TOP > 国内特許検索 > 局所的3次元構造を有する2次元フォトニック結晶スラブ > 明細書

明細書 :局所的3次元構造を有する2次元フォトニック結晶スラブ

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3568943号 (P3568943)
公開番号 特開2004-191408 (P2004-191408A)
登録日 平成16年6月25日(2004.6.25)
発行日 平成16年9月22日(2004.9.22)
公開日 平成16年7月8日(2004.7.8)
発明の名称または考案の名称 局所的3次元構造を有する2次元フォトニック結晶スラブ
国際特許分類 G02B  6/12      
FI G02B 6/12 Z
G02B 6/12 F
請求項の数または発明の数 12
全頁数 11
出願番号 特願2002-355631 (P2002-355631)
出願日 平成14年12月6日(2002.12.6)
審査請求日 平成15年2月3日(2003.2.3)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人 科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】野田 進
【氏名】浅野 卓
【氏名】田中 良典
個別代理人の代理人 【識別番号】100095670、【弁理士】、【氏名又は名称】小林 良平
審査官 【審査官】日夏 貴史
参考文献・文献 国際公開第02/014913(WO,A1)
特開2001-272555(JP,A)
特開平06-082642(JP,A)
特開2004-029810(JP,A)
特開2004-109627(JP,A)
岩本敏 et.al.,2002年秋季第63回応用物理学会学術講演会予稿集,2002年 9月24日,第3分冊,p.922
S.Fan et.al.,Physical Review Letters,1997年 4月28日,Vol.78 No.17,p.3294-3297
H.Y. Ryu et.al.,IEEE Journal on Selected Topics in Quantum Electronics,March/April 2002, Vol.8 No.2,p.231-237
調査した分野 G02B 6/12 - 6/14
G02F 1/00 - 3/02
H01S 5/00 - 5/50
G02B 1/02
特許請求の範囲 【請求項1】
a)スラブ状の本体と、
b)前記本体に周期的に配列された複数の、本体とは屈折率の異なる領域と、
c)前記本体の表面に屈折率部材を載置することにより形成される光共振器と、
を備えることを特徴とする局所的3次元構造を有する2次元フォトニック結晶スラブ。
【請求項2】
a)スラブ状の本体と、
b)前記本体に周期的に配列された複数の、本体とは屈折率の異なる領域と、
c)前記本体の表面に屈折率部材を載置することにより形成される光共振器と、
d)前記屈折率部材の近傍に、前記異屈折率領域の欠陥を線状に設けることにより形成される導波路と、
を備え、光分合波器として機能することを特徴とする局所的3次元構造を有する2次元フォトニック結晶スラブ。
【請求項3】
材料、形状、大きさのいずれかが異なる2個以上の屈折率部材を本体の表面に載置したことを特徴とする請求項1又は2に記載の局所的3次元構造を有する2次元フォトニック結晶スラブ。
【請求項4】
異屈折率領域の点状欠陥を本体内に設け、その位置に屈折率部材を載置したことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の局所的3次元構造を有する2次元フォトニック結晶スラブ。
【請求項5】
それぞれ異なる共振波長を有する異屈折率領域点状欠陥を本体内に複数個設け、各点状欠陥の位置に屈折率部材を載置したことを特徴とする請求項4に記載の局所的3次元構造を有する2次元フォトニック結晶スラブ。
【請求項6】
前記屈折率部材を本体の表裏両面に載置したことを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の局所的3次元構造を有する2次元フォトニック結晶スラブ。
【請求項7】
前記屈折率部材を本体の表裏両面の同じ位置に載置したことを特徴とする請求項6に記載の局所的3次元構造を有する2次元フォトニック結晶スラブ。
【請求項8】
本体の表裏両面の同じ位置に同一の屈折率部材を載置したことを特徴とする請求項7に記載の局所的3次元構造を有する2次元フォトニック結晶スラブ。
【請求項9】
表裏非対称な異屈折率領域点状欠陥を設けることを特徴とする1~8のいずれかに記載の局所的3次元構造を有する2次元フォトニック結晶スラブ。
【請求項10】
前記屈折率部材が前記本体と同じ材料から成ることを特徴とする請求項1~9のいずれかに記載の局所的3次元構造を有する2次元フォトニック結晶スラブ。
【請求項11】
前記屈折率部材が外部からの作用により屈折率が変化する材料から成ることを特徴とする請求項1~9のいずれかに記載の局所的3次元構造を有する2次元フォトニック結晶スラブ。
【請求項12】
前記屈折率部材が柱状であり、その頂部が凹形又は凸形であることを特徴とする請求項1~11のいずれかに記載の局所的3次元構造を有する2次元フォトニック結晶スラブ。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、波長分割光多重通信等で用いられる光分合波デバイス等に適用することができる2次元フォトニック結晶に関する。特に、それらのデバイス中に設けられる光共振器において外部との間の光の授受を効率よく行う技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、新しい光デバイスとして、フォトニック結晶が注目されている。フォトニック結晶とは周期屈折率分布をもった機能材料であり、光や電磁波のエネルギーに対してバンド構造を形成する。特に、光や電磁波の伝播が不可能となるエネルギー領域(フォトニックバンドギャップ)が形成されることが特徴である。
【0003】
フォトニック結晶中の屈折率分布に適切な欠陥を導入することにより、フォトニックバンドギャップ中にこの欠陥によるエネルギー準位(欠陥準位)が形成される。これによって、フォトニックバンドギャップ中のエネルギーに対応する波長範囲のうち、欠陥準位のエネルギーに対応する波長の光のみが存在可能になる。結晶中の上記欠陥を線状にすれば導波路となり、結晶中の欠陥を点状にすれば共振器となる。
【0004】
フォトニック結晶には、2次元結晶あるいは3次元結晶を用いることができる。両者にそれぞれ特長があるが、このうち2次元結晶は作製が比較的容易であるという点で有利である。特許文献1には、2次元フォトニック結晶において、円柱孔を三角格子状に周期的に配列することによって周期屈折率分布を設け、この円柱孔を線状に欠損させることによって導波路を形成し([0025]、図1)、導波路近傍に点欠陥を形成する([0029]、図1)ことが記載されている。特許文献1においては、実施例として周期的に配列された円柱孔の径を大きくすることによって形成される点欠陥について検討している。
【0005】
【特許文献1】
特開2001-272555号公報([0025]、[0029]、[0032]、[0039]~[0040]、図1、図5、図6)
【0006】
また、本願出願人らは、特願2002-086221号出願において、周期屈折率分布を形成する異屈折率領域のうち隣接する2個以上の異屈折率領域を欠陥とすることによってクラスタ欠陥を形成することを提案している。ここで異屈折率領域の欠陥は、その異屈折率領域の屈折率を他の異屈折率領域の屈折率と異なるものとすることによって形成する。他の異屈折率領域よりも屈折率が低いものをアクセプタ型欠陥、高いものをドナー型欠陥と呼ぶ。前記特許文献1に記載の、円柱孔を大きくすることによって形成する欠陥はアクセプタ型欠陥であり、異屈折率領域を設けないことによって形成する欠陥はドナー型欠陥である。クラスタ欠陥と、1個の異屈折率領域のみを欠損させて形成される点欠陥とを総称して「点状欠陥」と呼ぶ。
【0007】
これらの点状欠陥を設けた2次元フォトニック結晶には様々な用途が考えられるが、その典型例として光多重通信が挙げられる。近年の光多重通信においては、1本の伝送路に複数の波長の光を重畳して伝播させ、それぞれに別個の信号を乗せる波長分割多重方式が用いられる。2次元フォトニック結晶は、導波路と、各波長に対応する欠陥準位を有する異なる複数の点状欠陥とを前記のように設けることにより、導波路中を伝播する光のうち特定の波長の光(信号)を点状欠陥から取り出す分波器や、特定の波長の光を点状欠陥から導波路に導入する合波器として用いることができる。
【0008】
分波器等において点状欠陥(光共振器)から光を光ファイバ等の結晶外部に取り出す際に、点状欠陥が円柱等のように2次元フォトニック結晶の面に垂直な方向に対称な形状を有する場合には、面の表裏に同じ強度で光が放射される。しかし、2次元フォトニック結晶が基板に載置されている場合、結晶の自由面から放射された光のみ利用が可能であり、基板面から放射された光は損失となる。そこで、特許文献1や前記特願2002-086221号出願において、点状欠陥の形状を表裏非対称とすることにより、一方の面から放射される光と他方の面から放射される光との放射強度の比(表裏放射比)を制御することが検討されている。これにより、一方の面からの放射強度を増大し、放射(取り出し)効率を上げることができる。例えば特許文献1には、アクセプタ型点欠陥を円錐形状にする点欠陥([0032]、図5)や、径が面の表裏で異なる点欠陥([0032]、図6)が示されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、2次元フォトニック結晶の本体自体を表裏非対称に加工して点状欠陥を作製することは容易ではない。例えば、特許文献1の[0039]~[0040]に記載された、欠陥位置以外の結晶表面をフォトレジストでマスクして反応性イオンでエッチングすることにより点状欠陥を作製する方法では、円柱形状等の表裏対称な点状欠陥を形成することはできるが、円錐形状等の表裏非対称な点状欠陥を形成することはできない。
【0010】
本発明はこのような課題を解決するために成されたものであり、その目的とするところは、光の表裏放射比を制御することが可能であり、且つ従来よりも容易に作製することができる点状欠陥を有する2次元フォトニック結晶を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために成された本発明に係る局所的3次元構造を有する2次元フォトニック結晶スラブは、
a)スラブ状の本体と、
b)前記本体に周期的に配列された複数の、本体とは屈折率の異なる領域と、
c)前記本体の表面に屈折率部材を載置することにより形成される光共振器と、
を備えることを特徴とする。
また、本発明の局所的3次元構造を有する2次元フォトニック結晶スラブは、
a)スラブ状の本体と、
b)前記本体に周期的に配列された複数の、本体とは屈折率の異なる領域と、
c)前記本体の表面に屈折率部材を載置することにより形成される光共振器と、
d)前記屈折率部材の近傍に、前記異屈折率領域の欠陥を線状に設けることにより形成される導波路と、
を備えることにより、光分合波器として機能する。
【0012】
ここで、「屈折率部材」とは、本明細書においては空気とは屈折率の異なる材料から成る部材を言う。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の局所的3次元構造を有する2次元フォトニック結晶スラブは、面内方向の大きさに比べて厚さが十分薄い板状体であるスラブを本体とし、この本体に、本体とは屈折率の異なる領域を周期的に配置することによって構成される2次元フォトニック結晶を母体とする。この母体の2次元フォトニック結晶においては、周期的な異屈折率領域の存在によりフォトニックバンドギャップが形成され、その範囲内のエネルギーを持つ光が存在できなくなる。即ち、それに対応する波長帯の光は本体を通過することができない。本体の材料としては、例えばSiやInGaAsPを用いることができる。異屈折率領域の典型例として、前記特許文献1に記載された円柱孔がある。円柱孔を用いれば、本体に孔を空けるだけでよく、何らかの部材を本体に配置するよりも容易に作製することができる。
【0014】
この異屈折率領域を配置した本体の表面に、空気とは屈折率の異なる材料からなる屈折率部材を載置する。屈折率部材の屈折率(材料)、形状、大きさ、及び位置を適切に設定することにより、フォトニックバンドギャップ中に所望の値の欠陥準位を形成することができる。この屈折率部材を載置した位置が点欠陥となり、所望の波長の光を共振させる光共振器となる。なお、1つの本体上に屈折率部材を2個以上載置してもよい。また、材料、形状、大きさのいずれか、又はこれらのうちの2つ以上異なる2個以上の屈折率部材を載置すれば、異なる2種類以上の波長の光を共振させる光共振器となる。
【0015】
この屈折率部材を一方の面のみに載置すれば、この屈折率部材による点欠陥は2次元フォトニック結晶の面に関して非対称、即ち表裏非対称な点欠陥となる。一方の面から放射される光と他方の面から放射される光との放射強度の比(表裏放射比)は、屈折率部材の材料、形状、大きさを変化させることにより制御することができる。
【0016】
屈折率部材の形状を変化させることにより、光の表裏放射比のみならず、光の放射方向や光の収束・拡がり等を制御することができる。例えば、屈折率部材の頂部を凹形にすれば、放射される光を空間中の1点に収束させることができる。その場合、頂部の曲率を調節することにより収束点の位置を制御することができる。屈折率部材の頂部を凸形にした場合には、その曲率を調節することにより放射角を制御することができる。屈折率部材の形状の変化以外にも、屈折率部材の内部に屈折率の分布を与えることによって、光の放射方向を制御することもできる。以上のような光の放射方向や光の収束・拡がり等の制御は、従来の2次元フォトニック結晶光共振器では考慮されていなかったものである。
【0017】
屈折率部材は本体の表裏両方に載置してもよい。本体の一方の面に1個の屈折率部材を載置し、それとは異なる位置で反対側の面にもう1個の屈折率部材を載置することにより、それらは表裏放射比が異なる2個の点状欠陥となる。また、2個の屈折率部材を本体の同じ位置の表裏に載置することにより、両屈折率部材が相まって1つの点状欠陥となる。後者の場合、材料、形状、大きさのいずれかが異なる2個の屈折率部材を用いれば、光の放射強度、方向、収束、拡がり等を表裏で異なるものにすることができる。一方、放射強度、方向、収束、拡がり等を表裏で同じものとしつつそれらを制御する場合には、同一の屈折率部材を本体の同じ位置の表裏に載置すればよい。
【0018】
従来のアクセプタ型及びドナー型点状欠陥を形成する位置は、異屈折率領域の位置によって限定されていた。それに対して、本発明の屈折率部材による点状欠陥は、本体の任意の位置に形成することができる。なお、屈折率部材による点状欠陥での光の共振波長は、材料等の屈折率部材自体のパラメータの他に、屈折率部材と異屈折率領域との位置関係によって変化する。
【0019】
異屈折率領域の点状欠陥を本体内に設け、その位置に更に屈折率部材を配置することも有用である。これにより、異屈折率領域点状欠陥と屈折率部材とが相まって1つの点状欠陥の役割を果たす。各点状欠陥における異屈折率領域点状欠陥と屈折率部材とを共に異なるものとすれば、共振波長を選択する自由度が、それぞれの欠陥が単独に存在する場合よりも高くなる。一方、共振波長が異なる複数個の異屈折率領域点状欠陥を本体内に設け、それらの位置の本体表面に同じ材料、形状及び大きさを有する屈折率部材を配置すれば、それぞれの欠陥位置において異なる波長の光をほぼ同じ放射方向、収束・拡がりで取り出すことができる。
【0020】
また、本体自体を加工して形成した表裏非対称の異屈折率領域点状欠陥と、本発明の屈折率部材を用いた点欠陥とを共に本体に設けてもよい。異屈折率領域点状欠陥と屈折率部材の双方のパラメータを調整することにより、屈折率部材のみを設ける場合よりも、表裏放射比や放射方向等をより自由に制御することができる。
【0021】
屈折率部材の材料は、本体とは異なるものであってもよいし、同じものであってもよい。同じ材料を用いると、本体と屈折率部材とを容易に接合することができる。一方、本体とは異なる材料の中から選択すれば、共振波長を広い範囲に亘って変化させることができる。
【0022】
レーザの照射、圧力の印加、加熱等の外部からの作用により屈折率が変化する性質を持つ材料がある。例えば、InGaAsP系やInGaAlAsP系等の半導体において、量子井戸のバンドフィリング効果によって、レーザを照射することにより電荷密度が変化し、屈折率が変化するものが存在する。このような材料を屈折率部材に用いれば、その外部作用を変化させることによって共振波長を制御することができる光共振器を構成することができる。
【0023】
ここまでに述べた様々な屈折率部材の近傍に、異屈折率領域の欠陥を線状に設けて導波路を形成することにより、この2次元フォトニック結晶は、導波路を通過する光のうち所定の波長の光を屈折率部材によって導波路から外部へ分波し、又は外部から導波路へ合波する光分合波器となる。
【0024】
【発明の効果】
本発明の局所的3次元構造を有する2次元フォトニック結晶スラブにおいては、光の表裏放射比、放射方向、収束・拡がり等を制御することができる。表裏放射比を制御し、光の取り出しを行う面からの放射強度を反対側の面からの放射強度よりも強くすることにより、点欠陥からの光の取り出し効率を向上させることができる。放射方向や収束・拡がり等を制御することによって、点欠陥から取り出した光を光ファイバ等の結晶外部へ効率よく導入することができる。
【0025】
本発明の屈折率部材を用いた点欠陥は、2次元フォトニック結晶の本体自体を表裏非対称に加工して作製される従来の点状欠陥よりも容易に作製することができる。屈折率部材の形状や材料を従来に比べてより自由に選択することが可能であることにより、光の表裏放射比の制御は従来に比べてより容易となる。また、点欠陥の形状による放射方向、収束・拡がり等の制御は、前記の表裏非対称の異屈折率領域点状欠陥によっても可能であるが、本発明の屈折率部材を用いた点欠陥による方がより容易である。
【0026】
【実施例】
図1に、本発明の局所的3次元構造を有する2次元フォトニック結晶スラブの一実施例を示す。本体11に、異屈折率領域である空孔12を三角格子状に周期的に配置する。2次元フォトニック結晶はこれらの本体11と空孔12から構成される。1つの空孔12の直上に屈折率部材13を配置する。これにより、屈折率部材13を配置した位置が光共振器となる。この光共振器から光が放射される際、屈折率部材13を配置した面の側に放射される光191の強度は、その反対側の面の側に放射される光192の強度よりも強くなる。
【0027】
なお、本発明の2次元フォトニック結晶スラブは、図1に示す形態に限定されない。例えば、異屈折率領域は本体11とは異なる材料の部材を埋め込むものでもよい。空孔12の配置は、前記の三角格子状のものの他に、正方格子状のもの等でもよい。屈折率部材13を配置する位置は、前記の空孔12の直上の他に、例えば三角格子における三角形の重心等でもよい。
【0028】
図2に、本発明の2次元フォトニック結晶スラブを用いた光分合波器の一実施例を示す。図1の結晶に、更に空孔12の欠陥を線状に設ける(空孔12を線状に欠損させる)ことにより、屈折率部材13を配置した位置(光共振器)の近傍に導波路14を形成する。これにより、導波路14を通過する光のうち、光共振器の共振波長の光を屈折率部材13を経て外部へ分波し、又は外部から屈折率部材13を経て導波路14へ合波する光分合波器となる。
【0029】
図3及び図4に、異屈折率領域点状欠陥の位置に屈折率部材を載置した2次元フォトニック結晶及び光分合波器の実施例を示す。2次元フォトニック結晶に、隣接する複数の空孔12を欠損させることによりドナー型クラスタ欠陥15を形成し(図3上図、ここでは欠損させる空孔を破線で示す)、このドナー型クラスタ欠陥15の位置の表面に屈折率部材13を載置する(図3下図)。屈折率部材13とドナー型クラスタ欠陥15とが相まって、1つの点状欠陥としての役割を果たす。なお、ドナー型クラスタ欠陥は、図3に示した直線状に連続する3個の点欠陥から成るもの以外に、三角形状に隣接する3個の点欠陥から成るものや、隣接する2個又は4個以上の点欠陥から成るものであってもよい。また、ドナー型クラスタ欠陥の場合と同様に、アクセプタ型点状欠陥の位置の表面に屈折率部材13を載置してもよい。
【0030】
前記の直線状ドナー型クラスタ欠陥151と三角形状ドナー型クラスタ欠陥152とを1つの2次元フォトニック結晶に設け(図4上図、各点欠陥を破線で示す)、それらの位置における結晶表面に同一の屈折率部材131及び132を載置する(図4下図)ことにより、それぞれ異なる波長の光を共振する共振器を形成する。これにより、それらの波長の光を導波路14から屈折率部材131又は132を経て外部に分波し、又は外部からそれらの屈折率部材を経て導波路14に合波する光分合波器となる。
【0031】
図5に、異なる2種類以上の屈折率部材を載置した2次元フォトニック結晶及び光分合波器の一実施例を示す。大きさの異なる3種類の屈折率部材133、134及び135を導波路14の近傍に設ける。各屈折率部材の位置がそれぞれ異なる波長の光を共振する共振器となり、その波長の光が導波路14から屈折率部材を経て外部に分波し、又は外部から屈折率部材を経て導波路14に合波する。なお、図5に示す屈折率部材の大きさの違い以外に、屈折率部材の材料や形状等によっても異なる波長の光を分合波することができる。
【0032】
図6に、屈折率部材の形状の例を断面図で示す。(a)は柱状の屈折率部材の頂部を凹面としたものであり、放射される光を空間中の1点に収束させる。(b)は頂部を凸面としたものであり、凸面の曲率により定まる放射角で拡がる光を放射する。なお、ここで示した凸部又は凹部は、円柱や直方体等の頂部に形成することができる。
【0033】
図7に、結晶本体の同じ位置の表裏に屈折率部材を設けた2次元フォトニック結晶の一実施例を示す。(a)では、本体11の表裏に異なる大きさで同じ凹面形状を有する屈折率部材133及び134を設けている。これにより、表裏に異なる強度で、且つ表裏共に空間内の1点に収束する光が放射する。(b)では、本体11の表裏に凹面形状を有する全く同じ屈折率部材133を設けている。これにより、表裏に同じ強度で、且つ表裏共に空間内の1点に収束する光が放射する。
【0034】
図8に示す2種類の2次元フォトニック結晶について、点状欠陥から放射される光の空間分布を計算した。(a)は3欠陥直線状ドナー型クラスタ欠陥のみから成る点状欠陥を有するものであり、(b)は2個の同じ屈折率部材135を3欠陥直線状ドナー型クラスタ欠陥の表裏に対称に配置した点状欠陥を有するものである。(b)の屈折率部材135は、半径0.6a、高さ0.6a(aは空孔12の周期)の円柱であり、本体11と同じ材料から成る。その計算結果を図9に示す。(a)の左図と(b)の左図から、図8に示すy-z面における光の放射強度を比較する。(a)では、本体に垂直な方向(z方向)に光が強く放射される他に、斜め(z軸から60°)の方向にも強く放射される。それに対して(b)では、斜めの方向への光の放射が抑制され、z方向へは(a)よりも強く放射される。(a)の右図と(b)の右図(x-z平面)においても、(a)よりも(b)の方が斜め方向の光の放射が抑制されている。このように、屈折率部材を用いることにより、本体に垂直な方向への光の取り出し効率が向上する。
【0035】
次に、本発明の2次元フォトニック結晶の製造方法について説明する。2次元フォトニック結晶本体の製造工程については特許文献1に詳しく記載されているため、ここでは説明を省略する。以下では、本体表面に屈折率部材を形成する2種類の製造方法について述べる。
【0036】
第1の製造方法について図10により説明する。2次元フォトニック結晶の表面に、その原料となるガス21を供給しつつ、所定の位置に収束イオンビーム22を照射し、電離した原料を堆積させることによって屈折率部材を形成する。収束イオンビームは、最小で数nmの範囲に収束させて照射することができるイオンビームである。これにより、屈折率部材を局所的に堆積させることができる。本実施例において、収束イオンビームに用いられるイオンはGaイオンである。原料ガスには、例えば屈折率部材の材料がCである場合にはフェナトレン(C1410)を用いることができる。
【0037】
第2の製造方法について図11により説明する。この方法では、あらかじめ作製した屈折率部材13を、数ナノメートルの大きさの部材を保持することができるナノマニュピレータ23により2次元フォトニック結晶の表面に載置する。屈折率部材を載置した後、フォトニック結晶と屈折率部材との境界部にレーザーを照射する等の方法により、両者を接合する。この方法では、屈折率部材13の作製、加工を結晶の外部において行うことができるため、所望の形状の屈折率部材を容易に得ることができる。
【0038】
図12に、表面に屈折率部材を形成した2次元フォトニック結晶の電子顕微鏡写真を示す。(a)は屈折率部材を形成する前の、導波路14と直線状ドナー型クラスタ欠陥15を備えた2次元フォトニック結晶である。(b)は、第1の製造方法により、(a)の結晶にCから成る屈折率部材13を形成したものである。(c)は、(b)の結晶のうち屈折率部材13付近を拡大したものである。これらの写真から、この製造方法により屈折率部材が形成されていることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の局所的3次元構造を有する2次元フォトニック結晶スラブの一実施例を表す斜視図。
【図2】本発明の2次元フォトニック結晶波長分合波器の一実施例を表す斜視図。
【図3】異屈折率領域点状欠陥の位置に屈折率部材を載置した2次元フォトニック結晶の一実施例を表す斜視図。
【図4】異屈折率領域点状欠陥の位置に屈折率部材を載置した2次元フォトニック結晶波長分合波器の一実施例を表す斜視図。
【図5】異なる2種類以上の屈折率部材を載置した2次元フォトニック結晶及び光分合波器の一実施例を表す斜視図。
【図6】屈折率部材の形状の例を示す断面図。
【図7】結晶本体の同じ位置の表裏に屈折率部材を載置した2次元フォトニック結晶の一実施例を表す断面図。
【図8】点状欠陥から放射される光の空間分布を計算する対象の2次元フォトニック結晶を表す図。
【図9】点状欠陥から放射される光の空間分布を計算した結果を表す図。
【図10】本発明の局所的3次元構造を有する2次元フォトニック結晶スラブの第1の製造方法を表す斜視図。
【図11】本発明の局所的3次元構造を有する2次元フォトニック結晶スラブの第2の製造方法を表す斜視図。
【図12】表面に屈折率部材を形成した2次元フォトニック結晶の電子顕微鏡写真。
【符号の説明】
11…本体
12…空孔
13、131、132、133、134、135…屈折率部材
14…導波路
15…ドナー型クラスタ欠陥
151…直線状ドナー型クラスタ欠陥
152…三角形状ドナー型クラスタ欠陥
191…屈折率部材側に放射される光
192…屈折率部材とは反対側に放射される光
21…原料ガス
22…収束イオンビーム
23…ナノマニュピレータ
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11