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明細書 :カーボンナノチューブ

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3629540号 (P3629540)
公開番号 特開2003-261311 (P2003-261311A)
登録日 平成16年12月24日(2004.12.24)
発行日 平成17年3月16日(2005.3.16)
公開日 平成15年9月16日(2003.9.16)
発明の名称または考案の名称 カーボンナノチューブ
国際特許分類 C01B 31/02      
D01F  9/127     
FI C01B 31/02 101F
D01F 9/127
請求項の数または発明の数 4
全頁数 6
出願番号 特願2002-065214 (P2002-065214)
出願日 平成14年3月11日(2002.3.11)
審査請求日 平成14年3月11日(2002.3.11)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
発明者または考案者 【氏名】遠藤 守信
審査官 【審査官】吉田 直裕
参考文献・文献 特開2001-328804(JP,A)
特開平07-048110(JP,A)
特開2001-226108(JP,A)
特開2002-083604(JP,A)
RONGQING YU, et al.,Platinum Deposition on Carbon Nanotubes via Chemical Modification,Chem.Mater.,1998年,Vol.10, No.3,p.718-722
JIE LIU, et al.,Fullerene Pipes,SCIENCE,1998年,Vol.280,p.1253-1256
N. PIERARD, et al.,Production of short carbon nanotubes with open tips by ball milling,Chem.Phys.Lett.,2001年,Vol.335,p.1-8
K. MURATA, et al.,Molecular Potential Structure of Heat-Treated Single-Wall Carbon Nanohorn Assemblies,J.PHYS.CHEM.B,2001年,Vol.105,p.10210-10216
SAITO T.,Chemical treatment and modification of multi-walled carbon nanotubes,PHYSICA B-CONDENSED MATTER,2002年,Vol.323, No.1-4,p.280-283
調査した分野 C01B 31/02
D01F 9/127
B01J 20/20
特許請求の範囲 【請求項1】
気相成長法により製造された炭素繊維が輪切り状に切断されると共に、発泡処理されることにより炭素網層に軸方向に伸びる割れが生じて炭素網層間の間隔が押し広げられ、前記切断により露出した炭素網層のエッジサイトおよび前記割れにより露出した炭素網層のエッジサイトに触媒金属が担持されたことを特徴とするカーボンナノチューブ。
【請求項2】
輪切り状に切断された炭素繊維の長さが0.1μm~1μmであることを特徴とする請求項1記載のカーボンナノチューブ。
【請求項3】
アスペクト比が1~10であることを特徴とする請求項1または2記載のカーボンナノチューブ。
【請求項4】
触媒金属が白金、パラジウム、オスミウム、ルテニウムまたはニッケルであることを特徴とする請求項1、2または3記載のカーボンナノチューブ。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は触媒金属を担持したカーボンナノチューブに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、カーボンブラックに触媒金属を担持させたものがある。
この触媒は、触媒金属、例えば白金粒子または白金合金粒子を懸濁させた水溶液中にカーボンブラックを浸漬し、撹拌、加熱することによって還元して、カーボンブラック粒子上に白金を析出、担持させるようにしている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、カーボンブラックは、直径が数百ナノメートルと大きく、しかも触媒金属の析出が不均一であることから、触媒金属の担持効率が悪く、十分な触媒効果が得られないという課題がある。
触媒金属の析出量を多くしようとすれば、水溶液中の白金含有量を増やさねばならず、過剰に増加させた場合には触媒金属の凝集も起こり、触媒金属の外表面の面積が減じることから、それほどの触媒効果が得られない。さらには、担持体がカーボンブラックのときは、触媒金属の一部が担持体の外表面に埋没した状態で保持されることからも、外表面の面積が減少し、満足な触媒効果が得られないという課題がある。
【0004】
そこで本発明は上記課題を解決すべくなされたもので、その目的とするところは、担持体自体小さく、しかも多くの触媒金属を担持できるので、触媒効果が飛躍的に増加するカーボンナノチューブを提供するにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るカーボンナノチューブは、気相成長法により製造された炭素繊維が輪切り状に切断されると共に、発泡処理されることにより炭素網層に軸方向に伸びる割れが生じて炭素網層間の間隔が押し広げられ、前記切断により露出した炭素網層のエッジサイトおよび前記割れにより露出した炭素網層のエッジサイトに触媒金属が担持されたことを特徴とする。
輪切り状に切断された炭素繊維の長さが0.1μm~1μmであることを特徴とする。
また、アスペクト比が1~10であることを特徴とする。
触媒金属は白金、パラジウム、オスミウム、ルテニウムまたはニッケルであることを特徴とする。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下本発明の好適な実施の形態を添付図面に基づき詳細に説明する。
気相成長法により製造される炭素繊維(カーボンナノチューブ)が知られている。この製法は公知であるので特に説明しない。
この気相成長法による炭素繊維の径、長さにも種々のものが存在するが、昨今では、直径数十nm~200nm程度、長さが100~1000μm程度の多重チューブ状をなすカーボンナノチューブも製造可能となっている。
これらカーボンナノチューブは、各種複合材の材料として、あるいは触媒担持体などとして用いられている。
【0007】
本実施の形態では、さらに多くの触媒金属を担持でき、触媒効果が飛躍的に増加するカーボンナノチューブを提供する。
そのために、本実施の形態では、上記カーボンナノチューブを機械的に輪切り状に切断すると共に、発泡処理をする。なお、気相成長法によって得られた炭素繊維を熱処理して黒鉛化してしまうと切断しにくくなるので、黒鉛化処理の前に以下で述べる切断処理をするとよい。
【0008】
上記カーボンナノチューブを短く切断するには、水あるいは溶媒を適宜量加えて、乳鉢を用いて乳棒により緩やかにすりつぶすことによって行える。
すなわち、上記カーボンナノチューブを乳鉢に入れ、乳棒により機械的に緩やかにすりつぶすのである。
【0009】
乳鉢での処理時間を経験的に制御することによって、繊維長が0.1μm~1μm程度となるように調整する。すなわち、アスペクト比(長さ/径)が1~10程度となるように調整する。なお、このように長さ調整したものは微細粉状であって、もはや繊維とは言えないものであるが、ここでは便宜上、繊維と称することにする。
なお、上記カーボンナノチューブを液体窒素中で乳鉢によりすりつぶすようにすると好適である。液体窒素が蒸発する際、空気中の水分が吸収され、氷となるので、氷とともに繊維を乳棒によりすりつぶすことによって、機械的ストレスを軽減することができる。
【0010】
工業的には、上記カーボンナノチューブをボールミリングによってグラインディング処理するとよい。
例えば、ボールミリング装置を用い、直径5mmのアルミナ製ボールとカーボンナノチューブとが重量比でほぼ10:1となるようにし、大気中、350rpmの回転速度でほぼ24時間ボールミリングすることによって、上記アスペクト比のカーボンナノチューブに調整できた。
上記のように切断処理を行って後、アルゴンガス中でほぼ3000℃程度の熱処理を行って黒鉛化する。
【0011】
上記のように、カーボンナノチューブを輪切り状に切断することによって、多重チューブ状をなす炭素六角網層のエッジが露出する。この露出した炭素網層のエッジは、他の原子と結びつきやすく、きわめて活性度の高いものである。カーボンナノチューブを短く切断することによって、きわめて微細な担持体とすることができ、両端側に活性度の高いエッジサイトを有する多数の繊維に分断できるのである。
この炭素繊維を用いて触媒金属を担持したカーボンナノチューブを製造した。
【0012】
以下に製法の一例を示す。
1.上記炭素繊維を、エタノール・塩化白金酸溶液に混合し、1時間撹拌した。
2.1時間後、上記溶液に水素化ホウ素ナトリウム水溶液を加え、塩化白金酸の還元を行った。
3.1分間、還元処理を行った後、塩酸水溶液を加え、過剰な水素化ホウ素ナトリウムの分解を行った。
4.5分後ろ過し、触媒金属が担持された炭素繊維を取り出した。
5.ろ過後、炭素繊維を重炭酸アンモニウム水溶液に浸漬し、触媒金属を中和し、次いで精製水で洗浄した。
6.水分を除去し、真空乾燥をして、触媒白金金属が担持されたカーボンナノチューブを得た。
【0013】
図1は、触媒金属(白金)が担持されているカーボンナノチューブの端部(切断端面)の透過型電子顕微鏡写真を示し、図2はこのカーボンナノチューブの表面の透過型電子顕微鏡写真を示す。
図1から明らかなように、カーボンナノチューブの端部のエッジサイトに多くの白金粒子が担持されていることがわかる。一方、図2に示されるようにカーボンナノチューブの外表面には白金粒子がほとんど担持されない。このエッジサイトに担持された白金粒子は該エッジサイトに強固に保持されているのに対し、外表面に担持された白金粒子は単に付着している程度と考えられる。
【0014】
担体に担持される触媒粒子は微細であるほど全表面積が大きくなり、触媒機能をより良く発揮する。
図3は、サンプリングしたカーボンナノチューブのエッジサイトに担持された白金粒子の大きさ(横軸、単位nm)と個数(縦軸)を計測した結果を示す。
白金粒子の平均粒径は2.194nmであり、1μm~2μm程度の極めて微細な白金粒子が多く担持され、大きな触媒効果を得ることができる。
【0015】
白金の触媒金属が担持されたカーボンナノチューブは、燃料電池等の触媒として好適に用いることができる。また、燃料電池のみでなく、他の用途の触媒として用いることができることはもちろんである。
また上記カーボンナノチューブは、白金に限らず、白金合金、ルテニウム、パラジウム、オスミウム、ニッケル等の触媒金属の担持体ともなる。
【0016】
上記のようにアスペクト比がほぼ1~10となるように短く切断したカーボンナノチューブをさらに発泡させる。
発泡方法の一例を以下説明する。
上記カーボンナノチューブを、98%濃硫酸中に浸漬し、濃硫酸を炭素網層間に浸透させた。
このカーボンナノチューブを500~700℃に瞬間的に加熱した。これにより濃硫酸が瞬間的にガス化して、その膨張圧により、炭素網層間が押し広げられた。次いでこのカーボンナノチューブを水洗し、残留硫酸を除去した後、真空乾燥して、膨張カーボンナノチューブを得た。
濃硫酸の代わりに、臭素液、発煙硝酸、THF(テトラハイドロフラン)-カリウム液を用いた場合にも、膨張カーボンナノチューブを得ることができる。
【0017】
通常炭素網層間の間隔は3.54Åであるが、上記発泡処理によって、炭素網層に軸方向に伸びる割れが生じ、これにより、その間隔を100倍から1000倍位に押し広げることができる。
このような膨張カーボンナノチューブに上記と同様にして触媒金属を担持させる。
触媒金属は炭素網層間に入り込むことはないが、押し広げられたエッジサイトに一層細かく、びっしりと多量に担持されるので、触媒効果がさらに大きなものとなる。すなわち、繊維が膨張することによって、外表面に軸方向に延びる割れが生じて、外表面にも炭素網層のエッジが露出し、この露出したエッジサイトにも触媒金属が担持され、これによってさらに大きな触媒効果が得られるのである。
【0018】
また、前記のように、カーボンナノチューブを輪切り状に切断した後、大気中で熱処理して酸化すると、外表面にピットタイプの微細孔が形成される(図示せず)。
この微細孔内壁に炭素網層のエッジが露出する。
そして前記と同様にして、この微細孔のエッジサイトにも触媒金属を担持させることで、全体として多量の触媒金属を担持させることができ、触媒効果がさらに増大する。
【0019】
微細孔の孔の大きさは触媒の大きさ分布に物理的に関与するので最適の酸化条件の設定が必要である。
酸化条件によって孔の大きさの分布が異なる。過度な酸化条件はナノチューブの形状を壊すことになる。一方、不充分な酸化では微細孔が十分に発達しない。
上記切断されたカーボンナノチューブを大気中、ほぼ600℃で、30分間程熱処理し、酸化することによって、最適大きさの、多角形状で、ピット状(深部が狭くなる)の微細孔が多数形成される。微細孔形成による重量損失は10~20%ほどにもなる。微細孔は物理的に触媒の集合(結合)を防止し、これにより触媒外表面の面積を大きくしうるから触媒効果がよりよく発揮される。
【0020】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、担持体自体が小さく、しかも多くの触媒金属を担持できるので、触媒効果が飛躍的に増加するカーボンナノチューブを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】触媒金属(白金)が担持されているカーボンナノチューブの端部(切断端面)の透過型電子顕微鏡写真である。
【図2】カーボンナノチューブの表面の透過型電子顕微鏡写真を示す。
【図3】サンプリングしたカーボンナノチューブのエッジサイトに担持された白金粒子の大きさ(横軸、単位nm)と個数(縦軸)を計測した結果を示すグラフである。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2