TOP > 国内特許検索 > 毛細管を用いた液滴制御に基づく高分子パターンの作製方法 > 明細書

明細書 :毛細管を用いた液滴制御に基づく高分子パターンの作製方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3677539号 (P3677539)
公開番号 特開2003-033718 (P2003-033718A)
登録日 平成17年5月20日(2005.5.20)
発行日 平成17年8月3日(2005.8.3)
公開日 平成15年2月4日(2003.2.4)
発明の名称または考案の名称 毛細管を用いた液滴制御に基づく高分子パターンの作製方法
国際特許分類 B05D  1/26      
B05D  7/24      
C01B 31/02      
C12M  1/00      
FI B05D 1/26 Z
B05D 7/24 302Z
C01B 31/02 101F
C12M 1/00 A
請求項の数または発明の数 1
全頁数 6
出願番号 特願2001-225404 (P2001-225404)
出願日 平成13年7月26日(2001.7.26)
審査請求日 平成13年7月26日(2001.7.26)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】501203344
【氏名又は名称】独立行政法人農業・生物系特定産業技術研究機構
発明者または考案者 【氏名】乙部 和紀
個別代理人の代理人 【識別番号】100107870、【弁理士】、【氏名又は名称】野村 健一
【識別番号】100098121、【弁理士】、【氏名又は名称】間山 世津子
審査官 【審査官】山崎 利直
参考文献・文献 特開平06-246209(JP,A)
特開平08-008514(JP,A)
特開2000-141056(JP,A)
特開2000-300253(JP,A)
調査した分野 B05D 1/00- 7/26
C12M 1/00- 3/10
C01B31/00-31/36
特許請求の範囲 【請求項1】
毛細管から基板上にカーボンナノチューブ又はDNAの懸濁液を滴下し、毛細管内の懸濁液と連続する懸濁液の液滴を基板上に形成させ、前記液滴の大きさを、毛細管から供給するカーボンナノチューブ又はDNAの懸濁液の量を調節することによって制御し、前記液滴の位置を、毛細管を液滴と付着した状態で基板上を移動させることによって制御し、基板上にカーボンナノチューブ又はDNAの任意のパターンを形成させることを特徴とするカーボンナノチューブ又はDNAのパターンの作製方法。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高分子懸濁液の液滴を基板上に形成させ、この液滴の大きさと位置を制御し、基板上に任意の高分子のパターンを作製する方法に関する。この方法は、センサ及び電子回路の作製に利用することができる。
【0002】
【従来の技術】
制御演算装置の高集積化やバイオセンサの高感度化に必要な微細パターン形成手法として、現在フォトエッチング(写真製版)を利用してパターンを基板上に転写・形成する方法が用いられている。また、DNAやカーボンナノチューブ等の鎖状・チューブ状高分子の異方性を有する導電性を利用して微細な演算回路やバイオセンサを作製する研究が進展しているが、これらの高分子によるパターン形成手法は未だ技術化されていない。高分子懸濁液の蒸散を利用した高分子の伸張・整列の原理は「気液界面を用いた高分子整列法」として知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
フォトエッチングを用いた場合、溶媒に懸濁した状態の凝縮した高分子を基板上に結合させてパターンを形成するため、鎖状高分子の「細くて長い」という特性を生かした異方性を有するセンサや電子回路を形成することはできない。また、従来の気液界面を用いた高分子整列法では位置と懸濁液量の制御ができないために電子回路やセンサのパターンを正確に形成することができない。
【0004】
この発明は、前述したような当該技術の有していた課題を解決して、かつ従来技術の欠点を克服した新規なセンサ並びに電子回路の作製方法を提供しようとするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、センサや電子回路を形成する基板上に、線材となる高分子を懸濁した液滴を滴下し、これをマイクロマニピュレーション可能な毛細管に付着させた状態で液滴の大きさと位置を制御することにより、伸張した状態の高分子パターンを基板上の任意の場所に形成できることを見出し、本発明を完成した。
【0006】
即ち、本発明は、毛細管から基板上に高分子懸濁液を滴下し、毛細管内の懸濁液と連続する懸濁液の液滴を基板上に形成させ、この液滴の大きさと位置をそれぞれ以下の(1)及び(2):
(1)毛細管から供給する高分子懸濁液の量を調節すること
(2)毛細管を液滴と付着した状態で基板上を移動させること
によって制御し、基板上に任意の高分子のパターンを形成させることを特徴とする高分子パターンの作製方法である。
【0007】
また、本発明は、(1)高分子パターンを作製しようとする基板を載置する台、(2)(1)の台に対し水平方向に可動な毛細管であって、その一端が(1)の台の近傍に配置されている毛細管、(3)毛細管内の圧力を調節可能な装置、(4)基板を観察できる位置に配置された顕微鏡、を備えていることを特徴とする高分子パターンの作製装置である。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0009】
本発明は、毛細管から基板上に高分子懸濁液を滴下し、毛細管内の懸濁液と連続する懸濁液の液滴を基板上に形成させ、この液滴の大きさと位置を制御し、基板上に任意の高分子のパターンを形成させる方法である。液滴の大きさは、毛細管から供給する高分子懸濁液の量を調節することにより制御することができる。液滴の位置は、毛細管を液滴と付着した状態で基板上を移動させることにより制御することができる。
【0010】
液滴を毛細管内の懸濁液と連続させることにより、毛細管現象によって、蒸散又は基板上への付着により失われる液滴中の懸濁液が毛細管から自動的に補充される。
【0011】
使用する毛細管は、液滴の大きさと位置を制御することができるものであればどのようなものでもよいが、液滴との付着性をよくするため高分子懸濁液の溶媒に親和性を生ずる処理を施しておくことが好ましい。毛細管の直径等は、特に限定されないが、直径10~1000μmぐらいのものが好ましい。
【0012】
使用する高分子は特に限定されないが、本発明の方法では、チューブ状又は鎖上構造を有する分子を伸張した状態で基板上に固定化することができるので、このような高分子を使用するのが好ましい。チューブ状又は鎖上構造を有する分子としては、DNA、カーボンナノチューブ、シリコンナノワイヤー、微小管、クロマチンファイバーなどを例示することができる。
【0013】
高分子懸濁液の濃度は、使用する高分子の種類に応じて決めればよく、例えば、DNAを使用する場合は、濃度を10~100μg/Lぐらいが適当である。
【0014】
使用する基板は、一般の高分子パターンの作製方法において常用されているものでよく、例えば、カバーガラスなどを使用することができる。
【0015】
以下に本発明の方法の一態様を図面を用いて説明する。
【0016】
図1は高分子懸濁液の液滴の大きさと位置を顕微鏡で確認しながら毛細管により制御するシステムの模式図、図2は基板上に滴下した液滴の位置を毛細管により制御する機構の模式図である。
【0017】
図1においては、1は高分子懸濁液に親和性を生じる処理を施した毛細管、2は高分子パターンを作製する基板、3は電動顕微鏡ステージ、4は高分子懸濁液の液滴、5はマイクロマニピュレータ、6は毛細管の液滴に触れない側の端に取り付けられた注入器、7は倒立型顕微鏡、8は制御用コンピュータ、9は観察用CCDカメラ、10は蛍光観察のための光源である。
【0018】
基板上に滴下した液滴の位置を毛細管により制御する機構の模式図である図2においては、1は高分子懸濁液に親和性を生じる処理を施した毛細管、2は高分子パターンを作製する基板、3は電動顕微鏡ステージ、4は高分子懸濁液の液滴である。
【0019】
以下、高分子懸濁液として蛍光色素でラベルされたλファージのDNA懸濁液を用い、基板としてカバーガラスを用いた場合を例として、基板上に高分子パターンを作製する方法を説明する。最初に、高分子懸濁液の基板上への滴下とそれに続く液滴量の制御方法について述べる。まず、図1において親水性処理を施した毛細管1に対して注入器6を用いてDNA懸濁液5μlを吸引させる。次にマイクロマニピュレータ5と電動顕微鏡ステージ3を制御用コンピュータ7により制御して、顕微鏡の合焦点位置に毛細管の先端を移動させる。次に倒立顕微鏡7を通して観察用CCDカメラ9で観察しながら、マニピュレータにより毛細管の先端をカバーガラス2の表面に近づけて、基板との距離が10μm程度でカバーガラスに触れない位置において固定する。観察中の画面において液滴画像の直径が0.5mmになるように懸濁液を注入器により送り出して、カバーガラス上に液滴を形成する。
【0020】
このようにしてできた液滴を、図2のように電動自動ステージ3の位置と移動速度を自動制御し、液滴4の表面張力による毛細管1先端への付着性を利用してカバーガラス2上の所定の部位に液滴を導く。液滴の移動に伴う懸濁液のカバーガラス上への付着や蒸散による液滴中の懸濁液量が減少することがあるが、これらの減少分は、毛細管現象により、毛細管から懸濁液が補充されるため、液滴中の懸濁液量は一定に維持される。
【0021】
以上の操作により、液滴中のλファージDNAがカバーガラス表面の疎水基と結合して付着しながら、液滴の移動経路に沿って伸張され、かつ平行に整列した状態で、一定の幅と長さを有する高分子パターンが作製される。作製された高分子パターンは図1の蛍光観察用光源10を用いて蛍光色素を励起することにより確認できる。
【0022】
【実施例】
図1のシステムを用いて、本手法をλファージDNAのカバーガラス上への整列に応用した。
【0023】
蛍光色素でラベルされたλファージDNAの懸濁液(濃度40μg/ml)を毛細管からカバーガラス上に滴下し、直径約0.5mmの液滴を形成させた。毛細管を液滴と付着した状態で2.0mm移動させた。液滴の移動した箇所を蛍光顕微鏡で観察した。その結果、液滴中のDNAがカバーガラス表面の疎水基と結合して付着しながら、流れに沿って伸びて整列した帯状のパターンを描くことができることを確認した(図3)。
【0024】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の高分子パターン作製方法によれば、毛細管の先端に付着させた高分子懸濁液の液滴の位置と大きさを正確に制御することにより、基板表面の任意の場所に高分子パターンを作製できる。これとともに、鎖状またはチューブ状の高分子を用いることにより、これらの分子が有する「細くて長い」という特徴を生かして、異方性を有するパターンよりなるセンサや電子回路の作製が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】高分子懸濁液の液滴の大きさと位置を顕微鏡で確認しながら毛細管により制御するシステムの模式図。
【図2】基板上に滴下した液滴の位置を毛細管により制御する機構の模式図。
【図3】本発明の方法によって作製されたλファージDNAパターンの写真。
【符号の説明】
1 毛細管
2 基板
3 電動顕微鏡ステージ
4 高分子懸濁液の液滴
5 マイクロマニピュレータ
6 注入器
7 倒立型顕微鏡
8 制御用コンピュータ
9 観察用CCDカメラ
10 蛍光観察用光源
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2