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明細書 :亜鉛ヒドロペルオキシド錯体、過炭酸亜鉛錯体、および前記各化合物の酸化剤としての利用

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3986448号 (P3986448)
公開番号 特開2004-256419 (P2004-256419A)
登録日 平成19年7月20日(2007.7.20)
発行日 平成19年10月3日(2007.10.3)
公開日 平成16年9月16日(2004.9.16)
発明の名称または考案の名称 亜鉛ヒドロペルオキシド錯体、過炭酸亜鉛錯体、および前記各化合物の酸化剤としての利用
国際特許分類 C07D 213/74        (2006.01)
C09K   3/00        (2006.01)
C11D   3/395       (2006.01)
C07F   3/06        (2006.01)
FI C07D 213/74
C09K 3/00 109
C11D 3/395
C07F 3/06
請求項の数または発明の数 4
全頁数 7
出願番号 特願2003-047345 (P2003-047345)
出願日 平成15年2月25日(2003.2.25)
審査請求日 平成15年2月25日(2003.2.25)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】増田 秀樹
【氏名】実川 浩一郎
【氏名】和田 章
個別代理人の代理人 【識別番号】100110168、【弁理士】、【氏名又は名称】宮本 晴視
審査官 【審査官】齋藤 恵
参考文献・文献 特開2000-319291(JP,A)
特開2004-224711(JP,A)
特開平11-005993(JP,A)
特開平06-130056(JP,A)
Ogo 等,Synthesis、Structure,and Spectroscopic,Angeew. Chem. Int. ED.,1998年,37(15),2102-2104
Ogo, Seiji; Yamahara, Ryo; Roach, Mark; Suenobu, Tomoyoshi; Aki, Michihiko; Ogura, Takashi; Kitagawa, Teizo; Masuda, Hideki; Fukuzumi, Shunichi; Watanabe, Yoshihito,Structural and Spectroscopic Features of a cis (Hydroxo)-FeIII- (Carboxylato) Configuration as an Active Site Model for Lipoxygenases,Inorganic Chemistry,2002年,41(21),5513-5520
Wada, Akira; Ogo, Seiji; Nagatomo, Shigenori; Kitagawa, Teizo; Watanabe, Yoshihito; Jitsukawa, Koichiro; Masuda, Hideki,Reactivity of Hydroperoxide Bound to a Mononuclear Non-Heme Iron Site,Inorganic Chemistry,2002年,41(4),616-618
Wada, Akira; Harata, Manabu; Hasegawa, Koji; Jitsukawa, Koichiro; Masuda, Hideki; Mukai, Masahiro; Kitagawa, Teizo; Einaga, Hisahiko,Structural and spectroscopic characterization of a mononuclear hydroperoxo - copper(II) complex with tripodal pyridylamine ligands,Angewandte Chemie, International Edition,1998年,37(6),798-799
調査した分野 C07D 213/74
C09K 3/00
C11D 3/395
C07F 3/06
特許請求の範囲 【請求項1】
〔Zn(bnpa)(OOH)〕1-〔但し、bnpa=bis(6-neopentylamino-2-pyridylmethyl)(2-pyridylmethyl)amine、L1-は1価の正イオンと対をなす陰イオン〕または〔Zn(Hbppa)(OOH)〕1-〔但し、Hbppa=bis(6-pivalamido-2-pyridylmethyl)(2-pyridylmethyl)amine、L1-は1価の正イオンと対をなす陰イオン〕で表される亜鉛ヒドロペルオキシド錯体。
【請求項2】
請求項1の亜鉛ヒドロペルオキシド錯体を有効成分とする酸化剤。
【請求項3】
〔{Zn(bnpa)}(CO2-)〕2+2-または〔{Zn(Hbppa)}(CO2-)〕2+2-〔Q2-は2価の正イオンと対をなす陰イオン〕で表される過炭酸亜鉛錯体化合物。
【請求項4】
請求項3に記載の過炭酸亜鉛錯体化合物を有効成分とする酸化剤。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規な亜鉛ヒドロペルオキシド錯体、前記亜鉛ヒドロペルオキシド錯体を有効成分とする酸化剤、前記亜鉛ヒドロペルオキシド錯体を用いて得られる新規過炭酸(ペルカルボナト)亜鉛錯体化合物、および前記新規過炭酸亜鉛錯体化合物の消毒剤、漂白剤などの酸化剤として使用に関する。
【0002】
【従来の技術】
生体において、一連の酸化還元反応が連鎖的に、かつ制御された条件において進行し、それによって細胞がエネルギーの発生およびエネルギーの消費生活を営んでいることは良く知られていることである。その際電子の伝達があり、それらの電子の伝達に金属イオン、例えば銅イオンや鉄イオンが関与していることも良く知られている。それらは銅タンパク質、ヘム鉄タンパク質、非ヘム鉄タンパク質などとして知られている。
【0003】
【非特許文献1】
Angew.Chem.Int.Ed.2102-2104,37.No.15(1998)
【非特許文献2】
‘単一分子・原子レベルの反応制御’領域 ニュースレター第6号、有機化学・有機材料3頁、平成14年8月30日発行。
【特許文献1】
特開2000-319291号、特許請求の範囲、〔0002〕
【0004】
この様な中で、本発明者らは、前記生体において電子伝達に関与しているタンパク質の機能を解明し、またそれらの反応を生体外で再現させるために、三脚型配位子をはじめとする色々な配位子を合成し、これと各種遷移金属イオンとの錯体を合成し、その特性および反応性を研究してきた。そのようなものとして、配位子にtnpa(トリス(6-ネオペンチルアミノ-2-ピリジルメチル)アミン)を用いた、大豆脂質酸化酵素の活性体に対応する特性を持つ〔Fe(III)(tnpa)(OH)(PhCOO)〕ClO錯体の合成が行われた(非特許文献1)。
【0005】
更に、酸化反応中間体として生成する金属ペルオキソ種は、しばしば、脂質酸化酵素、α-ケト酸依存酵素、イソペニシリンNシンターゼ、およびカテコールジオキシゲナーゼのような、単核非ヘム鉄酵素に触媒される多くの生物的酸化分野における活性中間体として同定されている他、チタン、バナジウム、モリブデン等の前周期遷移金属を用いた場合には、エポキシ化、水酸化等のヒドロ過酸化物から有機基質への触媒的酸素移行反応における反応活性種としても、その存在が示唆されている。そのようなわけで、アルキルペルオキソ鉄(III)はこれらの反応中における中間体を解明するためのモデルとして注目されている。しかしながら、単核アルキルペルオキソ鉄(III)錯体のスペクトル特性については、それが不安定であるためにほんの少しの報告があるにすぎなかった。そこで、本発明者らは三脚型(トリポーダル)ピリジルアミン配位子、ビス(6-ピバルアミド-2-ピリジルメチル)(2-ピリジルメチル)アミン(Hbppa)、を使用することによって、中心金属周りにアルキルペルオキソ種を安定に配位させる空間空間を形成し、より安定なアルキルペルオキシド錯体を得ること、およびその錯体を用いた選択的な触媒的酸化反応などへの用途(使用)を開発した(前記特許文献1)。
【0006】
一方、本発明者らは、亜鉛含有タンパク質は、加水分解、縮合反応、および構造制御を含む種々の機能をなし得る高いルイス酸性があり、またZn(II)イオンの立体構造上のフレキシビリティを持つ点で優位であるとされていたことに基づいて、SOD活性の機能を種々の亜鉛錯体を開発してきた(特願2003-11916号)。その開発の中で、亜鉛錯体における亜鉛サイトの役割を推測するために、いくつかの静電的および立体的に制御されたZn(II)錯体、〔Zn(bpy)〕(ClO(1)、〔Zn(dmbp)〕(ClO(2)、〔Zn(tpa)(HO)〕(ClO(3)、および〔Zn(bpy)〕(ClO(4)を用いて系統的にスーパーオキシドの不均化の調査をし、その過程で亜鉛ヒドロペルオキシド錯体を同定している。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の基本的な課題は、新規な亜鉛ヒドロペルオキシド錯体を得ることである。そこで、先ず、新規なトリポーダル(三脚型)ピリジルアミン配位子、ビス(6-ネオペンチルアミノ-2-ピリジルメチル)(2-ピリジルメチル)アミン(bnpa)、またはビス(6-ピバルアミド-2-ピリジルメチル)(2-ピリジルメチル)アミン(Hbppa)を用い、〔Zn(bnpa)(OH)〕1-または〔Zn(Hbppa)(OH)〕1-を合成し(L1-はカウンターイオン)、これらをHと反応させることによりヒドロペルオキソ単核Zn(II)錯体を合成した。次いで、その錯体の特性をCOとの付加反応を試みることにより検討したところ、〔Zn{(bnpa)}(CO2-)〕2+2-が安定な化合物として得られたことで明らかにし、前記課題を解決することができた。また、過炭酸化合物類が、消毒剤、酸化漂白剤などとして有効であること、前記過炭酸亜鉛錯体〔{Zn(bnpa)}(CO2-)〕2+2-の亜鉛は鉄などと同様に生体内で利用されている金属であり、安全な消毒剤、酸化漂白剤などとして有用であることは明らかであることから、前記過炭酸亜鉛錯体は前記用途において有用な化合物である。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1は、〔Zn(bnpa)(OOH)〕1-〔但し、bnpaはビス(6-ネオペンチルアミノ-2-ピリジルメチル)(2-ピリジルメチル)アミン、L1-は1価の正イオンと対をなす陰イオン〕または〔Zn(Hbppa)(OOH)〕1-〔但し、Hbppaはビス(6-ピバルアミド-2-ピリジルメチル)(2-ピリジルメチル)アミン、L1-は1価の正イオンと対をなす陰イオン〕で表される亜鉛ヒドロペルオキシド錯体である。
本発明の第2は、前記第一の発明の亜鉛ヒドロペルオキシド錯体を有効成分とする酸化剤である。
本発明の第3は、〔{Zn(bnpa)}(CO2-)〕2+2-または〔{Zn(Hbppa)}(CO2-)〕2+2-〔Q2-は2価の正イオンと対をなす陰イオン〕で表される過炭酸亜鉛錯体化合物であり、そして本発明の第4は、前記過炭酸亜鉛錯体化合物を有効成分とする酸化剤である。
【0009】
【本発明の実施の態様】
本発明をより詳細に説明する。
A.第1の発明およびこれに関連する第2、第3および第4の発明は、新規なトリポーダル(三脚型)ピリジルアミン配位子、ビス(6-ネオペンチルアミノ-2-ピリジルメチル)(2-ピリジルメチル)アミン(bnpa)またはビス(6-ピバルアミド-2-ピリジルメチル)(2-ピリジルメチル)アミン(Hbppa)をHと反応させてヒドロペルオキソ単核Zn(II)錯体を合成し、その錯体のキャラクタリゼーションを行うことによって明らかにした。亜鉛ヒドロペルオキシド錯体の例は下記の化合物1で表される。
【0010】
【化1】
JP0003986448B2_000002t.gif
【0011】
〔Zn(bnpa)(OOH)〕の生成は、〔Zn(bnpa)(OH)〕(図1の上段)とHとの反応のESI-massスペクトル測定によって確認でき(図1の中段)、またCOの付加反応はCO下における0℃に維持した反応溶液から得られた過炭酸亜鉛錯体生成物、〔Zn{(bnpa)}(CO2-)〕2+、のESI-massスペクトル測定(図1の下段)、およびその単結晶のX線構造解析により確認した。
【0012】
B.ヒドロキソ単核Zn(II)錯体、〔Zn(bnpa)(OH)〕ClO、は配位子bnpaとZn(II)-OHとをメタノール/水溶媒中で反応させることにより調製された。
反応溶液から得られたものの結晶構造は、その単結晶X線構造解析により、bnpa配位子およびヒドロキソイオンが三方両錐型に配位した5配位Zn(II)錯体であることを明らかした(図2)。また、ヒドロキシドの配位は、MeCN-d中のH-NMRスペクトルにおいてヒドロキシ水素の信号を2.04ppmに、そしてIRスペクトルにおいてそのO-H振動を3626cm-1に観察することにより確認した。
なお、カウンターイオンL1-およびQ2-としては、過塩素酸イオン、塩素酸イオン、塩素イオン、酢酸イオン、硝酸イオン等の-1価の、あるいは硫酸イオン等の-2価の負電荷を有する化合物等を挙げることができる。
【0013】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、この例示により本発明が限定的に解釈されるものではない。
【0014】
実施例1
〔Zn(bnpa)(OH)〕ClOの調製;
メタノール/水(1/1)中で、Zn(ClO・6HO(178.8mg、0.48mmol)、KOH、およびHClO(60%)の混合物によりZn(OH)種を含む300mLの溶液(pH=6.6~7)を調製した。この溶液に、室温においてbnpa(184.3mg、0.4mmol)のメタノール/水(1/1)の溶液の80mLを加え30分間撹拌後、溶媒を真空下で除去し白色粉体を沈殿させた。25℃のメタノールから再結晶させて無色の〔Zn(Hbnpa)(OH)〕ClOのX線回折測定に適した結晶(0.19g、収率74%)を得た。
特性;H-NMR(MeCN-d、2.04ppm:ヒドロキシ水素)
ESI-mass(m/z=541〔Zn(bnpa)(OH)〕)(図1のA)単結晶として得られた〔Zn(bnpa)(OH)〕錯体の構造は図2に示す。
【0015】
〔Zn(bnpa)(OOH)〕ClOの調製;
MeCN溶媒中〔Zn(bnpa)(OH)〕ClOを30%Hと反応させて、〔Zn(bnpa)(OOH)〕ClOを含むMeCNの0.4mL溶液を調製した。亜鉛ヒドロペルオキシド錯体の生成は、図1のBに示すESI-massスペクトル測定とH-NMRスペクトルによって確認した。
特性;H-NMR(MeCN-d、7.77ppm:ヒドロペルオキシ水素)ESI-mass(m/z=557 [Zn(bnpa)(OOH)]
〔Zn{(bnpa)}(CO)〕(ClOの調製;
上記で得られた溶液に0℃においてCOを吹き込んだテトラヒドロフラン溶液0.1mLを加えた。大気下でアセトニトリル/テトラヒドロフラン/EtOから結晶化させて、無色のX線回折測定に適した結晶(2.63mg、収率38%)を得た。
物性;元素分析(計算値C63931313ZnCl:C,52.46;H,6.49;N,12.62、実験値:C,52.54;H,6.21;N,12.44)
ESI-mass(m/z=564 〔Zn{(bnpa)}(CO)〕2+(図1のC)、m/z=1227 〔Zn{(bnpa)}(CO)(ClO)〕
13C-NMR(MeCN-d、207.8ppm:ペルカルボナト炭素)
【0016】
【発明の効果】
以上述べたように、新規な亜鉛ヒドロペルオキシド錯体、これを用いて得られる新規過炭酸亜鉛錯体化合物、新規な亜鉛ヒドロペルオキシド錯体および前記新規過炭酸亜鉛錯体化合物の酸化剤としての薬剤としての有用性が確認できたことは、工業的に優れた効果をもたらすものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 〔Zn(bnpa)(OH)〕(A)、〔Zn(bnpa)(OOH)〕(B)、および〔Zn{(bnpa)}(CO)〕2+(C)のESI-massスペクトル
【図2】 〔Zn(bnpa)(OH)〕の立体構造図
図面
【図1】
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【図2】
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