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明細書 :閃亜鉛鉱型CrSbの製造方法、及び多層膜構造

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3849015号 (P3849015)
公開番号 特開2003-089600 (P2003-089600A)
登録日 平成18年9月8日(2006.9.8)
発行日 平成18年11月22日(2006.11.22)
公開日 平成15年3月28日(2003.3.28)
発明の名称または考案の名称 閃亜鉛鉱型CrSbの製造方法、及び多層膜構造
国際特許分類 C30B  29/52        (2006.01)
C30B  23/08        (2006.01)
H01F  10/12        (2006.01)
H01F  41/20        (2006.01)
H01L  21/363       (2006.01)
FI C30B 29/52
C30B 23/08 M
H01F 10/12
H01F 41/20
H01L 21/363
請求項の数または発明の数 16
全頁数 8
出願番号 特願2002-181035 (P2002-181035)
出願日 平成14年6月21日(2002.6.21)
優先権出願番号 2001189191
優先日 平成13年6月22日(2001.6.22)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成14年6月21日(2002.6.21)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
発明者または考案者 【氏名】大野 英男
【氏名】松倉 文▲礼▼
個別代理人の代理人 【識別番号】100072051、【弁理士】、【氏名又は名称】杉村 興作
【識別番号】100107227、【弁理士】、【氏名又は名称】藤谷 史朗
【識別番号】100114292、【弁理士】、【氏名又は名称】来間 清志
審査官 【審査官】田中 則充
参考文献・文献 特開平08-087722(JP,A)
調査した分野 C30B 29/52
C30B 23/08
H01F 10/12
H01F 41/20
H01L 21/363
特許請求の範囲 【請求項1】
所定の基材上に、III-V族化合物半導体下地層を形成した後 、このIII-V族化合物半導体下地層上に、MBE法によりCrSbをエピタキシャル成長させて、閃亜鉛鉱型の結晶構造を有するCrSbを作製することを特徴とする、閃亜鉛鉱型CrSbの製造方法。
【請求項2】
前記III-V族化合物半導体下地層の厚さが、2~1000nmであることを特徴とする、請求項に記載の閃亜鉛鉱型CrSbの製造方法。
【請求項3】
前記III-V族化合物半導体下地層は、AlXGa1-XAs(0≦X≦1)からなることを特徴とする、請求項1又は2に記載の閃亜鉛鉱型CrSbの製造方法。
【請求項4】
前記III-V族化合物半導体下地層は、AlXGa1-XSb(0≦X≦1)からなることを特徴とする、請求項1又は2に記載の閃亜鉛鉱型CrSbの製造方法。
【請求項5】
前記CrSbのエピタキシャル成長温度が、250℃~400℃であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一に記載の閃亜鉛鉱型CrSbの製造方法。
【請求項6】
前記CrSbのエピタキシャル成長速度が、3~50nm/分であることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一に記載の閃亜鉛鉱型CrSbの製造方法。
【請求項7】
前記閃亜鉛鉱型の結晶構造を有するCrSbの強磁性遷移温度が400K以上であることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一に記載の閃亜鉛鉱型CrSbの製造方法。
【請求項8】
前記基材と前記III-V族化合物半導体下地層との間に、III-V族化合物半導体バッファ層を設けることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一に記載の閃亜鉛鉱型CrSbの製造方法。
【請求項9】
前記III-V族化合物半導体バッファ層は、2以上のIII-V族化合物半導体層から構成されていることを特徴とする、請求項に記載の閃亜鉛鉱型CrSbの製造方法。
【請求項10】
所定の基材と、この基材上に形成されたIII-V族化合物半導体下地層と、この下地層上に形成された閃亜鉛鉱型のCrSb層とを具えることを特徴とする、多層膜構造。
【請求項11】
記III-V族化合物半導体下地層の厚さが、2~1000nmであることを特徴とする、請求項10に記載の多層膜構造。
【請求項12】
前記III-V族化合物半導体下地層は、AlXGa1-XAs(0≦X≦1)からなることを特徴とする、請求項10または11に記載の多層膜構造。
【請求項13】
前記III-V族化合物半導体下地層は、AlXGa1-XSb(0≦X≦1)からなることを特徴とする、請求項10または11に記載の多層膜構造。
【請求項14】
前記閃亜鉛鉱型のCrSb層をなすCrSbの強磁性遷移温度が400K以上であることを特徴とする、請求項10~13のいずれか一に記載の多層膜構造。
【請求項15】
前記基材と前記III-V族化合物半導体下地層との間に、III-V族化合物半導体バッファ層を有することを特徴とする、請求項10~14のいずれか一に記載の多層膜構造。
【請求項16】
前記III-V族化合物半導体バッファ層は、2以上のIII-V族化合物半導体層から構成されていることを特徴とする、請求項15に記載の多層膜構造。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、閃亜鉛鉱型CrSbの製造方法、並びに前記閃亜鉛鉱型CrSbを強磁性層として含む多層膜構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
分子線エピタキシー(MBE法)などの結晶成長技術の発展により、半導体中への異種金属元素を高濃度でドーピングすることが可能となった。特に磁性原子を半導体に導入することにより、磁気的機能を有する半導体の開発が盛んに研究されつつある。
また、半導体上に強磁性体薄膜をエピタキシャル成長させることができれば、従来の半導体エレクトロニクス技術と強磁性体の有する性質とを組み合わせて、従来にない優れた性能を有する複合デバイスが期待できる。
【0003】
CrSbは、上述した新規なデバイスの強磁性体部分を構成する材料として期待されている。しかしながら、通常のエピタキシャル成長技術を用いた場合、NiAs型の結晶構造を有するCrSbしか得ることができなかった。このようなNiAs型結晶構造のCrSbは、室温において反強磁性の性質を呈する。また、
CrSb/Sb超格子などを作製して、CrSb中に強磁性的な性質を発現させる試みもなされているが、室温において強磁性的な性質を発現させるには至っていない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、室温で強磁性を示す閃亜鉛鉱型CrSbの有利な製造方法を、この閃亜鉛鉱型CrSbを強磁性層として含む多層膜構造と共に提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
発明は、所定の基材上に、III-V族化合物半導体下地層を形成し た後、このIII-V族化合物半導体下地層上に、MBE法によりCrSbをエ ピタキシャル成長させて、閃亜鉛鉱型の結晶構造を有するCrSbを作製することを特徴とする、閃亜鉛鉱型CrSbの製造方法に関する。
【0007】
本発明者らは、室温で強磁性を示すCrSbを得るべく鋭意検討を実施した。その結果、上述した本発明の製造方法に従って、所定の基材上にIII-V族化合物半導体下地層を形成した後、この下地層上にCrSbをMBE法により所定の条件でエピタキシャル成長させることによって、閃亜鉛鉱型のCrSbを得た。そして、このようにして作製した閃亜鉛鉱型のCrSbは、室温より十分に高い強磁性遷移温度を示し、その結果、室温において強磁性を示すことを見出したものである。
【0008】
すなわち、上述した本発明の製造方法に従ってCrSbを作製することにより、目的とする本発明の、室温で強磁性を示す閃亜鉛鉱型のCrSbが得られるものである。したがって、このような閃亜鉛鉱型のCrSbを上述した複合デバイスにおける強磁性体部分として用いることにより、優れた複合デバイスの実現が期待できる。
【0009】
また、本発明の多層膜構造は、上述した本発明の製造方法に従って、上述した本発明の閃亜鉛鉱型のCrSbを得る際の結果物としても得られるものであり、所定の基材と、この基材上に形成されたIII-V族化合物半導体下地層と、この下地層上に形成された閃亜鉛鉱型のCrSb層とを具えることを特徴とする。
【0010】
このような多層膜構造は、下地層としてのIII-V族化合物半導体層上に強磁性層としてのCrSb層が形成されており、結果的に半導体層上に強磁性層が形成された構成を呈している。したがって、上述した複合デバイスの構成要素として好適に用いることができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を発明の実施の形態に基づいて詳細に説明する。
上述したように、本発明の閃亜鉛鉱型のCrSbは、所定の基材上にIII-V族化合物半導体下地層を形成した後、この下地層上にMBE法を用い、エピタキシャル成長させることによって作製する。
【0012】
前記III-V族化合物半導体下地層の厚さは、この下地層上にMBE法によって閃亜鉛鉱型のCrSbを作製することができれば特には限定されない。しかしながら、好ましくは2~1000nmであり、さらに好ましくは40~400nmである。
【0013】
また、前記III-V族化合物半導体下地層は、公知の2元系、3元系、あるいは4元系のIII-V族化合物半導体から構成することができる。そして、特には、AlGa1-XAs(0≦X≦1)、及びAlGa1-XSb(0≦X≦1)なる組成式で示される材料系から構成することが好ましい。これによって、前記下地層上に形成された前記閃亜鉛鉱型のCrSbは室温においてより大きな磁化を示すようになり、より良好な強磁性特性を呈するようになる。
上述したIII-V族化合物半導体下地層は、前記所定の基材上において、MBE法など公知の成膜手法を用いて形成する。
【0014】
また、前記III-V族化合物半導体下地層上に、MBE法によりCrSbを作製する際のエピタキシャル成長温度は、好ましくは200~600℃であり、さらには250~450℃である。
【0015】
また、エピタキシャル成長速度は、好ましくは3~50nm/分であり、さらに好ましくは8~20nm/分である。
【0016】
以上のような工程を経ることにより、前記III-V族化合物半導体下地層上に厚さ0.3~300nm、強磁性遷移温度が400K以上の、室温で強磁性を示す閃亜鉛鉱型のCrSbを作製することができる。
【0017】
なお、前記所定の基材と前記III-V族化合物半導体下地層との間に、III-V族化合物半導体バッファ層を設けることが好ましい。これによって、前記所定の基材と前記III-V族化合物半導体下地層との間の格子定数差などを緩和して、前記III-V族化合物半導体下地層の結晶性をより向上させることができ、その結果として、目的とするCrSbの結晶性を向上させて、より大きな強磁性的特徴を引き出すことができる。
【0018】
具体的には、前記III-V族化合物半導体下地層をAlGa1-XAs(0≦X≦1)から構成する場合は、同様の組成のIII-V族化合物半導体からなるIII-V族化合物半導体バッファ層を設けることが好ましい。また、前記III-V族化合物半導体下地層をAlGa1-XSb(0≦X≦1)から構成する場合においても、同様の組成のIII-V族化合物半導体からなるIII-V族化合物半導体バッファ層を設けることが好ましい。
【0019】
また、前記III-V族化合物半導体バッファ層は、2以上のIII-V族化合物半導体層から構成することもできる。これによって、前記基材と前記III-V族化合物半導体下地層との格子定数差をより効果的に緩和することができ、前記III-V族化合物半導体下地層、さらにはCrSbの結晶性をさらに向上させることができる。したがって、CrSbの強磁性特性をさらに高めることができる。
【0020】
具体的には、前記III-V族化合物半導体下地層をAlGa1-XAs(0≦X≦1)又はAlGa1-XSb(0≦X≦1)から構成する場合において、前記III-V族化合物半導体バッファ層をGaAs層又はAlSb層などから構成する。
なお、前記III-V族化合物半導体バッファ層の厚さは、上記基材の種類、並びに上記III-V族化合物半導体下地層の種類及び厚さなどに応じて適宜に設定する。
【0021】
また、前記III-V族化合物半導体バッファ層は、前述した所定の基材上において、例えばMBE法などの公知の成膜手法を用いて形成する。
【0022】
また、本発明において用いる基材の種類は特に限定されないが、上述したIII-V族化合物半導体下地層及びIII-V族化合物半導体バッファ層をエピタキシャル成長させる観点から、これらの層と同様のIII-V族化合物半導体からなる基材を用いることが好ましい。
【0023】
【実施例】
本発明の具体例を以下の実施例において示す。
(実験例1)
本実験例においては、本発明の製造方法に従って、閃亜鉛鉱型CrSbを含む図1に示す多層膜構造を作製した。
基板として(001)GaAs基板を用い、これをMBE装置内に設置した。その後、前記GaAs基板を580℃に加熱して、前記GaAs基板表面に存在する図示しない酸化膜を除去した。次いで、前記GaAs基板を560℃にし、GaビームとSbビームとを前記GaAs基板上に同時に照射して、前記GaAs基板上にGaAs下地層を厚さ500nmに形成した。
【0024】
次いで、前記GaAs基板温度を降下させると同時に、Sbビームを連続して照射し、前記GaAs基板温度が400℃になって時点で前記Sbビームの照射を停止した。次いで、前記GaAs基板温度が250℃になった時点で、前記GaAs下地層上に、CrビームとSbビームとを同時に照射して前記GaAs下地層上にCrSb層を厚さ0.6nmに形成した。
【0025】
なお、このときのCrSb層の形成速度は6nm/分であった。また、このようにして得たCrSb層の結晶性を高速電子線回折法(RHEED)によって調べたところ、閃亜鉛鉱型のRHEEDパターンが得られていることが判明した。
【0026】
(実験例2)
本実験例においては、本発明の製造方法に従って、閃亜鉛鉱型CrSbを含む図2に示す多層膜構造を作製した。
実験例1と同様にして、(001)GaAs基板を用い、これをMBE装置内に設置した。その後、実験例1と同様に、前記GaAs基板表面に存在する図示しない酸化膜を除去した後、前記GaAs基板を530℃に設定して、MBE法により前記GaAs基板上にGaAsバッファ層を厚さ100nmに形成した。次いで、前記GaAsバッファ層上にGaビームとSbビームとを同時に供給して、GaSb下地層を厚さ400nmに形成した。
【0027】
その後、前記GaSb下地層上に、実験例1と同様にしてCrSb層を厚さ0.6nmに形成した。このようにして得たCrSb層の結晶性を高速電子線回折法(RHEED)によって調べたところ、閃亜鉛鉱型のRHEEDパターンが得られていることが判明した。
【0028】
(実験例3)
本実験例においては、本発明の製造方法に従って、閃亜鉛鉱型CrSbを含む図3に示す多層膜構造を作製した。
実験例1と同様にして、(001)GaAs基板を用い、これをMBE装置内に設置した。その後、実験例1と同様に、前記GaAs基板表面に存在する図示しない酸化膜を除去した後、前記GaAs基板を530℃に設定して、MBE法により前記GaAs基板上にGaAsバッファ層を厚さ100nmに形成した。次いで、前記GaAsバッファ層上に、Alビーム、Gaビーム、及びSbビームを同時に供給して、AlGaSb下地層を厚さ400nmに形成した。
【0029】
その後、前記GaSb下地層上に、実験例1と同様にしてCrSb層を厚さ0.3nmに形成した。このようにして得たCrSb層の結晶性を高速電子線回折法(RHEED)によって調べたところ、閃亜鉛鉱型のRHEEDパターンが得られていることが判明した。
【0030】
図4は、上記実験例1~3で得られたCrSb層の室温での磁化特性を示すヒステリシスループである。図4から明らかなように、本発明の製造方法に従って得たCrSbは、室温において強磁性的性質を示すことが分かる。また、GaAs下地層上に形成したCrSb層と比べて、GaSb下地層及びAlGaSb下地層上に形成したCrSb層は、この順に磁化が大きくなっており、より良好な強磁性特性を示すことが分かる。
【0031】
以上、具体例を挙げながら発明の実施の形態に基づいて本発明を詳細に説明してきたが、本発明は上記内容に限定されるものではなく、本発明の範疇を逸脱しない限りにおいてあらゆる変形や変更が可能である。
【0032】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、室温において強磁性を示す閃亜鉛鉱型の結晶構造を有するCrSb、並びにこのCrSbを製造する方法、及びこのCrSbを強磁性層として含む多層膜構造を提供することができる。したがって、半導体と強磁性体とを積層させて組み合わせた複合デバイスに実現をより確実なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の閃亜鉛鉱型CrSb層を含む多層膜構造の一例を示す構成図である。
【図2】 本発明の閃亜鉛鉱型CrSb層を含む多層膜構造の他の例を示す構成図である。
【図3】 本発明の閃亜鉛鉱型CrSb層を含む多層膜構造のその他の例を示す構成図である。
【図4】 本発明の閃亜鉛鉱型CrSb層の磁気特性を示す図である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3