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明細書 :ペプチドとキレート剤を含む殺菌性組成物

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3757268号 (P3757268)
公開番号 特開2003-063982 (P2003-063982A)
登録日 平成18年1月13日(2006.1.13)
発行日 平成18年3月22日(2006.3.22)
公開日 平成15年3月5日(2003.3.5)
発明の名称または考案の名称 ペプチドとキレート剤を含む殺菌性組成物
国際特許分類 A61K  38/00        (2006.01)
A61K  31/198       (2006.01)
A61P   1/02        (2006.01)
A61P  31/04        (2006.01)
FI A61K 37/02
A61K 31/198
A61P 1/02
A61P 31/04
請求項の数または発明の数 2
全頁数 9
出願番号 特願2001-251048 (P2001-251048)
出願日 平成13年8月22日(2001.8.22)
審査請求日 平成13年8月23日(2001.8.23)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】501203344
【氏名又は名称】独立行政法人農業・生物系特定産業技術研究機構
発明者または考案者 【氏名】老田 茂
個別代理人の代理人 【識別番号】100074077、【弁理士】、【氏名又は名称】久保田 藤郎
【識別番号】100086221、【弁理士】、【氏名又は名称】矢野 裕也
審査官 【審査官】安藤 倫世
参考文献・文献 特開平03-500051(JP,A)
老田 茂,大麦、小麦に含まれるα,βチオニン抗菌ペプチドの抽出と酵素分解,日本食品科学工学会誌,2000年,Vol.47, No.6,p.424-430
OKADA T.,The Mode of Toxic Protein in Wheat and Barley on Brewing Yeast,Agricultural and Biological Chemistry,1973年,Vol.37, No.10,p.2289-2294
木田 中,Ethylenediaminetetraacetic acid (EDTA)のpH依存選択的抗菌活性,日本細菌学雑誌,1992年,Vol.47, No.4,p.625-629
日本薬学会,エデト酸およびエデト酸塩類,医薬品添加物ハンドブック,1993年,p.50-53
調査した分野 A61K 38/00
A61K 31/198
A61P 1/02
A61P 31/04
BIOSIS(STN)
CA(STN)
EMBASE(STN)
MEDLINE(STN)
JSTPLUS(JOIS)
JMEDPLUS(JOIS)
JST7580(JOIS)
特許請求の範囲 【請求項1】
(a)エチレンジアミン四酢酸およびその金属塩の中から選ばれた少なくとも1種の物質並びに(b)アルファ型チオニンおよびベータ型チオニンの中から選ばれた少なくとも1種の物質を有効成分として含有することを特徴とする食中毒原因細菌及び/又はう蝕性細菌用殺菌性組成物。
【請求項2】
(a)エチレンジアミン四酢酸およびその金属塩の中から選ばれた少なくとも1種の物質の含有量が0.1mM以上1.5mM未満であり、(b)アルファ型チオニンおよびベータ型チオニンの中から選ばれた少なくとも1種の物質の含有量が1μg/mL以上100μg/mL以下である請求項1記載の食中毒原因細菌用殺菌性組成物。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ペプチドとキレート剤を含む殺菌性組成物に関し、詳しくはエチレンジアミン四酢酸等のキレート剤と麦類由来の抗菌性ペプチドを有効成分として含有する殺菌性組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
日本における食中毒で発生件数が最も多い原因菌は、サルモネラ菌と腸炎ビブリオ菌であり、さらに近年では、病原性大腸菌O-157による食中毒も増加傾向にある。また、セレウス菌による米飯製品の食中毒も、件数は少ないが毎年発生している。
様々な食品中に混入しているこれらの食中毒原因菌を殺菌することは、食中毒の防止の有効である。一方、う蝕(虫歯)や歯周病も細菌によって引き起こされるため、これら細菌を殺菌することも重要な課題である。
しかしながら、化学合成された食品保存料や殺菌剤は、消費者から敬遠される傾向にある。そのため、より低い濃度で効率よく作用させる工夫や、植物由来の天然物を用いてこれらの細菌等を制御することが多数試みられている。
【0003】
植物由来の抗菌物質としては、カラシやワサビの成分であるアリルイソチオシアネートやペクチン分解物等があるが、これらは独特の香り有していたり、十分な殺菌効果を奏するためには高濃度の添加を必要とすることが多い(食品微生物制御の化学、幸書房、204-254頁、1998年)。
また、う蝕性細菌が資化できない甘味料として、キシリトール等の糖アルコールがあるが、このものは多量に摂取すると、下痢を引き起こすことが知られている(食品と開発、29巻4号、4-7頁、1994年)。
さらに、歯周病細菌の増殖阻害やコラゲナーゼ阻害に有効な物質として、植物由来のものではリグニン(特開2000-247900号公報)やポリフェノール(特開平11-302142号公報)等があるが、これらも十分な効果を得るには、比較的高濃度で用いることが必要である。
【0004】
そこで、安全な物質であり、無臭かつ低濃度で作用する食品用並びに口腔用殺菌剤が求められている。
麦類由来のペプチドであるアルファ型およびベータ型チオニンは、糸状菌や酵母の増殖を阻害する作用があることは知られているが、細菌に対する増殖阻害効果に関しては報告例は少なく、僅かに大腸菌の増殖に対する50%阻害濃度が250μg/mLと極めて弱いことが報告されている(The Journal of Biological Chemistry 、267 巻、2228-2233 頁、1992年) にすぎない。
さらに、その他の食中毒原因細菌やう蝕性細菌、歯周病菌に対するチオニンの抗菌性に関する報告は、これまでに全くない。
【0005】
一方、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)は、各種金属イオンに対するキレート作用を有しており、高濃度(10mM、二ナトリウム塩で換算すると、3362ppm)では、大腸菌や腸炎ビブリオ菌に対して抗菌性を示すことが報告されている(日本細菌学雑誌、47巻、625-629頁、1992年)が、う蝕性細菌や歯周病細菌に対する抗菌効果は知られていない。
また、EDTAおよびその金属塩は、食品の色安定効果があるため、アメリカ合衆国等では食品添加物として使用されている。しかし、その許容濃度は二ナトリウム塩で36-500ppmである(Code of Federal Rrgulations, Title 21: Food and drugs, US Government Printing Office, 1998年) 。したがって、EDTAおよびその金属塩を単独で食品保存料として用いても、安全な濃度範囲では抗菌効果を期待することはできない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、食中毒原因細菌、う蝕性細菌を殺菌する作用を低濃度で有し、かつ安全性の高い組成物を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の本発明は、(a)エチレンジアミン四酢酸およびその金属塩の中から選ばれた少なくとも1種の物質並びに(b)アルファ型チオニンおよびベータ型チオニンの中から選ばれた少なくとも1種の物質を有効成分として含有することを特徴とする食中毒原因細菌及び/又はう蝕性細菌用殺菌性組成物である。
請求項2記載の本発明は、(a)エチレンジアミン四酢酸およびその金属塩の中から選ばれた少なくとも1種の物質の含有量が0.1mM以上1.5mM未満であり、(b)アルファ型チオニンおよびベータ型チオニンの中から選ばれた少なくとも1種の物質の含有量が1μg/mL以上100μg/mL以下である請求項1記載の食中毒原因細菌用殺菌性組成物である。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の殺菌性組成物は、EDTAおよびその金属塩の中から選ばれた少なくとも1種の物質とアルファ型チオニンおよびベータ型チオニンの中から選ばれた少なくとも1種の物質を有効成分として含有する。
EDTAは、種々の金属イオンと結合するが、目的とする抗菌作用を有している限り、いずれも本発明に使用できる。例えば、EDTAの金属塩としてはナトリウム塩、カリウム塩などが好適なものであり、特にEDTAの二ナトリウム塩、四ナトリウム塩などが好ましい。
EDTAおよびその金属塩は、単独で用いられる他、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0009】
また、本発明に用いるチオニンは、大麦、小麦、燕麦、ライ麦等の麦類の穀粒粉から、食塩水や塩酸、クエン酸などの酸によって抽出することにより得られる他、チオニン遺伝子を含む組換え微生物や植物を用いて生産することもできる。アルファ型とベータ型チオニンは、いずれも約45個のアミノ酸で構成され、そのうちシステインが約8個含まれており、しかもそれらのシステインの一部またはすべてがジスルフィド結合により、内部架橋している構造であることを特徴とする。
麦類の抽出液を硫安塩析等により濃縮し、さらに高速液体クロマトグラフィー等を用いることによって、チオニンを精製することができるが、精製途中の粗精製物であっても抗菌作用を有しているものは、本発明に使用することができる。アルファ型とベータ型のチオニンは、これらを単独で用いてもよく組み合わせて用いてもよい。
大麦からのチオニンの抽出・精製法の一例は、Planta、176巻、221-229頁(1988年) に記載されており、他の麦類から抽出・精製する場合も、この方法に準じて行うことが可能である。
【0010】
大麦、小麦、燕麦のチオニンの全アミノ酸配列(Plant Molecular Biology 、26巻、25~37頁、1994年)やライ麦チオニンのアミノ酸組成(Journal of Agricultural and Food Chemistry、26巻、794~796頁、1978年)は、既に知られている。なお、麦の品種によっては、公知のアミノ酸組成や配列と比べて、1個もしくは数個のアミノ酸残基が置換したり、付加もしくは欠失するペプチドが存在するが、目的とする抗菌作用を有しているかぎり、これらも本発明に用いるチオニンに包含される。
【0011】
EDTAおよびその金属塩は、食品の色安定効果があるため、多くの国で食品添加物として認められている。
しかも、EDTA等の安全性評価はすでに確立されており、食品添加物としての1日の摂取許容量(ADI)は2.5mg/体重kgである(FAO/WHO: Codex Alimentarius Commission, List of additives evaluated for their safety in use in food.CAC/FAL 1-1973, 1973年) 。
また、アメリカ合衆国では、EDTA二ナトリウム(EDTA-2Na)を食品に36~500ppmの濃度範囲で添加することが認められている(Code of Federal Regulations, Title 21: Food and drugs, US Government Printing Office, 1998年) 。
【0012】
また、チオニンについては、トリプシン等の消化酵素で速やかに分解される(老田、日本食品科学工学会誌、47巻、424-430頁、2000年)ことから、腸内細菌への影響は極めて小さいと考えられる。さらに、モルモットに103~229mg/kg体重のチオニンを1回経口投与し、投与後7日間観察したが、異常は認められなかったと報告されている(Cereal Chemistry, 19巻、301-307頁、1942年)。
【0013】
本発明の殺菌性組成物は、様々な有害微生物に対して適用することができ、例えば食中毒原因細菌、う蝕性細菌などを挙げることができる。
また、本発明の殺菌性組成物は、様々な形態とすることができ、例えばEDTAおよびその金属塩とチオニンを同時に種々の食品に添加してもよい。EDTAおよびその金属塩とチオニンは耐熱性があるため、食品への添加後に当該食品を加熱殺菌することができる。
【0014】
食品中に含まれる食中毒原因細菌を殺菌するには、腸炎ビブリオ菌の場合は、0.1~0.5mMのEDTAおよびその金属塩と2~100μg/mLのチオニンを、サルモネラ菌の場合は、0.1~1.49mMのEDTAおよびその金属塩と2~100μg/mLのチオニンを、大腸菌の場合は、0.5~1.49mMのEDTAおよびその金属塩と10~100μg/mLのチオニンを同時に食品に加えるとよい。ただし、添加するEDTAおよびその金属塩の濃度が低い程、高濃度のチオニンの添加を必要とする。
なお、0.1~1.49mMのEDTA-2Naは33.6~500mg/Lに換算され、アメリカ合衆国における安全基準である500ppm以下である。しかし、1.50mM以上のEDTA-2Naを食品へ添加すると、副作用が生起するおそれがある。
【0015】
本発明の殺菌性組成物は、前記したように、食品に添加する他、歯磨き粉やうがい薬等の各種口腔用製品に添加して用いることもできる。その場合、0.5~10mMのEDTAおよびその金属塩と4~100μg/mLのチオニンを添加すればよく、このものを日常的に使用することによって、歯のう蝕を治療したり、予防することが可能である。
【0016】
以下に、実施例を示して本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらによって制限されるものではない。
【0017】
製造例1
大麦の1種である裸麦の「イチバンボシ」穀粒をサイクロンミルで粉末状にしたもの100gに蒸留水300mLを加え、4℃で1時間攪拌後、遠心分離し、上清を除いた。
次に、沈殿物に200mLの1M食塩水を加え、4℃で2時間攪拌したのち、遠心分離を行った。得られた上清を硫安(50~90%飽和)塩析し、回収した沈殿物をリン酸緩衝液を用いて懸濁した。その遠心上清を高速液体クロマトグラフィーに供することにより、精製大麦アルファ型およびベータ型チオニンを得た。なお、カラムは、Wakosil 5C4-200, 4.6mmφ×250mm (和光純薬)を用い、0.1%トリフルオロ酢酸と0→40%(0→40分)アセトニトリルを含む水(pH2.1)による濃度勾配溶出を流速0.5mL/分で行い、集めた画分は遠心濃縮器で乾固させ、アミノ酸分析およびマススペクトル分析により、アルファ型およびベータ型チオニンであることを確認した。「イチバンボシ」穀粒粉末1Kgあたりに換算して、37mgのアルファ型チオニンおよび12mgのベータ型チオニンをそれぞれ得た。
【0018】
製造例2
市販薄力小麦粉100gに0.15N塩酸300mLを加えて攪拌後、37℃で30分間静置し、再び攪拌した後に遠心分離し、得られた上清に10N水酸化ナトリウム水溶液を滴下して中和した。これを、再度遠心分離した。
このようにして得た上清を硫安(50~90%飽和)塩析し、回収した沈殿物をリン酸緩衝液を用いて懸濁した。その遠心上清を、製造例1と同じ条件で高速液体クロマトグラフィーに供することにより、精製小麦アルファ型チオニンを得た。
集めた画分は遠心濃縮器で乾固させ、アミノ酸分析およびマススペクトル分析により、アルファ型チオニンであることを確認した。薄力小麦粉1Kgあたりに換算して、40mgのアルファ型チオニンを得た。
【0019】
実施例1
歯周病菌(Prevotella nigrescens 、Fusobacterium nucleatum)を5μg/mLのヘミンと1μg/mLのメナジオンを添加したGAMブイヨン培地(日水製薬社製)に接種し、アネロメイト(日水製薬社製)に封入して37℃で嫌気的に2日間培養した。
う蝕性細菌であるストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)をブレインハートインフージョン培地(Difco 社製)に、バチルス・セレウス(Bacillus cereus)を感受性測定用培地(日水製薬社製)に、その他の食中毒原因細菌などの細菌はLB培地(ポリペプトン1%、酵母エキス0.5%、食塩0.5%、pH7.2)に接種して37℃で1日間培養した。
次いで、各培地に所定量のチオニンやEDTAを添加してから、菌濃度が約1×106 /mLになるように接種し、歯周病菌は2日間、他の菌は1日間の培養後、希釈平板培養によって生菌数を測定し、生菌数が100分の1以下に低下した場合を最少殺菌濃度(MBC)、生菌数が増加しなかった場合を最少阻害濃度(MIC)とした。結果を第1表、第2表および第3表、並びに図1に示す。
【0020】
第1表から明らかなように、小麦アルファ型チオニン単独添加では、供試菌体のうちサルモネラ菌(Salmonella typhimurium JCM 6977 株) と腸炎ビブリオ菌(Vibrio parahaemolyticus IFO 12711 株) 以外は、MICが50μg/mL以上であった。一方、EDTA-2Na単独添加では、サルモネラ菌、大腸菌(Escherichia coli) およびストレプトコッカス・ミュータンスのMBCは10mM以上であったのに対し、他の菌のMBCは1mM以下であった。
次に、小麦アルファ型チオニン10μg/mLとEDTA-2Na 0.02-10mMを同時に添加した場合は、食中毒原因細菌の場合、EDTA-2NaのMBCは単独添加の場合と比べていずれも低下したが、歯周病菌では、このような相乗効果は認められなかった
また、サルモネラ菌(S. typhimurium JCM 6977 株) や大腸菌(E. coli JCM 5491株) に対して、EDTAやEDTA-四ナトリウム塩(EDTA-4Na)でも、EDTA-2Naと同等もしくはそれ以上の相乗効果が認められた(第2表)。
さらに、サルモネラ菌(S. typhimurium JCM 6977 株) や大腸菌(E. coli JCM 5491株) および腸炎ビブリオ菌(V. parahaemolyticus IFO 12711 株)について、異なる濃度のEDTA-2Na存在下で小麦アルファ型チオニンのMBCを調べたところ、図1に示した結果が得られた。試験は、LB培地で37℃で1日間培養した結果である。図中の●はサルモネラ菌、○は大腸菌、□は腸炎ビブリオ菌を示す。また、EDTA-2Na共存下でのチオニンの抗菌力は、小麦由来のものと大麦由来のもの、さらにはアルファ型とベータ型の間で殆ど差がなかった(第3表)。
【0021】
【表1】
JP0003757268B2_000002t.gifJP0003757268B2_000003t.gif*1 小麦アルファ型チオニン
*2 小麦アルファ型チオニン共存下でのEDTA-2NaのMBC(mM)
【0022】
【表2】
JP0003757268B2_000004t.gifJP0003757268B2_000005t.gif * 小麦アルファ型チオニン
【0023】
【表3】
JP0003757268B2_000006t.gifJP0003757268B2_000007t.gif * EDTA-2Na (1mM)を含むLB培地を使用
【0024】
実施例2
ストレプトコッカス・ミュータンス(S. mutans JCM 5705) に対する小麦アルファ型チオニンのMICは、ブレインハートインフージョン培地(Difco 社製)では50μg/mLであった(第1表参照)が、0.5%ショ糖を含むペプトン水(ポリペプトン1%、NaCl1%、pH7.0)におけるMICは4μg/mLであり、ショ糖からの酸生成も2日間殆ど認められなかった。すなわち、この培地に菌濃度が2×106 個/mLとなるようにストレプトコッカス・ミュータンスを接種し、37℃で培養したときの培地のpHの変化を調べた(図2参照)。この図は、ストレプトコッカス・ミュータンスの酸生成に及ぼす小麦アルファ型チオニンの影響について示したものであり、図中の○は小麦アルファ型チオニン無添加を、□は3μg/mL添加を、△は4μg/mL添加を、▽は5μg/mL添加を、それぞれを示す。
【0025】
なお、ヒトの唾液には通常1~4mMのカルシウムが含まれ(Archives of Oral Biology, 44巻、111-117頁、1999年)、さらにカルシウムによってチオニンの酵母に対する抗菌性が減殺されることが報告されている(Agricultural and Biological Chemistry 、37巻、2289-2294頁、1973年)。
そこで、チオニンによるストレプトコッカス・ミュータンスの酸生成阻害について、カルシウムの影響を調べたところ、酵母と同様の阻害抑制効果が認められたが、さらにカルシウムと同じモル濃度のEDTA-2Naを添加することにより、酸生成阻害に対するカルシウムによる抑制は解消された(図3参照)。すなわち、前記の0.5%ショ糖を含むペプトン水に菌濃度が2×106 個/mLとなるようにストレプトコッカス・ミュータンスを接種し、37℃で24時間培養した後の培地のpHを測定して調べた。図中の○はCaCl2 のみの添加を、●はCaCl2 とEDTA-2Naを同時添加した場合を示す。
【0026】
【発明の効果】
本発明により、(a)エチレンジアミン四酢酸およびその金属塩の中から選ばれた少なくとも1種の物質並びに(b)アルファ型チオニンおよびベータ型チオニンの中から選ばれた少なくとも1種の物質を有効成分として含有する殺菌性組成物が提供される。
【0027】
これら(a)、(b)成分は、いずれも低濃度で殺菌作用を発揮するので、本発明に係る殺菌性組成物を各種食品へ添加することにより、食中毒原因細菌を効果的に殺菌することができる。また、う蝕性細菌を殺菌するために、各種口腔用製品に当該殺菌性組成物を添加することによって、う歯の予防、治療が期待できる。
本発明に用いるエチレンジアミン四酢酸とその金属塩やチオニンの水溶液は、いずれも無色透明で無臭であるので、食品等の風味に影響を与えない。
【図面の簡単な説明】
【図1】 食中毒原因細菌を、異なる濃度のEDTA-2Naを含むLB培地にて37℃で1日間培養した場合の小麦アルファ型チオニンのMBCを示したものである。
【図2】 う蝕性細菌の酸生成に及ぼす小麦アルファ型チオニンの影響を示したものである。
【図3】 小麦アルファ型チオニンによるう蝕性細菌の酸生成阻害に及ぼすCaCl2 とEDTA-2Naの影響を示したものである。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2