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明細書 :DNAの精製方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B1)
特許番号 特許第2981548号 (P2981548)
登録日 平成11年9月24日(1999.9.24)
発行日 平成11年11月22日(1999.11.22)
発明の名称または考案の名称 DNAの精製方法
国際特許分類 C12N 15/00      
C07H 21/04      
FI C12N 15/00 ZNAZ
C07H 21/04
請求項の数または発明の数 2
全頁数 10
出願番号 特願平10-193244 (P1998-193244)
出願日 平成10年7月8日(1998.7.8)
審査請求日 平成10年7月8日(1998.7.8)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】593059887
【氏名又は名称】農林水産省水産庁養殖研究所長
発明者または考案者 【氏名】大原 一郎
【氏名】小林 敬典
【氏名】中山 一郎
【氏名】奥 宏海
【氏名】岡内 正典
個別代理人の代理人 、【弁理士】、【氏名又は名称】平木 祐輔 (外1名)
審査官 【審査官】上條 肇
参考文献・文献 特開 平10-127285(JP,A)
特開 平10-127284(JP,A)
特開 平9-173065(JP,A)
特開 平7-143879(JP,A)
特開 昭63-154696(JP,A)
調査した分野 C12N 15/10
C07H 21/04
要約 【解決手段】 ムコ多糖類が混在するDNA溶液から、DNAとムコ多糖類の吸着性の差異を利用してDNAを精製する方法において、吸着性物質としてヒドロキシアパタイトを用いることを特徴とする、DNAの精製方法。
【効果】 本発明によれば、ムコ多糖類が混在するDNA溶液からムコ多糖類を除去して高純度のDNAを大量に、しかも複数検体から同時に精製する簡便な方法が提供される。本発明方法によれば、ムコ多糖類を含有する生物試料1g(湿重量)からサザンブロッティング等の遺伝子分析に供するに十分な量である10μg以上の精製DNAを得ることができる。
特許請求の範囲 【請求項1】
ムコ多糖類が混在するDNA溶液から、DNAとムコ多糖類の吸着性の差異を利用してDNAを精製する方法において、吸着性物質としてヒドロキシアパタイトを用いることを特徴とする、DNAの精製方法。

【請求項2】
DNA溶液が、生物試料を尿素を含有する緩衝液にて抽出したものであることを特徴とする、請求項1記載のDNAの精製方法。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【0001】

【発明の属する技術分野】本発明は、ムコ多糖類が混在するDNA溶液からDNAを精製する方法に関する。特に、本発明は、アコヤガイ等の貝類や多くの藻類などムコ多糖類を大量に含有する生物試料から抽出したDNA溶液に混在するムコ多糖類を除去し、高純度のDNAを大量に精製する方法に関する。

【0002】

【従来の技術】近年、水産生物の遺伝的系統や品種を調べたり、種苗の遺伝的多様性を検査して近交弱性の危険を予防するなど対象生物の遺伝的特性を評価する必要性が高まっている。DNAをかかる遺伝子解析に供するためには、対象生物の個体、器官、組織、または培養細胞からのDNAが、高分子量を維持したままで、しかも酵素反応の基質となりうる純度にまで精製されていなければならない。殊に、PCRやサザンブロッティングなどの高感度遺伝子検出法を用いる最近の研究では、その対象のDNAが高純度に精製されていることが前提となる。

【0003】
これまで生物試料からDNAを精製するには、一般的には、細断した生物個体、器官、組織、あるいは培養細胞をドデシル硫酸ナトリウム(SDS)等で溶解し、蛋白質分解酵素を加えてインキュベートして蛋白質を分解し、その後フェノール抽出またはヨウ化ナトリウム処理、または塩析法による蛋白質の沈殿除去を行なった後、エタノールまたはイソプロパノールを加えてDNA画分を沈殿させることにより行われている。

【0004】
ところが、貝類や藻類などのムコ多糖類を多量に含有する生物試料では、上記の手法にてDNAを精製してもムコ多糖類が除去されずに残ってしまう。ムコ多糖類がDNA試料中に混在すると、制限酵素によるDNAの切断反応や耐熱性DNAポリメラーゼ等の酵素反応が阻害され、その結果、PCRを利用した技術やサザンブロッティング、マイクロサテライトDNAフィンガープリント法等への応用が出来ないなど問題が生じる。

【0005】
これまでムコ多糖類のDNA溶液からの除去には、一般的にはセチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)処理、ボロン修飾ビーズによる処理等がなされており、生物種によっては良好な結果を得ているが、貝類の一部や藻類など多量にムコ多糖類を含む生物試料からのDNAの精製には有効ではない場合が多い。また、DNA試料を精製する他の方法として、市販のスピンカラム等が用いられている。これは、DNAのリン酸基の負電荷を利用してシリカやDEAE等の担体にDNAを一時吸着させ、不純物を緩衝液で洗い流し、その後pHや塩強度を変えてDNAを担体から溶出させて得るのであるが、ムコ多糖類の多くは負電荷を持っているためDNAと同じ挙動を示し除去することはできない。

【0006】
一方、ヒドロキシアパタイトを用いてDNAを精製することに関し、既にいくつかの報告があるが [Wu, R. Jay, E. and Roychoudhury, R. (1976), MethodsCancer Res. 12:87-176、Wilkie N.M.and Cortini R. (1976), Journal of Virology 20:211-221]、それらはアガロースゲル電気泳動で分離したDNAの精製を目的としたものであり、ゲル電気泳動やエレクトロエリューションとの組合せで用いられていて、多検体の同時精製処理には適さない。したがって、かかる方法では、生物試料1g当たりから10μg以上の精製DNAを複数検体から同時に得ることは至難である。

【0007】
また別の方法として、DNAをアガロースゲル電気泳動して、アガロースゲル電気泳動途中でDEAEメンブレンなどの陽電荷膜に吸着させることによりムコ多糖類を除く方法もあるが [Sambrook,J., Fristsch, E.F. and Maniatis, T. (1989), Molecular Cloning, a laboratory manual, 2nd edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 6:24-27] 、かかる方法もまた、15キロベース以上の長いDNAでは極めて収率が悪く、生物試料1g当たりから10μg以上の精製DNAを複数検体から同時に得ることは至難である。

【0008】

【発明が解決しようとする課題】従って、本発明の課題は、ムコ多糖類が混在するDNA溶液からムコ多糖類を除去して高純度のDNAを大量に、しかも複数検体から同時に精製する簡便な方法を提供することにある。

【0009】

【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、ムコ多糖類を含有する生物試料から抽出したDNA溶液をヒドロキシアパタイトを用いて精製することにより、高純度のDNAを大量に得ることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明は、ムコ多糖類が混在するDNA溶液から、DNAとムコ多糖類の吸着性の差異を利用してDNAを精製する方法において、吸着性物質としてヒドロキシアパタイトを用いることを特徴とする、DNAの精製方法である。本発明はまた、生物試料を尿素を含有する緩衝液にて抽出することにより得られたムコ多糖類が混在するDNA溶液から、DNAとムコ多糖類の吸着性の差異を利用してDNAを精製する方法において、吸着性物質としてヒドロキシアパタイトを用いることを特徴とする、DNAの精製方法である。以下、本発明を詳細に説明する。

【0010】

【発明の実施の形態】本発明のDNAの精製方法の対象となる生物試料としては、ムコ多糖類を含有する生物試料であれば特に限定はされないが、具体的にはムコ多糖類が多量に含まれるアコヤガイ・シロチョウガイ・クロチョウガイ・マルドブガイ・カラスガイ・イケチョウガイ・カワシンジュガイ等の海産および淡水産の貝類、またはカイガラアマノリ・アサクサノリ・スサビノリ・マクサ等の紅藻類、ヒトエグサ・アオサ・ウスバアオノリ等の緑藻類、コンブ・ワカメ・モズク等の褐藻類、珪藻類等から選ばれる藻類、あるいはシラカバ・マツタケ・イチゴ、サトイモ等の陸上植物が挙げられる。

【0011】
生物試料からのDNAの抽出は、上記に挙げた生物の個体、器官、組織または培養細胞に対して行えばよい。本発明において生物試料からのDNAの抽出は、DNAの抽出に常套的に用いられるトリス塩酸緩衝液に、SDSなど細胞を溶解するための界面活性剤、DNA分解を防ぐEDTAを添加した緩衝液にて行い、好適には尿素を含有させたものがよい。尿素を含有する抽出液としては、具体的には、後記実施例に記載する組成を有するTNES-UREA緩衝液が好適に使用される。

【0012】
DNAの抽出は、例えば上記生物試料の組織を細断または破砕したものを、その重量(g)の10~20倍量(ml)程度のTNES-UREA緩衝液中で70~80℃でまず5分間インキュベートし、その後56℃で8~24時間インキュベートすることにより行う。また、上記のDNAの抽出において56℃に移行した後に、プロテナーゼKにて処理してタンパク質を消化し、続いて、試料由来のタンパク質の分解物および酵素類(プロテナーゼKなど)を変性除去する目的でフェノール処理を常套的な手段にて行う。

【0013】
次に、上記の抽出により得られたDNA溶液をヒドロキシアパタイト(Ca5(PO4)3(OH)) を用いて精製する。本発明で用いるヒドロキシアパタイト(Ca5(PO4)3(OH)) は、通常のクロマトグラフィー用充填剤として市販されているものであれば特に限定はされず、例えばバイオゲルハイドロキシアパタイトDNAグレード・バイオゲルHPT(130-0520)(Biorad 製) 、ヒドロキシルアパタイト(Code 187-37)(Nakalai tesque製) 等が例示される。

【0014】
ヒドロキシアパタイトを用いてDNA溶液を精製するには、具体的には、DNA溶液にヒドロシアパタイトを添加し、インキュベートすることによりDNA溶液中のDNAを夾雑成分(ムコ多糖類、RNA等)とともにヒドロキシアパタイトに吸着させ、その後、ヒドロキシアパタイトに吸着した夾雑成分を各種の緩衝液にて逐次的に溶出させ、最後にヒドロキシアパタイトに吸着したDNAを高リン酸塩濃度の緩衝液にて溶出させる。

【0015】
具体的には、上記のフェノール抽出により得られた上層(水層)を別の容器に移し、ヒドロキシアパタイトを添加し、穏やかに攪拌させて5分間放置し、ヒドロキシアパタイトを沈降させた後、吸引除去により上清を除去し、その後2.5 MNaCl-TE 緩衝液(pH 8.0)を加えて穏かに攪拌し、5分間放置してヒドロキシアパタイト沈降させた後に上清を除去する。かかる操作により、DNAはヒドロキシアパタイトに非常に強く結合して吸着される一方、負電荷を持った殆どのムコ多糖類は、2.5 M NaClの塩濃度によりヒドロキシアパタイトへの吸着が弱まって洗い流される。

【0016】
その後、0.2mM EDTAを含む10 mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH 7.0)を用いて数回上記と同様にしてヒドロキシアパタイトを洗浄した後、0.2mM EDTAを含む200mM のリン酸ナトリウム緩衝液(pH 7.0)による洗浄を数回繰り返すことによって、ヒドロキシアパタイトに結合して残っている可能性のあるリン酸基を有するムコ多糖類、さらにはRNAや一本鎖DNAもまた除去することができる。このようにRNAアーゼを用いずにRNAをDNAから除去できるということも、当該発明の副次的な長所の一つである。

【0017】
次に200 mMリン酸ナトリウム緩衝液を出来る限り吸引除去した後、0.2 M EDTAを含む0.9 Mのリン酸ナトリウム緩衝液(pH 7.0)を加え、チューブごと穏やかに攪拌することによってヒドロキシアパタイトに吸着したDNAを解離させ、1,000gで5~15分間遠心を行なってヒドロキシアパタイトを強固に沈殿させ、上清を別の容器に移す。最後に得られた上清中のDNAを常套的な手段にて脱塩・濃縮し、目的とするDNAを得る。上記操作は10検体以上の生物試料に対して同時に行うことができ、生物試料1g(湿重量)から10μg以上の大量の精製DNAを得ることができる。

【0018】

【実施例】以下の実施例により本発明をさらに説明するが、これらは本発明を限定するものではない。
〔実施例1〕(アコヤガイ貝柱からのDNAの精製)
(1) DNAの抽出
アコヤガイの貝柱を採取し、-20℃で凍結した。別途調製した表1に示す組成から成るTNES-4M-UREA緩衝液を、50ml容量の使い捨て型遠心チューブ(以下、チューブという)に20ml加え、75℃に加温した。

【0019】

【表1】
TNES -4M-UREA 緩衝液
1M TrisHCl(pH8.0) 10ml
2M NaCl 60ml
0.5M EDTA(pH8.0) 20ml
20% SDS 25ml
尿素 240.24g
蒸留水を加えて1リットルにする。

【0020】
前記の凍結したアコヤガイ貝柱を、約2~3 mm角になるように氷上でハサミで切り、この貝柱の細片を直ちに75℃に加温したTNES-4M-UREA緩衝液入りチューブに加え、75℃のままで5分間放置した。次いで該チューブを56℃の振盪インキュベーターに移し、20分後に10 mg/mlのプロテナーゼK溶液を200μl加え、貝柱の組織の形が溶けて溶液が均一になるまで約80 rpmで振盪インキュベートし続けた。その後、室温(25 ℃) で20 mlのフェノールを加え、同温度で10分間ゆっくり攪拌し、1,000 g、15分間遠心した。上清を別の50 ml 容量のチューブに採取した。

【0021】
(2) DNAの精製
前記上清を入れた50 ml容量のチューブにヒドロキシアパタイト〔バイオゲルハイドロキシアパタイトDNAグレード バイオゲルHPT(130-0520) (Bio-Rad製) 〕2gを加え、約1分間穏かに攪拌した。TE(pH 8.0)をチューブ一杯(50ml)まで加えてさらに約1分間穏かに攪拌し、5分間チューブを立てて放置したところ、ヒドロキシアパタイトが沈降した。アスピレーターで上清約35 mlを取り除き、再びTEをチューブ一杯まで加えて約1分間攪拌し、5分間放置した。上清を取り除き、同じチューブに2.5M NaCl-TE緩衝液をチューブ一杯まで加えて約1分間攪拌した後、5分間放置した。アスピレーターで上清を取り除き、同じチューブに2.5M NaCl-TE緩衝液をチューブ一杯まで加えて約1分間攪拌した後、5分間放置した。次いでアスピレーターで上清約35 ml を取り除き、10mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH 7.0)-0.2mM EDTAをチューブ一杯まで加えて約1分間攪拌し、5分間放置し、上清35 mlを取り除く操作を3回繰り返し行なった。さらに、200mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH 7.0)-0.2mM EDTAをチューブ一杯まで加えて約1分間攪拌し、5分間放置し、上清35 mlを取り除く操作を2回繰り返して行なった。最後に、0.9 Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH 7.0)-0.2mM EDTAをチューブに15ml加えて攪拌し、1000g で15分間遠心した。以上の操作は全て室温(25 ℃)にて行った。

【0022】
(3) 精製されたDNAの濃縮および脱塩
上記で遠心したチューブの上清約24 mlを新しいチューブにとり、蒸留水を加えて30 mlとし、3M酢酸カリウム(pH5.5)を15 ml 加え、Qiagen-tip500を用いてDNAを濃縮した。以上の操作はQIAGEN Plasmid Purification Handbook(January, 1997)のProtocol 9以降に従った。上記の操作により、19個体のアコヤガイの貝柱約1gからそれぞれ以下の表2に示す量のDNAが得られた。

【0023】

【表2】
JP0002981548B1_000002t.gif【0024】図1に上記のアコヤガイの貝柱から精製されたDNAの吸収スペクトルの一例を示す。また、19個体のうちの8個体のアコヤガイ(#1~#8)から精製されたDNAのアガロースゲル電気泳動パターンを図2に示す。図2に示す泳動パターンより、高分子量の位置(約2万bp)に、アコヤガイDNAのバンドが観察された。

【0025】
さらに、別の2個体(#1および#3)から精製されたDNA(10μg/個体)を制限酵素AluIおよびHinfI で消化した。これに等量のプラスミドpUC118を加えて切断状況をモニターする指標とした。アガロースゲル電気泳動パターンを図3に示す。消化されたアコヤガイDNAのスメアバンドの上に乗っているpUC118の断片のパターンが、右端のレーンのプラスミド単独での完全消化パターンと一致していることから、アコヤガイのDNAも完全に消化されたものと判断した。

【0026】
表2に記載のアコヤガイ19個体から精製されたDNAを各40ng用いて、PCRが正常に働くかどうかを調べた。既にCampbell, D.C., Hoekstra, K.J. and Carter, J.G. (1997) (in) Johnston, P.A. and Haggart, J.(Eds.), The Bivalvia :Half a Billion Years of Evolution-Essays in Honor of Norman D.Newell ;University of Calgary Press (1997)に記載されているメキシコアコヤガイの18SリボソームRNA遺伝子の配列などに基づいて設計したプライマー、18S-rRNAf(5'-AAGGCAGCAGGCRCGCAAAT-3')および18S-rRNAr(5'-TACKCTAYTGRAGCTGGART-3')を合成し、反応液にミネラルオイルを添加した後、以下の条件下でPCR反応を行なった。
PCR反応条件
容量:50μl
Taqポリメラーゼ:TAKARA Taq (1ユニット)
プライマー量:各20 pmol
dNTP:各10 nmol
マグネシウム濃度: 2 mM
反応チューブ: 0.6 ml容量
96℃で30秒、50℃で1分、70℃で2分を1サイクルとして40サイクル

【0027】
得られたPCR産物のアガロースゲル電気泳動パターンを図4に示す。使用したDNAのいずれからも、予想された長さ(185 bp)のPCR産物が得られた。この結果より、ムコ多糖類によるPCR反応の阻害は全く起きていないことが確認された。図4中のレーン1~19は、それぞれ表2の個体番号#1~19に対応している。またレーン20は大腸菌のDNAを用いた場合のPCR産物のアガロースゲル電気泳動パターンを示し、アコヤガイのアガロースゲル電気泳動パターンとは異なる位置に複数の非特異的と思われるバンドが観察された。

【0028】
〔実施例2〕(スサビノリ糸状体からのDNAの精製)
試料として0120系および0130系のスサビノリ糸状体を使用した。使用した試料の重量は湿重量で0120系は1g、0130系は0.5gであり、これを液体窒素で凍結した後、零下に冷やした乳鉢内で粉砕した。これ以降は実施例1と同様にしてDNAを抽出・精製した。以上の操作により、0120系および0130系のスサビノリ糸状体それぞれから表3に示す量のDNAが得られた。

【0029】

【表3】
JP0002981548B1_000003t.gif【0030】上記のうち0120系から精製されたスサビノリDNAの吸収スペクトルを図5に示す。また、同DNAのアガロースゲル電気泳動パターンを図6に示す。図6に示す泳動パターンより、高分子量の位置(約2万 bp)にスサビノリDNAのバンドが観察された。また、両系統から精製されたスサビノリDNA(5μg/個体)を制限酵素HaeIIIで消化した。これに等量のプラスミドpUC118 を加えて切断状況をモニターする指標とした。アガロースゲル電気泳動パターンを図7に示す。消化されたスサビノリDNAのスメアバンドの上に乗っているpUC118の断片のパターンが、右のレーンのプラスミド単独での完全消化パターンと一致していることから、スサビノリのDNAも完全に消化されたものと判断した。

【0031】
さらに表3に記載のスサビノリから精製されたDNAを各40 ng用いて、PCRが正常に働くかどうかを調べた。実施例1と同様の条件下でPCR を試みたところ、目的のPCR増幅産物が得られた。図8にそのアガロースゲル電気泳動パターンを示す。ここで使用した2つのプライマー、ITS-F(5'-GGGATCCGTTTCCGTAGGTGAACCT GC-3')およびITS-R(5'-GGGATCCATATGCTTAAGTTCAGCGGGT-3')は、アマノリのリボソームRNA遺伝子の介在配列(ITS)を増やすように設計されたものである。アガロースゲル電気泳動の結果、約1kbのPCR産物が得られ、これはチシマクロノリで得られた長さとほぼ一致していた。

【0032】
〔実施例3〕(カイガラアマノリ葉状体からのDNAの精製)
CTAB法のみを用いてカイガラアマノリ葉状体(0.3g)からDNAの抽出・精製を試みたところ、得られたDNAは制限酵素により切断されず、PCRが働かなかった。このDNAはTE(pH 8.0)に溶解していたので、引き続きTEを加えて10 mlとし、1gのヒドロキシアパタイト〔バイオゲルハイドロキシアパタイトDNAグレード・バイオゲルHPT(130-0520)(Bio-Rad 製) 〕を添加してDNAを吸着させた。これ以降は実施例1のヒドロキシアパタイトを用いた精製法に従って行なった。以上の操作により、0.3gのカイガラアマノリ葉状体から5μgのDNAが得られた。得られたカイガラアマノリDNAのアガロースゲル電気泳動パターンを図9に示す。図9に示す泳動パターンより、高分子量の位置(約2万bp) にカイガラアマノリDNAのバンドが観察された。

【0033】
また、精製されたカイガラアマノリDNA 5μg を、制限酵素HaeIIIで消化した。これに等量のプラスミドpUC118を加えて切断状況をモニターする指標とした。アガロースゲル電気泳動パターンを図10に示す。消化されたカイガラアマノリDNA(レーン2)のスメアバンドの上に乗っているpUC118の断片のパターンが、プラスミド単独での完全消化パターン(レーン3)と一致していることから、カイガラアマノリのDNAも完全に消化されたものと判断した。

【0034】
さらに、カイガラアマノリから精製されたDNA 10 ngを用いて、PCRが正常に働くかどうかを調べた。実施例2と同様の条件下で実施例2で用いた2つのプライマーと同じプライマーセットを使用してPCRを試みたところ、目的とするPCR増幅産物が得られた。図11にそのアガロースゲル電気泳動パターンを示す。約1kbのPCR産物が得られ、このバンドはチシマクロノリおよび実施例2のスサビノリで得られた長さとほぼ一致していた。

【0035】

【発明の効果】本発明によれば、ムコ多糖類が混在するDNA溶液からムコ多糖類を除去して高純度のDNAを大量に、しかも複数検体から同時に精製する簡便な方法が提供される。本発明方法によれば、ムコ多糖類を含有する生物試料1g(湿重量)からサザンブロッティング等の遺伝子分析に供するに十分な量である10マイクログラム以上の精製DNAを得ることができる。
図面
【図1】
0
【図2】
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【図5】
2
【図3】
3
【図6】
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【図7】
5
【図9】
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【図8】
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【図10】
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【図4】
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【図11】
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