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明細書 :光導波装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3668779号 (P3668779)
公開番号 特開2004-109965 (P2004-109965A)
登録日 平成17年4月22日(2005.4.22)
発行日 平成17年7月6日(2005.7.6)
公開日 平成16年4月8日(2004.4.8)
発明の名称または考案の名称 光導波装置
国際特許分類 G02B  6/00      
G01N 13/10      
G01N 13/14      
G11B  7/135     
H01L 21/027     
FI G02B 6/00 301
G01N 13/10 G
G01N 13/14 A
G11B 7/135 A
H01L 21/30 502D
請求項の数または発明の数 9
全頁数 29
出願番号 特願2003-018997 (P2003-018997)
出願日 平成15年1月28日(2003.1.28)
優先権出願番号 2002217084
優先日 平成14年7月25日(2002.7.25)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成15年1月28日(2003.1.28)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304019399
【氏名又は名称】国立大学法人岐阜大学
発明者または考案者 【氏名】田中 嘉津夫
【氏名】田中 雅宏
個別代理人の代理人 【識別番号】100068755、【弁理士】、【氏名又は名称】恩田 博宣
【識別番号】100105957、【弁理士】、【氏名又は名称】恩田 誠
審査官 【審査官】柏崎 康司
参考文献・文献 特開2003-006912(JP,A)
特開2002-365195(JP,A)
国際公開第01/048521(WO,A1)
国際公開第03/001258(WO,A1)
Optics letters,1999年 8月 1日,24/5,1011-1013
K.Tanaka, M.Tanaka,Simulations of nanometric optical circuits based on surface plasmon plariton gap waveguide,Appl.Phys.Lett.,2003年,82,1158-1160
K.Tanaka, M.Tanaka,Simulations of nanometric optical circuits: Open-type surface plasmon polariton gap waveguide,Jpn.J.Appl.Phys.,2003年,42,L585-L588
K.Tanaka, M.Tanaka,Simulation of aperture in the thick metallic screen that gives hygh intensity and small sopt size,Journal of Microscopy,2003年 6月,210/3,294-300
U.C.Fischer, A.Naber,Highly confined optical near-field at a single edge of a triangular aperture in a metal film,The 8th international conference on Near-field Nano Optics & Related Techniques(NFO-8),2004年 9月 5日,MoP5,102
Bing Wang & Guo Ping Wang,Surface plasmon polariton propagation in nanoscale metal gap waveguides,Optics Letters,2004年 9月 1日,29/17,1992-1994
K.Tanaka, M.Tanaka,Analysis and mumerical computation of diffraction of an optical field by a subwavelength-size apertu,Applied Optics,2004年 3月10日,43/8,1734-1746
K.Tanaka, M.Tanaka,Simulation of practical nanometric optical circuits based on surface plasmon polariton gap waveguide,2005年 1月10日,13/1,256-266
調査した分野 G02B 6/00
特許請求の範囲 【請求項1】
所定の光を伝搬可能な光導波路を有する光導波装置において、前記光導波路は、その光伝搬方向に沿う少なくとも一部での前記光伝搬方向に交差する断面の形状が、当該光導波路を介して伝搬される光の偏光方向を幅方向とした場合に、当該幅方向における内面幅寸法が前記伝搬される光の波長の1/2よりも小さな値の幅狭部を有する形状とされ、且つ、その内面全体のうち少なくとも前記幅狭部の幅方向で対向する内面部分がプラズモン活性媒質により構成されたことを特徴とする光導波装置。
【請求項2】
所定の光を伝搬可能な光導波路を有する光導波装置において、前記光導波路は、その光伝搬方向に沿う少なくとも一部での前記光伝搬方向に交差する断面の形状が、当該光導波路を介して伝搬される光の偏光方向を幅方向とした場合に、当該幅方向における内面幅寸法が前記伝搬される光の波長の1/2よりも小さな値の幅狭部と当該幅狭部よりも前記内面幅寸法が大きな値の幅広部とが前記幅方向と交差する方向に連続して繋がった形状とされ、且つ、その内面全体のうち少なくとも前記幅狭部の幅方向で対向する内面部分がプラズモン活性媒質により構成されたことを特徴とする光導波装置。
【請求項3】
前記光導波路は、前記幅狭部を有する部分での前記断面の形状において、前記幅方向と直交する方向での当該光導波路の形状寸法が、前記幅狭部で発生する表面プラズモンの位相速度を前記伝搬される光の真空中の速度で除した値に、当該伝搬される光の波長の1/2を乗じて得られる値よりも大きな値に設定されている請求項1又は請求項2に記載の光導波装置。
【請求項4】
前記プラズモン活性媒質は、比誘電率の実数部が負の値の誘電体媒質である請求項1~請求項3のうち何れか一項に記載の光導波装置。
【請求項5】
前記光導波路は、前記幅狭部を複数有しており、当該幅狭部を有する部分での前記断面の形状は、各幅狭部と幅広部が前記幅方向と交差する方向へ交互に連続して繋がった形状とされている請求項2~請求項4のうち何れか一項に記載の光導波装置。
【請求項6】
前記光導波路は、前記伝搬される光を導出可能に形成された端部開口の開口形状が前記幅狭部を有する形状とされている請求項1~請求項5のうち何れか一項に記載の光導波装置。
【請求項7】
前記光導波路は、当該光導波路の全体に亘り、光伝搬方向に交差する断面の形状が、前記端部開口の開口形状と同一となるように形成されている請求項6に記載の光導波装置。
【請求項8】
前記光導波路は、当該光導波路を有する装置本体から略錐状又は細柱状をなすように設けられた凸部の先端に、前記端部開口における幅狭部の少なくとも一部が位置するように設けられている請求項6又は請求項7に記載の光導波装置。
【請求項9】
前記光導波路は、当該光導波路を有する装置本体に複数設けられており、各光導波路は、端部開口における幅狭部がそれぞれ直線状をなし、且つ各幅狭部が互いに平行な配置となるように設けられている請求項7に記載の光導波装置。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば走査近接場光学顕微鏡や光情報記録装置等において使用された場合に好適な光導波装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、光の波長(可視光:0.4~0.8ミクロン)よりも微小な領域における光学的処理を可能にする技術として、近接場光(光の波長よりも短い距離の領域にのみ届く光)を利用した技術が注目を浴びている。例えば、走査近接場光学顕微鏡の分野では、先端に光の波長よりも小さな微小開口が形成された光ファイバ等からなる光プローブが光導波装置として用いられている。そして、試料表面の微小な領域を観察する際には、前記光プローブの微小開口が観察対象たる前記微小な領域に近接配置され、微小開口の表面近傍に滲み出す光の場(近接場)を試料表面に接触させるようにしている。そして、この近接場と結合した試料表面の前記微小な領域のみが前記近接場光にて照射されるようにし、その照射による試料からの反射光、散乱光、又は透過光を検出して前記微小な領域を局所的に観察評価するようにしている。従って、このような光導波装置の一種である光プローブに関しては、例えばCD等の光記録媒体における記録ビットの微小化要請や、サブミクロンの微細加工を行う半導体製造プロセスの評価などに寄与するため、従来から、種々の光プローブが光導波装置として提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、近接場光の光強度は、光プローブにおける先端開口の大きさが光の波長よりも小さな微小開口であるため、例えばイルミネーションモードの場合には、その微小開口から滲み出す近接場光の光強度は、光プローブに導入された光強度の約1/1000程度という非常に微弱なものとなってしまう。従って、例えば光情報記録装置等における高速書き込みや読み出しには、光量不足となって支障を来すことになるため、実用面では前記微小開口から滲み出す近接場光の光強度を増強させる必要がある。しかし、近接場光の光強度を増強するために、光源を強くした場合にはコストの増大につながる一方、先端開口を大きくした場合には光の広がりが増大して解像度を低下させることになってしまうため、いずれの場合も実用面での支障を良好に回避できるものではなかった。
【0004】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、その目的は、光導波路を介して伝搬される光の光強度を、その光の広がりの増大を招くことなく、低コストで増強することができる光導波装置を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本願請求項1に記載の発明は、所定の光を伝搬可能な光導波路を有する光導波装置において、前記光導波路は、その光伝搬方向に沿う少なくとも一部での前記光伝搬方向に交差する断面の形状が、当該光導波路を介して伝搬される光の偏光方向を幅方向とした場合に、当該幅方向における内面幅寸法が前記伝搬される光の波長の1/2よりも小さな値の幅狭部を有する形状とされ、且つ、その内面全体のうち少なくとも前記幅狭部の幅方向で対向する内面部分がプラズモン活性媒質により構成されたことを要旨とした。
【0006】
また、本願請求項2に記載の発明は、所定の光を伝搬可能な光導波路を有する光導波装置において、前記光導波路は、その光伝搬方向に沿う少なくとも一部での前記光伝搬方向に交差する断面の形状が、当該光導波路を介して伝搬される光の偏光方向を幅方向とした場合に、当該幅方向における内面幅寸法が前記伝搬される光の波長の1/2よりも小さな値の幅狭部と当該幅狭部よりも前記内面幅寸法が大きな値の幅広部とが前記幅方向と交差する方向に連続して繋がった形状とされ、且つ、その内面全体のうち少なくとも前記幅狭部の幅方向で対向する内面部分がプラズモン活性媒質により構成されたことを要旨とした。
【0007】
また、本願請求項3に記載の発明は、前記請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記光導波路は、前記幅狭部を有する部分での前記断面の形状において、前記幅方向と直交する方向での当該光導波路の形状寸法が、前記幅狭部で発生する表面プラズモンの位相速度を前記伝搬される光の真空中の速度で除した値に、当該伝搬される光の波長の1/2を乗じて得られる値よりも大きな値に設定されていることを要旨とした。
【0008】
また、本願請求項4に記載の発明は、前記請求項1~請求項3のうち何れか一項に記載の発明において、前記プラズモン活性媒質は、比誘電率の実数部が負の値の誘電体媒質であることを要旨とした。
【0009】
また、本願請求項5に記載の発明は、前記請求項2~請求項4のうち何れか一項に記載の発明において、前記光導波路は、前記幅狭部を複数有しており、当該幅狭部を有する部分での前記断面形状は、各幅狭部と幅広部が前記幅方向と交差する方向へ交互に連続して繋がった形状とされていることを要旨とした。
【0010】
また、本願請求項6に記載の発明は、前記請求項1~請求項5のうち何れか一項に記載の発明において、前記光導波路は、前記伝搬される光を導出可能に形成された端部開口の開口形状が前記幅狭部を有する形状とされていることを要旨とした。
【0011】
また、本願請求項7に記載の発明は、前記請求項6に記載の発明において、前記光導波路は、当該光導波路の全体に亘り光伝搬方向に交差する断面の形状が、前記端部開口の開口形状と同一となるように形成されていることを要旨とした。
【0012】
また、本願請求項8に記載の発明は、前記請求項6又は請求項7に記載の発明において、前記光導波路は、当該光導波路を有する装置本体から略錐状又は細柱状をなすように設けられた凸部の先端に、前記端部開口における幅狭部の少なくとも一部が位置するように設けられていることを要旨とした。
【0013】
また、本願請求項9に記載の発明は、前記請求項7に記載の発明において、前記光導波路は、当該光導波路を有する装置本体に複数設けられており、各光導波路は、端部開口における幅狭部がそれぞれ直線状をなし、且つ各幅狭部が互いに平行な配置となるように設けられていることを要旨とした。
【0014】
【発明の実施の形態】
(第1実施形態)
以下、本発明を光導波装置の一種である光プローブに具体化した第1実施形態を図1~図8に従って説明する。
【0015】
図1に示すように、本実施形態に係る光導波装置(光プローブ)11は、矩形板状をなす金属製板体からなる装置本体12を備えている。この装置本体12は比誘電率の実数部が負の値となる誘電体媒質、即ち、負誘電体媒質(プラズモン活性媒質)により構成されている。なお、本実施形態では、伝搬される光の波長が488nmである場合を例示するものとし(以下において同じ)、その一例として、かかる場合に前記実数部の値がマイナス7.38になる銀(Ag)にて前記装置本体12を構成している。ちなみに、誘電体媒質における比誘電率とは、真空中の誘電率に対する当該誘電体媒質の誘電率の比として表される。
【0016】
また、図1及び図3(a)(b)に示すように、前記装置本体12には、その厚さ方向へ、光を伝搬するための光導波路13が貫通形成されており、その基端側開口となる裏面側開口14には、図示しない光源に接続された光ファイバFが光源からの光を光導波路13内へ入射可能に接続されている。なお、この光ファイバFは、高屈折率媒質をコアとし、低屈折率媒質をクラッドとする光閉じ込め型の導波路構造を有する公知のものであり、そのコア先端が前記光導波路13の裏面側開口14に光伝搬可能に接続されたものである。また、前記装置本体12の厚さに関しては、少なくとも光導波路13内を伝搬される光の波長の1/4程度以上あることが当該光導波路13の内表面に表面プラズモンを発生させる上では好ましい。
【0017】
一方、前記装置本体12の表面部12aには、その内面幅寸法の大きさが光の波長よりも小さな微小開口15が前記光導波路13の先端側開口(端部開口)として形成されている。そして、この微小開口15は、光導波路13を介して伝搬される光の伝搬方向(図1及び図2においてZ方向)に直交する断面の形状(微小開口15では、その開口形状)が以下に説明するような特徴的な形状とされている。
【0018】
即ち、この微小開口15は、図1及び図2に示すように、前記表面部12aのほぼ中央に位置する幅狭部16と当該幅狭部16よりも内面幅寸法の大きい2つの幅広部17とが交互に連続した開口形状に形成されている。そして、当該微小開口15において、前記幅狭部16と幅広部17は、前記光導波路13を介して伝搬される光の偏光方向(図1及び図2においてX方向)を幅方向とした場合、その幅方向と直交する方向(図1及び図2においてY方向)へ、交互に連続して繋がった形状となるように構成されている。なお、前記微小開口15の大きさは装置本体12(及びその表面部12a)の大きさとの対比において実際には極小さなものであるが、図1等においては微小開口15の特徴的な開口形状を容易に理解ならしめるため、その大きさが実際よりは誇張して図示されている。
【0019】
また、前記微小開口15は、前記幅狭部16の内面幅寸法ax(図2参照)が伝搬される光の波長(本実施形態では、488nm)よりも小さな値に設定されるものであり、本実施形態では、当該光の波長の1/2よりも小さな値(一例として、31nm)に、前記内面幅寸法axを設定している。前記内面幅寸法axに関して、このような条件を設定する理由は、光導波路13の内表面(特に、幅狭部16において幅方向で対向する内面部分18)に表面プラズモンという光波(電磁波)が発生したときに、その電界を強くすると共に、その位相速度を遅くさせて幅狭部16に光が集束するようにするためである。なお、表面プラズモンに関しては、一般に、表面プラズモンポラリトンとも呼ばれるが、本明細書中では、表面プラズモンと記載することにする。
【0020】
また、前記微小開口15は、前記幅狭部16と幅広部17が連続する方向(図1,図2のY方向)における当該微小開口15の形状寸法L(図2参照)が一例として217nmに設定されている。なお、この形状寸法Lに関しては、前記幅狭部16で発生する表面プラズモンの位相速度を前記伝搬光の真空中の速度で除した値に前記伝搬光の波長の1/2を乗じて得られる値(以下、「形状寸法計算値」という。)よりも大きな値に設定されるものである。前記形状寸法Lに関して、このような条件を設定する理由は、前記幅狭部16の内面幅寸法axを伝搬光の波長の1/2よりも小さな値に設定した場合において前記形状寸法Lが前記形状寸法計算値よりも小さいと、当該伝搬光が前記微小開口15を通過できなくなることがあるからである。なお、前記微小開口15におけるその他の内表面部位の各寸法(図2参照)に関しては、伝搬光の波長との関係において、特段の条件は設定されていない。ちなみに、本実施形態では、一例として、幅狭部16の内面長さ寸法ayを前記内面幅寸法axと同寸法の31nmに、各幅広部17の内面幅寸法bxを78nmに、各幅広部17の内面長さ寸法byを93nmに設定している。
【0021】
また、本実施形態において、前記光導波路13は、図3(a)(b)からも理解されるように、当該光導波路13の全体に亘り光伝搬方向に直交する断面の形状が前記微小開口15の開口形状と同一となるように形成されている。従って、前記光導波路13は、幅狭部16における前記内面部分18を含む光導波路13の内面全体が銀(Ag)にて構成されると共に、その内面全体に亘り前記幅狭部16が前記微小開口15から裏面側開口14まで連続形成されていることになる。
【0022】
次に、本実施形態に係る光導波装置11の作用について説明する。なお、以下の説明では、光導波装置11の光導波路13内に裏面側開口14から所定の光を入射して、先端側開口である微小開口15からスポット光を滲み出させる場合、即ち、イルミネーションモードの場合を例にして説明するものとする。また、光導波路13内に入射される所定の光については、前述したように波長が488nmで、偏光方向が図1及び図2でX方向となる直線偏光の平面波とした場合を例にして説明するものとする。
【0023】
さて、光ファイバFを介して前記所定の光が装置本体12の光導波路13内に入射されると、当該光導波路13内では次のような現象が発生する。即ち、光導波路13が貫通形成された装置本体12は、光の波長が488nmの場合に比誘電率の実数部の値がマイナス7.38の銀(Ag)により構成されていた。つまり、負誘電体媒質により構成されていた。そのため、この装置本体12は、光波領域において、導体というよりはプラズモン活性媒質として振る舞うことになる。従って、光導波路13の内表面では、表面電荷の誘起に伴い電荷の振動が起き、伝搬方向が当該内表面に沿う方向(図2のZ方向)の表面プラズモンという光波(電磁波)が発生する。
【0024】
この表面プラズモンは、前記光導波路13の内表面と当該光導波路13内に満ちている空気(誘電体)との界面S(図4参照)に垂直な方向には伝搬しない表面波である。そのため、この表面プラズモンが発生すると、光導波路13内では、主に前記界面Sに平行な(即ち、幅狭部16では図1及び図2で主にY方向成分をもつ)磁界が発生する一方、この磁界と直交するように、主に前記界面Sに垂直な(即ち、幅狭部16では図1及び図2で主にX方向成分をもつ)電界が発生する。
【0025】
ここで、一般に、負誘電体媒質における表面プラズモンの電界強度は、その表面(即ち、界面S)から離れるにつれて指数関数的に減衰するということが知られている。しかし、本実施形態の場合は、光導波路13の内表面のうち、幅狭部16では、幅方向で対向する内面部分18の内面幅寸法axが31nmという微小な間隔に設定されている。そのため、図4に示すように、幅狭部16では互いに対向する両界面Sにおいて各々発生した表面プラズモンの電界同士が結合することになる。従って、この電界同士の結合により、光導波路13内において表面プラズモンの電界強度は幅狭部16の部分で非常に強くなる。これは、当該幅狭部16の部分において、所謂、表面プラズモン増強ラマン散乱と同様の現象が起きているからと考えられる。その結果、光導波路13内において特に前記幅狭部16の部分を含む表面プラズモンの電界同士の結合が起きている部分では、当該光導波路13を介して伝搬される光の強度が増強される。なお、図4において符号eは電界の強度分布を示すものである。
【0026】
また、例えば走査近接場光学顕微鏡における解像力を高めるため、あるいは、光情報記録装置において記録密度を上げるためには、光導波路13の先端側開口である微小開口15から出る光の広がり分布の大きさを小さくすることが必要である。そこで、前記表面プラズモンの図1及び図2におけるZ方向への位相速度の大きさを光導波路13における前記幅狭部16の内面幅寸法axの大きさとの関係において検討してみると、図5に示すような結果が得られた。
【0027】
即ち、図5において、横軸は、光導波路13(及び微小開口15)における幅狭部16の内面幅寸法axの大きさを表しており、その目盛り数値はナノメータ(nm)単位である。また、縦軸は、前記幅狭部16を通過する表面プラズモンの位相速度vzの光速Cに対する速度比率(vz/C)を表しており、その目盛り数値は、伝搬光の真空中の速度(光速C)を「1」とした場合における速度比率(vz/C)の値を示している。従って、縦軸における速度比率(vz/C)の目盛り数値が小さくなればなるほど、表面プラズモンの位相速度vzが遅くなることを意味する。
【0028】
なお、図5において、各黒丸印は、伝搬光の波長が488nmの場合に比誘電率の実数部の値がマイナス7.38の銀(Ag)により光導波路13の内面全体を構成した場合(本実施形態の場合)における前記幅狭部16の内面幅寸法axと表面プラズモンの位相速度vzとの関係を示したものである。また、縦軸における一番上の目盛り数値「1」のやや下から水平方向(横軸方向)に延びた一点鎖線は、前記内面幅寸法axの数値が無限大(∞)であるとした場合における前記速度比率(vz/C)の大きさを示したものである。
【0029】
さて、この図5からも理解されるように、前記速度比率(vz/C)は、幅狭部16の内面幅寸法axが小さくなるに従い、次第にその数値が低下する傾向を示している。また、その速度比率(vz/C)の低下度合いは、内面幅寸法ax<λ/2(即ち、ax<244nm)の場合において、ax≧2λ/5(即ち、ax≧195.2nm)よりもax<2λ/5(即ち、ax<195.2nm)の方が、大きくなっている。同様に、ax≧3λ/10(即ち、ax≧146.4nm)よりもax<3λ/10(即ち、ax<146.4nm)の方が、前記速度比率(vz/C)の低下度合いは大きくなっている。
【0030】
そして特に、内面幅寸法ax<λ/5(即ち、ax<97.6nm)になると、前記速度比率(vz/C)は、一層、加速度的に低下し始める。そして、内面幅寸法ax<λ/10(即ち、ax<48.8nm)になると、更に一層、前記速度比率(vz/c)は急激に大きく低下している。なお、前記内面幅寸法axが伝搬光の波長(488nm)の1/2よりも大きくされた場合は、図5に一点鎖線で示す内面幅寸法ax=∞の場合の速度比率(vz/C)に近付いていくことになる。
【0031】
従って、このことから、光導波路13の内表面に発生した表面プラズモンは、本実施形態における幅狭部16のように、光導波路13内において、伝搬光の波長の1/2よりも小さな内面幅寸法ax(<244nm)にした部分では、その位相速度vzが大幅に遅くなることが理解される。そして、表面プラズモンのような光波は、その伝搬において位相速度vzが遅い(小さい)空間に集まる性質がある。そのため、光導波路13の幅狭部16及び幅広部17を含む内表面全域において発生した表面プラズモンは、その位相速度vzが遅く(小さく)なるように伝搬光の波長の1/2よりも小さな内面幅寸法ax(<244nm)に設定された幅狭部16に集まることになる。
【0032】
従って、光源を強くしたりする方法によらずとも、本実施形態の光導波装置11では、前記幅狭部16の部分において、表面プラズモンの電界強度が強くなると共に、その位相速度vzが遅くなって光導波路13内で発生した表面プラズモンが集まるため、光導波路13を介して伝搬される光の強度が強くなる。そして、このように光強度が増大された伝搬光が、前記微小開口15の幅狭部16の部分からスポット光(近接場光)として滲み出し、当該スポット光が試料表面で散乱され、その散乱光が図示しない外部レンズ等を有する光検出装置に検出される。
【0033】
なお、参考までに、装置本体12の表面部12aに形成される微小開口15の開口形状に関して、本実施形態の微小開口15とは異なる開口形状をした比較例(比較例1と比較例2)を示して、各々の微小開口を通過する光の強度を対比してみた。図6において、(a)は本実施形態における微小開口15を、(b)は比較例1(本発明の別の実施形態でもある)の微小開口25を、(c)は比較例2の微小開口35を、それぞれ正面から見たものである。同図からも理解されるように、比較例1の微小開口25は、短手方向の内面幅寸法と長手方向の形状寸法が本実施形態の微小開口15における幅狭部16の内面幅寸法ax及び形状寸法Lとそれぞれ同寸法の縦長方形状をしている。また、比較例2の微小開口35は、正方形状をなしており、その一辺の長さが本実施形態の微小開口15における幅広部17の内面幅寸法bxよりも大きいものである。
【0034】
そこで、これら各微小開口15,25,35を同一条件のもと光が通過したとした場合において、各微小開口15,25,35の中心Oを通る仮想平面上での光の強度を調べてみた。図7は、各微小開口25,15,35の中心Oを横方向(図6ではX方向)に通る仮想平面上での光の強度分布を示したものであり、図8は、各微小開口25,15,35の中心Oを縦方向(図6ではY方向)に通る仮想平面上での光の強度分布を示したものである。なお、図7,図8において、曲線aは本実施形態の微小開口15を通過した光の強度分布曲線を、曲線bは比較例1の微小開口25を通過した光の強度分布曲線を、曲線cは比較例2の微小開口35を通過した光の強度分布曲線を、それぞれ示している。
【0035】
さて、図7及び図8を見てみると、本実施形態における微小開口15の場合には、その各分布曲線aからも明らかなように、当該微小開口15の中心Oの近傍で非常に高い光強度が得られている。これは、前述したように、幅狭部16において対向する両界面Sでの表面プラズモン同士が互いに結合して電界強度を上げていることが、その要因の1つとしてあげられる。そして、要因の二つとしては、前記幅狭部16では表面プラズモンの位相速度が遅く(小さく)されるため、光導波路13内を伝搬される光が前記幅狭部16に集中することにあると考えられる。
【0036】
次に、比較例1の微小開口25の場合について見てみると、当該微小開口25の場合も、その各分布曲線bから明らかなように、微小開口25の中心Oの部分を最大値とする光強度分布を示している。これは、この比較例1の微小開口25においても、その短手方向において互いに対向する両界面の表面プラズモンの結合効果が発揮されているものと考えられる。なお、分布曲線aで表された本実施形態における微小開口15に比較すると、その電界強度の高さは低いが、これは開口形状が縦方向に一様の内面幅寸法とされた長方形状であり、本実施形態の微小開口15のような幅狭部16と幅広部17が連続して繋がった形状ではないことに起因するものと考えられる。
【0037】
従って、この比較例1の微小開口25では、本実施形態の微小開口15に比較して、表面プラズモンの位相速度を遅く(小さく)して伝搬光を集束させるという点では少しばかり劣るものの、両界面で発生した表面プラズモンが結合して電界強度を上げるという点では、共通した効果を示しているといえる。その意味で、この比較例1は、本実施形態と技術思想的には共通したものであり、本発明における別の実施形態(別例)と位置付けられるものである。
【0038】
これに対し、比較例2の微小開口35の場合には、その各分布曲線cからも明らかなように、表面プラズモンが発生する左右両界面の近傍付近でのみ少し程度は光強度が認められるものの、当該微小開口35の中心Oの部分ではほとんど光強度が認められない。即ち、比較例2の微小開口35の場合には、両界面で発生した表面プラズモンの結合による電界強度向上効果もなく、また、それ故に、表面プラズモンの位相速度を遅く(小さく)して伝搬光を集束させるという効果もなく、これでは実用面での支障となる。
【0039】
従って、本実施形態の光導波装置11によれば、次のような効果がある。
(1)本実施形態では、光導波路13を貫通形成した金属製板体からなる装置本体12がプラズモン活性媒質である銀(Ag)により構成されているため、光導波路13に光が入射されたことに基づき、その光導波路13(微小開口15を含む)の内表面で表面プラズモンが発生する。また、その光導波路13(微小開口15)は、幅狭部16の内面幅寸法axが光の波長の1/2よりも小さな31nmに設定されているため、その幅狭部16の対向する両界面Sで発生した表面プラズモンは、互いに電界が結合することで電界強度が非常に強くなる。しかも、その幅狭部16の部分では表面プラズモンの位相速度が遅くなるため、光導波路13内の光が当該幅狭部16に集まることになる。従って、このような幅狭部16を有したことにより、光導波路13の先端側開口である微小開口15から滲み出すスポット光(近接場光)の光強度を、光源を強くせずとも、光の広がりの増大を招くことなく、低コストで増強することができる。
【0040】
(2)また、本実施形態では、光導波路13(微小開口15)の幅狭部16と幅広部17とが連続する方向における光導波路13(微小開口15)の形状寸法Lが所定の形状寸法計算値よりも大きく設定されている。即ち、幅狭部16で発生する表面プラズモンの位相速度vzを伝搬光の真空中の速度である光速Cで除した値に前記伝搬光の波長の1/2を乗じて得られる値(形状寸法計算値)よりも大きな値に設定されている。従って、その光導波路13内へ光ファイバFから入射された光を遮断してしまうようなこともなく、確実に先端の微小開口15から光の強度を増強したスポット光(近接場光など)として導出することができる。
【0041】
(3)また、本実施形態では、微小開口15に連なる開口近傍の内面部分のみならず光導波路13の内面全体がプラズモン活性媒質である銀(Ag)により構成されているため、光導波路13の内表面全域で表面プラズモンを発生させることができる。しかも、幅狭部16が、先端側の微小開口15から裏面側開口14まで連続形成されているため、互いに対向する両界面Sの表面プラズモンが結合することによる電界強度向上効果及び伝搬される光の位相速度を遅くして当該光を幅狭部16に集中させる効果を、光導波路13の内面全体に亘り得ることができる。
【0042】
(4)また、本実施形態では、プラズモン活性媒質として負誘電体媒質である銀(Ag)を採用しているので、表面プラズモンを効果的に且つ確実に発生させることができる。また、かかるプラズモン活性媒質(Ag等)からなる装置本体(金属製板体)12に前記光導波路13を形成するだけなので、光導波装置11の製造が容易にできる。
【0043】
(5)また、本実施形態では、光導波路13の先端に設けられる微小開口15が伝搬光の波長の1/2よりも小さな値の内面幅寸法axとされた幅狭部16を有するものであって、その幅狭部16に連なる光導波路13の内面部分をプラズモン活性媒質で構成するだけという簡単なものである。そのため、走査近接場光学顕微鏡や光情報記録装置等という様々な光学的処理装置における光導波装置(光プローブ)として好適に使用することができる。
【0044】
(第2実施形態)
次に、本発明を同じく光導波装置の一種である光プローブに具体化した第2実施形態を図9~図11に従って説明する。なお、この第2実施形態は、前記装置本体12における表面部12aの形状、及び前記微小開口15における内表面部位の各寸法(例えば、幅狭部16の内面幅寸法ax等)が、第1実施形態の場合とは一部相違しており、それ以外の部分は第1実施形態の場合と同様に構成されている。従って、以下では、第1実施形態と相違する部分を中心に説明することとし、同一構成の部分については同一符号を付すことにして重複した説明を省略する。
【0045】
図9及び図10に示すように、本実施形態に係る光導波装置(光プローブ)11Aは、前記第1実施形態の場合と同様の銀(Ag)にて構成された金属製板体からなる装置本体12を備えており、その表面部12aには略錐状(本実施形態では先端部が滑らかな円錐形状)をなす凸部12bが隆起形成されている。この凸部12bは、その先端が前記表面部12aのほぼ中央に位置するように形成されており、当該凸部12bと対応する位置において、前記装置本体12には、その厚さ方向へ光導波路13が貫通形成されている。そして、前記表面部12aにおける凸部12bの部分には、当該凸部12bを正面から見て略二等分するようにして、その内面幅寸法の大きさが光の波長よりも小さな微小開口15が前記光導波路13の端部開口(先端側開口)として形成されている。
【0046】
前記微小開口15は、前記凸部12bの先端に位置する幅狭部16と、前記凸部12bの先端から裾野にかけて延びるように位置して幅狭部16よりも内面幅寸法が大きくされた2つの幅広部17とが、交互に連続した開口形状に形成されている。なお、第1実施形態の場合と同様に、前記微小開口15の幅狭部16と幅広部17は、前記光導波路13を介して伝搬される光の偏光方向(図9及び図10においてX方向)を幅方向とした場合、その幅方向と直交する方向(図9及び図10においてY方向)へ、交互に連続して繋がった形状となるように構成されている。
【0047】
即ち、前記第1実施形態では、微小開口15の開口縁が光導波路13内を伝搬する光の伝搬方向と直交する平面に沿った構成であったが、本実施形態においては微小開口15の開口縁が光導波路13内を伝搬する光の伝搬方向(図9及び図10においてZ方向)へ凸面形状をなす曲面に沿った構成とされている。具体的には、円錐状をなす凸部12bを図9,図10におけるY軸-Z軸平面で切った断面形状に対応する曲面に沿った構成とされている。また、本実施形態においても、前記微小開口15の大きさは、装置本体12(及びその表面部12a)の大きさとの対比において実際には極小さなものであるが、図9等においては微小開口15の特徴的な開口形状を容易に理解ならしめるため、その大きさが実際よりは誇張して図示されている。
【0048】
また、本実施形態における前記微小開口15は、前記幅狭部16の内面幅寸法ax(図10参照)が前記第1実施形態における幅狭部16の内面幅寸法ax(31nm)よりも更に小さな値(一例として、16nm)に設定されている。また、各幅広部17の内面幅寸法bx(図10参照)も前記第1実施形態における各幅広部17の内面幅寸法bx(78nm)より更に小さな値(一例として、47nm)に設定されている。なお、前記幅狭部16の内面長さ寸法ay(図10参照)は前記第1実施形態における幅狭部16の内面長さ寸法ay(31nm)と同じ値に設定されている。その一方、前記各幅広部17の内面長さ寸法byについては前記第1実施形態における各幅広部17の内面長さ寸法by(93nm)よりもやや大きな値(一例として、402nm)に設定されている。また、前記装置本体12の板体部分の厚さは78nmに設定され、その表面部12aから隆起した前記凸部12bの高さは202nmに設定されている。従って、本実施形態における前記微小開口15の形状寸法L(図10参照)は835nmとされ、この形状寸法Lが前記凸部12bの裾野直径となっている。
【0049】
次に、本実施形態に係る光導波装置11Aの作用について説明する。
さて、光ファイバFを介して所定の光(前記第1実施形態の場合と同様に、波長が488nmで偏光方向が図9及び図10でX方向となる直線偏光の平面波の光)が装置本体12の光導波路13内に入射されると、当該光導波路13内では次のような現象が発生する。即ち、伝搬方向が光導波路13の内表面に沿う方向(図9のZ方向)の表面プラズモンという光波(電磁波)が発生する。そして、この表面プラズモンは、前記幅狭部16の両界面Sで各々発生した表面プラズモンの電界同士が結合する結果、光導波路13内の幅狭部16の部分でその電界強度が非常に強くなる。また、光導波路13の幅狭部16及び幅広部17を含む内表面全域において発生した表面プラズモンは、その伝搬において位相速度vzが遅く(小さく)なるように設定された幅狭部16に集まることになる。従って、前記第1実施形態の場合と同様に、前記幅狭部16の部分において光導波路13を介して伝搬される光の強度が強くなり、この光強度が増大された伝搬光が微小開口15の幅狭部16の部分からスポット光(近接場光)として滲み出す。
【0050】
加えて、本実施形態の場合は、微小開口15からスポット光(近接場光)として滲み出す光の広がりが第1実施形態の場合よりも更に小さなものとなる。この点について以下説明する。図11(a)は、第1実施形態の場合と同様に、装置本体12の平面的な表面部12aに光導波路13の微小開口(端部開口)15を形成した光導波装置11の正面図である。一方、図11(b)は、装置本体12の表面部12aから円錐状に隆起した凸部12bの部分に光導波路13の微小開口(端部開口)15を形成した本実施形態に係る光導波装置11Aの正面図である。なお、両図において各微小開口15の左側には、当該各微小開口15の幅狭部16の部分から滲み出す各スポット光の光分布を表した集光領域20aの広がり形状が半線で参考的に表示されている。また同様に、それぞれの集光領域20aの周りにできる薄明の周辺光の光分布を表した薄明領域20bの広がり形状が二点鎖線で参考的に表示されている。
【0051】
さて、両図の比較から明らかなように、各微小開口15から滲み出すスポット光における集光領域20aの大きさは、図11(a)の光導波装置11の場合よりも、図11(b)の本実施形態に係る光導波装置11Aの場合の方が、小さなサイズのものとなっている。また同様に、前記スポット光の周りの周辺光による各薄明領域20bの大きさについても、図11(a)の光導波装置11では微小開口15の長さ方向へ少し延びるように広がっているのに対し、図11(b)の本実施形態に係る光導波装置11Aでは集光領域20aの形状に相似した小さなサイズとなっている。このように、本実施形態の光導波装置11Aでは、その微小開口15から滲み出す光の広がりが、光強度が増大されたスポット光による集光領域20a及びその周辺光による薄明領域20bの双方共に、光学的処理をする際において高解像度及び高記録密度を得るのに好適な小さなものとなっている。
【0052】
その要因としては、次のようなことが考えられる。即ち、光導波路13の内表面に発生した表面プラズモンは、前述したように、前記幅狭部16の両界面S間において電界結合効果が顕著である。しかし、それ以外の部分の界面間(例えば、幅広部17の幅方向で対向する両界面間)でも電界同士の結合により電界強度は前記幅狭部16の両界面S間における電界結合効果ほどではないが強くなる。また、そのような表面プラズモンは、その位相速度vzが遅くなるように設定された幅狭部16に集まるという性質を有するため、当該幅狭部16の部分から前記伝搬光を光強度が増大されたスポット光にして滲み出させるという機能を果たそうとする。その一方、前記微小開口15から出射された伝搬光(スポット光及びその周辺光を含む)は、当該微小開口15から出射方向へ離れるに従い次第に減衰し、ある程度まで離れると消光することになる。
【0053】
つまり、本実施形態の光導波装置11Aのように、微小開口15が円錐状をなす凸部12bに形成され、その開口縁が伝搬光の出射方向へ凸面形状の曲面に沿った構成の場合には、特に周辺光による薄明領域20bは出射後の減衰により凸部12bの裾野側から順次に消光して小さなものにならざるを得ない。また、光導波路13の内表面全域から幅狭部16に集まる表面プラズモンにて光強度が増大されるスポット光の集光領域20aにしても、凸部12bの裾野側から先端へ向かうに従い幅広部17の内面長さ寸法が実質的には小さくなるため、光強度が増大される範囲(即ち、集光領域20a)も小さなものとなる。
【0054】
さらに、前記光導波路13の内表面を微小開口15に向けて進行する光(表面プラズモン)は、その位相速度が微小開口15の外部空間(空気中)を進行する場合の位相速度よりも遅いという事実がある。そのため、光伝搬方向において、光導波路13の出口たる微小開口15と前記外部空間との境界(微小開口15の開口縁に沿うことになる)では、当該境界に臨む両媒質(銀と空気)の屈折率の相違により、反射が起きると考えられる。一般に、光は境界に対して斜めに入射するほど反射(極端な場合は全反射)され易いことから、円錐状をなす凸部12bの裾野部分に位置する幅広部17の内表面を微小開口15まで進行した光(表面プラズモン)は、前記境界でかなり反射され、微小開口15の幅広部17部分からは殆ど出てこないと考えられる。また、そのように反射された光は、その後、光伝搬方向に対して斜めの前記境界で更に反射されながら、次第に幅狭部16が設けられた微小開口15の中心(凸部12bの先端でもある)に集光するものと考えられる。従って、図11(a)(b)の比較から明らかなように、微小開口15を円錐状の凸部12bの部分に設けた光導波装置11Aの場合には、前記集光領域20a及び薄明領域20bが共に小さなものとなる。
【0055】
従って、本実施形態の光導波装置11Aによれば、第1実施形態の光導波装置11における前記各効果(1)~(5)に加えて、次のような効果がある。
(6)本実施形態では、光導波路13の先端側開口である微小開口15から出る光の広がり分布(集光領域20a及び薄明領域20b)の大きさを更に小さなものとできるため、光学的処理を行うに際して高解像力及び高記録密度を確保することができる。
【0056】
(7)本実施形態では、光導波路13の微小開口15が装置本体12における平面的な表面部12aにではなく円錐状をなす凸部12bに形成され、当該微小開口15から伝搬光がスポット光(近接場光)として滲み出す幅狭部16の部分が前記凸部12bの先端に位置するようにした。そのため、例えば、走査近接場光学顕微鏡等を使用した微細な光学的処理をする際において、当該スポット光を試料の表面に対して、より簡単に接触させることができるようになり、非常に実用的なものとできる。
【0057】
(第3実施形態)
次に、本発明を同じく光導波装置の一種である光プローブに具体化した第3実施形態を図12及び図13に従って説明する。なお、この第3実施形態は、前記装置本体12における表面部12aの凸部12bに形成された微小開口15の開口形状が、第2実施形態の場合とは相違しており、それ以外の部分は第2実施形態と同様に構成されている。従って、以下では、第2実施形態(及び第1実施形態)と相違する部分を中心に説明することとし、前記各実施形態と同一構成の部分については同一符号を付すことにして重複した説明を省略する。
【0058】
図12に示すように、本実施形態に係る光導波装置(光プローブ)11Bは、前記第2実施形態の場合と同様の銀(Ag)にて構成された金属製板体からなる装置本体12を備えており、その表面部12aには前記第2実施形態の光導波装置11Aと同様に円錐状をなす凸部12bが隆起形成されている。そして、この凸部12bと対応する位置において、前記装置本体12には、その厚さ方向へ光導波路13が貫通形成されている。また、前記表面部12aにおける凸部12bの部分には、当該凸部12bを正面から見て略二等分するようにして、その内面幅寸法の大きさが光の波長よりも小さな微小開口15が前記光導波路13の端部開口(先端側開口)として形成されている。
【0059】
本実施形態に係る光導波装置11Bの微小開口15は、第2実施形態における光導波装置11Aの微小開口15とは異なり、いわゆる幅広部というものがなく短手方向の内面幅寸法が微小開口15の内面全体に亘って同一幅の縦長方形状をなしている。なお、第2実施形態の場合と同様に、前記微小開口15は、光導波路13を介して伝搬される光の偏光方向(図12においてX方向)を幅方向とした場合、その幅方向と直交する方向(図12においてY方向)へ連続して延びる縦長方形となるように構成されている。そして、その微小開口15の開口縁は第2実施形態の場合と同様に光導波路13内を伝搬する光の伝搬方向(図12においてZ方向)へ凸面形状をなす曲面に沿った構成とされている。また、本実施形態においても、前記微小開口15の大きさが装置本体12等の大きさとの対比において実際よりは誇張して図示されているが、その理由は前述したのと同様の理由である。
【0060】
また、本実施形態における微小開口15は、幅狭部16の内面幅寸法でもある当該微小開口15の内面幅寸法が前記第2実施形態における幅狭部16の内面幅寸法ax(図10参照)と同じ値(16nm)に設定されている。また、その微小開口15の形状寸法でもある当該微小開口15(及び幅狭部16)の内面長さ寸法は前記第2実施形態における各幅広部17の内面長さ寸法by(図10参照)と同じ値(402nm)に設定され、前記凸部12bの裾野直径となっている。なお、前記第2実施形態の場合と同様に、装置本体12の板体部分の厚さは第78nmに設定され、その表面部12aから隆起した前記凸部12bの高さは202nmに設定されている。
【0061】
さて、本実施形態の光導波装置11Bにおいても、光ファイバFを介して所定の光(前記各実施形態の場合と同様に、波長が488nmで偏光方向が図12でX方向となる直線偏光の平面波の光)が装置本体12の光導波路13内に入射されると、当該光導波路13内では次のような現象が発生することになる。即ち、前記各実施形態の場合と同様に、光導波路13の内表面において表面プラズモンが発生し、この表面プラズモンは、幅方向で対向する両界面間で電界同士が結合する結果、その電界強度が非常に強くなる。そのため、この電界結合効果に基づき、光導波路13を介して伝搬される光の強度が強くなり、この光強度が増大された伝搬光が微小開口15(具体的には、前記凸部12bの先端付近に位置する部分)からスポット光(近接場光)として滲み出す。
【0062】
なお、本実施形態の場合も、微小開口15からスポット光(近接場光)として滲み出す光の広がりが、第2実施形態の場合と同様に、第1実施形態の場合よりも更に小さなものとなる。この点について以下説明する。図13(a)は、図6(b)に示した比較例1の場合と同様に、装置本体12の平面的な表面部12aに光導波路13の縦長方形状をなす微小開口(端部開口)15を形成した光導波装置11の正面図である。一方、図13(b)は、装置本体12の表面部12aから円錐状に隆起した凸部12bの部分に光導波路13の縦長方形状をなす微小開口(端部開口)15を形成した本実施形態に係る光導波装置11Bの正面図である。また、両図において各微小開口15の左側には、第2実施形態における図11(a)(b)で参考的に表示したのと同様に、各スポット光の集光領域20aの広がり形状と各周辺光による薄明領域20bの広がり形状が半線及び二点鎖線でそれぞれ表示されている。
【0063】
さて、両図の比較から明らかなように、各微小開口15から滲み出すスポット光における集光領域20aの大きさは、図13(a)の光導波装置11の場合には微小開口15の長さ方向に沿う縦長形状になっている。これに対し、図13(b)の本実施形態に係る光導波装置11Bの場合には、第2実施形態の光導波装置11Aの場合と同様に、小さなサイズのものとなっている。また同様に、前記周辺光による各薄明領域20bの大きさについても、図13(a)の光導波装置11では微小開口15の長さ方向へ延びるように更に広がっている。これに対し、図13(b)の本実施形態に係る光導波装置11Bでは、第2実施形態の光導波装置11Aの場合と同様に、集光領域20aの形状に相似した小さなサイズとなっている。
【0064】
このように、本実施形態の光導波装置11Bでも、その微小開口15から滲み出す光の広がりが、光強度が増大されたスポット光による集光領域20a及びその周辺光による薄明領域20bの双方共に、光学的処理をする際において高解像度及び高記録密度を得るのに好適な小さなものとなっている。そして、その要因は、前記第2実施形態の光導波装置11Aの場合と同様に、微小開口15を平面的な表面部12aにではなく円錐状をなす凸部12bに形成したことに基づいている。なお、その要因についての詳細説明は、第2実施形態において既述したので、本実施形態ではその重複説明を省略する。
【0065】
従って、本実施形態の光導波装置11Bにおいても、第1実施形態の光導波装置11における前記(1)~(5)の効果、及び第2実施形態の光導波装置11Aにおける前記(6)(7)の効果があり、更には、次のような効果もある。
【0066】
(8)本実施形態によれば、装置本体12に対して微小開口15へ連なる光導波路13を形成する際において、内面幅寸法が異なる幅狭部16と幅広部を連続形成する必要がなく、光伝搬方向に直交する断面の形状が縦長方形状の光導波路13を形成するだけでよいので、製造コストの低減に寄与できる。
【0067】
(第4実施形態)
次に、本発明を同じく光導波装置の一種である光プローブに具体化した第4実施形態を図14に従って説明する。なお、この第4実施形態は、装置本体12の表面部12aに形成された凸部の形状が第2実施形態の場合とは相違しており、それ以外の部分は第2実施形態と同様に構成されている。従って、以下では、第2実施形態(及び第1実施形態)と相違する部分を中心に説明することとし、それら各実施形態と同一構成の部分については同一符号を付すことにして重複した説明を省略する。
【0068】
図14に示すように、本実施形態に係る光導波装置(光プローブ)11Cは、前記第2実施形態の場合と同様の銀(Ag)にて構成された金属製板体からなる装置本体12を備えている。そして、その装置本体12には、前記各実施形態の場合と同様に、その厚さ方向へ光導波路13が貫通形成されている。また、その表面部12aには、光導波路13内で幅狭部16を形成していた段部を微小開口15から伝搬光の出射方向へ更に延出した細柱状をなす凸部12cが突出形成されている。なお、光導波路13(及び微小開口15)における幅狭部16及び幅広部17の各内面幅寸法や各内面長さ寸法は第2実施形態の光導波装置11Aの場合と同じに設定されている。また、その凸部12cの高さは第2実施形態における凸部12bと同じ値(202nm)に設定されている。
【0069】
さて、本実施形態の光導波装置11Cにおいても、光ファイバFを介して所定の光(前記各実施形態の場合と同様に、波長が488nmで偏光方向が図14でX方向となる直線偏光の平面波の光)が装置本体12の光導波路13内に入射されると、当該光導波路13内では次のような現象が発生することになる。即ち、前記各実施形態の場合と同様に、光導波路13の内表面において表面プラズモンが発生し、この表面プラズモンは、幅方向で対向する両界面間で電界同士が結合する結果、その電界強度が非常に強くなる。そのため、この電界結合効果に基づき、光導波路13を介して伝搬される光の強度が強くなり、この光強度が増大された伝搬光が微小開口15(具体的には、前記凸部12cの先端付近に位置する部分)からスポット光(近接場光)として滲み出す。
【0070】
なお、本実施形態の場合も、微小開口15からスポット光(近接場光)として滲み出す光の広がりが、第2及び第3実施形態の場合と同様に、第1実施形態の場合よりも更に小さなものとなる。即ち、光強度が増大されたスポット光による集光領域及びその周辺光による薄明領域の双方共に、光学的処理をする際において高解像度及び高記録密度を得るのに好適な小さなものとなる。その要因としては、前記第2実施形態の光導波装置11Aの場合と同様に、微小開口15の開口縁が、光導波路13内を伝搬する光の伝搬方向と直交する平面に沿った構成ではなく細柱状をなす凸部12cの先端面を含んで出射方向へ凸形状をなす凸面に沿う構成となっていることに基づいている。なお、その要因についての詳細説明は、第2実施形態において既述したので、本実施形態でも重複説明は省略する。
【0071】
従って、本実施形態の光導波装置11Cにおいても、第1実施形態の光導波装置11における前記(1)~(5)の効果、及び第2実施形態の光導波装置11Aにおける前記(6)(7)の効果が同様にある。
【0072】
なお、上記各実施形態は以下のように変更してもよい。
・ 上記各実施形態では、微小開口15において幅狭部16が1つだけ設けられたものであったが、例えば図15(a)に示すように、2つの幅狭部16と3つの幅広部17を有し、それらの幅狭部16と幅広部17が交互に連続する開口形状としてもよい。このようにすれば、光の強度を増強したスポット光(近接場光など)を2カ所で形成することができる。要するに、幅狭部16は微小開口15において少なくとも一カ所あればよく、幅広部17と隣り合って連続するものならば二カ所以上あってもよい。
【0073】
・ 上記各実施形態では、微小開口15の開口形状が幅狭部16及び幅広部17を含めて直線により形作る構成となっていたが、例えば図15(b)に示すように曲線を用いて形作られた開口形状(例えば、同図に示すようなダンベル形状)であってもよい。また、微小開口15の開口形状は直線と曲線の組み合わせで形成されていてもよい。
【0074】
・ 上記各実施形態では、微小開口15の開口形状が左右対称な形状になっていたが、幅狭部16と幅広部17が交互に連続するものならば、開口形状は任意に変更可能である。例えば、図16(a)(b)(c)に示すように、幅狭部16と幅広部17が伝搬光の偏光方向(各図において幅狭部16の幅方向)と交差する方向へ連続して繋がった形状となるならば、左右非対称な形状であってもよい。なお、微小開口15の幅狭部16の内面長さ寸法(図2等で「ay」)は、これを極端に小さくすると、力学的強度上の問題の他に幅狭部16の内面部分18に表面プラズモンが有効に励起されなくなるという虞がある。しかし、例えば図16(c)のように、幅狭部16の内面部分18同士を内面長さ方向へ互いにずらした開口形状にした場合には、実質的に、幅方向で互いに対向する内面部分18の内面長さ寸法を小さくしつつ、上記した力学的強度上の問題及び表面プラズモンの励起に関する懸念を解消できる。
【0075】
・ 上記各実施形態では、光導波路13の全体に亘り光伝搬方向に直交する断面の形状が微小開口15の開口形状と同一となるように形成されていたが、例えば図17(a)(b)に示すように、装置本体12内で光導波路13の断面形状が微小開口15の開口形状よりも大きくなっていてもよい。また、裏面側開口14から入射される光の偏光方向を同図のY方向(縦方向)とする場合には、幅狭部16と幅広部17がX方向(横方向)に連続して繋がるようにすればよい。
【0076】
・ 上記各実施形態では、幅狭部16が光導波路13の光伝搬方向に交差する断面の形状中心に位置するように形成されていたが、例えば図18(a)(b)に示すように、光導波路13の断面中心から偏心した位置に幅狭部16が設けられるようにしてもよい。また、光導波路13は、幅狭部16の内面幅寸法が伝搬光の波長の1/2よりも小さく設定されるものならば、同図からも窺えるように、幅狭部16の内面幅寸法と幅広部17の内面幅寸法との寸法比が、本実施形態における両者の寸法比に対してはるかに大きなものであってもよい。即ち、幅広部17の内面幅寸法は幅狭部16の内面幅寸法よりも大きいという条件を満たすならば無限大の寸法であってもよい。
【0077】
・ 上記各実施形態では、光導波路13が装置本体たる装置本体12に対してトンネル状に貫通形成されたものであったが、例えば図19(a)(b)および図20(a)(b)に示すように、装置本体12の表面上から溝状に切欠形成されたものであってもよい。ちなみに、図19(a)(b)のものは、装置本体12の上面から幅狭部16が切欠形成され、当該幅狭部16の下方に連続するように幅広部17が繋がり形成されたものである。また、図20(a)(b)のものは、装置本体12の上面に幅狭部16のみからなる矩形状の溝が切欠形成されたものであり、原理的には図6(b)に示した比較例1と同様のものである。従って、本発明でいうところの光導波路の端部開口には、装置本体12に貫通形成された光導波路13の端部開口(図1等の微小開口15)である場合と、装置本体12の一側面に溝状に切欠形成された光導波路13の端部開口(図12,図13の微小開口15)である場合の双方が含まれるものである。
【0078】
さらに、図21(a)(b)のもののように装置本体12の表面上から幅広部17と幅狭部16及び幅広部17の順に切欠形成されるようにしてもよい。即ち、図19(a)(b)や図20(a)(b)のもののように、装置本体12の表面に幅狭部16が臨む溝状の光導波路13の場合には、装置本体12の表面近くで伝搬光の光強度が最大になる。そのため、例えば集積度を上げるために複数の光導波路を狭い間隔で配置するようにした光集積回路に溝状の光導波路を適用した場合には、それら各光導波路から装置本体の表面上に漏れ出す光が原因で隣接する光導波路間で短絡が起きる虞がある。しかし、図21(a)(b)のように装置本体12の表面に幅広部17が臨むようにする一方、光強度が最大になる幅狭部16を装置本体12の表面から離れた断面構造にすれば、そのような各光導波路13間での短絡が起きる虞をなくすことができ、非常に実用的になる。
【0079】
・ 上記各実施形態では、光導波路13の両端部にそれぞれ開口(裏面側開口14及び微小開口15)を設けたが、光導波路13は、先端側開口の微小開口15が一つだけ設けられた構成でもよい。即ち、例えば図17(a)(b)の光導波装置11において裏面側開口14が閉塞された構成であってもよい。このように構成した場合には、先端の微小開口15から光導波路13内に入射された伝搬光が当該光導波路13内奥の壁面で反射されて定在波を発生させ、再び、先端の微小開口15から導出されることになり、イルミネーションコレクションモードの場合に好適に利用される。
【0080】
・ 上記各実施形態では、光導波路13内において表面プラズモンの結合による電界強度向上効果および表面プラズモンの位相速度低下による伝搬光集中効果を発揮し得る幅狭部16(及びその内面部分18)が一直線状に設けられていた。しかし、例えば図17(a)(b)及び図18(b)に一点鎖線で示すように、光導波路13内において、前記幅狭部16(及びその内面部分18)は二股状に分岐した構成であってもよい。なお、その場合、分岐された幅狭部16の先端に対応させて微小開口15と同様の先端側開口を形成してもよい。また、その場合の分岐形態は、二股状のみならず一カ所から三方向へ分岐させてもよいし、複数箇所でそれぞれ複数方向へ分岐させてもよい。
【0081】
このようにすれば、例えば光集積回路における光導波路13として用いた場合に極めて実用的なものになる。即ち、光集積回路では、ナノメータ単位の極細い光の配線回路を作るため、光導波路を二次元面内で引き回す(曲げたり、分岐したりする)必要がある。そして、そのようにして形成された回路のうち、光導波路を電界と平行な二次元面内で引き回して形成された回路はE面回路と呼ばれ、光導波路を磁界と平行な二次元面内で引き回して形成された回路はH面回路と呼ばれる。
【0082】
上記した図17(a)(b)において幅狭部16(及びその内面部分18)が分岐した光導波路13は、その電界が主にY方向であり磁界が主にX方向であるところ、X方向の磁界と平行な二次元面内で分岐されているためH面回路を形成していることになる。一方、図18(a)(b)において幅狭部16(及びその内面部分18)が分岐した光導波路13は、その電界が主にX方向であり磁界が主にY方向であるところ、X方向の電界と平行な二次元面内で分岐されているためE面回路を形成していることになる。
【0083】
従って、H面回路を形成する図17(a)(b)の光導波装置11においては、同図におけるY方向で対向する幅狭部16の内面幅寸法が伝搬光の波長の1/2よりも小さな値であれば、幅広部17のY方向における内面幅寸法が例え無限大であっても、分岐された各幅狭部16に沿う極細の光回路を形成できる。また、E面回路を形成する図18(a)(b)の光導波装置11においては、同図におけるX方向で対向する幅狭部16の内面幅寸法が伝搬光の波長の1/2よりも小さな値であれば、幅広部17のX方向における内面幅寸法が例え無限大であっても、分岐された各幅狭部16に沿う極細の光回路を形成できる。
【0084】
・ また、図19(a)(b)に示す形態のものにあっては、例えば図22~図24に示すような形態に変更してもよい。即ち、図22のものは幅狭部16が一つではなく複数(同図では2つ)形成され、各幅狭部16の下部が一つの幅広部17に連続して繋がるように構成されたものである。また、図23のものは、図22のものにおいて、光導波路13内に外部(空気)とは異なる誘電体媒質(ガラス等)を充填したものである。また、図24のものは光導波路13の断面形状が不規則な曲線で形成されたものであり、その光導波路13内には図23のもののようにガラス等の誘電体媒質が充填されていてもよい。
【0085】
・ 上記各実施形態では、プラズモン活性媒質として比誘電率の実数部の値がマイナス7.38の銀(Ag)を用いたが、実数部の値がマイナスの銀(Ag)であれば他の銀(Ag)を用いてもよい。また、比誘電率の実数部の値がマイナスとなる誘電体媒質であれば、銀(Ag)に限らず金(Au)や白金及びそれらの合金、又はその他の金属材料や半導体材料を用いてもよい。
【0086】
・ 上記各実施形態では、光導波路13を包囲形成する装置本体12全体をプラズモン活性媒質(銀Ag)により構成していたが、少なくとも光導波路13内の幅狭部16において幅方向で対向する内面部分18がプラズモン活性媒質(銀Ag)により構成されていればよい。また、先端側開口の微小開口15から裏面側開口14に至るまでの光導波路13の内面全体に亘り形成された幅狭部16の幅方向で互いに対向する両内面部位のみがプラズモン活性媒質(銀Ag)により構成されていてもよい。また、前記プラズモン活性媒質(銀Ag等)は、前記幅狭部16の内面部分18等を含む光導波路13の内表面に対して蒸着などで付設されるものであってもよい。
【0087】
・ 上記各実施形態では、微小開口15における幅狭部16の内面幅寸法axが所定の寸法値(例えば、31nm等)に設定されていたが、伝搬光の波長の1/2よりも小さな寸法に設定されるものならば、上記各実施形態の寸法値に限定されるものではない。また、微小開口15における幅方向(X方向)と交差する方向(Y方向)の形状寸法Lも各実施形態の例示寸法値に限定されるものではなく、前記形状寸法計算値よりも大きな値に設定されるならば、前記形状寸法Lは伝搬光の波長の1/2より大きくてもよい。
【0088】
・ 上記各実施形態では、光導波路13の光伝搬方向と直交する断面形状が微小開口15と同一形状で裏面側開口14まで連続する構成であったが、例えば裏面側開口14側から先端の微小開口15に向かうほど次第に断面形状が小さくなる先細テーパ状にするなど、光導波路13の全体形状は適宜に変更可能である。
【0089】
・ 上記各実施形態では、光導波路13内において当該光導波路13の内表面と界面Sを形成する媒質が空気であったが、例えば図23のものにおいて示唆したようにガラスなどの他の誘電体媒質を光導波路13内に充填したものであってもよい。
【0090】
・ 上記各実施形態では、光導波路13の内面全体に亘り幅狭部16が形成されていたが、光導波路13の先端側開口である微小開口15においてのみ幅狭部16が形成された構成であってもよい。また、光導波路13の光伝搬方向における中途に断面形状が前記微小開口15と同様の幅狭部16と幅広部17が連続して繋がった形状をなす部分を設け、先端側開口及び裏面側(基端側)開口は、それぞれ伝搬光の波長よりも大きな開口となるようにしてもよい。
【0091】
・ 上記第2,第3実施形態では、凸部12bが円錐状をなすように隆起形成されていたが、略錐状をなすものならば円錐状に限定されず、例えば角錐状をなすように隆起形成されたものであってもよい。また、第4実施形態では、凸部12cが断面矩形状の細柱状をなしていたが、各柱の対向する内面間に幅狭部が形成されるものならば、断面矩形状に限定されず、例えば断面半円状の細柱状のものであってもよい。
【0092】
(第5実施形態)
次に、本発明を同じく光導波装置の一種である露光用マスク(レチクルも含むものとする。)に具体化した第5実施形態を図25~図28に従って説明する。なお、露光用マスクは、投影露光装置(いわゆるステッパー)において感光剤が塗布された半導体基板表面に回路パターンをリソグラフィー技術によって投影露光する際に用いられるものである。
【0093】
図25に示すように、本実施形態に係る光導波装置(露光用マスク)41は、前記各実施形態の光導波装置11等と同様の銀(Ag)にて構成された矩形板状をなす金属製板体からなる装置本体42を備えている。装置本体42には、その厚さ方向へ光導波路13が貫通形成されており、表面部42a及び裏面部(図示略)には、その内面幅寸法の大きさが光の波長よりも小さな微小開口15が前記光導波路13の端部開口(先端側及び基端側の各開口)として形成されている。
【0094】
前記微小開口15は、前記表面部42aのほぼ中央に位置する幅狭部16と当該幅狭部16よりも内面幅寸法の大きい2つの幅広部17とが交互に連続した開口形状に形成されている。なお、第1実施形態の場合と同様に、前記微小開口15の幅狭部16と幅広部17は、前記光導波路13を介して伝搬される光の偏光方向(図25において左右方向)を幅方向とした場合、その幅方向と直交する方向(長さ方向)へ交互に連続して繋がった形状となるように構成されている。また、本実施形態においても、前記微小開口15の大きさは、装置本体42(及びその表面部42a)の大きさとの対比において実際には極小さなものであるが、図25等においては微小開口15の特徴的な開口形状を容易に理解ならしめるため、その大きさが実際よりは誇張して図示されている。
【0095】
また、本実施形態における前記微小開口15は、一例として、前記幅狭部16の内面幅寸法が16nmに、前記各幅広部17の内面幅寸法が47nmに設定されている。また同様に、前記幅狭部16の内面長さ寸法は280nmに、前記各幅広部17の内面長さ寸法は93nmに、前記装置本体42の厚さは78nmにそれぞれ設定されている。従って、本実施形態における前記微小開口15の形状寸法は466nmとされている。
【0096】
次に、本実施形態に係る光導波装置41の作用について説明する。
さて、前記露光用マスクの光導波装置41を用いて回路パターンを投影露光する際には、図26に示すように、まず光導波装置41の装置本体42が半導体基板43の表面上に載置される。なお、半導体基板43の表面には事前にノボラックレジン等の感光剤の塗布により感光剤層44が形成されており、この感光剤層44上に前記装置本体42は密着するように載置される。その後、装置本体42上に透明なガラス基板45が載置され、その上方から投影光が照射される。即ち、前記各実施形態の場合と同様に、波長が488nmで偏光方向が図26で左右方向となる直線偏光の平面波の光が前記装置本体42の光導波路13内に投影光として入射される。すると、当該光導波装置41の光導波路13内では次のような現象が発生することになる。
【0097】
即ち、前記各実施形態の場合と同様に、光導波路13の内表面において表面プラズモンが発生し、この表面プラズモンは、幅方向で対向する両界面間で電界同士が結合する結果、特に幅狭部16の両界面間で、電界強度が非常に強くなる。そのため、この電界結合効果に基づき、光導波路13を介して伝搬される光の強度が強くなり、この光強度が増大された伝搬光が微小開口15の幅狭部16の部分から当該幅狭部16の長さ方向に沿う細線形状のスポット光(近接場光)として滲み出す。そして、この細線形状のスポット光により半導体基板43表面上の感光剤層44が感光され、その後、公知のエッチング処理等により不要な感光剤層44が除去されると、その半導体基板43上に配線パターンの直線部分が前記細線形状のスポット光に対応したパターン形状の回路パターンが形成される。
【0098】
なお、本実施形態の場合は、前記光導波路13の光伝搬方向と直交する断面の形状(及び微小開口15の開口形状)の相違により、その微小開口15から滲み出す前記細線形状のスポット光(近接場光)の光の広がり(光強度分布)が異なったものとなる。この点について図27と図28を用いて説明する。まず、図27(a)は、装置本体42に光伝搬方向と直交する断面の形状が幅狭部16のみで縦長方形状をなす光導波路13(及び微小開口15)を形成した光導波装置41の正面図である。図27(b)と図27(d)は、共に本実施形態の場合と同様に、装置本体42に幅狭部16と幅広部17が連続形成された光導波路13(及び微小開口15)を形成した光導波装置41の各正面図である。また、図27(c)は、前述したとおりの各寸法値からなる光導波路13及び微小開口15を有する本実施形態の光導波装置41の正面図である。
【0099】
因みに、図27(a)の光導波装置41における光導波路13の微小開口15は、幅狭部16の内面幅寸法でもある微小開口15の内面幅寸法が前述した本実施形態における幅狭部16の内面幅寸法と同じ値(16nm)に設定されている。また、その微小開口15の形状寸法でもある微小開口15(及び幅狭部16)の内面長さ寸法は前述した本実施形態における幅狭部16の内面長さ寸法と同じ値(280nm)に設定されている。また、図27(b)の光導波装置41における光導波路13の微小開口15は、その幅広部の内面長さ寸法を前述した本実施形態の場合(93nm)よりも小さな値(一例として、62nm)に設定した点でのみ、本実施形態とは相違している。さらに、図27(b)の光導波装置41における光導波路13の微小開口15は、その幅広部の内面長さ寸法を前述した本実施形態の場合(93nm)よりも大きな値(一例として、109nm)に設定した点でのみ、本実施形態とは相違している。そして、各図において各微小開口15の左側には、第2実施形態における図11(a)(b)で参考的に表示したのと同様に、各スポット光の集光領域20aの広がり形状と各周辺光による薄明領域20bの広がり形状が半線及び二点鎖線でそれぞれ表示されている。
【0100】
また、図28(a)は、図27(a)~(d)の各光導波装置41の光導波路13内を同一条件のもと光が通過したとした場合において、各微小開口15の中心を縦方向(図27(a)~(d)では上下方向)に通る仮想平面上での光強度分布を示したものである。また同様に、図28(b)は、図27(a)~(d)の各微小開口15の中心を横方向(図27(a)~(d)では左右方向)に通る仮想平面上での光強度分布を示したものである。なお、図28(a)(b)において、曲線aは図27(a)の微小開口15を通過した光の強度分布曲線を、曲線bは図27(b)の微小開口15を通過した光の強度分布曲線を、それぞれ示している。また同様に、曲線cは図27(c)の微小開口15を通過した光の強度分布曲線を、曲線dは図27(d)の微小開口15を通過した光の強度分布曲線を、それぞれ示している。
【0101】
さて、図27及び図28を見てみると、図27(a)の光導波装置41では、その微小開口15の中心付近では非常に高い光強度が得られるものの、微小開口15の長さ方向の両端部までは集光領域20aが広がらずに薄明領域20bがあるだけで光強度も微弱なものとなっている。また、図27(b)の光導波装置41では、その微小開口15における長さ方向の両端部付近まで集光領域20aの広がりはあるものの、微小開口15の長さ方向全体に亘っては光強度のバラツキが大きいものとなっている。また、図27(d)の光導波装置41では、その微小開口15における長さ方向の両端部付近の光強度が最大で中心付近は寧ろ光強度が低下したものとなっている。つまり、これらの光導波装置41では露光用マスクとして用いるには不適当である。
【0102】
これらに対し、図27(c)の本実施形態の光導波装置41の場合は、微小開口15における幅狭部16の長さ方向全体に亘り光強度の強い集光領域20aが広がっており、また、当該幅狭部16の長さ方向全体に亘って光強度のバラツキも殆どないようになっている。即ち、幅狭部16の寸法値に対応して、線幅が16nmで線長が280nmの細線形状を持った一様な光強度分布のスポット光が得られている。しかも、その光強度についても図28(a)(b)から理解されるように入射光の光強度を「1」とした場合に約2.3倍程度の光強度の出射光を得られている。
【0103】
従って、本実施形態の露光用マスクに適用される光導波装置41によれば、光プローブに具体化した前記第1実施形態の光導波装置11における前記(1)~(5)の効果を同様に得られる他、次のような効果が得られる。
【0104】
即ち、半導体基板43上に微細な回路パターンを形成する技術として近時ではエキシマレーザ光などを使用した電子銃により微細な回路パターンを描画する技術も提案されているが、その際に微細な細線形状のパターンを確実に描画するのには未だ技術的な問題も多く、また、装置コストも高いものとなる。これに対し、本実施形態の光導波装置41を露光用マスクとして利用した場合には、既存の投影露光装置(ステッパー)を使用することができ、低コストで、且つ確実に細線形状の回路パターンをリソグラフィー技術にて形成することができる。
【0105】
なお、この第5実施形態の光導波装置41は、次のように変更してもよい。
即ち、前記光導波路13の光伝搬方向と直交する断面の形状及びその微小開口15の開口形状が正面から見て略L字状をなすように、各々直線状をなす幅狭部16同士が互いに一方の端部同士を直角に接続されるようにしてもよい。このような構成とすれば、パターン形状において直角となる部分を有する回路パターンについても簡単に形成することができる。なお、その場合は両幅狭部16の互いに直角に交わって接続される部分の近傍に幅広部17を設けるとよい。この点について、以下説明する。
【0106】
まず、図29(a)の光導波装置41の場合は、光導波路13の微小開口15が略L字状をなしているが、両幅狭部16が単に直角に交わって接続されているだけであり、その微小開口15には幅広部17がない。そのため、図29(b)に参考的に示したように、当該微小開口15から滲み出す細線形状のスポット光の光分布は、集光領域20aは勿論のこと薄明領域20bについても何ら繋がりのないものとなっている。従って、これではパターン形状が直角となる部分を有する回路パターンを形成できない。
【0107】
これに対し、図30(a)の光導波装置41の場合は、光導波路13の微小開口15が略L字状をなすように両幅狭部16が直角に交わって接続されていると共に、各幅狭部16の両端部には幅広部17が各々設けられている。特に、両幅狭部16の互いに直角に交わって接続される部分には両幅狭部16に共通の幅広部17が一つ設けられている。そのため、微小開口15がこのような開口形状をなす光導波装置41の光導波路13内へ、図30(a)において偏光方向が左右方向の水平偏波の光と同じく偏光方向が上下方向の垂直偏波の光とを入射すると、図30(b)に参考表示した集光領域20a及び薄明領域20bの光分布が得られる。即ち、両幅狭部16の各内面幅寸法値及び各内面長さ寸法値に各々対応した線幅及び線長で略L字状をなす一様な光強度分布のスポット光が得られる。
【0108】
(第6実施形態)
次に、本発明を同じく光導波装置の一種である偏光子に具体化した第6実施形態を図31及び図32に従って説明する。なお、偏光子とは、自然光等のようにあらゆる方向の偏光が混在した光から、偏光方向が一定方向の偏光を得るため、又は、偏光の有無を調べるための素子であり、例えば光をスペクトルに分解する分光器などにおいて用いられるものである。
【0109】
図31に示すように、本実施形態に係る光導波装置(偏光子)51は、前記各実施形態の光導波装置11等と同様の銀(Ag)にて構成された矩形板状をなす金属製板体からなる装置本体52を備えている。装置本体52には、その厚さ方向へ複数(本実施形態では3つ)の光導波路13が貫通形成されており、表面部52a及び裏面部(図示略)には、その内面幅寸法の大きさが光の波長よりも小さな微小開口15が前記各光導波路13の端部開口(先端側及び基端側の各開口)として形成されている。
【0110】
前記各微小開口15は、前記第3実施形態の光導波装置11Bにおける微小開口15と同様に、いわゆる幅広部というものがなく短手方向の内面幅寸法が微小開口15の内面全体に亘って同一幅の縦長方形状をなしている。そして、幅狭部16を構成する各微小開口15は、それぞれの長さ方向が互いに平行な配置となるように設けられている。なお、各微小開口15は、それらの光導波路13を介して伝搬される光の偏光方向(図31においてX方向)を幅方向とした場合、その幅方向と直交する方向(図31においてY方向)へ長さ方向が直線状に延びるように構成されている。また、本実施形態においても、前記各微小開口15の大きさは、装置本体52(及びその表面部52a)の大きさとの対比において実際には極小さなものであるが、図31においては各微小開口15の大きさが実際よりは誇張して図示されている。
【0111】
なお、本実施形態における前記各微小開口15は、それぞれ幅狭部16の内面幅寸法でもある当該各微小開口15の内面幅寸法が一例として16nmに設定されている。また、各微小開口15の形状寸法でもある当該各微小開口15(及び各幅狭部16)の内面長さ寸法は一例として559nmに設定されている。また、装置本体52の板厚は一例として78nmに設定されており、前記各微小開口15の幅方向の間隔は62nmに設定されている。なお、図31に示すように、装置本体52の表面部52aとは反対側の裏面には透明なガラス基板53が接合固定されている。
【0112】
次に、本実施形態に係る光導波装置(偏光子)51の作用について説明する。
さて、図31に矢印で示すように、前記光導波装置51の裏面側(ガラス基板53のある側)から、例えば波長が488nmの光を各光導波路13内へ入射したとする。すると、その入射光のうち図31でX方向へ偏光した光は各光導波路13を通過して微小開口15からZ方向へ透過光として出射される。しかし、図31でY方向へ偏光した光については殆ど透過光として出射されない。従って、各微小開口15の長さ方向(図31でY方向)と直交する方向(図31でX方向)が偏光方向となる光のみを透過光として得ることができる。
【0113】
ここで、前記光導波装置(偏光子)51における光導波路13(及び微小開口15)の開口断面の面積は、装置本体52の表面部52aの面積全体と対比した場合の面積割合が極めて小さな設定になっている。しかし、本実施形態の光導波装置51は、前記各実施形態の光導波装置11,11A,11B,11C,41の場合と同様に、装置本体52が伝搬光の波長を488nmとするとき比誘電率の実数部の値がマイナス7.38となる負誘電体媒質(プラズモン活性媒質)の銀(Ag)で構成されている。
【0114】
そのため、前記光導波路13内に入射された光のうちX方向へ偏光した光(入射偏光面と(図31における)X軸とのなす角度が0度の光)は表面プラズモンの電界結合の効果により電界強度が強くなり、光強度が増大された透過光として殆ど出射される。その理由は、前記各実施形態の場合と同様に、各光導波路13の内表面において発生した表面プラズモンが光導波路13内において幅方向で対向する両界面間で電界結合することに基づいている。なお、前記光導波路13内へ入射された光のうち、その入射偏光面と前記X軸とのなす角度が0度以外の光であっても、当該角度が小さい光(偏光)の場合には光導波路13の微小開口15から透過光として少しは出射される。そこで、この点につき図32に基づき説明する。
【0115】
即ち、図32において、横軸は、光導波路13へ入射された光(偏光)の入射偏光面と図31におけるX軸とのなす角度の大きさを表している。従って、その角度が90度ということは偏光方向が図31においてY方向の光であり、角度が0度ということは偏光方向が図31においてX方向の光であることを示すものとなる。また、図32において、縦軸は、光導波路13(及び微小開口15)の開口断面の面積に着目して、その単位面積当たりの入射光エネルギーを「1」としたときの透過光エネルギーの大きさを表している。なお、図32において黒丸印は装置本体52に内面幅寸法が16nmで内面長さ寸法が559nmの光導波路13が一つだけ形成されている場合のシミュレーション結果例であり、同じく黒四角印はそのような光導波路13が62nmの間隔をおいて平行に二つ配置された場合のシミュレーション結果例である。
【0116】
さて、この図32からも理解されるように、前記透過光エネルギーは、入射偏光面とX軸とのなす角度が0度に近付くほど大きくなる傾向を示す。特に、黒丸印で示される光導波路13が一つだけの場合に比して、そのような光導波路13を二つ(複数)平行配置した場合の黒四角印で示される例では、そのような傾向が顕著になっている。なお、上記のシミュレーション結果例では、エネルギーの基準として波数(=2π/波長)で規格化された単位面積に入るエネルギーを使っており、ここでは約78nm×78nmの正方形の単位面積に入るエネルギーを「1」としている。これは当該正方形の一辺の長さが波数で規格化されたとき、78×(2π/488)=1となることに基づいている。そして、この場合において、図32の黒丸印で示されたシミュレーション結果例の光導波装置51における入射光エネルギーは「1.44」であった。また、この場合において光導波路13の微小開口15から出射された透過光エネルギーを調べてみると、その値は「1.89」であった。
【0117】
一見、この結果はエネルギー保存の法則に反しているようにも考えられる。しかし、これは前述したように開口断面が細線形状をなす光導波路13の内表面で発生した表面プラズモンの電界結合効果により、前記光導波路13の開口断面よりも大きな面積の開口断面を有する光導波路内を通過する入射光エネルギーが集められているためと考えられる。また、かかる開口断面の光導波路13を有する光導波装置(偏光子)51の偏光特性を表すものとして公知の消光比Ψを計算すると、その消光比Ψ=P1/P2≒10×Log(900)=30(dB)という結果が得られた。
【0118】
なお、上記消光比Ψの計算式において、P1は入射偏光面と前記X軸とのなす角度が0度のときの光透過エネルギーの値であり、P2は入射偏光面と前記X軸とのなす角度が90度のときの光透過エネルギーの値である。同様に、図32の黒四角印で示されたシミュレーション結果例の光導波装置51の場合には、前記入射光エネルギーが「2.88」、前記透過光エネルギーが「8.00」であり、その消光比Ψ≒10×Log(1625)=32(dB)という結果が得られた。
【0119】
従って、本実施形態の偏光子に適用される光導波装置51によれば、光プローブに具体化した前記第1実施形態の光導波装置11における前記(1)~(5)の効果を同様に得られる他、次のような効果が得られる。
【0120】
即ち、各種の分光装置等に用いられる偏光子(偏光板など)に関し、その構成を簡単で低コストなものにできると共に、所望する偏光を光強度が増大された光(偏光)として確実容易に得ることができる。
【0121】
なお、この第6実施形態の光導波装置51は、次のように変更してもよい。
即ち、前記光導波路13の個数は任意であり一つ以上であれば複数でもよい。また、複数の光導波路13が直線上をなす各微小開口15(幅狭部16)を平行に配置するものであれば、各微小開口15の長さ方向は必ずしも図31のX方向に沿っていなくてよい。つまり、図32から理解されるように、所望する透過光エネルギーの大きさが得られるならば、その微小開口15の長さ方向は図31のX方向と所定角度で交差するものであってもよい。
【0122】
次に、前記各実施形態から把握される技術的思想について以下追記する。
(イ)前記光導波路は、その幅狭部の内面幅寸法が伝搬光の波長の2/5よりも小さな値に設定されている請求項1~請求項9のうち何れか一項に記載の光導波装置。
【0123】
(ロ)前記光導波路は、その幅狭部の内面幅寸法が伝搬光の波長の3/10よりも小さな値に設定されている請求項1~請求項9及び上記技術的思想(イ)のうち何れか一項に記載の光導波装置。
【0124】
(ハ)前記光導波路は、その幅狭部の内面幅寸法が伝搬光の波長の1/5よりも小さな値に設定されている請求項1~請求項9及び上記技術的思想(イ)(ロ)のうち何れか一項に記載の光導波装置。
【0125】
(ニ)前記光導波路は、その幅狭部の内面幅寸法が伝搬光の波長の1/10よりも小さな値に設定されている請求項1~請求項9及び上記技術的思想(イ)~(ハ)のうち何れか一項に記載の光導波装置。
【0126】
【発明の効果】
以上、詳述したように、本発明によれば、光導波路を介して伝搬される光の光強度を、その光の広がりの増大を招くことなく、低コストで増強することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 光プローブに具体化した第1実施形態の光導波装置に光ファイバを接続した状態の斜視図。
【図2】 同じく、その光導波装置の正面図。
【図3】 (a)は図2のA-A線断面図、(b)は図2のB-B線断面図。
【図4】 表面プラズモンの電界結合を説明した要部概略断面図。
【図5】 幅狭部の幅寸法と表面プラズモンの位相速度との対応関係図。
【図6】 (a)は第1実施形態の正面図、(b)は比較例1の正面図、(c)は比較例2の正面図。
【図7】 図6(a)~(c)の各微小開口を通過した光のX軸方向仮想平面上での光強度分布図。
【図8】 図6(a)~(c)の各微小開口を通過した光のY軸方向仮想平面上での光強度分布図。
【図9】 光プローブに具体化した第2実施形態の光導波装置に光ファイバを接続した状態の斜視図。
【図10】同じく、その光導波装置の正面図。
【図11】(a)は比較例の正面図、(b)は第2実施形態の正面図。
【図12】光プローブに具体化した第3実施形態の光導波装置に光ファイバを接続した状態の斜視図。
【図13】(a)は比較例の正面図、(b)は第3実施形態の正面図。
【図14】光プローブに具体化した第4実施形態の光導波装置に光ファイバを接続した状態の斜視図。
【図15】(a)(b)は、微小開口の開口形状が異なる各別例の正面図。
【図16】(a)(b)(c)は、微小開口の開口形状が異なる各別例の正面図。
【図17】本発明の別の実施形態を示すもので、(a)は正面図、(b)は同図(a)のA-A線断面図。
【図18】本発明の別の実施形態を示すもので、(a)は正面図、(b)は同図(a)のA-A線断面図。
【図19】本発明の別の実施形態を示すもので、(a)は正面図、(b)はその平面図。
【図20】本発明の別の実施形態を示すもので、(a)は正面図、(b)はその平面図。
【図21】本発明の別の実施形態を示すもので、(a)は正面図、(b)はその平面図。
【図22】光導波路の光伝搬方向に交差する断面形状が異なる別例の断面図。
【図23】光導波路の光伝搬方向に交差する断面形状が異なる別例の断面図。
【図24】光導波路の光伝搬方向に交差する断面形状が異なる別例の断面図。
【図25】露光用マスクに具体化した第5実施形態の光導波装置の斜視図。
【図26】同じく、その光導波装置の使用状態を説明する斜視図。
【図27】(a)(b)(d)は比較例の正面図、(c)は第5実施形態の正面図。
【図28】図27(a)~(d)の各微小開口を通過した光の縦方向(内面長さ方向)仮想平面上での光強度分布図。
【図29】第5実施形態の別例を示すもので、(a)はその正面図、(b)はその場合の光強度分布を表す説明図。
【図30】第5実施形態の好適な別例を示すもので、(a)はその正面図、(b)はその場合の光強度分布を表す説明図。
【図31】偏光子に具体化した第6実施形態の光導波装置の斜視図。
【図32】同じく、その光導波装置における入射偏光面と透過光エネルギーとの対応関係図。
【符号の説明】
11,11A,11B,11C,41,51…光導波装置、12,42,52…装置本体、12b,12c…凸部、13…光導波路、15…微小開口(端部開口)、16…幅狭部、17…幅広部、18…対向する内面部分、ax…幅狭部の内面幅寸法、bx…幅広部の内面幅寸法、L…光導波路の形状寸法。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
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【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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