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明細書 :電離放射線による生物障害の防護剤とこれを用いた防護方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4106430号 (P4106430)
公開番号 特開2003-089634 (P2003-089634A)
登録日 平成20年4月11日(2008.4.11)
発行日 平成20年6月25日(2008.6.25)
公開日 平成15年3月28日(2003.3.28)
発明の名称または考案の名称 電離放射線による生物障害の防護剤とこれを用いた防護方法
国際特許分類 A61K  36/60        (2006.01)
A61K  31/045       (2006.01)
A61P  43/00        (2006.01)
FI A61K 35/78 D
A61K 31/045
A61P 43/00 105
請求項の数または発明の数 1
全頁数 5
出願番号 特願2001-284016 (P2001-284016)
出願日 平成13年9月18日(2001.9.18)
審査請求日 平成16年1月27日(2004.1.27)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】301032942
【氏名又は名称】独立行政法人放射線医学総合研究所
発明者または考案者 【氏名】安藤 興一
【氏名】物部 真奈美
個別代理人の代理人 【識別番号】100093230、【弁理士】、【氏名又は名称】西澤 利夫
審査官 【審査官】大久保 元浩
参考文献・文献 R. Roots and S. Okada,Int. J. Radiat. Biol.,1972年,Vol. 21, No. 4,329-342
調査した分野 A61K31/045
A61K36/60
CAplus(STN)
BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN)
EMBASE(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
ビールを有効成分とすることを特徴とする炭素イオン線による生物障害の防護剤。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
この出願の発明は、X線やγ線、粒子線等の電離放射線による生物障害の防護剤とこれを用いた防護方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術と発明の課題】
電離放射線に被曝した場合に遺伝子障害あるいは致死などの生物障害が現れることが知られており、このような生物障害作用を防護するための方法がこれまでにも様々な観点より検討されている。
【0003】
たとえば、具体的にも、電離放射線の生物障害作用の防護に関しては、これまでにも、鉛による防護や薬剤による防護方法が知られている。そこで、放射線の細胞障害はラジカル反応による間接作用がその約75%を占めると考えられていることから、これまでの放射線障害防護剤はラジカルスカベンジャーが主な防護剤であった。しかしながら、現在までに多くのラジカルスカベンジャーが放射線障害防護剤として検討されているが、実用的薬剤とはなっておらず、安全性や有効性の面で問題があるとされている。また近年航空機や宇宙進出により直接作用が主体の放射線に対する防護が重要となってきたが、直接作用の強い放射線に対する防護剤は副作用の強いものが多く、人に直接に適応でき生命に安全な方法はないに等しく、外部被曝や内部被曝を少なくするよう努力する以外に防護する方法がないのが実情であった。すなわち、人に対して直接適応することのできる安全な方策はなかった。
【0004】
この出願の発明は以上のとおりの事情に鑑みてなされたものであって、安全性が高く、しかも簡便であって、比較的長い時間電離放射線の生物障害を防護することができ、かつ人に対しても適用することのできる新しい技術手段を提供することを課題としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
この出願の発明は、上記のとおりの課題を解決するものとして、ビールを有効成分とすることを特徴とする炭素イオン線による生物障害の防護剤を提供する。
【0008】
【発明の実施の形態】
この出願の発明は、上記のとおりの特徴をもつものであるが、以下に、その実施の形態について説明する。
【0009】
なによりもこの出願の発明において特徴的なことは、電離放射線による生物障害を、アルコール性飲料を有効成分とする防護剤によって極めて効果的に防護することである。
【0010】
有効成分としてのアルコール飲料は、これまでによく知られているものをはじめ、醸造酒、蒸留酒、そして混成酒のいずれかであってよく、市販品をはじめ、各種のものでよい。これらのアルコール飲料は、例えば市販品として直接に、あるいはこれを水や生理食塩水等によって希釈して、さらには、糖分を加えたり、各種のフレーバーを加えたり、栄養分、さらには他の薬剤を加えたりしたものとして、防護剤を構成することができる。
【0011】
なかでも、この出願の発明においてより効果的な防護剤は、麦芽または麹によって糖化させた成分を含有するアルコール飲料である。とりわけ、ビール成分を含有したものが効果的なものの一つとして例示される。
【0012】
有効成分としてのアルコール飲料におけるアルコール(エタノール)の含有割合は2~15%程度のものが好ましい。
実際の使用に際しては、経口投与することができ、対象者の体質や電離放射線による被曝環境、そして防護が必要とされる時間等に応じて、その使用量を調整することができる。もちろん、防護の対象者は人であってよいが、これに限られることなしに、非ヒト動物、実験動物に対しても有効に適用される。
【0013】
そこで以下に実施例を示し、さらに詳しくこの出願の発明について説明する。以下の例においては、ビールを飲む前と飲んだ後のヒト末梢血液にX線、炭素イオン線を照射し、遺伝子障害を染色体異常誘発頻度測定によりビールの防護作用を検討している。もちろん、以下の例によってこの発明が限定されることはない。
【0014】
【実施例】
<実施例1>
ビール700ml(キリンビール)飲酒後採血した血液と飲酒前の血液を、X線(20mA、0.5mmCu+0.5mmAlフィルター、焦点・プローブ間距離55cm)で、またはLET50keV/μmを0~6Gy照射した。X線で照射した群と炭素イオン線で照射した群の障害の度合いを染色体異常(Dicentric;二動原体染色体)頻度測定することにより飲酒前後の血液で比較し、ビールの電離放射線の生物障害に対する防護作用を調べた。結果は添付図1、図2に示すように細胞1個あたりの平均染色体異常出現頻度を比べると、X線4Gyではビールを飲む前の血液(以下(-)群と略)では1.75、ビールを飲んだ後の血液(以下(+)群と略)では1.23、炭素イオン線4Gyでは(-)群では1.85(+)群では1.23となり、すべての線量において(+)群の値の方が小さかった。このことはX線または炭素イオン線による染色体異常がビールを飲むことにより養生されたことを示すものである。以上の結果より、ビールはヒトのX線または炭素イオン線による障害を防護することが確認された。
<実施例2>
飲酒前の血液とビール700ml(キリンビール)飲酒後30分、1時間、2時間、3時間、4時間、4.5時間で採血した血液をX線(20mA、0.5mmCu+0.5mmAlフィルター、焦点・プローブ間距離55cm)で4Gy照射した。障害の度合いを染色体異常(Dicentric;二動原体染色体)頻度測定することにより飲酒前後の血液で比較し、ビールの電離放射線の生物障害に対する防護作用の効果の持続時間を調べた。
【0015】
その結果を図3に示した。
ビールによる生物障害の防護の有効性が持続可能であることが確認された。
【0016】
【発明の効果】
以上詳しく説明したとおり、この出願の発明によって、電離放射線(高LET放射線を含む)の生物障害を防護または軽減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ビール飲酒前後のX線照射における障害の発生結果の例を示した図である。
【図2】ビール飲酒前後の炭素イオン照射線における障害の発生結果の例を示した図である。
【図3】ビール飲酒によるX線に対する防護効果の持続時間を例示した図である。
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
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