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明細書 :時間分解・非線形複素感受率測定装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B1)
特許番号 特許第3533651号 (P3533651)
登録日 平成16年3月19日(2004.3.19)
発行日 平成16年5月31日(2004.5.31)
発明の名称または考案の名称 時間分解・非線形複素感受率測定装置
国際特許分類 G01M 11/00      
G01J  9/02      
G01J 11/00      
FI G01M 11/00 T
G01J 9/02
G01J 11/00
請求項の数または発明の数 5
全頁数 13
出願番号 特願2003-001549 (P2003-001549)
出願日 平成15年1月7日(2003.1.7)
優先権出願番号 2002276155
優先日 平成14年9月20日(2002.9.20)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成15年1月7日(2003.1.7)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人 科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】犬塚 史一
【氏名】三沢 和彦
【氏名】覧具 博義
個別代理人の代理人 【識別番号】100082876、【弁理士】、【氏名又は名称】平山 一幸
審査官 【審査官】樋口 宗彦
参考文献・文献 犬塚史一・三沢和彦・LANG R,応用物理学会学術講演会講演予稿集,2002年 9月24日,V.63rd;No.3,p941 26a-YC-10
調査した分野 G01N 21/00 - 21/61
G01J 3/00 - 3/52
G01J 4/00 - 4/04
G01J 9/00 - 9/04
G01M 11/00 - 11/08
G01B 9/00 - 9/10
要約 【課題】 プローブ光の波面の歪みに影響されることなく測定できる、時間分解・非線形複素感受率測定装置を提供する。
【解決手段】 フェムト秒領域の光パルスを照射して生ずる非線形光学材料の非線形複素感受率の時間変化を偏光分割型サニャック型干渉光路8中で単一の光パルスを分割して生成した互いに直交する偏光を参照光5とプローブ光6に用いて測定する。偏光分割型サニャック型干渉光路中で参照光5及びプローブ光6の偏光方向を90度回転する偏光方向変換機構により被測定試料面3での偏光方向を揃え、偏光分割型サニャック型干渉光路を出力した参照光とプローブ光間の位相差を位相差掃引機構9で掃引し、掃引する各々の位相差における参照光とプローブ光との干渉光強度を測定して得られる位相差掃引干渉波形から時間分解・非線形複素感受率を求める。
特許請求の範囲 【請求項1】
参照光とプローブ光が伝搬するサニャック型干渉光路と、この光路中に配置される被測定試料に照射する光パルスを供給し、かつ、上記サニャック型干渉光路に光パルスを供給する光パルス光源と、上記参照光とプローブ光との干渉光強度を測定する測定器とを有する、時間分解・非線形複素感受率測定装置において、
上記参照光とプローブ光とが互いに直交する偏光であり、
上記サニャック型干渉光路が偏光分割型サニャック型干渉光路であり、
上記偏光分割型サニャック型干渉光路中で上記参照光及びプローブ光の偏光方向を90度回転する偏光方向変換機構と、
上記偏光分割型サニャック型干渉光路を出力した上記参照光とプローブ光間の位相差を掃引する位相差掃引機構と、
上記参照光とプローブ光間の位相差を、上記光パルスが偏光分割型サニャック型干渉光路へ入射する前に補償する位相差補償機構とを有し、
上記偏光分割型サニャック型干渉光路から出力した参照光とプローブ光間の位相差を掃引し、この掃引する各々の位相差における参照光とプローブ光との干渉光強度を測定して得られる位相差掃引干渉波形から、時間分解・非線形複素感受率を求めることを特徴とする、時間分解・非線形複素感受率測定装置。

【請求項2】
前記参照光とプローブ光間の位相差を補償する位相差補償機構は、前記偏光分割型サニャック型干渉光路と、この光路に光パルスを供給する前記光パルス光源との間に配置する、λ/2波長板とλ/4波長板とからなり、このλ/2波長板を回転して前記参照光とプローブ光間の位相差を補償することを特徴とする、請求項1に記載の時間分解・非線形複素感受率測定装置。

【請求項3】
前記偏光分割型サニャック型干渉光路中で前記参照光及びプローブ光の偏光方向を90度回転する偏光方向変換機構は、上記光路中に配置するλ/2波長板であることを特徴とする、請求項1に記載の時間分解・非線形複素感受率測定装置。

【請求項4】
前記偏光分割型サニャック型干渉光路を出力した参照光とプローブ光間の位相差を掃引する位相差掃引機構は、上記偏光分割型サニャック型干渉光路の出力端と前記干渉強度を検出する測定器との間に配置される、λ/4波長板と偏光子とからなり、このλ/4波長板を回転して上記参照光とプローブ光間の位相差を掃引することを特徴とする、請求項1に記載の時間分解非線形複素感受率測定装置。

【請求項5】
前記偏光分割型サニャック型干渉光路を出力した参照光とプローブ光間の位相差を掃引する位相差掃引機構は、上記偏光分割型サニャック型干渉光路の出力端と前記干渉強度を検出する測定器との間に配置される、λ/4波長板と偏光子とからなり、この偏光子を回転して上記参照光とプローブ光間の位相差を掃引することを特徴とする、請求項1に記載の時間分解非線形複素感受率測定装置。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【1】

【発明の属する技術分野】本発明は、物質中に誘起された非線形分極の緩和による時間変化を測定するための時間分解・非線形複素感受率測定装置に関する。

【10】
図10は、従来のサニャック干渉計型時間分解非線形複素感受率測定装置による空間干渉縞を示す図である。横軸はCCDカメラ上の位置を示している。試料に励起パルス光を照射することによって生ずるプローブ光と参照光との間の位相差は、プローブ光と参照光との間に位相差がない場合の干渉縞ピークと、試料に励起パルス光を照射してプローブ光と参照光との間に位相差を生じさせた場合の干渉縞ピークとのずれを測定することによって求まる。この図は、試料に励起パルス光を照射してプローブ光と参照光との間に位相差を生じさせた場合の干渉縞を示している。図からわかるように、干渉縞の周期は正の位置で周期が短く、負の位置で周期が長くなっており、位置0mmを中心として左右非対称である。この現象は、プローブ光が励起された試料を通過することにより等位相波面がゆがむ、すなわち、プローブ光のビーム軸に垂直な断面内で位相が揺らぐことによる。位相差の測定は、この干渉縞が理想的な正弦波形であるときに理論的に可能となり、干渉縞ピークのずれから位相差を求める従来法の場合には、干渉縞の周期のずれの影響により大きな誤差を生ずる。

【11】
図11は、従来のサニャック干渉計型時間分解非線形複素感受率測定装置において、分光器を配置して空間的に波長分散させた空間干渉縞を測定した結果を示す図である。縦軸はプローブ光と参照光の光路差に対応しており、横軸は光波長に対応している。図の白い部分は干渉縞のピークに対応する。図11(a)は試料に励起パルス光を照射しない場合の測定結果であり、図11(b)は試料に励起パルス光を照射した場合の測定結果である。図11(b)に見られるように、干渉縞に歪みが存在し、図8の場合と同様に、正しく位相差を測定することができない。

【12】
このように、従来のサニャック干渉計型時間分解・非線形複素感受率測定装置は、プローブ光と参照光の光路をずらせて空間的な干渉縞を形成するために、プローブ光の波面の歪みにより、非線形複素感受率を正しく測定できないという課題があった。

【13】

【特許文献1】特願2001-268846号公報 (第19ー21頁、第8ー10図)
【非特許文献1】Y.Li,G.Eichmann,and R.R.Alfano,“Pulsed-mode laser Sagnac interferometrywith applications in nonlinear optics and optical switching”,Applied Optics,Vol.25,No.2,p.209(1986)
【非特許文献2】R.Trebino and C.C.Hayden,“Antiresonant-ring transient spectroscopy”,Optics Letters,Vol.16,No.7,P.493(1991)
【非特許文献3】M.C.Gabriel,N.A.Whitaker,Jr.,C.W.Dirk,M.G.Kuzyk,and M.Thakur,“Measurement of ultrafast optical nonlinearities using a modified Sagnac interferometer”,Optics Letters,Vol.16,No.17,p.1334(1991)
【非特許文献4】K.Misawa and T.Kobayashi,“Femtosecond Sagnac interferometer for phasespectroscopy”,Optics Letters,Vol.20,No.14,p.1550-1552(1995)
【非特許文献5】D.H.Hurley and O.B.Wright,“Detection of ultrafast phenomena by use of amodified Sagnac interferometer”,Optics Letters,Vol.24,No.18(1999)

【14】
上記課題に鑑み本発明は、プローブ光の波面の歪みに影響されることなく測定できる、時間分解・非線形複素感受率測定装置を提供することを目的とする。

【15】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、本発明の時間分解・非線形複素感受率測定装置は、参照光とプローブ光が伝搬するサニャック型干渉光路と、光路中に配置される被測定試料に照射する光パルスを供給し、かつ、上記サニャック型干渉光路に光パルスを供給する光パルス光源と、参照光とプローブ光の干渉光強度を測定する測定器とを有する、時間分解・非線形複素感受率測定装置において、参照光とプローブ光とが互いに直交する偏光であり、サニャック型干渉光路が偏光分割型サニャック型干渉光路であり、偏光分割型サニャック型干渉光路中で参照光とプローブ光の偏光方向を変更する偏光方向変換機構と、偏光分割型サニャック型干渉光路を出力した参照光とプローブ光間の位相差を掃引する位相差掃引機構と、参照光とプローブ光間の位相差を補償する位相差補償機構とを有し、偏光分割型サニャック型干渉光路から出力した参照光とプローブ光間の位相差を掃引して、各々の掃引位相差における参照光とプローブ光の干渉光強度を測定して求めた位相差掃引干渉波形から、時間分解・非線形複素感受率を求めることを特徴とする。上記参照光とプローブ光間の位相差を補償する位相差補償機構は、偏光分割型サニャック型干渉光路と、偏光分割型サニャック型干渉光路に光パルスを供給する光パルス光源との間に配置するλ/2波長板とλ/4波長板とからなり、このλ/2波長板を回転して参照光とプローブ光間の位相差を補償することを特徴とするものである。また、偏光分割型サニャック型干渉光路中で参照光とプローブ光の偏光方向を90度回転する偏光方向変換機構は、光路中に配置するλ/2波長板であることを特徴とするものである。さらに、偏光分割型サニャック型干渉光路を出力した参照光とプローブ光間の位相差を掃引する位相差掃引機構は、偏光分割型サニャック型干渉光路の出力端と干渉光強度を測定する測定器との間に配置される、λ/4波長板と偏光子とからなり、このλ/4波長板を回転して偏光間の位相差を掃引することを特徴とするものである。

【16】
上記構成によれば、偏光分割型サニャック型干渉光路に光パルスを供給する光パルス光源から偏光子を介して出射した直線偏光パルスは、位相差補償機構に入射する。位相差補償機構は光軸の周りに任意に回転できるλ/2波長板と、下記に説明する参照光またはプローブ光の偏光方向と45度をなす方向に進相軸または遅相軸を固定したλ/4波長板とからなり、λ/2板を回転することにより参照光とプローブ光間の位相差を任意に調整できる。位相差補償機構は、参照光またはプローブ光が偏光分割型サニャック型干渉光路を構成する偏光ビームスプリッタ等で反射または屈折する際に生ずる参照光とプローブ光間の固定位相を補償してゼロにするために用いる。

【17】
偏光分割型サニャック型干渉光路は、入力端、出力端を兼ねる偏光ビームスプリッタと複数のミラーとからなっている。偏光ビームスプリッタの反射面において、光入射面に直交する方向に電界ベクトルを有する光成分は反射し、光入射面内に電界ベクトルを有する光成分は透過するので、偏光ビームスプリッタは、位相差補償機構で固定位相を補償した楕円偏光を、偏光ビームスプリッタの反射面において反射し且つ干渉光路面に垂直な電界ベクトルを有する偏光と、偏光ビームスプリッタを透過し且つ干渉光路面に平行な電界ベクトルを有する偏光とに分割する。この2つの偏光を参照光及びプローブ光、またはプローブ光及び参照光に用いる。複数のミラーは偏光ビームスプリッタで分割された2つの偏光が全く同じ光路を互いに反対方向に伝搬して、すなわち右回りと左回りに伝搬して、偏光ビームスプリッタに戻り、再び偏光ビームスプリッタで合波されて1本の光ビームになるように配置されている。

【18】
偏光分割型サニャック型干渉光路中で、右回りと左回りの光路長が適切な長さ異なる位置に被測定試料を配置し、右回りと左回りの2つの光ビームの被測定試料を通過するタイミングが適切な時間異なるようにしてある。この時間内に被測定試料に光パルスを照射し、参照光は光照射前の被測定試料を通過し、プローブ光は光パルス照射後の被測定試料を通過するようにする。参照光は非線形複素感受率の影響を受けず、プローブ光は非線形複素感受率の影響を受けるので偏光分割型サニャック型干渉光路を出力する際の参照光とプローブ光の位相差及び振幅差は非線形複素感受率を反映したものとなる。

【19】
また、偏光分割型サニャック型干渉光路中には、λ/2波長板が配置されている。参照光及びプローブ光はサニャック型干渉光路中を互いに逆方向に伝搬するので、参照光またはプローブ光のどちらか一方がλ/2波長板を通過してから被測定試料に到達し、もう一方は被測定試料を通過してからλ/2波長板に到達する。従って、被測定試料を通過する際の参照光とプローブ光の偏光方向が一致する。参照光とプローブ光の偏光方向を一致させることができ、非線形複素感受率の偏光依存性が測定できる。

【2】

【従来の技術】次世代の光情報通信技術にとって必要なのは、超高速性、大容量性、並列処理性である。近年特に急速に発展したフェムト秒パルス発生技術によれば、従来の光情報通信技術よりも3桁ほど高速に情報処理ができることが指摘されている。しかしながら、フェムト秒光通信の実用化には、フェムト秒領域のパルス発生技術だけでは解決できない多くの課題が残されている。光ファイバ伝送路の帯域の課題も重要ではあるが、最も深刻なのは、超短光パルスの波形制御、変復調、スイッチングなどをフェムト秒パルスにみあった超高速で行うデバイスの開発である。このような超高速デバイスは電子デバイスでは実現不可能であり、光を光で制御する光デバイスで実現可能である。また、伝送損失の影響を避けるために、光強度変調ではなく光位相変調が最適である。

【20】
偏光分割型サニャック型干渉光路を出力した参照光とプローブ光は、位相差掃引機構に入力される。位相差掃引機構は回転可能なλ/4波長板と、参照光またはプローブ光の偏光方向と45度をなす偏光子とからなる。位相差掃引機構から出力する参照光とプローブ光の干渉光の強度は、偏光分割型サニャック型干渉光路を出力した際の参照光とプローブ光間の位相差及び振幅差と、λ/4波長板の回転による回転位相差の既知の関数である。λ/4波長板を回転することによって回転位相差を掃引し、各々の回転位相差における干渉光強度を測定して位相差掃引干渉波形を求め、上記の既知の関数形と比較して、偏光分割型サニャック型干渉光路を出力した際の参照光とプローブ光間の位相差及び振幅差を求める。この位相差及び振幅差から非線形複素感受率を求めることができる。

【21】
また、位相差掃引機構は、参照光またはプローブ光の偏光方向と45度をなすλ/4波長板と、回転可能な偏光子とからなっていても良い。位相差掃引機構から出力する参照光とプローブ光の干渉光の強度は、偏光分割型サニャック型干渉光路を出力した際の参照光とプローブ光間の位相差及び振幅差と、偏光子の回転による回転位相差の既知の関数である。偏光子を回転することによって回転位相差を掃引し、各々の回転位相差における干渉光強度を測定して位相差掃引干渉波形を求め、上記の既知の関数形と比較して、偏光分割型サニャック型干渉光路を出力した際の参照光とプローブ光間の位相差及び振幅差を求める。この位相差及び振幅差から非線形複素感受率を求めることができる。

【22】
これらの方法は、参照光とプローブ光を空間的に干渉させる従来の方法とは異なり、参照光とプローブ光を同一のビーム状態で干渉させるので、すなわちビーム断面内のすべての位相差を足し合わせた干渉となるので、プローブ光のビーム断面内のランダムな位相歪みが打ち消しあい、ほぼ理想的な正弦波形の干渉縞が得られる。これにより、理論的な解析が精度良く行え、真の非線形複素感受率を測定することができる。さらに、励起光の照射タイミングを変化させて上記測定を繰り返すことにより、時間分解・非線形複素感受率を測定することができる。

【23】

【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明の時間分解・非線形複素感受率測定装置の構成を示す図である。図において、本発明の装置1は、光パルスを供給する光パルス光源部2と、被測定試料3に励起光パルス4を照射して誘起した非線形複素感受率を参照光5とプローブ光6間の位相差に変換する偏光分割型サニャック型干渉光路8と、偏光分割型サニャック型干渉光路8を出力した参照光5とプローブ光6の位相差を掃引する位相差掃引機構9と、位相差掃引機構9を出力した干渉光10を空間的に波長分散する分光器11と、空間的に波長分散された波長ごとの干渉光強度を測定する光強度測定器12と、励起光パルス4の照射タイミングに同期して干渉光強度を検出するロックイン・アンプ13と、測定結果を解析・計算し時間分解・非線形複素感受率を表示するコンピュータ14と、さらに、参照光5とプローブ光6の位相差を精密に調整する位相補償機構15とから構成される。

【24】
光パルス光源部2は、光パルスを発生するパルス発振器16と、パルス発振器16の発生する光パルスの強度を増幅するマルチパス増幅器17と、マルチパス増幅器17から出力する光パルス18を、サニャック型干渉光路8に供給する光パルス20と励起光パルス4とに分割するビームスプリッタ19と、励起光パルス4の照射タイミングを制御する光遅延回路26と、ロックイン検出のための光チョッパ27とからなる。マルチパス増幅器17は、例えば、最小時間半値幅30フェムト秒、パルスエネルギー約300μJのパルスを1kHzの時間間隔で発生する。

【25】
偏光分割型サニャック型干渉光路8に供給される光パルス20は、偏光子21を通過して直線偏光22になり、位相補償機構15に入射する。位相差補償機構15は下記に説明する参照光5またはプローブ光6が、偏光分割型サニャック型干渉光路8を構成する偏光ビームスプリッタ23で反射または屈折する際に生ずる参照光5とプローブ光6間の固定位相を補償してゼロにするために用いる。位相差補償機構15は、光軸の周りに任意に回転できるλ/2波長板24と、参照光5またはプローブ光6の偏光方向と45度をなす方向に進相軸または遅相軸を固定したλ/4波長板25とからなり、λ/2波長板24を回転することにより参照光5とプローブ光6間の位相差を任意に調整する。

【26】
次に、位相差補償機構の作用を説明する。図2は、λ/2波長板とλ/4波長板とよりなる位相差補償機構の作用を説明する図であり、図2(a)はλ/2波長板の作用を説明する図である。図において、点線F2 はλ/2波長板24の進相軸を示し、αは入射直線偏光22と進相軸F2 のなす角を示す。座標軸X及びYはそれぞれ参照光5の偏光方向とプローブ光6の偏光方向を示す。λ/2波長板の作用は、入射直線偏光を直線偏光のままλ/2波長板の進相軸F2 の周りに対称に反転する。従って、入射直線偏光22は入射時の偏光方向から、2α傾いた方向の直線偏光22’となって出力する。すなわち、λ/2波長板24の進相軸F2 を回転する(αを変化させる)ことによって、入射直線偏光22の偏光方向(2α)を任意の方向に向けることができる。

【27】
図2(b)は、λ/2波長板24の回転によって偏光方向を任意の方向に向けられた直線偏光22’と、λ/4波長板25の進相軸F4 と遅相軸S4 の方位関係を示す図であり、進相軸F4 と遅相軸S4 は90度をなし、進相軸F4 はX方向(参照光5の偏光方向)に対して45度方向に固定されている。直線偏光22’と進相軸F4 のなす角をφとし、直線偏光22’の振幅をE、周波数をω、伝搬定数をk、伝搬方向をz、時間をt、とすれば直線偏光22’の進相軸F4 成分Ef は、
【数1】
JP0003533651B1_000002t.gifと表せ、直線偏光22’の遅相軸S4 成分Es は、
【数2】
JP0003533651B1_000003t.gifと表せる。λ/4波長板は進相軸偏光成分と遅相軸偏光成分との間にπ/2の位相差を形成するものであるからλ/4波長板25通過後の進相軸成分Ef ’を、
【数3】
JP0003533651B1_000004t.gifとすれば、遅相軸成分Es ’は、
【数4】
JP0003533651B1_000005t.gifとなる。λ/4波長板25通過後の進相軸成分Ef ’及び遅相軸成分ES ’を、X軸方向及びY軸方向成分に分解すると、X軸方向成分Ex ’は、
【数5】
JP0003533651B1_000006t.gifとなり、Y軸方向成分Ey ’は、
【数6】
JP0003533651B1_000007t.gifとなる。上記式(5)、式(6)から明らかなように、X軸方向成分とY軸方向成分との間には、2φの位相差が生じている。すなわち、λ/2波長板を任意の角度(φ)回転することにより、X軸方向成分とY軸方向成分との位相差を任意に調整でき、反射、屈折等の避け得ない原因で生じる参照光とプローブ光間の固定位相を補償して零にすることができる。

【28】
次に、偏光分割型サニャック型干渉光路の構成を図1に基づいて説明する。偏光分割型サニャック型干渉光路8は、入射直線偏光28を参照光5とプローブ光6に分割する偏光ビームスプリッタ23と、参照光5とプローブ光6が同一の経路を逆方向に伝搬して再び偏光ビームスプリッタ23で合波されて同一の光ビームになるように配置された複数のミラー29~35と、光路8中に配置されたλ/2波長板36とからなる。偏光ビームスプリッタ23は入射直線偏光28を、図において紙面に垂直方向(X方向)の偏光、すなわち参照光5と、図において紙面内の水平方向(Y軸方向)の偏光、すなわちプローブ光6に分割する。参照光5は図において右回り、プローブ光6は図において左回りにサニャック型干渉光路8を伝搬する。λ/2波長板36は、被測定試料3を通過する際の、参照光5とプローブ光6の偏光方向を一致させる。すなわち、図においてプローブ光6(偏光方向はY方向)は、λ/2波長板36を通過して偏光方向が90度回転してX方向となり、被測定試料3に入射する。参照光5は、偏光方向がX方向のまま被測定試料に入射するので、被測定試料3を通過する際の参照光5とプローブ光6の偏光方向が同じになる。参照光5とプローブ光6の偏光方向が一致するので、非線形複素感受率のテンソル成分を測定できる。

【29】
次に、偏光分割型サニャック型干渉光路の動作を図1に基づいて説明する。位相補償機構15を出力した入力光パルス37は、偏光分割型サニャック型干渉光路8への入力光パルス28と偏光分割型サニャック型干渉光路8からの出力光パルス5,6を分離するビームスプリッタ38を透過して偏光分割型サニャック型干渉光路8の偏光ビームスプリッタ23に入力される。入力光パルス28は偏光ビームスプリッタ23によってサニャック型干渉光路を右回りに伝搬する参照光5と、左回りに伝搬するプローブ光6に分割される。図において参照光5が被測定試料3に至る光路長は、プローブ光6が被測定試料3に至る光路長より短いので、参照光5が先に被測定試料3に到達し、後からプローブ光6が被測定試料3に到達する。参照光5が被測定試料3に到達してからプローブ光6が被測定試料3に到達するまでの時間内に励起光パルス4が被測定試料3に照射されるように光遅延器26を制御すれば、参照光5は非励起状態の被測定試料3を通過し、プローブ光6は励起状態または励起状態が緩和中の被測定試料3を通過する。励起状態及び励起状態が緩和中の被測定試料3は非線形複素感受率を伴っているので、プローブ光6の位相及び振幅は非線形複素感受率に応じて変化する。偏光分割型サニャック型干渉光路8は右回り光路と左回り光路が全く等しいので、偏光ビームスプリッタ23を出力する参照光5とプローブ光6は、非線形複素感受率に対応した位相差及び振幅差を有している。さらに、光遅延器26を制御することによってプローブ光6の照射時刻を変化させることができるので、励起状態の生起時点から励起状態の終了にわたって非線形複素感受率の時間変化を測定できる。

【3】
光位相変調通信を実現するためには位相復調デバイスも重要である。位相復調デバイスには、例えば本発明者らによる光多重送受信装置(特許文献1)において提案されているように、非線形光学材料を用いた和周波発生方式がある。この方式は、位相変調されたフェムト秒光パルスから位相情報を読み出すために、非線形光学結晶の和周波発生を利用するものである。非線形光学効果の研究は近年かなり進んでおり、大きな非線形特性を有する光学材料の開発がなされた。しかしながら、位相復調デバイスを実現するためには非線形光学定数の大きさのみならず、これらの非線形特性のフェムト秒領域の緩和特性を正しく評価する必要がある。しかしながら従来の測定方法ではフェムト秒領域の時間分解能で非線形特性の超高速時間変化を測定することができない。

【30】
次に、位相差掃引機構を説明する。図1に示すように、偏光分割型サニャック型干渉光路8を出力した参照光5とプローブ光6は、位相差掃引機構9に入力される。最初に位相差掃引機構の第一の実施の形態を説明する。第一の実施の形態にかかる位相差掃引機構9は、図1に示すように、回転可能なλ/4波長板39と、参照光5(またはプローブ光6)の偏光方向と45度をなす偏光子40とからなり、λ/4波長板39を回転することにより、参照光5とプローブ光6間の位相差を任意に変化させることができる、すなわち、参照光5とプローブ光6間の位相差を掃引することができる。位相差掃引機構9から出力する参照光5とプローブ光6の干渉光強度は、偏光分割型サニャック型干渉光路8を出力した際の参照光5とプローブ光6間の位相差及び振幅差と、λ/4波長板39の回転による回転位相差の既知の関数である。

【31】
次に、第一の実施の形態にかかる位相差掃引機構の作用を説明する。図3は、λ/4波長板と偏光子とよりなる第一の実施の形態の位相差掃引機構の作用を説明する図である。図3(a)は、λ/4波長板に入射する参照光Ex及びプローブ光Ey と、λ/4波長板の遅相軸X’及び進相軸Y’の方位関係を示す図である。Ψをプローブ光Ey と進相軸Y’がなす角、すなわちλ/4波長板の回転角とする。偏光分割型サニャック型干渉光路8を出力した際の参照光5とプローブ光6間の位相差をθとし、参照光及びプローブ光の振幅をそれぞれ、Eref 、Epro とすると、参照光Ex 及びプローブ光Ey はそれぞれ、
【数7】
JP0003533651B1_000008t.gif【数8】
JP0003533651B1_000009t.gifと表すことができる。λ/4波長板は進相軸偏光成分と遅相軸偏光成分との間にπ/2の位相差を生じさせるから、λ/4波長板通過後の進相軸Y’偏光成分Ey ’、及び遅相軸X’偏光成分Ex ’はそれぞれ、
【数9】
JP0003533651B1_000010t.gif【数10】
JP0003533651B1_000011t.gifと表すことができる。図3(b)は、λ/4波長板通過後の進相軸Y’偏光成分Ey ’と遅相軸X’偏光成分Ex ’と偏光子との方位関係を示す図であり、φ2 を参照光方向(X)と偏光子の透過軸方向pとがなす角とする。偏光子によって、進相軸Y’偏光成分Ey ’と遅相軸X’偏光成分Ex ’の透過軸p方向成分のみが出力される。例えば、Eref =Epro =Eとした場合には、偏光子を透過する光成分Ep は、上記式(9)、式(10)から、
【数11】
JP0003533651B1_000012t.gifとなる。さらに、偏光子を通過した後に形成される干渉光強度は、Ep の絶対値の2乗であるから、
【数12】
JP0003533651B1_000013t.gifとなる。さらに、式を整理すると、
【数13】
JP0003533651B1_000014t.gifとなる。この式(13)からわかるように、干渉光強度|Ep 2 は、参照光とプローブ光間にあらかじめ存在した位相差θとλ/4波長板の回転角Ψの関数である。最低限、干渉光強度|Ep 2 と回転角Ψがわかれば、式(13)からθを求めることができる。さらに好ましくは、Ψを掃引して測定した位相差掃引干渉波形を測定し、カーブフィッティング等の手法により、高精度にθを求めることができる。

【32】
なお、上記説明では説明をわかりやすくするために、解析的に表現できる、Eref =Epro =Eの場合について示したが、Eref とEpro が等しくない場合にも、あらかじめ、種々のEref /Epro 比、θについて位相差掃引干渉波形を数値計算で求めておき、これらの位相差掃引干渉波形と測定した位相差掃引干渉波形を比較することによって容易に参照光とプローブ光間にあらかじめ存在した位相差と振幅比を求めることができ、これらの位相差と振幅比から非線形複素感受率が求まる。

【33】
このように、λ/4波長板39を回転することによって回転位相差を掃引し、各々の回転位相差における干渉光強度を光強度測定器12で測定して位相差掃引干渉波形を求め、上記の既知の関数形と比較して、偏光分割型サニャック型干渉光路8を出力した際の参照光5とプローブ光6間の位相差及び振幅比を求め、この位相差及び振幅比から非線形複素感受率が得られる。また、分光器11で波長分散して波長ごとに干渉光強度を測定し、波長ごとの位相差及び振幅比を求めれば、波長ごとの非線形複素感受率を求めることができる。この方法は、参照光とプローブ光を空間的に干渉させる従来の方法とは異なり、参照光とプローブ光を同一のビーム状態のまま干渉させるので、すなわちビーム断面内のすべての位相差を足し合わせた干渉となるので、プローブ光のビーム断面内のランダムな位相歪みが打ち消しあい、ほぼ理想的な干渉縞が得られる。このため、解析の精度が著しく向上し、真の非線形複素感受率を求めることができる。

【34】
次に、位相差掃引機構の第二の実施の形態を説明する。第二の実施の形態の位相差掃引機構は、第一の実施の形態の位相差掃引機構と同様に、λ/4波長板と偏光子とからなるが、λ/4波長板の回転角を固定し、偏光子の方を回転することが、第一の実施の形態とは異なる。図4は、第二の実施の形態の位相差掃引機構の作用を説明する図である。図4(a)は、λ/4波長板に入射する参照光Ex 及びプローブ光Ey と、λ/4波長板の遅相軸X’及び進相軸Y’の方位関係を示す図である。プローブ光Ey と進相軸Y’がなす角Ψは45°に固定する。この場合、式(9)及び式(10)に対応する、λ/4波長板通過後の進相軸偏光成分Ey ’及び遅相軸偏光成分Ex ’はそれぞれ、
【数14】
JP0003533651B1_000015t.gif【数15】
JP0003533651B1_000016t.gifと表すことができる(ただし、以下、共通の位相項exp{i(kx-ωt)}を省略して示す)。また、図4(b)は、λ/4波長板通過後の進相軸偏光成分Ey ’と遅相軸偏光成分Ex ’と偏光子との方位関係を示す図である。図において、進相軸偏光成分Ey ’と偏光子の偏光方向(-p)とがなす角をδとする。図から明らかなように、δ=π/4-φ2 であり、偏光子の回転(φ2 を変化させる)は、δの変化に対応する。偏光子を透過する光成分Ep は、上記式(14)、式(15)から、
【数16】
JP0003533651B1_000017t.gifとなる。さらに、偏光子を通過した後に形成される干渉光強度は、Ep の絶対値の2乗であるから、
【数17】
JP0003533651B1_000018t.gifとなる。

【35】
図5は、非線形複素感受率を反映した位相差θの測定例を示す図である。図において、縦軸は式(17)で表される干渉光強度|Ep 2 を示し、横軸は掃引する偏光子の回転角δを示す。周期関数Aは、励起光パルス4を照射しなかった場合の出力であり、周期関数Bは励起光パルス4を照射した場合の出力である。式(17)から明らかなように、周期関数Aはθを含まないから、図に示すように、周期関数Aと周期関数Bの位相のずれを測定すれば、非線形複素感受率に対応した位相変化量θを測定できる。また、この場合には、周期関数Aと周期関数Bの相対的位相のずれを測定すればよいので、参照光とプローブ光間の固定位相を補償する必要がなく、位相差補償機構を省略することができる。

【36】
また、非線形複素感受率に対応して位相と振幅が同時に変化した場合にも、容易に位相と振幅の変化量を測定できる。例えば、プローブ光の振幅がEpro からEpro +ΔE、及びプローブ光の位相がθからθ+Δθに変化した場合、すなわち、プローブ光Ey が、
【数18】
JP0003533651B1_000019t.gifで表されるとすれば、式(14)の代わりに、式(18)を用いることにより、偏光子を通過した後に形成される干渉光強度|Ep 2 は、
【数19】
JP0003533651B1_000020t.gifで表される。従って、変化前後の干渉光強度の差分信号をΔIとすれば、
【数20】
JP0003533651B1_000021t.gifとなり、この式から容易に、位相変化量Δθと振幅変化量ΔEを同時に求めることができる。

【37】
次に、実施例を示す。図6は、本発明の時間分解・非線形複素感受率装置で測定した二硫化炭素の結果を示す図である。左側の縦軸は非線形光学効果に基づく位相差θを示し、右側の縦軸は振幅変化率ΔE/Eを示し、横軸は励起光パルス照射時刻を基準とした時間(fs)を示す。図6(a)は参照光及びプローブ光の波長が790nmの場合であり、(b)は参照光及びプローブ光の波長が800nmの場合である。励起光パルスの幅は約10fsである。図から、位相差θ及び振幅変化率ΔE/Eは、励起後かなり長い時間にわたって緩和することがわかる。これらの位相差θ及び振幅変化率ΔE/Eの時間変化から、非線形複素感受率の緩和特性がわかる。

【38】
なお、上記説明ではλ/2波長板、λ/4波長板を使用し、これらの波長板を光軸の周りに回転することによって固有偏光間の位相差を制御する例を用いて説明したが、もちろんλ/2波長板、λ/4波長板の代わりに、電気光学結晶に電極を形成し、電極に印加する電圧によって制御してもよいことは明らかである。

【39】

【発明の効果】上記説明から理解されるように、本発明の装置は、参照光とプローブ光に単一の光パルスから分割した互いに直交する偏光を用いるので、参照光とプローブ光間の位相差を掃引でき、位相差を掃引できるので参照光とプローブ光間の位相差掃引干渉波形が測定できる。この際、参照光とプローブ光を単一のビーム状態で干渉させるのでプローブ光の波面の歪みに影響されることなく測定でき、ほぼ理想的な正弦波形をした位相差掃引干渉波形が得られる。これにより、正確な時間分解・非線形複素感受率が測定できる。また、サニャック型干渉光路中にλ/2波長板を有しているので、被測定試料における参照光とプローブ光の偏光方向を揃えることができ、非線形複素感受率の偏光方向依存性も測定できる。また位相補償機構を有しているので測定精度を向上することができる。

【4】

【発明が解決しようとする課題】本発明は上記課題に鑑み、超高速光通信技術を直接指向した非線形光学材料の性能評価、すなわち、光学物質の非線形光学定数の大きさのみならず、非線形複素感受率のフェムト秒領域の超高速時間変化を正しく測定できる時間分解非線形複素感受率測定装置を提供することにある。

【5】
次に、従来の時間分解・非線形複素感受率測定装置の課題について説明する。サニャック型干渉光路は、入力端、出力端を兼ねるビームスプリッタと、ビームスプリッタで分離した右回りと左回りの2つの光ビームが全く同じ光路長を有してビームスプリッタに戻るように配置した複数のミラーからなる。この光路中において、右回りと左回りで試料までの到達光路が適切な長さ異なる位置に被測定試料を配置すれば、右回りと左回りの2つの光ビームの被測定試料を通過するタイミングを適切な時間異ならせることができる。この時間内に被測定試料に光パルスを照射すれば、参照光は光照射前の被測定試料を通過し、プローブ光は光パルス照射後の被測定試料を通過する。

【6】
非線形分極が生じている被測定試料中を通過する光は非線形複素感受率の影響を受けて位相及び振幅が変化する。従って、サニャック型干渉光路のビームスプリッタから出力される参照光とプローブ光の干渉は、非線形複素感受率を反映したものとなり、この干渉を測定することによって非線形複素感受率を測定することができる。また、上記の被測定試料に光パルスを照射するタイミングを連続的に変化させて測定することにより、光パルス照射中の非線形複素感受率及び光パルス照射終了後の緩和状態の非線形複素感受率、すなわち、時間分解・非線形複素感受率を測定することができる。

【7】
図7は、従来のサニャック干渉計型時間分解非線形複素感受率測定装置の構成を示す図である。図において、サニャック干渉計101は、ビームスプリッタ102、ミラー103,104によって光路が形成されている。ビームスプリッタ102に近い光路中に被測定試料105が配置され、被測定試料105に励起光パルス106が照射される。サニャック干渉計101に光パルス107を供給すると、光パルス107はビームスプリッタ102によって、図において右回りの光路を伝搬するプローブ光108と、左回りの光路を伝搬する参照光109とに分割される。

【8】
図8は、プローブ光と参照光の被測定試料位置での通過タイミングを示す図であり、横軸は時間tである。図に示すように、右回り光路と左回り光路とで被測定試料105に至る光路長が異なるため、参照光109が先に到達し、プローブ光108が後から到達する。参照光109が到達した後からプローブ光108が到達するまでの時間内に励起光パルス106を試料105に照射する。また、この時間内で励起光パルス106を照射するタイミングを連続的に変えることができる。プローブ光108は励起光パルス106で励起された直後の試料105を通過するので、被測定試料105の非線形複素感受率に対応した位相変化、振幅変化を伴って、図7に示したビームスプリッタ102に到達する。一方、参照光109は、励起光パルス106が照射される前に試料105を通過するので、試料の位相変化、振幅変化を伴わずにビームスプリッタ102に到達する。右回り光路と左回り光路が全く等価であるので、ビームスプリッタ102を出射するプローブ光108と参照光109とでは、励起光パルス106で励起された試料105の非線形複素感受率に対応した位相変化量、振幅変化量だけ異なっている。

【9】
図9はプローブ光と参照光を干渉させる従来の方法の一例を示す図である。図に示すように、ミラー103または104をサニャック干渉計の正規のミラー位置からずらすことによって、右回りのプローブ光108と左回りの参照光109の光路をずらし、この光路のずれたプローブ光108と参照光109のビーム波面の曲率を利用して、図7に示したCCDカメラ110面上で干渉させて空間干渉縞を形成する。あるいは、サニャック干渉計101に供給する光パルス107に白色光源を用い、分光器111を配置して波長分散させた波長ごとの干渉縞を2次元CCDカメラ110面上に形成する。
図面
【図1】
0
【図5】
1
【図8】
2
【図10】
3
【図2】
4
【図3】
5
【図4】
6
【図7】
7
【図11】
8
【図6】
9
【図9】
10