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明細書 :キレート剤を含むヘリコバクター・ピロリ菌用抗菌剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3680081号 (P3680081)
公開番号 特開2002-154957 (P2002-154957A)
登録日 平成17年5月27日(2005.5.27)
発行日 平成17年8月10日(2005.8.10)
公開日 平成14年5月28日(2002.5.28)
発明の名称または考案の名称 キレート剤を含むヘリコバクター・ピロリ菌用抗菌剤
国際特許分類 A61K 31/198     
A61P  1/04      
A61P 31/04      
FI A61K 31/198
A61P 1/04
A61P 31/04
請求項の数または発明の数 1
全頁数 5
出願番号 特願2000-349003 (P2000-349003)
出願日 平成12年11月16日(2000.11.16)
審査請求日 平成12年11月16日(2000.11.16)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】501167644
【氏名又は名称】独立行政法人農業生物資源研究所
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】独立行政法人農業・生物系特定産業技術研究機構
発明者または考案者 【氏名】永井 利郎
【氏名】老田 茂
個別代理人の代理人 【識別番号】100074077、【弁理士】、【氏名又は名称】久保田 藤郎
【識別番号】100086221、【弁理士】、【氏名又は名称】矢野 裕也
審査官 【審査官】伊藤 幸司
参考文献・文献 特表平11-503404(JP,A)
特表平03-503171(JP,A)
調査した分野 A61K
CA(STN)
REGISTRY(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
有効成分としてエチレンジアミン四酢酸鉄(III)-ナトリウムのみを0.1~0.5mM含有することを特徴とするヘリコバクター・ピロリ菌用抗菌剤。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ヘリコバクター・ピロリ菌用抗菌剤に関し、詳しくは人体に対する安全性が確認されているキレート剤を有効成分として含有するヘリコバクター・ピロリ菌用抗菌剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、慢性胃炎や胃潰瘍の発症に、細菌のヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)が深く関与していることが分かってきた。わが国では、全人口の半数に相当する約6千万人がヘリコバクター・ピロリに感染していると言われている(食の科学、265巻、87~99頁、2000年)。
抗生物質等の投与によって胃中から本菌を除去することにより、慢性胃炎や胃潰瘍の治癒を図ることは可能であるが、患者によっては、除菌され難い場合があり、また抗生物質については耐性菌の出現や副作用の問題もある。
さらに、発症者だけでなく、感染者に対しても除菌を行うことが望ましいが、対象者数が膨大になるため、経済的に困難とされている。
【0003】
したがって、安全性が高く、かつ容易に摂取可能なヘリコバクター・ピロリ菌用の抗菌剤が求められている。
エチレンジアミン四酢酸(以下、EDTAと略記することがある。)は、各種金属イオンに対するキレート作用を有しており、金属イオンを必要とする酵素の反応阻害剤として知られている。また、EDTAおよびその金属塩は、食品の色安定効果があるため、多くの国で食品添加物として認められている。
【0004】
このように、EDTA等の安全性評価はすでに確立されており、食品添加物としての1日の摂取許容量(ADI)は2.5mg/体重kgである(FAO/WHO: Codex Alimentarius Commission, List of additives evaluated for their safety in use in food.CAC/FAL 1-1973, 1973年) 。また、アメリカ合衆国では、EDTA二ナトリウムを食品に36~500ppmの濃度範囲で添加することが認められている(Code of Federal Regulations, Title 21: Food and drugs, US Government Printing Office, 1988年) 。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、慢性胃炎や胃潰瘍の発症に関与するヘリコバクター・ピロリ菌の増殖を阻害する作用を有し、かつ安全性の高い物質を有効成分とする抗菌剤を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記の課題を解決すべく、食品添加物として認められている物質の中からヘリコバクター・ピロリ菌用の抗菌性物質を検索したところ、キレート剤の一種であるEDTAおよびその金属塩が、ヘリコバクター・ピロリ菌の増殖を阻害する作用を有していることを見出し、かかる知見に基づいて本発明を完成した。
【0007】
すなわち本発明は、有効成分としてエチレンジアミン四酢酸鉄(III)-ナトリウムのみを0.1~0.5mM含有することを特徴とするヘリコバクター・ピロリ菌用抗菌剤に関する。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明では、ヘリコバクター・ピロリ菌用抗菌剤の有効成分としてEDTAの金属塩の中から選ばれた物質を用いる。
EDTAの金属塩としては、目的とする抗菌作用を有するものであればよく、エチレンジアミン四酢酸鉄(III)-ナトリウムが好ましい。
【0009】
本発明に係る抗菌剤は、様々な形態とすることができ、例えばEDTAの金属塩を単独で用い、必要に応じて適当な助剤(例えば賦形剤、増量剤、甘味剤など)と共に用いて、粉剤、顆粒剤、液剤、カプセル剤などの剤形とすることができる。また、EDTAの金属塩は種々の食品に添加して用いることもできる。本発明に係る抗菌剤は、通常は経口的に投与される。
【0010】
EDTAの金属塩の投与量については、EDTAのADIが2.5mg/体重kgであること、並びにヘリコバクター・ピロリ菌の増殖を阻害するためのこれらの有効量、さらにはヒトの胃の容量(約1.5L)などを考慮して決定すればよい。
胃中のヘリコバクター・ピロリ菌の増殖を阻害するためには、EDTAの金属塩を、成人1人、1日あたり、EDTA精製品として、10~500mg程度、好ましくは10~150mg程度投与すればよい。また、エチレンジアミン四酢酸鉄(III)-ナトリウムの場合は、成人1人、1日あたり、60~300mg程度、好ましくは60~150mg程度投与するのが適当である。過剰に投与すると、副作用を起こすおそれがある。なお、EDTA等の投与は全量を1回に行ってもよく、あるいは数回に分けて行ってもよい。
【0011】
本発明の抗菌剤は、オメプラゾール等のプロトンポンプ阻害剤やビスマス製剤等の抗潰瘍剤などと併用してもよい。
【0012】
【実施例】
以下に、実施例を示して本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらによって制限されるものではない。
【0013】
実施例1
ヘリコバクター・ピロリ菌(ATCC 43504株、アメリカンタイプカルチャーコレクションから購入)をマイクロタイタープレートを用いて培養した。すなわち、3%トリプチックソイブロス(ディフコ社製)、10%組織培養用仔牛血清(和光純薬製)およびpH8.0に調整した各種濃度のエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム(和光純薬製)またはエチレンジアミン四酢酸鉄(III)-ナトリウム(同仁化学製)よりなる組成の培地0.1mLずつを96穴マイクロプレートに分注し、ヘリコバクター・ピロリ菌を接種後、2.5リットル容密閉容器内に入れ、さらに酸素吸収・炭酸ガス発生剤であるアネロパックヘリコ(三菱ガス化学製)を入れて嫌気条件下に37℃で5日間培養した。
ヘリコバクター・ピロリ菌の増殖は、マイクロタイタープレートリーダーにて、540nmまたは595nmのフィルターを使用して測定した。なお、吸光度測定の対照には、EDTAを含まない培地を使用した。その結果を図1および図2に示す。図は、有効成分であるEDTA等の濃度変化に対するヘリコバクター・ピロリ菌の増殖を濁度で測定し、対照の培地でヘリコバクター・ピロリ菌を増殖させたときの濁度に対する割合で示したものである。
【0014】
図1からヘリコバクター・ピロリ ATCC 43504株の増殖は、0.025~1mMのエチレンジアミン四酢酸二ナトリウムで阻害されることが分かる。また、図2から0.1~0.5mMのエチレンジアミン四酢酸鉄(III)-ナトリウムによっても上記ピロリ菌の増殖が阻害されることが分かる。
【0015】
ところで、0.025~1mMのエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム(分子量372)は、9.3~372mg/Lに換算され、前記したアメリカ合衆国で認められている食品への添加上限濃度500ppm以下である。
また、ヒトの胃の容量は約1.5Lと言われていることから、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウムは14~558mg(EDTAとして11~438mg)を摂取すれば、ヘリコバクター・ピロリ菌の増殖を阻害することができる。
一方、エチレンジアミン四酢酸鉄(III)-ナトリウム(分子量421.1)の場合は、63~316mgを摂取すれば、ヘリコバクター・ピロリ菌の増殖を阻害できる。
【0016】
【発明の効果】
本発明により、多くの国において食品添加物として認められており、安全性の高いEDTAの金属塩を有効成分とするヘリコバクター・ピロリ菌用抗菌剤が提供される。
この抗菌剤を単独もしくは適当な助剤と共に投与、あるいは食品等に含有させて摂取させることにより、ヒトの消化器系に存在するヘリコバクター・ピロリ菌の増殖を効果的に阻害することができる。そのため、本発明によれば、ピロリ菌が関与していると報告されている胃腸障害を効果的に、予防・治療することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 各種濃度のエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム存在下でのヘリコバクター・ピロリ菌の増殖割合を示す図である。
【図2】 各種濃度のエチレンジアミン四酢酸鉄(III)-ナトリウム存在下でのヘリコバクター・ピロリ菌の増殖割合を示す図である。
図面
【図1】
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【図2】
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