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明細書 :chib2型キチナーゼの製造法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B1)
特許番号 特許第3108767号 (P3108767)
登録日 平成12年9月14日(2000.9.14)
発行日 平成12年11月13日(2000.11.13)
発明の名称または考案の名称 chib2型キチナーゼの製造法
国際特許分類 C12N  9/24      
C12N  9/00      
FI C12N 9/24
C12N 9/00
請求項の数または発明の数 2
全頁数 7
出願番号 特願平11-298255 (P1999-298255)
出願日 平成11年10月20日(1999.10.20)
審査請求日 平成11年10月20日(1999.10.20)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】591031360
【氏名又は名称】農林水産省食品総合研究所長
発明者または考案者 【氏名】荒平 正緒美
【氏名】深澤 親房
個別代理人の代理人 【識別番号】100074077、【弁理士】、【氏名又は名称】久保田 藤郎 (外1名)
審査官 【審査官】斎藤 真由美
参考文献・文献 特開 昭50-121484(JP,A)
Plant Molecular Biology,Vol.36,No.3,(1998),p.407-415
Proc.Natl.Acad.Sci.USA,Vol.86,(1989),P.896-900
調査した分野 C12N 9/00 - 9/99
要約 【課題】 原料のダイズからPR-8キチナーゼファミリーに属し、新規なクラスであるchib2型のキチナーゼを、簡便なカラム操作で、短時間に効率よく分離、精製する方法を開発すること。
【解決手段】 脱脂大豆粉を脱イオン水又は酢酸緩衝液で抽出し、得られた抽出液からタンパク質画分を分離した後、該タンパク質画分を透析処理し、次いで疎水性クロマトグラフィーを行い、得られた溶出液からキチナーゼ活性を有する画分を分離し、再度疎水性クロマトグラフィーを行うことを特徴とする精製chib2型キチナーゼの製造法、および、得られた精製chib2型キチナーゼを、マンノース結合性レクチンを不溶性担体に結合させたカラムに通すことにより、糖鎖のあるものとないものとに分離することを特徴とする精製chib2型キチナーゼの製造法。
特許請求の範囲 【請求項1】
脱脂大豆粉を脱イオン水又は酢酸緩衝液で抽出し、得られた抽出液からタンパク質画分を分離した後、該タンパク質画分を透析処理し、次いで疎水性クロマトグラフィーを行い、得られた溶出液からキチナーゼ活性を有する画分を分離し、再度疎水性クロマトグラフィーを行うことを特徴とする精製chib2型キチナーゼの製造法。

【請求項2】
請求項1記載の方法によって得られた精製chib2型キチナーゼを、マンノース結合性レクチンを不溶性担体に結合させたカラムに通すことにより、糖鎖のあるものとないものとに分離することを特徴とする精製chib2型キチナーゼの製造法。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【01】

【発明の属する技術分野】本発明は、ダイズ種子や脱脂ダイズ粉などからPR-8キチナーゼファミリーに属するchib2型のキチナーゼを簡便に、且つ大量に製造する方法に関する。

【02】

【従来の技術】キチナーゼ〔EC 3.2.1.14〕は、N-アセチル-D-グルコサミンのポリマーであるキチンのβ-1,4結合に作用する加水分解酵素である。キチナーゼは、4つのファミリーに分類され、このうちのクラスI(chia1型)、クラスII(chia2型)およびクラスIV(chia4型)は共通の性質を有し、PR-3キチナーゼファミリーに属している。一方、クラスIIIは上記3クラスの酵素とは異なる性質を示し、PR-8キチナーゼファミリーに属する。

【03】
従来、クラスIIIには、植物においてchib1型キチナーゼの存在のみが確認されていたが、本発明者らの研究の結果、ダイズにおいて、chib2型のキチナーゼの存在が確認された(Yeboah, N. A., Arahira, M., Nong, V. H., Zhang, D., Kadokura, K., Watanabe, A. and Fukazawa, C. (1998) A class III acidic endochitinase is specifically expressed in the developing seeds of soybean (Glycine max [L.] Merr.) Plant Molecular Biology, 36, 407-415) 。

【04】
chib2型のキチナーゼは、chib1型キチナーゼと相同性が高いことから、同じクラスIIIのPR-8キチナーゼファミリーに分類されている。構造的には、C末端部分の配列が明らかに長いことにおいて、chib1型キチナーゼと相違している。また、この酵素には糖鎖を有しているものと有していないものとがある。chib2型のキチナーゼは、種子の成長初期から終期までの長期間にわたり分泌されており、ダイズの成長期の防御のみならず、休眠期の防御にも深く関係していることが分かっている。

【05】
chib2型のキチナーゼは、前記したように、本発明者らによって初めて見出されたものである。ダイズから該酵素を分離、精製するための操作は、上記文献に記載されているように、極めて複雑で長時間を要する上に、酵素の収率が低く、実用性に欠けるものである。

【06】

【発明が解決しようとする課題】本発明は、原料のダイズからPR-8キチナーゼファミリーに属し、新規なクラスであるchib2型のキチナーゼを、簡便なカラム操作で、短時間に効率よく分離、精製する方法を開発することを目的とするものである。

【07】

【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討の結果、原料のダイズから得たタンパク質画分を透析した後、疎水性クロマトグラフィー(hydrophobic interaction chromatography) を行うことにより、目的とするchib2型のキチナーゼのみを特異的に分離、精製することができることを見出した。さらに、精製されたキチナーゼについて、マンノースを認識できるレクチンを用いたカラム処理を行うことにより、キチナーゼを糖鎖の有無で識別できることを見出した。このようにして得られる、高度に精製されたchib2型キチナーゼから該酵素をコードする遺伝子を取得して該酵素の性質を解明し、さらには該酵素の工業的な大量生産に結び付けることができる。本発明は、かかる知見に基づいて完成されたものである。

【08】
請求項1記載の本発明は、脱脂大豆粉を脱イオン水又は酢酸緩衝液で抽出し、得られた抽出液からタンパク質画分を分離した後、該タンパク質画分を透析処理し、次いで疎水性クロマトグラフィーを行い、得られた溶出液からキチナーゼ活性を有する画分を分離し、再度疎水性クロマトグラフィーを行うことを特徴とする精製chib2型キチナーゼの製造法である。

【09】
請求項2記載の本発明は、請求項1記載の方法によって得られた精製chib2型キチナーゼを、マンノース結合性レクチンを不溶性担体に結合させたカラムに通すことにより、糖鎖のあるものとないものとに分離することを特徴とする精製chib2型キチナーゼの製造法である。

【10】

【発明の実施の形態】本発明の方法により、PR-8キチナーゼファミリーに属し、新規なクラスであるchib2型のキチナーゼを製造するために用いる原料ダイズとしては、ダイズ種子の他に市販の脱脂ダイズ粉などが好ましい。ダイズ種子を用いる場合は、該ダイズ種子を液体窒素中で冷却粉砕後に、ヘキサン等で脱脂を行ったものを原料として用いる。市販の脱脂ダイズ粉は、そのまま使用することができる。なお、本酵素は、キュウリにも若干含まれていることが分かっているので、これを原料として本酵素を製造することも可能である。

【11】
本発明の方法においては、まず上記ダイズ種子あるいは脱脂ダイズ粉に脱イオン水またはpH5.0~7.0程度の希酢酸緩衝液を加えて抽出を行う。この抽出は、原料を抽出溶媒に懸濁し攪拌後、室温で一晩静置することにより行う。これにより、目的とする酵素を含むタンパク質を抽出する。ここで、希酢酸緩衝液の具体例としては、例えば実施例で用いているβ-メルカプトエタノールを含む酢酸緩衝液(pH5.0)等が挙げられる。抽出時に溶媒のpHが5.0~7.0の範囲外となった場合には、酢酸あるいは酢酸ナトリウムなどの適当な物質を用いてpHを調整することが望ましい。

【12】
抽出物を二重にしたガーゼなどを用いて濾過することにより、大部分の固形分を取り除いて得た粗抽出液を遠心分離等の固-液分離を行って上清を集め、抽出液とする。得られた抽出液に硫酸アンモニウムを添加して塩析を行い、タンパク質を沈澱させる。具体的には、抽出液に硫酸アンモニウムをゆっくり加え、低温(例えば2~6℃)で30~60分間程静置することにより沈澱を生成させる。このとき用いる硫酸アンモニウムとしては、40%飽和となるようにパウダー状のものが好適である。

【13】
次いで、生成した沈澱を遠心分離等の固-液分離を行って回収する。集めた沈澱を脱イオン水または希酢酸緩衝液(例えばβ-メルカプトエタノールを含む酢酸緩衝液)に懸濁し、流水中で一晩透析を行う。透析処理後、遠心分離等の固-液分離を行って透析中に生じた沈澱物を除去する。次に、得られた上清に、終濃度が0.5~1.0Mとなるように硫酸アンモニウムを加え、さらに終濃度が1~2mM程度となるようにβ-メルカプトエタノールを加える。このとき沈澱が生じたならば、固-液分離を行って除去する。このようにして試料溶液を得る。

【14】
上記の試料を疎水性クロマトグラフィーに供する。この時用いるカラムや溶媒等の種類、抽出時間、その他の条件については、通常の疎水性クロマトグラフィーの場合と同様にすればよく、特に制限はない。例えば、試料をカラムに供した後、β-メルカプトエタノールを含む硫酸アンモニウム溶液から硫酸アンモニウム溶液を含まないβ-メルカプトエタノール溶液に直線的に濃度勾配をかけ、同溶液でしばらく溶出する。

【15】
この疎水性クロマトグラフィーの終了時点で、溶出液に含まれるキチナーゼ活性を測定すると、キチナーゼ活性が認められるが、その活性は低く、未だ精製度が低いことが分かる(図1参照)。そこで、本発明においては、該溶出液中のキチナーゼ活性を有する画分を集めて、再び疎水性クロマトグラフィーを行うことにより、精製された活性の高いキチナーゼを取得する。

【16】
まず、最初の疎水性クロマトグラフィーにより得られる溶出液中のキチナーゼ活性を測定する。キチナーゼ活性の測定は、可溶性のエチレングリコールキチンを基質として用い、酢酸緩衝液中で保温した後、ソモギー-ネルソン法〔Nelson, N. (1944) Photometric adaptation of the determination of glucose. J. Biol. Chem., 153, 375-380〕、吸光度法〔Imoto, T. and Yagishita, K. (1971)A simple activity measurement of lysozyme. Agr. Biol. Chem., 35, 1154-1156 〕等により行う。なお、還元糖の標準物質として、キチナーゼの作用するN-アセチルグルコサミンを用いることができる。

【17】
この測定により、キチナーゼ活性を有する画分を集めて、終濃度が0.5~1.0Mとなるように硫酸アンモニウムを加え、さらに終濃度が1~2mM程度となるようにβ-メルカプトエタノールを加える。その後、該画分を含む試料を、上記と同様に疎水性クロマトグラフィーカラムに供して溶出を行う。すなわち、再び疎水性クロマトグラフィーを行う。このときのクロマトグラフィーの条件についても特に制限はなく、前回のクロマトグラフィーと同様にして行えばよい。

【18】
2回目の疎水性クロマトグラフィーで得られる溶出液から、緩衝液を除去することにより、高度に精製されたchib2型キチナーゼが得られる。すなわち、前記と同様にして、溶出液のキチナーゼ活性を測定し、活性を有する画分を集める。この活性画分に対し、前記と同様に硫酸アンモニウムを加えて沈澱させ、遠心分離等の固-液分離操作により沈澱を回収する。次いで、集めた沈澱を希酢酸緩衝液に懸濁し、同緩衝液で透析する。

【19】
以上のようにして、目的とする精製されたchib2型のキチナーゼを簡便な操作によって得ることができる。本発明の方法により、chib2型のキチナーゼが得られたことは、次のようにして確認することができる。すなわち、透析後の試料をSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動法により分析することにより行われる。試料をこの電気泳動にかけ、得られたバンドを確認すると、見かけの分子量が15kDa、29kDaおよび31kDaを示す3本のバンドが見られる。さらに、chib2型酵素に対する抗体を用いてWestern blottingを行うことによって、本酵素がchib2型のキチナーゼであることを確認することができる。

【20】
SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動法(PAGE)の結果得られる3本のバンドのうち、見かけの分子量が29kDaおよび31kDaの2種の酵素タンパク質は、共通のN-末端およびC-末端配列を持っているが、前者には糖鎖がないのに対し、後者は糖鎖を有していることがわかっている。両者の分子量は、イオンスプレー質量分析法による分析の結果、前者、すなわち糖鎖がない酵素タンパク質の分子量は31,348であり、糖鎖を有する酵素タンパク質の分子量は、32,684であった。糖鎖については、現在明らかにされている糖鎖の基本骨格(Voet, D. and Voet, J. D.著、田宮信雄、村松正美、八木選彦、吉田 浩 訳、ヴォート生化学(上)第2版、pp231、東京化学同人(1996))を基にして、上記イオンスプレー質量分析法による分析および糖組成分析の結果から、マンノース6個とN-アセチルグルコサミンが2個結合したものであると推測される。

【21】
一方、見かけの分子量が15kDaのバンドは、解析の結果、N-末端配列が他の2つのバンドと共通であるが、C-末端配列が異なるものであることが判明した。また、このものは糖鎖を有していないこと以外は、他の2つのバンドと疏水的な相互作用を有している。

【22】
本発明の方法によれば、これらの3種のタンパク質を、糖鎖の付いたchib2型のキチナーゼ(分子量:31kDa)と糖鎖を持たないchib2型のキチナーゼ(分子量:15kDaおよび分子量:29kDa)とに分離することができる。糖鎖を有する酵素タンパク質と糖鎖を持たない酵素タンパク質を分離するには、これらを含む試料をコンカナバリンA(Con A)などのマンノース結合性レクチンを不溶性担体に結合させたカラムに通すこと(アフィニティークロマトグラフィー)により、容易に行うことができる。

【23】
この操作について説明すると、通常は、上記の方法で製造したchib2型キチナーゼを希酢酸緩衝液(pH5.0~7.0)に溶解し、これをレクチンを付けたアフィニティー担体に供したのち、同じ緩衝液でカラムを洗浄し、続いて同緩衝液で溶出することにより行う。その結果、アフィニティー担体の非吸着画分および洗浄画分には、糖鎖が除去された2種類のchib2型酵素が見出され、一方、緩衝液で溶出した画分には、糖鎖がついたchib2型酵素が溶出される。

【24】
これら酵素の性質について検討したところ、糖鎖のないchib2型酵素と糖鎖を有するchib2型酵素は、比活性、活性pH、耐熱性等の点で殆ど共通した性質を有している。

【25】
登熟期のダイズ種子において解析を行った結果、登熟初期から中期前半(開花後18日目~28日目頃)までは、chib2型のキチナーゼの大部分は糖鎖が付いているが、登熟が進むにつれて糖鎖が除去され、完熟時には5%以下となることが明らかとなった。

【26】

【実施例】次に、実施例により本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。

【27】
実施例1
試料として市販の脱脂ダイズ粉2kgを用い、これを20Lの1mM β-メルカプトエタノールを含む20mM 酢酸緩衝液(pH5.0)と混合し、よく攪拌した後、室温で一晩静置することによりタンパク質を抽出した。なお、抽出時にpH値が上記範囲よりずれた場合には、20mMの酢酸溶液を用いてpHを5.0に調整した。

【28】
次いで、抽出物を2重にしたガーゼで濾過して大部分の残渣を取り除いた。その後に、この粗抽出液を8000×g、4℃、10分の条件で遠心分離し、上清を集めて抽出液とした。この抽出液に40%飽和となるようにパウダー状にした硫酸アンモニウムをゆっくり加えて4℃、30分で沈澱させた。生じた沈殿を8000×g、4℃、15分の条件で遠心分離を行って集めた。得られた沈澱を200mLの1mM β-メルカプトエタノールを含む20mM 酢酸緩衝液(pH5.0)に懸濁し、流水中で一晩透析を行った。

【29】
透析後の試料を、8000×g、4℃、15分の条件で遠心分離を行い、透析中に沈澱したものを除去した。このようにして得た上清に対して終濃度が0.5Mとなるように硫酸アンモニウムを加え、さらに終濃度1mMとなるようにβ-メルカプトエタノールを加えた。この時点で沈澱を生じた場合には、8000×g、4℃、15分の条件で遠心分離し、沈澱したものを除去した。

【30】
このようにして調製した試料を疎水性クロマトグラフィーのカラム(東ソー社製、ブチルトーヨーパール650M:カラムサイズφ5.0cm×90cm)に供した。試料をカラムに供した後に、1mM β-メルカプトエタノールを含む0.5Mの硫酸アンモニウム溶液から硫酸アンモニウム溶液を含まない1mMβ-メルカプトエタノール溶液に直線的に濃度勾配(6.4L)をかけて溶出した後に、1mM β-メルカプトエタノール溶液2Lで溶出を行った(第1回目の疎水性クロマトグラフィー)。この溶出は、ポンプとして、ファルマシア社製のFPLCに付属のポンプ(P-500)を用いて流速8mL/minの条件で行った。溶出液は30mLずつ集めた(図1)。

【31】
溶出液50μL中に含まれるキチナーゼ活性は、以下の方法で測定した。2%(w/v)の可溶性エチレングリコールキチンを基質として用い、100mM 酢酸緩衝液(pH4.5)中で40℃にて15分間保温した。その後に、前述のソモギー・ネルソン法または吸光度法を用いて、生じた還元糖の量を測定することにより酵素活性を求めた。還元糖の標準物質は、N-アセチルグルコサミンを用いた。

【32】
次に、強いキチナーゼ活性を有する画分を集めて、終濃度が0.5Mとなるように硫酸アンモニウムを加え、さらに終濃度が1mMとなるようにβ-メルカプトエタノールを加えた。その後に、上記の疎水性クロマトグラフィーと同様の条件で、試料をカラムに再度供して溶出した(第2回目の疎水性クロマトグラフィー)。

【33】
第2回目の疎水性クロマトグラフィーの溶出液を、第1回目の溶出液と同様の方法でキチナーゼ活性を測定した。結果を図2に示す。図2から明らかなように、第1回目の疎水性クロマトグラフィーの溶出液の測定結果と比較して、約3倍も強い酵素活性を示した。溶出液のうち、高いキチナーゼ活性を示す画分に、40%飽和になるようにパウダー状にした硫酸アンモニウムをゆっくり加え、4℃で30分間かけて沈澱させ、生じた沈殿を8000×g、4℃、15分の条件で遠心分離を行うことにより回収した。集めた沈澱を10mLの1mM β-メルカプトエタノールを含む20mM酢酸緩衝液(pH5.0)に懸濁し、同緩衝液で一晩透析した。

【34】
透析後の試料をSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動にかけ、バンドを確認したところ、見かけの分子量15kDa、29kDaおよび31kDaを示す3本のバンドが得られた(図3)。さらに、chib2型酵素に対する抗体を用いてWestern blottingを行った結果、これらはchib2型酵素であることが確認された。また、精製したchib2型キチナーゼの比活性は、133units/mg(1unit=1分間に1μmolのN-アセチルグルコサミンを生じる活性)であった。

【35】
29kDaおよび31kDaの2種の酵素タンパク質は、N-末端およびC-末端解析の結果、いずれも同じN-末端およびC-末端配列を持つことが明らかとなった。易動度が遅い分子種は、糖鎖の付いたものであると考えられた。また、3つのバンドを示す酵素タンパク質について、イオンスプレーマススペクトロメトリーを行った結果、糖鎖が除去されているバンドの分子量は、31,348であり、糖鎖が付いているバンドの分子量は、32,684であった。なお、糖鎖はマンノース6個とN-アセチルグルコサミンが2個結合したものであると考えられた。さらに、15kDaのバンドは、N-末端配列は、他の2つのバンドと同じものであったが、C-末端配列は異なっていた。

【36】
実施例2
実施例1で得られた3種類のキチナーゼを、糖鎖の有無により分離すべく、以下の操作を行った。試料を20mM 酢酸緩衝液(pH6.5)に溶解し、糖鎖に対するアフィニティー担体(ファルマシア社製、Con A セファロース:カラムサイズφ1.0cm×5cm)に供した。その後、同緩衝液でカラムを洗浄した。洗浄後に0.5Mのα-メチルマンノピラノシドを含む20mM 酢酸緩衝液(pH6.5)で溶出した。

【37】
Con A セファロースの非吸着画分および洗浄画分並びに上記の酢酸緩衝液で溶出した画分について、SDS-ポリアクリルアミド電気泳動を行った。その結果、酢酸緩衝液で溶出した画分である易動度が遅い分子種(31kDa)は、糖鎖のついたものであった。また、非吸着画分および洗浄画分に含まれていた15kDaおよび29kDaのバンドには糖鎖がなかった(図4)。さらに、15kDaのバンドは、Native-PAGEの結果、他の2つのバンドと疎水的な相互作用があることが明らかとなった(図5)。

【38】
chib2型のキチナーゼにおける糖鎖の有無が酵素活性に与える影響について検討した。その結果、比活性はいずれも133units/mgであった。また、活性pH曲線を作製したところ、図6に示すように、pHが3.0と8.15の2点で活性が最大となった。また、耐熱性についても、両者共に70℃まで安定であった。このことから、糖鎖の有無は、酵素活性には影響しないことが明らかとなった。

【39】
実施例3
登熟期の各段階におけるダイズ種子が有するchib2型のキチナーゼの糖鎖の有無について、本発明の方法により検討した。登熟初期から中期前半の各期のダイズ種子から、実施例1と同様の条件で精製chib2型のキチナーゼを得た。さらに、得られたchib2型のキチナーゼを、実施例2と同様の条件で糖鎖の有無を確認した。その結果、登熟初期から中期前半(開花後18日目~28日目頃)までのダイズ種子に含まれるchib2型のキチナーゼの大部分は糖鎖が付いているが、登熟が進むにつれて糖鎖が除去され、完熟時には、糖鎖の付いているchib2型のキチナーゼは全体の5%以下となった。この結果より、糖鎖の有無は、何らかの形で種子の成長に係わっているものと推測される。

【40】

【発明の効果】本発明の方法によれば、ダイズの種子および脱脂ダイズ粉から、簡便にPR-8ファミリーの新規なキチナーゼクラスであるchib2型のキチナーゼを分離、精製することができる。

【41】
すなわち、請求項1記載の本発明の製造法によれば、疎水性クロマトグラフィーを2回使用するだけの簡便な操作によってchib2型のキチナーゼを得ることができる。

【42】
さらに、請求項2記載の本発明の方法により、Con A セファロースなどのアフィニティーカラムを通すことで、糖鎖の付いた酵素と糖鎖を持たない酵素を容易に分離することができる。

【43】
本発明は、他の植物由来のchib2型のキチナーゼを分離、精製するときや、将来微生物や植物、動物等で本酵素を発現させたときにも応用することが可能であると考えられることから、利用範囲は広い。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5