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明細書 :DNA計測用基板の作製方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3548803号 (P3548803)
公開番号 特開2003-043036 (P2003-043036A)
登録日 平成16年4月30日(2004.4.30)
発行日 平成16年7月28日(2004.7.28)
公開日 平成15年2月13日(2003.2.13)
発明の名称または考案の名称 DNA計測用基板の作製方法
国際特許分類 G01N 33/53      
C12M  1/00      
C12N 15/09      
G01N 33/566     
G01N 37/00      
G01N  1/28      
FI G01N 33/53 M
C12M 1/00 A
G01N 33/566
G01N 37/00 102
C12N 15/00 F
G01N 1/28 N
請求項の数または発明の数 3
全頁数 8
出願番号 特願2001-225410 (P2001-225410)
出願日 平成13年7月26日(2001.7.26)
審査請求日 平成13年7月26日(2001.7.26)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】501203344
【氏名又は名称】独立行政法人農業・生物系特定産業技術研究機構
【識別番号】501145295
【氏名又は名称】独立行政法人食品総合研究所
発明者または考案者 【氏名】乙部 和紀
【氏名】中尾 秀信
【氏名】大谷 敏郎
【氏名】林 英樹
個別代理人の代理人 【識別番号】100107870、【弁理士】、【氏名又は名称】野村 健一
【識別番号】100098121、【弁理士】、【氏名又は名称】間山 世津子
審査官 【審査官】宮澤 浩
参考文献・文献 特開平05-199898(JP,A)
実表平11-503022(JP,U)
特開平 5-284998(JP,A)
特開2001-165840(JP,A)
特開2000- 63154(JP,A)
特開2001-124687(JP,A)
調査した分野 G01N 33/53
C12M 1/00
C12N 15/09
G01N 33/566
G01N 37/00 102
G01N 1/28
特許請求の範囲 【請求項1】
π共役結合を有するポリマーを溶媒に溶かし、流動性を付与した後、基板上に該ポリマーの被膜を形成させる工程、該被膜上にDNA溶液を滴下する工程、及び滴下したDNA溶液を該被膜上に拡げる工程を含むDNA計測用基板の作製方法。
【請求項2】
π共役結合を有するポリマーが、ポリフェナザシリン、ポリビニルカルバゾール、又は、ポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホン酸の混合物である請求項1記載のDNA計測用基板の作製方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された方法によって作製されたDNA計測用基板。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、DNA計測用基板の作製方法に関するものである。この方法によって作製されたDNA計測用基板は、表面の平坦性、DNA吸着性、DNA伸張性が高いため、この基板を用いることにより鮮明かつ大量のDNA像を得ることができる。
【0002】
【従来の技術】
DNAチップ法においては、様々な標的遺伝子断片を有するDNAをその種類ごとに基板上に吸着させておき、検査対象物の抽出液を基板上に展開することにより、標的遺伝子DNAまたは対応するRNAの有無を検出することができる。また、上記方法では結合状態のDNAについて0.5μm程度の分解能を有する蛍光顕微鏡により検出している。一方、微細な探針先端と観察対象物との力学的、電磁気学的、もしくは化学的相互作用を利用して1nm以下の分解能を実現した走査型プローブ顕微鏡を用いることにより、標的遺伝子DNAの結合部位を高分解能で検出することができる。この顕微鏡を利用するために、DNA観察用の平坦な面を有する基板としてマイカの劈開面を利用している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
標的遺伝子DNAの結合などの変化を高感度で計測するためには、基板に配置するDNAが重ならないように伸張・整列させることが重要である。DNAを基板上に伸張・整列させる方法としては、例えば、特表平9-509057号公報記載の方法が知られている。しかし、この方法ではDNAの一端のみを固定する方法を採用しているため、DNAが無秩序に絡み合い、重なり合ったDNA像しか観察できない。
【0004】
また、微細な探針先端と観察対象物との力学的、電磁気学的、もしくは化学的相互作用を利用して1nm以下の分解能を実現する走査型プローブ顕微鏡を用いて、標的遺伝子DNAの結合部位を高分解能で検出するためには、凹凸が1nm以下の高度の平坦さを有する基板の作製が必要であるが、マイカの劈開面の利用以外に手段が存在しない。
【0005】
さらに、高度に平坦な表面を、ポリマーで被覆することにより実現するためにはポリマー溶液の流動性が重要であり、ポリマーが可溶性であることが必要である。
【0006】
この発明は、前述したような当該技術の有していた課題を解決して、かつ従来技術の欠点を克服した新規なDNA計測用基板の作製方法を提供しようとするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、DNA計測用基板の表面を、溶媒に可溶でπ共役結合を有するポリマーで覆うことにより、凹凸のある基板表面を高度に平坦な表面に作り変えることができ、また、計測しようとするDNAの吸着性と伸張性を向上できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は、基板上に溶媒に可溶なポリマーの被膜を形成させる工程、該被膜上にDNA溶液を滴下する工程、及び滴下したDNA溶液を該被膜上に拡げる工程を含むDNA計測用基板の作製方法である。
【0009】
また、本発明は、基板上にπ共役結合を有するポリマーの被膜を形成させる工程、該被膜上にDNA溶液を滴下する工程、及び滴下したDNA溶液を該被膜上に拡げる工程を含むDNA計測用基板の作製方法である。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0011】
本発明は、少なくとも以下の(1)~(3)の工程を含むDNA計測用基板の作製方法である。
【0012】
工程(1)では、基板上に、溶媒に可溶なポリマー又はπ共役結合を有するポリマーの被膜を形成させる。溶媒に可溶なポリマーの場合、溶媒に溶かすことによりポリマーに流動性を付与することができるので、基板上に高度に平坦な表面を作り出すことができる。溶媒に可溶なポリマーとしては、例えば、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネートなどを挙げることができる。π共役結合を有する化合物とそれらポリマーは、DNAに対す特異的な相互作用が報告されており、このようなポリマーで基板を被覆することにより、DNAの固定が期待できる。π共役結合を有するポリマーとしては、例えば、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェンなどを挙げることができるが、これらポリマーは溶媒に不溶である。ポリフェナザシリン(式(I))及びポリビニルカルバゾール(式(II))は、一般的な有機溶媒(クロロホルム、テトラヒドロフラン、1,2-ジクロロエタン)に可溶で、なおかつπ共有結合を有する。従って、これらのポリマーを用いることにより、基板表面の平坦性、DNA吸着性、及びDNA伸張性を高めることができる。ポリエチレンジオキシチオフェン(式(III))やポリスチレンスルホン酸(式(IV))は水溶性のπ共役ポリマーであり、これらのポリマーの混合物を用いることで有害な有機溶媒を用いることなくガラス上へのコートが可能であり、DNAの固定と伸張を行うこともできる。
【0013】
なお、本発明において使用するポリフェナザシリン、ポリビニルカルバゾール、ポリエチレンジオキシチオフェン、ポリスチレンスルホン酸は、それぞれ以下の式で表される。
【0014】
【化1】
JP0003548803B2_000002t.gif一般式(I)において、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、アリール基、アルコキシ基またはアリーロキシ基である。
【0015】
上記のR-Rにおけるアルキル基としては、メチル、エチル、n-またはiso-プロピル、n-、iso-またはtert-プチル、n-、iso-またはneo-ペンチル、n-へキシル、シクロヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル等の直鎖、分岐、環状の炭素数1~20、好ましくはl~10のアルキル基が挙げられる。また、アルコキシ基としては、メトキシ、エトキシ、n-またはiso-プロポキシ、n-、iso-またはtert-プトキシ、n-、iso-またはneo-ペントキシ、n-へキソキシ、シクロヘキシソキシ、n-ヘプトキシ、n-オクトキシ等の直鎖、分岐、環状の炭素数1~20、好ましくは1~10のアルコキシ基が挙げられる。また、アリール基としては、フェニル基、o-、m-、p-トリル基、1-および2-ナフチル基、アントリル基等の炭素数6~20、好ましくは6~14のアリール基が挙げられる。アリーロキシ基としては、フェノキシ基、o-、m-、p-トリロキシ基、1-および2-ナフトキシ基、アントロキシ基等の炭素数6~20、好ましくは6~14のアリーロキシ基が挙げられる。
【0016】
【化2】
JP0003548803B2_000003t.gif一般式(II)において、Czはカルバゾイル基を示す。
【0017】
上記のCzにおけるカルバゾイル基は、1-カルバゾイル、2-カルバゾイル、3-カルバゾイル、4-カルバゾイル、9-カルバゾイル基があげられる。また、カルバゾイル基は置換されていてもよい。
【0018】
【化3】
JP0003548803B2_000004t.gif【0019】
【化4】
JP0003548803B2_000005t.gifポリマーの被膜の形成は、どのような方法で行ってもよく、例えば、回転可能な台上に置いた基板の上に、ポリマー溶液(溶媒として1,2-ジクロロエタン、濃度2g/l)を50μl滴下し、基板を回転させ、それによって生じる遠心力によりポリマーを基板上に拡張させ、その後、溶媒を乾燥させることにより、被膜を形成させることができる。
【0020】
工程(2)では、被膜上にDNA水溶液を滴下する。
【0021】
DNA溶液中のDNA濃度は特に限定されないが、5.2×10-3μg/μlぐらいが適当である。滴下するDNAの量も特に限定されないが、5μlぐらいが適当である。
【0022】
工程(3)では、滴下したDNA溶液を該被膜上に拡げる。DNA溶液を被膜上に拡げる方法は特に限定されず、人為的手段によって拡げてもよいし、また、DNA溶液の自然な流動により拡げてもよい。被膜上に拡がった溶液中に含まれるDNAは、気液界面移動法(特表平9-509057号公報)の原理により被膜表面上に伸張された状態で固定される。
【0023】
以上の方法によって作製されるDNA計測用基板は、DNA計測のための種々の用途に用いられるが、その表面の平坦性から、特に走査型プローブ顕微鏡を用いてDNAの結合部位を検出する場合に用いるのが好ましい。
【0024】
以下に本発明の方法の一態様を図1を用いて説明する。
【0025】
図1において、1はポリマー溶液、2は被覆対象基板、3は基板回転台、4はポリマー被覆部、5はDNA溶液、6は伸張したDNAをそれぞれ表す。
【0026】
最初に清浄な状態のカバーガラス2を高速回転可能な回転台3上に固定し、回転台を回転させた状態で被覆剤であるポリマー溶液1を滴下することにより、遠心力でポリマー溶液はガラス上に薄く展開される。溶媒を乾燥させることによりポリマー被覆部4が形成され、DNA溶液5を該被覆部に5μl滴下し、自然な流動で展開させた後にDNA溶液を除去し、伸張・固定されたDNA6を得ることができる。
【0027】
以上の操作により、十分に伸張した状態のDNAが基板上に多数吸着したガラス基板を得ることができる。
【0028】
【実施例】
10mgのポリフェナザシリン(一般式(I)、RおよびR=n-オクチル、R=メチル)そしてポリビニルカルバゾール(一般式(II)、Cz=9-カルバゾイル)を、5mlの1,2-ジクロエタンに溶解させ、それぞれ濃度2g/lのポリフェナザシリン溶液とポリビニルカルバゾール溶液を調製した。各々の溶液50μlをカバーガラス表面に滴下し、展開・乾燥させ、カバーガラスの表面の被覆を行なった。
【0029】
蛍光色素ラベルしたλファージDNA溶液(濃度5.2×10-4μg/μl)5μlを、カバーガラス上のポリフェナザシリンまたはポリビニルカルバゾールで被覆した部分に滴下し、自然な流動で展開させ、溶液中のλファージDNAを固定させた。また、比較のため、ポリフェナザシリンやポリビニルカルバゾールで被覆していないカバーガラスにも、λファージDNA溶液を滴下し、DNAの固定を行った。蛍光観察を行った結果、図2のように被覆されていないカバーガラス上では凝集した状態にあるDNAが多数存在し、伸張・固定が十分でないのに対して、ポリフェナザシリン又はポリビニルカルバゾールにより被覆されたガラス表面においては、図3ならびに図4のように直線性の高い状態で伸張したDNAが多数得られることが確認された。
【0030】
また、微細な探針先端と観察対象物との力学的相互作用を利用して観察する走査型応プローブ顕微鏡(オリンパス光学製、NVB100)を用いて、ポリマーコートしたガラス基板表面の凹凸を比較した結果、図5のように被覆のないガラス上では約25nmの凹凸が存在しているのに対して、図6のようにポリビニルカルバゾールで被覆したガラス上では基板表面にあった凹凸がポリマーに覆われて平坦になっていることが確認された。
【0031】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のDNA計測用基板の作製方法によれば、溶媒に可溶なポリマーで基板表面を覆うことにより、凹凸のある基板表面を高度に平坦な表面を作り変えることができ、また、π共役結合を有するポリマーで基板表面を覆うことにより、基板表面におけるDNAの吸着性や伸張性を高めて、効率よく計測対象のDNAを伸張・整列させることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】基板のポリマー被覆並びに該被覆部のへのDNA伸張固定に関する方法の流れ図。
【図2】ポリマー被覆のないガラス基板に固定したDNAの蛍光顕微鏡写真。
【図3】ポリビニルカルバゾールで被覆したガラス基板に固定したDNAの蛍光顕微鏡写真。
【図4】ポリフェナザシリンで被覆したガラス基板に固定したDNAの蛍光顕微鏡写真。
【図5】ポリマーで被覆していないガラス基板表面の走査型プローブ顕微鏡による凹凸計測結果を示す図。
【図6】ポリビニルカルバゾールで被覆したガラス基板表面の走査型プローブ顕微鏡による凹凸計測結果を示す図。
【符号の説明】
1 ポリマー溶液
2 被覆対象基板
3 基板回転台
4 ポリマー被覆部
5 DNA溶液
6 伸張したDNA
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5