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明細書 :アザディールス・アルダー反応方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3950422号 (P3950422)
公開番号 特開2004-238368 (P2004-238368A)
登録日 平成19年4月27日(2007.4.27)
発行日 平成19年8月1日(2007.8.1)
公開日 平成16年8月26日(2004.8.26)
発明の名称または考案の名称 アザディールス・アルダー反応方法
国際特許分類 C07D 211/86        (2006.01)
C07D 401/04        (2006.01)
C07B  61/00        (2006.01)
FI C07D 211/86
C07D 401/04
C07B 61/00 300
請求項の数または発明の数 5
全頁数 10
出願番号 特願2003-031743 (P2003-031743)
出願日 平成15年2月7日(2003.2.7)
審査請求日 平成15年3月4日(2003.3.4)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】小林 修
【氏名】眞鍋 敬
【氏名】キャサリーン ロンカリック
個別代理人の代理人 【識別番号】100093230、【弁理士】、【氏名又は名称】西澤 利夫
審査官 【審査官】伊藤 幸司
参考文献・文献 特開昭60-197686(JP,A)
特開昭62-012760(JP,A)
特開2000-042404(JP,A)
JOURNAL OF THE AMERICAN CHEMICAL SOCIETY, 1974, Vol.96, No.25, pp.7807-8
SYNLETT, 2002, No.11, pp.1898-1900
Tetrahedron Letters, 1999, Vol.40, No.44, pp.7831-7834
Tetrahedron, 2001, Vol.57, No.13, pp.2537-2544
調査した分野 C07D
C07C
CAPLUS(STN)
REGISTRY(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
ダニシェフスキージェン(Danishefsky's Diene)化合物と、イミン化合物もしくはアルデヒド化合物とアミン化合物とを、水中で中性のアルカリ金属塩の存在下に反応させ、含窒素6員複素環化合物を合成することを特徴とするアザディールス・アルダー反応方法。
【請求項2】
アルカリ金属塩は、アルカリ金属の、スルホン酸塩、硫酸塩、過ハロゲン酸塩およびハロゲン化物のうちの1種以上であることを特徴とする請求項1のアザディールス・アルダー反応方法。
【請求項3】
イミン化合物もしくはアルデヒド化合物とアミン化合物が次式(1)(2)
【化1】
JP0003950422B2_000011t.gif
(R1およびR2は、各々、同一または別異に、置換基を有してもよい炭化水素基または複素環基を示す)
で表わされ、含窒素6員複素環化合物が、次式(3)
【化2】
JP0003950422B2_000012t.gif
(R1およびR2は前記のものを示す)
で表わされることを特徴とする請求項1または2のアザディールス・アルダー反応方法。
【請求項4】
ダニシェフスキージェン(Danishefsky's Diene)化合物が次式(4)
【化3】
JP0003950422B2_000013t.gif
(R3は、炭化水素基を、Rは、同一または別異の、炭化水素基を示す)
で表わされることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかのアザディールス・アルダー反応方法。
【請求項5】
請求項4の反応方法において、副生する次式(5)
【化4】
JP0003950422B2_000014t.gif
(R1およびR2は、各々、同一または別異に、置換基を有してもよい炭化水素基または複素環基を示し、R3は炭化水素基を示す)
で表わされる化合物を酸処理して次式(3)
【化5】
JP0003950422B2_000015t.gif
(R1およびR2は前記のものを示す)
で表わされる含窒素6員複素環化合物を製造することを特徴とするアザディールス・アルダー反応方法。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
この出願の発明は、アザディールス・アルダー(Aza Diels Alder)反応方法に関するものである。さらに詳しくは、この出願の発明は、医薬品、農薬、香料、機能性高分子等の原料やその中間体、あるいは添加剤等として有用な含窒素6員複素環化合物を、環境への負荷が小さい水媒体中で高効率に合成することのできる、新しいアザディールス・アルダー反応方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、アザディールス・アルダー(Aza Diels Alder)反応は、含窒素6員複素環化合物の合成方法として知られている。また、この反応については、従来より、有機溶媒中でルイス酸触媒が用いられている。
【0003】
しかしながら、近年の環境問題への関心の高まりから、環境負荷の大きな有機溶媒を使用せずにアザディールス・アルダー反応を実現することが検討されてきている。
【0004】
このような背景から、アザディールス・アルダー反応を、有機溶媒を用いることなしに、水中で実現可能とすることが報告されている(文献1~3)。ただ、これらの反応方法では、触媒として酸が用いられていることから、酸触媒に代わる新しい手段の探索が必要とされていた。
【0005】
そこで、この出願の発明者らは、水媒体中での有機合成反応をルイス酸触媒の存在下に行う各種の反応方法を開発し、その知見をも踏まえて、最近、アザディールス・アルダー反応を水媒体中において銀(Ag)触媒の存在下に行う方法が見出されている。
【0006】
だが、酸触媒を使用せずに水媒体中でアザディールス・アルダー反応を行う方法は端初についたばかりである。
【0007】
【文献】
1:T.Akiyama, et al., Synlett, 2002, 1898
2:T.Akiyama, et al., Tetrahedron Lett., 1999. 40. 7831
3:K.Manabe,,et al.,Tetrahedron, 2001, 57, 2544
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、この出願の発明は、水媒体中で、しかも酸を使用することもなく、環境への負荷が小さく、しかも高効率での反応を実現することのできる、新しいアザディールス・アルダー反応方法を提供することを課題としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この出願の発明は、上記の課題を解決するものとして、第1には、ダニシェフスキージェン(Danishefsky's Diene)化合物と、イミン化合物もしくはアルデヒド化合物とアミン化合物とを、水中で中性のアルカリ金属塩の存在下に反応させ、含窒素6員複素環化合物を合成することを特徴とするアザディールス・アルダー反応方法を提供する。
【0010】
また、この出願の発明は、第2には、上記方法において、アルカリ金属塩は、アルカリ金属の、スルホン酸塩、硫酸塩、過ハロゲン酸塩およびハロゲン化物のうちの1種以上であることを特徴とするアザディールス・アルダー反応方法を、第3には、イミン化合物もしくはアルデヒド化合物とアミン化合物が次式(1)(2)
【0011】
【化6】
JP0003950422B2_000002t.gif【0012】
(R1およびR2は、各々、同一または別異に、置換基を有してもよい炭化水素基または複素環基を示す)
で表わされ、含窒素6員複素環化合物が、次式(3)
【0013】
【化7】
JP0003950422B2_000003t.gif【0014】
(R1およびR2は前記のものを示す)
で表わされることを特徴とするアザディールス・アルダー反応方法を、第4には、ダニシェフスキージェン(Danishefsky's Diene)化合物が次式(4)
【0015】
【化8】
JP0003950422B2_000004t.gif【0016】
(R3は、炭化水素基を、Rは、同一または別異の、炭化水素基を示す)
で表わされることを特徴とするアザディールス・アルダー反応方法を提供する。
【0017】
そして、この出願の発明は、前記第4の発明の反応方法において、副生する次式(5)
【0018】
【化9】
JP0003950422B2_000005t.gif【0019】
(R1およびR2は、各々、同一または別異に、置換基を有してもよい炭化水素基または複素環基を示し、R3は炭化水素基を示す)
で表わされる化合物を酸処理して次式(3)
【0020】
【化10】
JP0003950422B2_000006t.gif【0021】
(R1およびR2は前記のものを示す)
で表わされる含窒素6員複素環化合物を製造することを特徴とするアザディールス・アルダー反応方法も提供する。
【0022】
【発明の実施の形態】
この出願の発明は上記のとおりの特徴をもつものであるが、以下にその実施の形態について説明する。
【0023】
なによりも特徴的なことは、この出願の発明では、ダニシェフスキージェン(Danishefsky's Diene: J.Am.chem.Soc., 1974, 96, 7807)と、イミン化合物もしくはこのイミン化合物を生成可能とするアルデヒド化合物とアミン化合物とをアザディールス・アルダー反応させて含窒素6員複素環化合物を合成する反応方法を、水中で中性のアルカリ金属塩の存在下に行うことである。
【0024】
反応媒体としての水は、従来の有機溶媒を使用する場合のように、回収や廃棄に際して環境への負荷が極めて小さいという特徴を有している。しかも、この出願の発明では水媒体中で、中性の条件下に反応を行うことができる。このようなことは、これまで全く予期されなかったことである。
【0025】
媒体としての水には、通常の意味で不可避的なイオン種等が含有されていてもよい。また、水親和性の有機溶媒が混合されていてもよいが、本質的には反応媒体としては水で充分である。
【0026】
水中で中性のアルカリ金属塩としては、Na、K、Li等のアルカリ金属について、その鉱酸塩、たとえば硫酸塩やハロゲン化物、そしてスルホン酸塩、あるいは過ハロゲン酸塩のうち各種のものから選択されてよい。なかでも好適なものとしては、長鎖、たとえば炭素数7以上のアルキル基を有する硫酸塩がスルホン酸塩;フッ素原子を置換したフルオロアルキル基を有するスルホン酸塩、たとえばトリフルオロメタンスルホン酸塩(トリフレート)や;過塩素酸塩、ヨウ化物等がたとえば例示される。
【0027】
これらの水中での中性のアルカリ金属塩は、反応系に対して、通常は、0.5~50モル%の割合で使用することが考慮され、より好適には2~20モル%が考慮される。
【0028】
反応に使用されるイミン化合物もしくはアルデヒド化合物とアミン化合物としては、たとえば前記の式(1)(2)で示されるものが考慮される。式中の符合R1およびR2としては、各々、同一または別異に、反応を阻害することのない置換基、たとえばアルコキシ基、エステル基、ニト基、ジアルキルアミノ基、シアノ基、スルフィド基等を有していてもよい炭化水素基あるいは複素環基が考慮される。ここで、炭化水素基は、鎖状、環状、あるいはその結合されたもの等の各種であってよく、複素環基についても、含窒素複素環基、含酸素複素環基等の各種のものであってよい。
【0029】
一方、ダニシェフスキージェン化合物については、たとえば前記の式(4)で表わされるものが例示される。式中の符合R3およびRは炭化水素基であるが、反応を阻害することのない置換基を有していてもよい。
【0030】
以上のような、反応原料としてのイミン化合物もしくはアルデヒド化合物とアミン化合物によるダニシェフスキージェン化合物との反応によって、アザディールス・アルダー反応の特徴として、含窒素6員複素環化合物が生成されることになる。このものについては、たとえば前記の式(3)で表わされるものが例示される。
【0031】
上記反応原料の使用割合については特に限定的ではないが、イミン化合物、もしくはアルデヒド化合物に対してダニシェフスキージェン化合物を0.5~10当量、より好ましくは1~5当量の割合で用いることが考慮される。
【0032】
反応の温度については、一般的には-10℃~40℃、より好ましくは0℃~30℃程度の範囲でよく、雰囲気は、大気中、あるいは不活性ガス雰囲気中のいずれでもよい。反応は、通常5時間程度以内には終了する。この範囲において適宜に反応時間を設定することができる。
【0033】
また、この出願の発明の方法においては、たとえば前記の式(5)で表わされるような、マンニッヒ(Mannich)型化合物が副生する場合がある。このものは反応中間体であるとも考えられる。このマンニッヒ型化合物については、鉱酸小溶液等により酸処理することで容易にこの発明の目的化合物である含窒素6員複素環化合物に変換することができる。
【0034】
そこで以下に実施例を示し、さらに詳しくこの出願の発明について説明する。もちろん、以下の例によって発明が限定されることはない。
【0035】
【実施例】
<実施例1>
次の反応式に従って、アザディールス・アルダー反応を実施した。
【0036】
【化11】
JP0003950422B2_000007t.gif【0037】
この反応においては、触媒として各種のアルカリ金属塩を用いた。また、比較のために触媒を使用しない場合と四級アンモニウム塩の場合についても反応を試みた。その結果を表1に示した。
【0038】
【表1】
JP0003950422B2_000008t.gif【0039】
中性のアルカリ金属塩の使用によって、高い選択性と高い反応収率で化合物2aの含窒素6員複素環化合物が合成されることを確認した。
【0040】
なお、反応生成物の確認は、1H-NMRにより行った。また、副生した化合物3aについては、1M-aqHClによる酸処理で化合物2aに容易に転換されることも確認された。
<実施例2>
触媒としてNaOTfを用い、イミン化合物を用いた2成分(2-Comp.)反応、並びにアルデヒド化合物とアミン化合物を用いた3成分(3-Comp.)反応を次の反応式に従って行った。
【0041】
【化12】
JP0003950422B2_000009t.gif【0042】
その結果を表2に示した。なお、この表2中の空欄は、反応が生じなかったことではなく、実施例としては実施していないことを示している。
【0043】
高い反応収率で、化合物2a-lの含窒素6員複素環化合物が生成されることが確認された。
【0044】
【表2】
JP0003950422B2_000010t.gif【0045】
【発明の効果】
以上詳しく説明したとおり、この出願の発明によって、水媒体中で、しかも酸を使用することもなく、環境の負荷が小さく、しかも高効率での反応を実現することのできる、新しいアザディールス・アルダー反応方法が提供される。