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明細書 :白金及びパラジウムを含む試料から白金とパラジウムを選択的に回収する方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3938909号 (P3938909)
公開番号 特開2004-231977 (P2004-231977A)
登録日 平成19年4月6日(2007.4.6)
発行日 平成19年6月27日(2007.6.27)
公開日 平成16年8月19日(2004.8.19)
発明の名称または考案の名称 白金及びパラジウムを含む試料から白金とパラジウムを選択的に回収する方法
国際特許分類 C22B  11/00        (2006.01)
C22B   3/04        (2006.01)
C22B   7/00        (2006.01)
FI C22B 11/00 101
C22B 3/00 A
C22B 7/00 G
請求項の数または発明の数 3
全頁数 13
出願番号 特願2003-018345 (P2003-018345)
出願日 平成15年1月28日(2003.1.28)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 平成14年9月23日に社団法人資源・素材学会主催の平成14年資源・素材関係学協会合同秋季大会において発表。社団法人資源・素材学会雑誌「資源と素材」第118巻第12号(平成14年12月25日)第745~750頁に発表。
審査請求日 平成17年4月7日(2005.4.7)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】藤田 豊久
【氏名】劉 克俊
【氏名】柴山 敦
個別代理人の代理人 【識別番号】100110249、【弁理士】、【氏名又は名称】下田 昭
審査官 【審査官】近野 光知
参考文献・文献 特開昭49-079395(JP,A)
特開昭50-039621(JP,A)
特開昭57-169027(JP,A)
特開昭51-008113(JP,A)
特開昭57-082435(JP,A)
特開平07-157832(JP,A)
調査した分野 C22B 1/00~61/00
特許請求の範囲 【請求項1】
白金及びパラジウムを含む試料を、(a)MClO又はMClO及び(b)MClを主成分とする浸出液によりパラジウムを浸出する第1段階、及び、この第1段階で溶解しない固体を、(c)MCl及び(d)HClを主成分とする浸出液により白金を浸出する第2段階から成、(a)MClO又はMClOの濃度が1~2モル/リットル、(b)MClの濃度が0.05~2.0モル/リットル、(c)MCl濃度が0.01~1.5モル/リットル、(d)HClの濃度が5.0~15モル/リットルであり、各浸出液のpHが2.0以下であり、Mがナトリウム又はカリウムを表す、白金及びパラジウムを含む試料から白金とパラジウムを選択的に回収する方法
【請求項2】
白金及びパラジウムを含む試料を、(a)MClび(b)HCl又はMClを主成分とする浸出液によりパラジウムを浸出する第1段階、及び、この第1段階で溶解しない固体を、この第1段階と成分を同じくする浸出液であって、(a)MCl及び(b)HCl又はMClの濃度がいずれも前段階より高濃度である浸出液により白金を浸出する第2段階から成、第1段階におけるMCl濃度が0.001~0.8モル/リットル、MClの濃度が0.05~2.0モル/リットル、HClの濃度が5.0~15モル/リットル、第2段階におけるMCl濃度が0.01~1.8モル/リットル、MClの濃度が0.05~2.0モル/リットル、HClの濃度が5.0~30モル/リットルであり、各浸出液のpHが2.0以下であり、Mがナトリウム又はカリウムを表す、白金及びパラジウムを含む試料から白金とパラジウムを選択的に回収する方法
【請求項3】
前記試料が、白金及びパラジウム以外の貴金属および貴金属以外の金属から成る群から選択される金属を含む請求項1又は2に記載の方法。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、貴金属の浸出方法に関し、より詳細には、白金及びパラジウムを含む試料から白金とパラジウムを選択的に回収する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
金、白金、パラジウムなどの貴金属類は、高い宝飾性と特有の物理・化学性質を持つことから、宝飾品や歯科材料、また、電気・機械産業やIT産業など、各種の産業界で幅広く使用されている。それに伴って、廃棄物として発生する貴金属が膨大に発生するため、それら貴金属を廃棄物から回収することや再資源化していくことが社会的に要求されてきた。ところが、貴金属は、物理的、化学的性質が類似していることから、貴金属類同士が混在する条件下では、これまで相互分離を行うことが極めて難しいとされてきた(非特許文献1)。また、比較となる従来技術においても、貴金属の浸出・溶解方法が幾つか提案されてきたが、効率性や工程の複雑さなどの課題が残されていた。
【0003】
金、パラジウム、白金などの貴金属をリサイクルする方法は、これまで幾つも提案されてきた。例えば、浸出処理方法を用いるものでは、貴金属の溶解技術として、王水等の無機酸により貴金属を溶解する方法が知られ、その他、シアン化物による溶解方法、塩酸中に塩素を吹き込むことで白金族を溶解する方法、及び塩酸中にHを添加して白金族を溶解する方法などが提案されている(非特許文献2、特許文献1)。ところが、これらの方法では、ほとんどの場合、加熱処理が必要であり、処理工程の複雑さも指摘されてきた。また、ハロゲン単体、可溶性ハロゲン化塩、及び水や有機溶媒の溶解液で貴金属を溶解・浸出させる方法が報告されてきたが(特許文献2)、貴金属の中でもパラジウム、白金に限定した浸出処理法の研究報告は現在も極めて少ないのが実状である。例えば、金については次亜塩素酸ナトリウムを用いた金の浸出回収法に関する研究が報告されているが(非特許文献3、非特許文献4)、パラジウムと白金については塩素酸類などを用いた浸出回収法は未だ報告されていない。このような状況のため、現在の貴金属に関連した産業からは、金、パラジウム、白金などを容易に浸出回収し、さらに、貴金属類が共存した状態から、目的金属を選択的に回収できる技術の開発が強く望まれてきた。
【0004】
【特許文献1】
特開平08-53720
【特許文献2】
特開平7-157832
【非特許文献1】
清水 進:防錆・防食技術総論, 第五章材料の耐環境性,第一節金属材料, 貴金属とその合金, p.404-549 (2000)
【非特許文献2】
芝田 隼次・奥田 晃彦:資源と素材, Vol.118,No.1, p.1-8 (2002)
【非特許文献3】
T.Fujita et. al., Proceedings of 4th International Symposium on East Asian Resources Recycling Technology, p. 36-45, (Kunming, China, 1997)
【非特許文献4】
Marcel Pourbaix et. al., Atlas of Electrochemical Equilibrium in Aqueous Solutions , p. 357-377 (First English edition 1966) (Oxford; New York: Pergamon Press, 1966)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、複数種の貴金属が含まれる試料から所望の貴金属をハロゲン化オキソ酸のアルカリ金属塩を含む溶液を用いて浸出回収する方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、次亜塩素酸ナトリウムと塩素酸ナトリウムを用いて、これまで選択浸出が困難であったパラジウム及び白金の浸出条件を明らかにし、さらに実際の廃棄物を対象に多段型浸出試験を行うことにより得た知見を基に、ハロゲン化オキソ酸のアルカリ金属塩を用いて貴金属相互の選択回収を可能とする方法を見出し、本発明を完成させた。
本発明の方法は、少なくとも2段階から成る貴金属の浸出方法であって、この2段階において、浸出液としてそれぞれ酸化段階の異なるハロゲン化オキソ酸塩を用るか、又は同種のハロゲン化オキソ酸塩を用いてその濃度を変えることにより、その浸出力の差を利用する。
【0007】
即ち、本発明の第1の方法は、白金及びパラジウムを含む試料を、(a)MClO又はMClO及び(b)MClを主成分とする浸出液によりパラジウムを浸出する第1段階、及び、この第1段階で溶解しない固体を、(c)MClび(d)HClを主成分とする浸出液により白金を浸出する第2段階から成、(a)MClO又はMClOの濃度が1~2モル/リットル、(b)MClの濃度が0.05~2.0モル/リットル、(c)MCl濃度が0.01~1.5モル/リットル、(d)HClの濃度が5.0~15モル/リットルであり、各浸出液のpHが2.0以下であり、Mがナトリウム又はカリウムを表す、白金及びパラジウムを含む試料から白金とパラジウムを選択的に回収する方法である。
本発明の第2の方法は、白金及びパラジウムを含む試料を、(a)MClび(b)HCl又はMClを主成分とする浸出液によりパラジウムを浸出する第1段階、及び、この第1段階で溶解しない固体を、この第1段階と成分を同じくする浸出液であって、(a)MClび(b)HCl又はMClの濃度がいずれも前段階より高濃度である浸出液により白金を浸出する第2段階から成、第1段階におけるMCl濃度が0.001~0.8モル/リットル、MClの濃度が0.05~2.0モル/リットル、HClの濃度が5.0~15モル/リットル、第2段階におけるMCl濃度が0.01~1.8モル/リットル、MClの濃度が0.05~2.0モル/リットル、HClの濃度が5.0~30モル/リットルであり、各浸出液のpHが2.0以下であり、Mがナトリウム又はカリウムを表す、白金及びパラジウムを含む試料から白金とパラジウムを選択的に回収する方法である。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の方法の分離対象は白金及びパラジウムを含む試料を含む試料である。本発明の方法はこの中で従来分離が困難であったPd及びPtを分離することができる点に特徴がある。
また、この試料にはそのほかの貴金属や貴金属以外の金属が含まれていてもよい。この場合には、本発明の処理を行う前に、適当な酸、例えば、後述の実施例2のように4.5モル/リットルの濃度の塩酸により処理することが望ましい。この処理により貴金属以外の金属をほぼ除去することができるので、その残渣について本発明の方法を施せばよい。
【0009】
本発明において用いるハロゲン化オキソ酸は次亜ハロゲン酸、亜ハロゲン酸、ハロゲン酸又は過ハロゲン酸であるが、過ハロゲン酸は酸化力が強く危険であるため使用を避けることが好ましい。このハロゲンは素である。このアルカリ金属はナトリウム又はカリウム、好ましくはナトリウムである。
【0010】
本発明の第1の方法においては、ハロゲン化オキソ酸として、第1段階では次亜ハロゲン酸、第2段階ではハロゲン酸を用いることが好ましい。次亜ハロゲン酸のアルカリ金属塩(MClO)としてはNaClO、亜ハロゲン酸のアルカリ金属塩(MClOとしてはNaClO、ハロゲンの酸のアルカリ金属塩(MCl)としてはNaClが好ましい。ハロゲンの酸のアルカリ金属塩(MClO)としてはNaClO、ハロゲンの酸としてはHClが好ましい。
【0011】
また次亜ハロゲン酸又は亜ハロゲン酸のアルカリ金属塩(MClO又はMClO)の濃度は好ましくは1モル/リットル以上、より好ましくは更に3.0モル/リットル以下、最も好ましくは1.5~2モル/リットルであり、ハロゲンの酸のアルカリ金属の塩(MCl)の濃度は好ましくは0.05モル/リットル以上、より好ましくは0.05~2.0モル/リットルであり、ハロゲン酸のアルカリ金属塩(MClOの濃度は好ましくは0.01モル/リットル以上、より好ましくは更に1.8モル/リットル以下、最も好ましくは0.02~1.5モル/リットルであり、ハロゲンの酸(HCl)の濃度は好ましくは5.0モル/リットル以上、より好ましくは5.0~15モル/リットルである。
【0012】
本発明の第2の方法においては、次亜ハロゲン酸のアルカリ金属塩(MClO)としてはNaClO、亜ハロゲン酸のアルカリ金属塩(MClOとしてはNaClO、ハロゲンの酸のアルカリ金属塩(MClO)としてはNaCl、ハロゲンの酸としてはHCl、ハロゲンの酸のアルカリ金属塩としてはNaClが好ましい。
【0013】
また第1段階において、ハロゲン化オキソ酸のアルカリ金属塩(MClOの濃度は好ましくは0.001モル/リットル以上、より好ましくは1.0モル/リットル以下、最も好ましくは0.002~0.8モル/リットル、ハロゲンの酸のアルカリ金属塩(MCl)の濃度は好ましくは0.05モル/リットル以上、より好ましくは0.05~2.0モル/リットルであり、ハロゲンの酸(HCl)の濃度は好ましくは5.0モル/リットル以上、より好ましくは5.0~15モル/リットルである。第2段階において、ハロゲン化オキソ酸のアルカリ金属塩(MClOの濃度は好ましくは0.01モル/リットル以上、より好ましくは1.8モル/リットル以下、最も好ましくは0.02~1.5モル/リットルであり、ハロゲンの酸のアルカリ金属塩(MCl)の濃度は好ましくは0.05モル/リットル以上、より好ましくは0.05~2.0モル/リットルであり、ハロゲンの酸(HCl)の濃度は好ましくは5.0モル/リットル以上、より好ましくは5.0~30モル/リットルである。
浸出液の媒体は水であり、上記成分以外に金属の無機イオンなどを浸出液の性能を害さない範囲で含んでもよい。
また、いずれの方法とも浸出液のpHは2.0以下である
【0014】
本発明の方法によれば、パラジウムと白金をはじめとする貴金属種を選択的に浸出回収することができる。本発明の方法の各段階における浸出液の成分及びその濃度は、対象に混在する貴金属その他の金属及び浸出しようとする貴金属により、これらが各段階で分離できるよう適宜選択すればよい。例えば、白金とパラジウムとが混在する試料を対象とした場合、最初の段階で白金の溶解が小さい溶液条件下でパラジウムを溶解させ、次段階で白金を溶解させれば、両者を選択的に浸出できる。
次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)と塩素酸ナトリウム(NaCLO3)によるパラジウムと白金の浸出特性を表1に示す。
【表1】
JP0003938909B2_000002t.gif【0015】
次亜塩素酸ナトリウムと塩素酸ナトリウムとの組み合わせ、あるいは塩素酸ナトリウムの添加量を変えることで、PdとPtを選択的に浸出回収できる。例えば、次亜塩素酸ナトリウムを1.34mol/L用いることで、Pdの浸出率が100%になり、このときPtは回収されなかったため、Pdの選択的な浸出回収が可能である。一方、塩素酸ナトリウムを用いると、塩素酸ナトリウム濃度が0.005 mol/LのときにPdが選択的に浸出され、浸出率は100%になるが、Ptはほとんど溶出しない。また、塩素酸ナトリウム濃度が0.47mol/Lのときには、PdとPtのどちらも回収することができる。おそらく、Ptの耐酸性による影響(酸に対する安定性)で、より強い酸であるNaClO3の濃度が濃い状態でないとPtは浸出されないものと考えられる。
【0016】
また、本発明の方法により分離した後に、実施例2のようにAuとPdとが分離されない場合には、金(I)イオンを含むチオ硫酸塩の水溶液を水相とし、トリオクチルメチルアンモニウムなどの四級アンモニウムを含む有機溶媒を有機溶媒相とした水相-有機溶媒相の溶媒抽出を行うと(特願2002-22809参照)、Pdはほとんど浸出されず、Auのみ浸出することができる。
また、銀については、硝酸を用いるなどして、他の金属成分もある程度段階的に浸出分離することができる。
更に、本発明の方法の次亜塩素酸ナトリウムあるいは塩素酸ナトリウム以外に、塩酸、硝酸、チオ硫酸アンモニウムなどを段階的に使用することで、目的金属類を各条件で回収できる。
【0017】
一方、浸出した溶液から貴金属を回収する方法については、有機溶剤を使用した溶媒抽出法があり、浸出した金属を浸出液である水相から有機相に移行させて回収することができる。これを多段に併用しながら目的金属をそれぞれ回収することができる。
また、この他の回収方法としては、浸出溶液中の金属類を還元処理することで、粗金属粉とし、精製処理を加える方法や、pH調整・試薬投入等で沈殿物を形成させ、熱溶解処理することで同じく粗金属粉とし、精製してもよい。さらに、浸出液を電解処理することで、電析させてもよい。この方法においては、金属を浸出させた溶液を電解浴とし電極へ析出させる。
【0018】
【実施例】
以下、実施例にて本発明を例証するが、本発明を限定することを意図するものではない。
以下の試験例及び実施例では、ナカライテスク株式会社製の次亜塩素酸ナトリウム溶液(活性塩素; 5~10%)、塩素酸ナトリウム(99%NaClO3)、及び塩酸を浸出剤として用いた。浸出用のサンプルとしては、ナカライテスク株式会社製のパラジウム粉末(品位99.9%)と、横浜金属株式会社より提供された純度99%以上の粉状白金を使用した。なお試料であるパラジウムと白金はSEM(走査型電子顕微鏡JSM-5900LV)で観察し、表面観察を行った。その結果、パラジウムは2μm程度の凝集粉末で形成されており、白金は1μm以下の微細粒子が凝集した海綿状構造を有する粒子群であることが確認された。なお、白金プレートの塩素酸ナトリウム溶液による浸出状態確認には、白金プレートとして示差熱天秤用の白金パンを切断したものを使用し、浸出後のプレート表面を走査プローブ顕微鏡SPI3800N (セイコーインスツルメンツ株式会社製)で観察した。
【0019】
浸出は以下の方法で行った。各種条件下で浸出液を作成し、300mlの三角フラスコに浸出液100mlを入れ、パラジウム又は白金サンプルを投入した直後から、加温式マグネチックスターラーで加熱攪拌し、所定時間ごとに浸出液を2mlずつ採取した。
浸出率については、まず、浸出をしている溶液を定量採取した。その採取溶液(浸出液)についてICP発光分光分析装置(セイコーインスツルメンツ株式会社製、SPS3000)を用いて、浸出液中のパラジウム及び白金の濃度を測定し、浸出率を次式に従って算出した。
浸出率(%)=(浸出液中のPd又はPtのモル濃度(mol/L)× 浸出液の容積(L)/浸出前のPd又はPtのモル数(mol))×100
【0020】
以下の試験例では、それぞれ品位99%以上の粉末状のパラジウム又は白金を用いて、浸出に必要となる次亜塩素酸ナトリウム、塩素酸ナトリウムの各濃度、HClやNaClの添加濃度のよる影響、pHの依存性、浸出温度などの各種条件を調べた。
試験例1
本試験例ではパラジウム(濃度10g/L)を用いて、次亜塩素酸ナトリウム濃度を0~2.67 mol/Lと変化させて、NaCl 濃度0.034 mol/L、pH1.2、温度298Kの条件で浸出を行った。その結果を図1に示す。
次亜塩素酸ナトリウム濃度が増加するにつれてパラジウムの浸出率は増大し、次亜塩素酸ナトリウムが1.34 mol/Lの場合(■印)、浸出開始3時間後に、パラジウム浸出率が約100%に達した。また、濃度2.67 mol/Lの場合には、浸出開始40分後に浸出率が100%になった。一方、次亜塩素酸ナトリウムを添加しない場合(◆印)にはパラジウムはほとんど浸出されないことが確認された。
【0021】
試験例2
本試験例では、NaClの添加濃度がパラジウムの浸出率に及ぼす影響を調べた。そのため、Pd濃度を10g/L、次亜塩素酸ナトリウム濃度を1.34 mol/Lとして、NaCl濃度を0~0.17 mol/Lまで変化させて、pH1.2、温度298Kの条件で浸出を行った。その結果を図2に示す。なお、このときの次亜塩素酸ナトリウム濃度は、図1の結果を参考に1.34 mol/Lに調整した。
図2より、NaCl濃度の増加に伴ってパラジウムの浸出率が上昇する一方、本浸出処理ではNaClを添加しない場合(◆印)にパラジウムの浸出率が低くなった。NaCl濃度が0.068 mol/L及び0.17 mol/Lのとき、浸出を開始してから1.5時間後に99%以上の浸出率が得られた。このことからNaClは、次亜塩素酸ナトリウム溶液によってパラジウムを浸出する際に、浸出率を向上させる有効な添加剤であることが分かった。
【0022】
試験例3
本試験例では、浸出液のpHの影響を調べた。pHを0.4~4と変化させて、Pd濃度を10g/L、次亜塩素酸ナトリウム1.34 mol/L、 NaCl 0.068 mol/L、温度298Kという条件で浸出を行った.その結果を図3に示す。
pH0.4(◆印)又は1.2(▲印)では、高い浸出率を示すが、pHの上昇とともにパラジウムの浸出率は大きく減少した。特にpH 2.0以上になるとパラジウムの浸出率が急激に低下し、パラジウムはほとんど浸出されず、pH 1前後の強酸性領域でなければパラジウムの酸化溶解が促進されないことがわかった。
【0023】
試験例4
本試験例では、浸出温度の影響を調べた。そのため、Pd濃度を10g/L、次亜塩素酸ナトリウム1.34 mol/L、 NaCl 0.068 mol/L、pH1.2の条件下で、浸出温度を298K、 323K、373Kとしてパラジウム浸出率の変動を調べた。その結果を図4に示す。
温度による影響は明確には確認されなかったが、浸出液の温度を373Kにしたときは、やや高い浸出率を示す傾向が確認された。
【0024】
試験例5
本試験例では、パラジウムを浸出するために塩素酸ナトリウムを用いた。Pd濃度を10g/Lとして、塩素酸ナトリウム濃度を0~0.018 mol/Lに変化させて、HCl濃度12 mol/L、温度298K、pH<1の条件でパラジウムの浸出を行った。その結果を図5に示す。【0025】
試験例6
本試験例では、HCl濃度の影響を調べた。そのため、Pd濃度10g/L、塩素酸ナトリウム濃度0.005 mol/L、温度298Kの条件で、HCl濃度を0~12 mol/Lと変化させてパラジウムの浸出を行った。その結果を図6に示す。
HCl濃度が増加するにつれてパラジウムの浸出率が増大した。また、HCl濃度が3 mol/L(■印)のとき、浸出を開始してから2時間後に浸出率が100%になった。これに対し、HClを添加しない場合(◆印)は、パラジウムの浸出率が低く浸出反応が促進されていないことがわかる。以上のことから、パラジウムの浸出プロセスにHClは不可欠な添加剤であり、塩素酸ナトリウム溶液にHClを添加することでパラジウムの浸出が効果的に行われることが明らかになった。
【0026】
試験例7
本試験例では、白金の浸出について調べた。そのため、最初にHCl濃度を12 mol/L、温度298Kとし塩素酸ナトリウム濃度を変化させて白金の浸出を行った。その結果を図7に示す。
塩素酸ナトリウム濃度が0.09 mol/L (●印)から0.47mol/L (▼印)までは濃度の増加に伴って白金の浸出率は上昇した。ところが、それ以上添加濃度が増えると浸出率は低下し、1.88 mol/L(■印)になると、白金の浸出率は著しく低下することが確認された。この原因については、過量のNa+イオンは、水溶液中で塩素酸ナトリウムの解離を抑制する可能性があり、このことが白金の浸出を抑制し、浸出率を低下させる原因のひとつになったと考えられる。一方、塩素酸ナトリウムを添加しない場合には(◆印)、ほとんど溶解しないことが確認された。
【0027】
試験例8
本試験例では、HCl濃度の影響を調べた。そのため、HCl濃度を0~12 mol/L に変化させて、塩素酸ナトリウム0.47 mol/L、温度298Kの条件で白金の浸出を行った。その結果を図8に示す。
HCl濃度が0,3,6,12 mol/Lと増加するにつれて白金の浸出率は増大するが、濃度6mol/L以下では白金の浸出率は低く、HClを添加しない状態(●印)では白金はほとんど浸出されないことが確認された。
【0028】
試験例9
本試験例では、浸出温度について調べた。そのため、異なる塩素酸ナトリウム濃度において、浸出温度が白金の浸出率にどのような影響を与えるのかを調べた。その結果を図9に示す。パラジウムの時と同様、浸出温度は白金の浸出率に明確な影響を及ぼさず、室温状態で充分浸出できることがわかった。
HCl の濃度を12 mol/L とし、塩素酸ナトリウム濃度0mol/L~1.88 mol/Lの条件下で、温度を298K、323K、343K、373Kと変化させた場合(図では反応開始2時間後の白金の浸出率を示す)、塩素酸ナトリウムを添加しない場合(◆印)は温度が上昇しても白金が溶解しないことが確認された。一方、温度が343K以下の場合は、塩素酸ナトリウム濃度が0.47 mol/Lの場合(▼印)に浸出率が最も高く、以下0.94 mol/L、1.88 mol/Lと濃度が高くなるにつれ、浸出率は低下した。一方、温度343K以上になると塩素酸ナトリウム濃度による影響はみられず、いずれもほぼ100%の浸出率が得られた。
【0029】
試験例10
本試験例では、白金の浸出特性を見出すために、浸出サンプルとして白金プレートを用い、走査プローブ顕微鏡によるAFM(原子間力顕微鏡)を利用して白金表面の浸出状態を観察した。この際、温度298Kで白金プレートを0.47 mol/Lの塩素酸ナトリウム浸出液に浸してから、0, 0.5, 8時間後に採取し、純水で洗浄後、浸出したプレート表面の状態を測定を行った。
図10 は浸出前の白金プレート表面を10μm区間で示した状態図を示し、図11は浸出開始0.5時間後、図12は8時間後のプレート表面を示している。浸出前の図10ではプレート表面の凹凸がなく、ほぼ一様な表面を有しているが、浸出0.5時間後の図11では表面に凹凸がみられ、プレート表面から塩素酸ナトリウムによる浸出の進行が確認される。図12ではさらに表面の凹凸が激しく、かつ微細で鋭利な凹凸になり、表面の浸出が著しく進んでいることが確認される。以上のAFM像観察結果から、塩素酸ナトリウムによる白金表面の浸出プロセスが確認でき、白金の浸出状態を段階的に検証することが可能であることが分かる。
【0030】
実施例1
本実施例では、0.01gのパラジウムと0.015g白金を混合した0.025gのサンプルを使って浸出を行った。
このサンプルを、次亜塩素酸ナトリウム(1.34mol/L)及び塩化ナトリウム(0.068mol/L)を水に溶解させた浸出液(pH 1.2) 20mlで浸出を行うと、その浸出液にはパラジウムが99%以上浸出されたが、白金はほとんど浸出されなかった。
次に、浸出後の固形残渣を塩素酸ナトリウム(0.47mol/L)及び塩酸(12.0mol/L)を水に溶解させた浸出液 20mlで浸出すると、2時間後には白金の浸出率が約99%に達した。
最初の段階を、塩素酸ナトリウム(0.005 mol/L)及び塩酸(3.0mol/L)を水に溶解させた浸出液 20mlを用いて同じ操作を行ったが、同じ結果が得られた。
以上の結果を図13にまとめる。
以上より、本発明の方法を用いて、次亜塩素酸ナトリウムと塩素酸ナトリウムの濃度、あるいはHCl濃度などの浸出条件を制御することで、パラジウムと白金をそれぞれ選択的に回収できることが分かる。
【0031】
実施例2
本実施例では、実際の歯科廃棄物に対する浸出処理を行った。用いた歯科廃棄物の粒度は-200mesh、合計質量が2.204gであり、主な金属成分は表2に示すように銅、亜鉛が高濃度に含まれる他、貴金属として金、パラジウム、白金などを含んでいる。
【表2】
JP0003938909B2_000003t.gif【0032】
本実施例では、第一段階としてHCl 4.5mol/Lを40ml使用し、第二段階として塩素酸ナトリウム(0.005 mol/L)及び塩酸(6.0mol/L)を水に溶解させた浸出液 40mlを使用し、ついで第三段階として塩素酸ナトリウム(0.47 mol/L)及び塩酸(12.0mol/L)を水に溶解させた浸出液 20mlを使用して多段浸出を行った。各段階とも、前段の浸出が終わってから純水で洗浄を繰り返してろ過し、ろ過した残渣を次の浸出のサンプルとして用いた。なお、それぞれろ過液を採取し、分析して回収率を求めた。浸出工程と浸出結果を図14に示す。
銅、亜鉛、鉄、ニッケルなどの金属はほとんど最初の塩酸に溶解し、金、パラジウムは二段目の塩素酸ナトリウム0.005 mol/Lの浸出液で浸出され、金が98%、パラジウムが97%回収された。一方、白金は第一段及び第二段処理で使用したHClや0.005 mol/Lの塩素酸ナトリウム浸出液にはほとんど溶解せず、最終段階の0.47mol/Lの塩素酸ナトリウム浸出液に99%溶解した。
以上のように実際の歯科廃材を用いて本発明の浸出処理を行うと、塩素酸ナトリウムやHClの濃度を制御することにより、各浸出段階で銅、亜鉛、鉄、ニッケルなどの金属と金、パラジウム及び白金などの貴金属をそれぞれ選択的に回収することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】パラジウムの浸出率と浸出時間及び次亜塩素酸ナトリウムの濃度との関係を示す図である。
【図2】パラジウムの浸出率と浸出時間及びNaCl濃度との関係を示す図である。
【図3】パラジウムの浸出率と浸出時間及び浸出液のpHとの関係を示す図である。
【図4】パラジウムの浸出率と浸出時間及び浸出温度との関係を示す図である。
【図5】パラジウムの浸出率と浸出時間及び塩素酸ナトリウムの濃度との関係を示す図である。
【図6】パラジウムの浸出率と浸出時間及びHCl濃度との関係を示す図である。
【図7】白金の浸出率と浸出時間及び塩素酸ナトリウムの濃度との関係を示す図である。
【図8】白金の浸出率と浸出時間及びHCl濃度との関係を示す図である。
【図9】白金の浸出率と浸出温度及び塩素酸ナトリウムの濃度との関係を示す図である。
【図10】塩素酸ナトリウムで浸出する前の白金の表面の原子間力顕微鏡(AFM)像を示す図である。
【図11】塩素酸ナトリウムで浸出して0.5時間後の白金の表面のAFM像を示す図である。
【図12】塩素酸ナトリウムで浸出して8時間後の白金の表面のAFM像を示す図である。
【図13】PdとPtの混合物からPdとPtとを分離するフローシートを示す図である。
【図14】歯科廃棄物から貴金属を分離するフローシートを示す図である。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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