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明細書 :カーボンナノチューブとイオン性液体とから成るゲル状組成物とその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3676337号 (P3676337)
公開番号 特開2004-142972 (P2004-142972A)
登録日 平成17年5月13日(2005.5.13)
発行日 平成17年7月27日(2005.7.27)
公開日 平成16年5月20日(2004.5.20)
発明の名称または考案の名称 カーボンナノチューブとイオン性液体とから成るゲル状組成物とその製造方法
国際特許分類 C01B 31/02      
FI C01B 31/02 101F
請求項の数または発明の数 5
全頁数 9
出願番号 特願2002-307754 (P2002-307754)
出願日 平成14年10月23日(2002.10.23)
審査請求日 平成17年1月21日(2005.1.21)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】福島 孝典
【氏名】小川 敦子
【氏名】相田 卓三
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】100087675、【弁理士】、【氏名又は名称】筒井 知
審査官 【審査官】廣野 知子
参考文献・文献 特開2002-544356(JP,A)
Jian Chen,Mark A.Hamno ,et al,Solution properties of Single -Walled Carbon Nanotubes,SCIENCE,1998年10月 2日,Vol.282,p.95-98
調査した分野 C01B 31/02
JOIS
WEB OF SCIENCE
WPI/L
特許請求の範囲 【請求項1】
カーボンナノチューブとイオン性液体とから成ることを特徴とするゲル状組成物。
【請求項2】
カーボンナノチューブが単層カーボンナノチューブであることを特徴とする請求項1に記載のゲル状組成物。
【請求項3】
請求項1のカーボンナノチューブとイオン性液体とから成るゲル状組成物を製造する方法であって、イオン性液体の存在下にカーボンナノチューブをせん断力を加えて細分化する工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項4】
前記細分化工程の生成物を遠心分離に供することを特徴とする請求項3に記載のゲル状組成物の製造方法。
【請求項5】
請求項1のカーボンナノチューブとイオン性液体とから成るゲル状組成物を加工する方法であって、当該ゲル状組成物に外力を加えた流動状態において、その組成物を印刷し、塗布し、押出し、または射出して、所定の形状を形成する工程、および前記イオン性液体を溶解し得る溶媒または吸収し得る吸収材に、前記形状を接触させてイオン性液体を除去する工程を含むことを特徴とする方法。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、分子ナノテクノロジーの技術分野に属し、特に、カーボンナノチューブ由来で加工性の優れた新規な材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
カーボンナノチューブは、金属的な性質から半導体までの多様で優れた電気的特性を有し、また、大きな表面積や機械強度特性などから、電気電子材料から高性能樹脂補強材などに至る各種の分野において、次世代先端材料として注目が集まり、世界的な規模で実用化研究が進行中である。
【0003】
しかし、カーボンナノチューブは、1本1本のチューブではなく、大きな束状で存在しており、加工性の悪いことが実用化の障害になっている。加工性の改良法としてカーボンナノチューブの表面を化学処理して分散性を改良する試みもされているが、その処理によりカーボンナノチューブの特性が損なわれる問題が指摘されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、カーボンナノチューブを、その特性を損なうことなく容易に加工することができるような新しい技術を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記の目的を達成するために検討を重ねた結果、イオン性液体を利用することによって、きわめて加工性の優れた組成物が得られることを発見し、本発明を導き出したものである。
【0006】
かくして、本発明に従えば、カーボンナノチューブとイオン性液体とから成るゲル状組成物が提供される。
また、本発明は、このようなカーボンナノチューブとイオン性液体とから成るゲル状組成物を製造する方法であって、イオン性液体の存在下に、カーボンナノチューブをせん断力を加えて細分化する工程を含み、好ましくは、その細分化工程の生成物を遠心分離に供する工程を含む方法を提供する。
【0007】
本発明に従えば、さらに、上記のカーボンナノチューブとイオン性液体とから成るゲル状組成物を加工する方法であって、当該ゲル状組成物に外力を加えた流動状態において、その組成物を印刷し、塗布し、押出し、または射出して、所定の形状を形成する工程、および前記イオン性液体を溶解し得る溶媒または吸収し得る吸収材に、前記形状を接触させてイオン性液体を除去する工程を含む方法も提供される。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明は、物理的操作のみで加工性のきわめて優れているカーボンナノチューブ含有材料(組成物)の調製を可能にした特異な技術を提供するものであり、1.カーボンナノチューブと、2.イオン性液体とを、3.せん(剪)断力下に細分化する、という3要素が必須であり、そのうちの1要素が欠けても本発明のゲル状組成物を得ることはできない。
【0009】
すなわち、(1)カーボンナノチューブとイオン性液体をせん断力を加えることなく、単に攪拌混合するだけではゲル状組成物は生成しない。(2)また、同じ炭素系材料でも、カーボンナノチューブではなく、グラファイト、C60、活性炭などではゲル状組成物は生成しない。(3)さらに、通常の有機溶媒やイオン性液体の前駆体を用いてカーボンナノチューブをせん断力下に細分化してもゲル状組成物は得られない(後述の比較例参照)。
【0010】
このようにして、本発明に従い、カーボンナノチューブとイオン性液体とから成るゲル状組成物を製造するには、先ず、イオン性液体の存在下にカーボンナノチューブをせん断力を加えながら細分化する。
この細分化工程において、せん断力を付与する手段は特に限定されるものではなく、例えば、実験室におけるような小規模の製造の場合は手動または自動の乳鉢ですり潰すことによってもよく、また、多量の製造を目的とする場合には、ボールミル、ローラーミル、振動ミルなどの高せん断力を付与することができる湿式粉砕装置を使用することができる。さらに、ニーダータイプの混練機も使用可能である。細分化に要する時間も特に限定されるものではなく、用途に応じて必要な細分化に応じて適宜変更できるが、一般的には5分間~1時間程度である。
【0011】
以上のような工程により、黒色のペースト状生成物が得られる。この黒色ペースト状生成物は、そのまま本発明に従う組成物として使用することもできるが、一般的には、遠心分離に供されることが好ましい。すなわち、この遠心分離工程により、ゲル状組成物の形成に関与しない余剰のイオン性液体が除去される。
【0012】
カーボンナノチューブとイオン性液体とから成る本発明のゲル状組成物の生成メカニズムや構造については未だ不明の点もあるが、各種の分析結果から大略次のように理解される(後述の実施例参照)。
(1)せん断力下における細分化処理は、カーボンナノチューブの化学的変性を引き起こすことはなく、カーボンナノチューブの相互のからみ合いを減少させて、その束を細くする物理的形状変化をもたらす。
(2)ゲルの形成は、カーボンナノチューブのからみ合いに因るものではなく、からみ合いの減少したカーボンナノチューブの表面に「カチオン-π」相互作用により結合したイオン性液体の分子がイオン結合を介してカーボンナノチューブの束どうしを結びつけることにより、形成される架橋構造(三次元網目構造)に起因するものと推測される。
【0013】
本発明において用いられるイオン性液体(ionic liquid)とは、よく知られているように、常温溶融塩または単に溶融塩などとも称されるものであり、常温(室温)を含む幅広い温度域で溶融状態を呈する塩である。
【0014】
本発明においては、従来より知られた各種のイオン性液体を使用することができるが、常温(室温)または可及的に常温に近い温度において液体を呈し安定なものが好ましい。本発明において用いられるのに好適なイオン性液体としては、下記の一般式(I)~(IV)で表わされるカチオン(好ましくは、第4級アンモニウムイオン)と、陰イオン(X)より成るものを例示することができる。
【0015】
【化1】
JP0003676337B2_000002t.gif【0016】
【化2】
JP0003676337B2_000003t.gif【0017】
【化3】
JP0003676337B2_000004t.gif【0018】
【化4】
JP0003676337B2_000005t.gif【0019】
上記の式(I)~(IV)において、Rは炭素数10以下のアルキル基またはエーテル結合を含み炭素と酸素の合計数が10以下のアルキル基を表わし、式(I)においてR1は炭素数1~4のアルキル基または水素原子を表わし、特に炭素数1のメチル基が好ましい。式(I)において、RとR1は同一ではないことが好ましい。式(III)および(IV)において、Xは1から4の整数である。
【0020】
陰イオン(X)としては、テトラフルオロホウ酸、ヘキサフルオロリン酸、ビス(トリフロロメチルスルホニル)イミド酸、過塩素酸、トリス(トリフロロメチルスルホニル)炭素酸、トリフロロメタンスルホン酸、ジシアンアミド、トリフロロ酢酸又は有機カルボン酸またはハロゲンのイオンより選ばれた少なくとも1種が例示できる。
【0021】
本発明が適用されるカーボンナノチューブは、よく知られているように、グラフェンシートが筒形に巻いた形状から成る炭素系材料であり、その周壁の構成数から単層ナノチューブ(SWCNT)と多層ナノチューブ(MWCNT)とに大別され、また、グラフェンシートの構造の違いからカイラル(らせん)型、ジグザグ型、およびアームチェア型に分けられるなど各種のものが知られている。本発明は、このような所謂カーボンナノチューブと称されるものであれば、いずれのタイプのカーボンナノチューブにも適用することができるが、一般的には、アスペクト比が大きい(すなわち、細くて長い)単層ナノチューブがゲルを形成し易く、したがって、本発明はSWCNTからゲル状組成物を得るのに特に適している。実用に供されるカーボンナノチューブの好適な例として、一酸化炭素を原料とし比較的量産が可能なHiPco(Carbon Nanotechnologies社から入手できる)が挙げられるが、勿論、これに限定されるものではない。
【0022】
カーボンナノチューブとイオン性液体の比率は、簡単な試験により知ることができ、細分化工程後、遠心分離に供したときに黒色のペースト状生成物(カーボンナノチューブ+イオン性液体)から透明なイオン性液体が分離されるような充分量のイオン性液体をカーボンナノチューブに対して用いる。カーボンナノチューブとイオン性液体の種類にもよるが、一般的には、重量比で、カーボンナノチューブに対して100倍以上のイオン性液体を使用する。
【0023】
また、カーボンナノチューブの純度が悪くなる程、ゲル形成能が低下するので、使用するカーボンナノチューブは合成時の触媒残存物のような不純物が可及的に少ないものが好ましい。一般的には、純度70%程度以上のカーボンナノチューブを用いるとゲル形成が効率的に行なわれるので好ましいが、カーボンナノチューブの純度は用途に応じて高純度のものから比較的低い純度のものまで適宜選択することができる。
【0024】
本発明のゲル状組成物は、カーボンナノチューブが微細に分散した状態から成る稀有の材料であり、そして、非揮発性で不燃性であり、熱的安定性が高いというイオン性液体に由来する特徴も有する。
カーボンナノチューブとイオン性液体とから成る本発明のゲル状組成物の更なる特筆すべき性質は、そのままでは形態保持性があるが、外力を加えると流動性を示すということである。
【0025】
したがって、本発明の組成物は、この特性を利用し、注射器、ジェット噴射プリンターやバーコーター、スプレーコーターまたはその他の適当な器具・装置を用いて該組成物を印刷し、塗布し、押出し、または射出して所定の形状〔平面的(二次元的)な点や線、文字、パターン、図形等、および繊維状物や、立体的(三次元的)な成型物等〕を形成し、その後、その形状からイオン性液体を除去するという成形(成型)加工が可能となる。所定の形状からのイオン性液体の除去は、そのイオン性液体を溶解し得る溶媒(例えば、水、アルコール等)に接触する(例えば、その溶媒に浸漬して抽出除去したり、その溶媒で洗浄する)か、または、イオン性液体を吸収し得る吸収材(例えば、濾紙や濾布)に接触させることにより実施され、これによって、カーボンナノチューブから成る当該形状が保持される。かくして、本発明のゲル状組成物は、カーボンナノチューブを含有する新しいタイプの塗料、プリント材料、被膜材料、成形(成型)体材料、半導体や金属的特性を生かした電子デバイス材料、ミクロ医薬医療材料等として広範な用途が期待される。
【0026】
【実施例】
本発明の特徴を更に具体的に説明するため、以下に実施例を示すが、本発明はこの実施例によって制限されるものではない。
実施例1:ゲル状組成物の調製と用例
単層カーボンナノチューブ(HiPco:Carbon Nanotechnologies社製、純度95%以上)1重量部とイオン性液体1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフロオロボレイト(BMIBF4:図1参照)200重量部を自動乳鉢に加えて、室温で15分磨り潰したところ、黒色のペースト状物が得られた。このペーストを遠心分離(9,100gで3時間)したところ、カーボンナノチューブ(HiPco)を約1重量%含有するイオン性液体との黒色ゲル状組成物と透明なイオン性液体に分離された。
他のイオン性液体、すなわち、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム・テトラフルオロボレイト(EMIBF4)、1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウム・テトラフルオロボレイト(HMIBF4)、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム・ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(BMITf2N)、および1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム・ヘキサフルオロホスフェート(BMIPF6)(図1参照)を用いて同様にゲル状組成物を調製した。イオン性液体としてEMIBF4およびHMIBF4を用いた場合には、BMIBF4の場合と同様にカーボンナノチューブ(HiPco)を約1重量%含有するゲル状組成物が得られた。BMITf2NおよびBMIPF6を使用した場合には、ゲルの形成は更に効率的に行なわれ、約0.5重量%のカーボンナノチューブ(HiPco)でゲル状組成物を得ることができた。
これらのゲル状組成物を注射器に入れて糸状に押出すことができたので、ガラス板上に押出し描画した。その後、描画物に濾紙を当接したところ濾紙にイオン性液体が吸収され、黒色の描画物は安定に保持されていた。
【0027】
比較例:有機溶媒および他の炭素系材料の使用
比較のために、上述したようなイオン性液体の代わりに、汎用有機溶媒であるジクロロベンゼン、エタノール、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、または、イオン性液体の前駆体に相当する1-メチルイミダゾールを用いてカーボンナノチューブ(HiPco)を実施例1と同様に自動乳鉢で高いせん断力下室温で2時間以上細分化したが、いずれもゲルは生成しなかった。
さらに、炭素系材料として、カーボンナノチューブ(HiPco)の代わりに、グラファイト(1~2μm、Aldrich製)、活性炭またはC60(純度99.9%、TCI製)を用いて実施例1と同様に高いせん断力下に細分化処理を試みたが、ゲル形成はいずれも認められなかった。
【0028】
実施例2:ゲル状組成物の構造解析
(1)電子顕微鏡観察と光学スペクトル測定:
実施例1で得られたゲル状組成物(イオン性液体:BMIBF4)を脱イオン水に分散させた場合のカーボンナノチューブ(HiPco)のTEM(透過型電子顕微鏡)像を図2のaに示す。比較のために、エタノールで超音波処理したのみのゲル形成前のカーボンナノチューブ(HiPco)のTEM像を図2のbに示す。せん断力下に細分化処理が行なわれてゲルが形成されると、カーボンナノチューブのからみ合いが減少してその束が細くなっていることが分かる。
また、このゲル状組成物を石英プレート間に挟んで測定した電子吸収スペクトルを図3のaに示す。単層カーボンナノチューブ(HiPco)について報告されている電子スペクトル、すなわち、半導体性ナノチューブに由来する730~1000nmおよび1100~1700nmのスペクトル、ならびに金属性ナノチューブに由来する540~680nmのスペクトルが認められる。さらに、当該ゲル組成物のラマンスペクトル(励起波長:488nm)を図3のbに示す。よく知られたカーボンナノチューブ(HiPco)のラマンスペクトルが観察されている(1588cm-1および201cm-1)。これらの結果から、せん断力下における細分化処理は、カーボンナノチューブの化学的変性を引き起こさず、物理的形状変化をもたらすにすぎないことが理解される。
【0029】
(2)動的粘弾性測定:
カーボンナノチューブ(HiPco)15mgとイオン性液体(BMIBF4)2.0mLとを自動乳鉢に加えて室温で1時間磨り潰した後、遠心分離(9,100g×1時間)に供して得られたゲル状組成物について動的粘弾性の測定を行なった。その結果を図4に示す。
付与するひずみ(γ)が小さいときに(γ=0.01、0.1)、G'(貯蔵弾性率)にプラトー領域が見られることから、このゲル状組成中に弾性網目構造が形成されているとともに、ひずみが大きくなると(γ=1.0)、G'およびG''(損失弾性率)が著しく低下して角振動数に応じて変化していることからゲルの破壊が生じることが理解される。図4に示されるように、付与するひずみがかなり小さくても(γ<1.0)、貯蔵弾性率G'が角振動数(ω)に依存していることから、ゲルを構成する網目構造はカーボンナノチューブのからみ合いのような強いものではなく、比較的弱い物理的な相互作用に因るものであることが推測される。
【0030】
(3)熱分析およびX線回折測定:
実施例1で調製した0.5重量%のカーボンナノチューブ(HiPco)を含有するゲル状組成物(イオン性液体:BMITf2N)について示差走査熱量計(DSC)分析およびX線回折(XRD)測定を行なった。
DSC分析の結果を図5のaに示す。-52℃における発熱ピークと-4℃における吸熱ピークとの間の中間相について行なったXRD測定の結果を図5のbに示す。これらのDSC分析およびXRD測定の結果は、低温に於いて多結晶構造を形成するイオン性液体BMITf2Nのみについて行なったDSC分析およびXRD測定の結果(図6のaおよびb)とは、全く異なっている。また、ここで用いたカーボンナノチューブがX線回折を示さないことは確認されている。したがって、図5のbに示されるように単純なXRD回折パターンが得られるのは、イオン性液体が広い領域にわたって単一の様式で分子配列していることに因るものと考えられる。そして、図5のbに示すdの値(4.60Å)は、結晶EMIPF6について報告されているイミダゾリウムイオンがイオン対を形成する場合の面間距離(4.53Å)にほぼ一致する。
これらの(2)および(3)の結果から、本発明のゲル状組成物におけるゲルの形成は、からみ合いの減少したカーボンナノチューブの表面に「カチオン-π」相互作用により結合したイオン性液体の分子がイオン結合を介して互いに配列してカーボンナノチューブどうしを結びつけることにより形成される三次元網目構造に因るものと推測される。
【0031】
実施例3
実施例1のカーボンナノチューブ(HiPco)に代えて金属触媒残渣を20重量%含有する純度の低いカーボンナノチューブを用いる以外は実施例1と同一条件でゲル状組成物の調製を行ったところ、カーボンナノチューブを約2.5重量%含有するイオン性液体との黒色ゲル状組成物を得た。
【0032】
実施例4
実施例1のカーボンナノチューブ(HiPco)に代えてレーザー法で製造されたグラファイトを30重量%含有する純度の低いカーボンナノチューブを用いる以外は実施例1と同一条件でゲル状組成物の調製を行ったところ、カーボンナノチューブを約1.5重量%含有するイオン性液体との黒色ゲル状組成物を得た。
【0033】
【発明の効果】
以上の記述から明らかなように、本発明に従えば、カーボンナノチューブをイオン性液体の存在下にせん断力を加えて細分化するという簡単な方法により、カーボンナノチューブとイオン性液体とから成るゲル状組成物が得られる。得られるゲル状組成物は、加工性に優れ、単に外力を加えた流動状態で印刷、塗布、押出または射出等の手段で所定の形状を形成した後、溶媒や吸収材でイオン性液体を除去するだけでよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明において用いられるのに好適なイオン性液体の例の化学構造式を示す。
【図2】カーボンナノチューブとイオン性液体とから成る本発明のゲル状組成物の透過型顕微鏡(TEM)像(a)をゲル形成前のカーボンナノチューブのTEM像(b)と比較して示す。
【図3】本発明のゲル状組成物について測定した電子吸収スペクトル(a)とラマンスペクトル(b)を例示する。
【図4】本発明のゲル状組成物について測定した動的粘弾性の測定結果を例示する。
【図5】本発明のゲル状組成物について行なった示差走査熱量計(DSC)分析およびX線回折(XRD)測定の結果を例示する。
【図6】比較のためにイオン性液体のみについて行なったDSC分析およびXRD測定の結果を示す。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5