前記容器の底部において反転して上昇流となり、前記融体の中央部の液面を押し上げる。この結果、前記融体の液面は、容器の半径方向に亘ってほぼ均一となる。
【0021】
図4は、融体に対して回転運動のみを生ぜしめた場合である。この場合においては、前記回転運動に起因した渦が発生するために、図4に示すように、前記融体の液面は、容器の中央部において凹むようになるものである。図5は、融体に対して軸方向運動のみを生ぜしめた場合である。この場合においては、容器の中央部において融体に上昇流が発生するために、その液面は容器の中央部において盛り上がるようになるものである。
【0022】
図6は、図1に示す電磁撹拌装置を用い、融体に対して回転運動及び軸方向運動を生ぜしめた場合における、前記回転運動の状態をモニタリングした結果を示すグラフである。図6においては、図2に示すグラフを得た場合と同様に、溶融Gaを高さ100mmまで容れ、この溶融Ga中に平羽根の回転翼を配置し、回転運動を生ぜしめるRコイル2に対する印加電流値と、前記溶融Gaの回転運動に基づく前記回転翼の回転数との関係から、前記溶融Gaの回転状態をモニタリングした。
【0023】
図6における黒プロットのグラフから明らかなように、前記溶融Gaに対して回転運動のみを生ぜしめた場合は、Rコイル2に印加する電流値と、前記回転翼の回転数とはほぼ正比例する。これに対して、Lコイル3に対して所定の電流を流し、前記溶融Gaに対して軸方向運動を生ぜしめた場合は、上方向及び下方向の軸方向運動いずれにおいても、Rコイル2に対する同一の印加電流値に対して、前記回転翼の回転数、すなわち前記溶融Gaの回転運動は若干低下するものの、前記電流値に対してほぼ正比例する結果が得られた。
【0024】
すなわち、図6に示す結果によれば、回転運動に対して軸方向運動を加えた場合においても、回転運動を損なうことなく、両者を重畳させて融体の強力かつ均一な撹拌を行なえることが分かる。
【0025】
以上、発明の実施の形態に則して本発明を説明してきたが、本発明の内容は上記に限定されるものではなく、本発明の範疇を逸脱しない限りにおいて、あらゆる変形や変更が可能である。
【0026】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、融体を容れるべき容器の外周面に沿って、回転磁界発生コイルを設けるとともに、前記容器の外周面において、前記容器の軸方向に沿って設けられた軸方向移動磁界発生コイルを設け、前記融体に対して、前記回転磁界発生コイルによって回転運動を生ぜしめ、前記軸方向移動磁界発生コイルによって軸方向運動を生ぜしめるようにしている。この結果、前記融体中には、前記回転運動と前記軸方向運動とが重畳した強力な流速運動が生じ、前記融体は強力かつ均一に撹拌される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、本発明の電磁撹拌装置の一例を示す概略図である。
【図2】 溶融Ga液面の半径方向の高さ分布を深針法で測定した結果を示すグラフである。
【図3】 回転運動及び軸方向運動による融体液面の変化を概念的に示す図である。
【図4】 回転運動のみによる融体液面の変化を概念的に示す図である。
【図5】 軸方向運動による融体液面の変化を概念的に示す図である。
【図6】 融体に対して回転運動及び軸方向運動を生ぜしめた場合における、前記回転運動の状態をモニタリングした結果を示すグラフである。
【符号の説明】
1 容器
2 回転磁界発生コイル
3 軸方向移動磁界発生コイル
4 融体
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5