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明細書 :唾液中肝細胞増殖因子の定量による歯周炎の検査方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4696252号 (P4696252)
公開番号 特開2003-066039 (P2003-066039A)
登録日 平成23年3月11日(2011.3.11)
発行日 平成23年6月8日(2011.6.8)
公開日 平成15年3月5日(2003.3.5)
発明の名称または考案の名称 唾液中肝細胞増殖因子の定量による歯周炎の検査方法
国際特許分類 G01N  33/50        (2006.01)
G01N  33/53        (2006.01)
FI G01N 33/50 G
G01N 33/53 S
請求項の数または発明の数 3
全頁数 6
出願番号 特願2001-251183 (P2001-251183)
出願日 平成13年8月22日(2001.8.22)
審査請求日 平成20年7月29日(2008.7.29)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】899000057
【氏名又は名称】学校法人日本大学
発明者または考案者 【氏名】大島 光宏
個別代理人の代理人 【識別番号】110000084、【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
【識別番号】100068700、【弁理士】、【氏名又は名称】有賀 三幸
【識別番号】100077562、【弁理士】、【氏名又は名称】高野 登志雄
【識別番号】100096736、【弁理士】、【氏名又は名称】中嶋 俊夫
【識別番号】100089048、【弁理士】、【氏名又は名称】浅野 康隆
【識別番号】100101317、【弁理士】、【氏名又は名称】的場 ひろみ
【識別番号】100117156、【弁理士】、【氏名又は名称】村田 正樹
【識別番号】100111028、【弁理士】、【氏名又は名称】山本 博人
審査官 【審査官】淺野 美奈
参考文献・文献 特開平11-083854(JP,A)
特開平08-035968(JP,A)
特開2000-028608(JP,A)
調査した分野 G01N 33/50
G01N 33/53
特許請求の範囲 【請求項1】
歯周炎進行度の指標として、プロテアーゼインヒビターの存在下に、被検唾液中の肝細胞増殖因子濃度を測定することを特徴とする歯周炎患者唾液の検査方法。
【請求項2】
肝細胞増殖因子が、活性型肝細胞増殖因子である請求項1記載の検査方法。
【請求項3】
前記歯周炎進行度の指標が、測定された唾液中の肝細胞増殖因子濃度と相関性を有する、プロービング深さ、4mm以上のプロービングを有する数、6mm以上のプロービングを有する数又はプロービングによる出血部位のパーセンテージを指標とするものである請求項1又は2記載の検査方法。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は歯周炎の診断に有用な歯周炎患者唾液の判定方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
歯周炎の早期診断は、有効な早期治療を可能にし、その結果、病変の重症化及び合併症を防止するうえで有用である。歯周炎のスクリーニングテストが具備すべき条件としては、(1)疾病や異常が精度良く的確に把握できること、(2)簡便で結果が早くわかること、(3)受診者になるべく苦痛を与えないこと、(4)費用が安価であることなどが挙げられている。
【0003】
歯周炎ポケットからの滲出液には、ハイドロキシプロリン、グリコサミノグリカンなどの細胞組織崩壊マーカーや、プロスタグランディンE2、インターロイキン1βなどの炎症メディエータ及びアミノトランスフェラーゼ、コラゲナーゼなどの酵素類が含まれているので、当該滲出液は歯周炎の優れた診断材料であることが知られている(CDA JOURNAL 21巻 35-41頁 1993年)。しかしながら、これらの指標では歯周組織特異性が確認できない。また、滲出液を採取して測定に供するための試料に調整するまでには、マウスリンスで唾液を除くことや遠心分離操作などが必要(J. Periodont. Res 25巻 257-267頁 1990)であり、高価な装置及び複数の操作を要することから、一般歯科診療室や集団検診で行うことが出来る歯周病のスクリーニングテストとしては未だ実用化されていない。
【0004】
このほかにも、採取した歯周ポケット滲出液の病因微生物を分離して検出する方法や病因微生物由来の酵素活性を測定する方法も報告されている(日本歯周病学会誌 32巻 249-260頁 1990年)が、歯周ポケットからの微生物の採取や酵素活性の測定に時間がかかるという欠点があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、歯周ポケット滲出液でなく唾液自体を対象とした新たな歯周炎診断のための手段を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
そこで本発明者らは、唾液中の成分と歯周炎の進行度との関係について種々検討してきたところ、唾液中の肝細胞増殖因子(以下HGF)濃度と歯周炎の進行度との間に高い相関性があり、歯周炎が高精度かつ簡便、迅速に診断できることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、被検唾液中のHGF濃度を測定することを特徴とする歯周炎患者唾液の判定方法を提供するものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明においては、被検体として唾液を用いる。また、唾液を直接用いてもよいが、唾液を含む洗口液を用いてもよい。歯周ポケット滲出液に含まれている成分が必ずしも唾液中にも含まれているか否か不明であるが、本発明者はHGFが唾液中に存在することを確認し、さらに当液唾液中のHGF濃度と歯周炎の進行度との相関性を見出した。
【0009】
用いる唾液の量は、通常0.5~5.0mL、好ましくは0.5~1.0mLで十分である。
【0010】
唾液は、そのままHGFの測定に供してもよいが、市販のHGF測定用ELISAキットに付属の緩衝液等を添加して2~5倍に希釈した液を用いてもよい。さらには、当該希釈液を遠心分離して沈渣を除いた上清を検体とするのがより好ましい。また唾液は、凍結保存したものを融解して用いてもよい。
【0011】
唾液中のHGF濃度の測定手段は、特に制限されず、例えば免疫学的測定法、HPLCシステム、プロテインチップ+SELDI-TOF-MSシステムなどが挙げられるが、このうち免疫学的測定法がより好ましい。免疫学的測定法としては、固相化抗HGF抗体を用いたELISA法がさらに好ましい。市販のHGF測定用ELISAキットとして、ヒトHGF免疫測定キット(R&Dシステムズ社)を用いることもできる。
【0012】
HGF濃度の測定にあたっては、プロテアーゼインヒビターの存在下に測定するのが、得られた測定値と歯周炎との相関性がより向上するので好ましい。プロテアーゼインヒビターとしては、アプロチニン、AEBSF、NEM、EDTA、E-64、ベスタチン、ロイペプチン及びペプスタチンAから選ばれる1種又は2種以上、特にプロテアーゼインヒビターカクテルP8340(Sigma社、AEBSF、アプロチニン、ベスタチン、E-64、ロイペプチン及びペプスタチンAの混合物)、プロテアーゼインヒビターカクテルP2714(Sigma社、AEBSF、アプロチニン、ベスタチン、EDTA、E-64、ロイペプチン及びペプスタチンAの混合物)が挙げられるが、特にこれらのプロテアーゼインヒビターカクテル(Sigma社)が好ましい。これらのプロテアーゼインヒビターの測定系における含有量は、プロテアーゼインヒビターの種類によって異なるが、例えばこれらのプロテアーゼインヒビターカクテル(Sigma社)の場合、10~20U/mL唾液が好ましい。
【0013】
また、HGFの中でも活性型HGF濃度を測定するのがより好ましい。活性型HGF濃度を測定するには、例えばHGF「オーツカ」ELISAキットにより行うのが好ましい。凍結した唾液を融解して使用して活性型HGF濃度を測定する場合には、プロテアーゼインヒビターの存在下に測定すると正確な活性型HGF濃度が測定でき、特に好ましい。
【0014】
唾液中のHGF濃度と、歯周炎患者の臨床パラメータであるプロービング深さ(Proping depth:PD)及び被検者→患者一人あたりの4mm以上のPDを有する数、および6mm以上のPDを有する数、また患者の最も深いPDおよびプロービングによる出血部位のパーセンテージ(BOP)とが高い相関性を有している。例えば、HGF濃度が高い唾液の患者のPDは4mm以上であった。またHGF濃度の高い唾液のBOPは10%以上であった。従って、唾液中のHGF濃度の測定は歯周炎診断に有用である。
【0015】
【実施例】
次に実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに何ら限定されるものではない。
【0016】
実施例1
(1)唾液の採取と前処理
安静時無刺激全唾液を吐唾法により採取する。この唾液を4℃下で遠心分離し、上清を回収する。プロテアーゼインヒビターカクテル(Sigma社)を含む、キットに付属の希釈用緩衝液を等量加えて2倍に希釈する。
【0017】
(2)HGF濃度の測定法
HGF測定用ELISAキット(R&Dシステムズ社製、ヒトHGF免疫測定キット)を用い、プレートの各ウェルに150μLの希釈用緩衝液(RDIW)を加える。次いで50μLのHGF標準溶液または唾液サンプルを加え室温で2時間インキュベートする。プレートを4回洗浄する。200μLのconjugate(酵素抗体)溶液を加えて1.75時間インキュベートする。プレートを4回洗浄する。200μLの基質溶液を加えて30分間反応させる。50μLの反応停止液を加えた後、マイクロプレートリーダーを用いて450nmの波長で吸光度を測定する。検量線から唾液サンプル中のHGF濃度を求める。
【0018】
(3)結果
唾液中のHGF量と4mm以上のPD数とは相関係数r=0.421と有意に相関した(図1)。また6mm以上のPD数とはr=0.524、最深PDとはr=0.496でいずれも有意に相関した(図2、図3)。さらにプロービングによる出血部位のパーセンテージ(BOP)ともr=0.422と有意に相関した(図4)。
【0019】
【発明の効果】
本発明方法によれば、簡便かつ迅速で患者に負担をかけることなく歯周炎の進行度が判定できることから、的確な治療を施すことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】唾液中のHGF濃度と4mm以上のPDの数との相関性を示す図である。
【図2】唾液中のHGF濃度と6mm以上のPDの数との相関性を示す図である。
【図3】唾液中のHGF濃度と最深PDとの相関性を示す図である。
【図4】唾液中のHGF濃度とBOPとの相関性を示す図である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3