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明細書 :単分散複合型エマルションの製造装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4182195号 (P4182195)
公開番号 特開2003-071261 (P2003-071261A)
登録日 平成20年9月12日(2008.9.12)
発行日 平成20年11月19日(2008.11.19)
公開日 平成15年3月11日(2003.3.11)
発明の名称または考案の名称 単分散複合型エマルションの製造装置
国際特許分類 B01F   3/08        (2006.01)
A61K   8/11        (2006.01)
A61K   9/113       (2006.01)
A61P   5/26        (2006.01)
A61P  35/00        (2006.01)
B01F   5/08        (2006.01)
A23D   9/02        (2006.01)
A23G   9/04        (2006.01)
A61K  31/337       (2006.01)
A61K  31/568       (2006.01)
FI B01F 3/08 A
A61K 8/11
A61K 9/113
A61P 5/26
A61P 35/00
B01F 5/08
A23D 9/02
A23G 9/04
A61K 31/337
A61K 31/568
請求項の数または発明の数 2
全頁数 8
出願番号 特願2001-266001 (P2001-266001)
出願日 平成13年9月3日(2001.9.3)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 平成13年3月5日 社団法人日本農芸化学会発行の「日本農芸化学会誌 第75巻 臨時増刊号」に発表
審判番号 不服 2005-018127(P2005-018127/J1)
審査請求日 平成14年5月10日(2002.5.10)
審判請求日 平成17年9月21日(2005.9.21)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】501203344
【氏名又は名称】独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
発明者または考案者 【氏名】中嶋 光敏
【氏名】杉浦 慎治
【氏名】山本 幸司
【氏名】岩本 悟志
【氏名】菊池 佑二
個別代理人の代理人 【識別番号】100085257、【弁理士】、【氏名又は名称】小山 有
【識別番号】100086221、【弁理士】、【氏名又は名称】矢野 裕也
参考文献・文献 特開平2-95433(JP,A)
特開2000-15070(JP,A)
牛島英貴,他3名,「マイクロチャネルを用いた複合エマルションおよび水中油滴型エマルションの作成,化学工学会年会研究発表講演要旨集,2001年3月2日,66巻,531頁
調査した分野 B01F3/00-5/00,B01J13/00,19/00
特許請求の範囲 【請求項1】
エマルションを構成する分散相自体が別のエマルションとなっている単分散複合型エマルションを製造する装置であって、この装置は分散相が供給される第1スペースと、この第1スペースに隣接するとともに連続相が供給される第2スペースと、この第2スペースに隣接するとともに連続相として前記第1スペースで供給される分散相と同一または別の連続相が供給される第3スペースとを備え、これら第1スペース、第2スペース及び第3スペースは枠部と境界壁からなる基板をプレートに重ねることで扁平に画成され、また第1スペースと第2スペースは第1マイクロチャネルでつながり、前記第2スペースと第3スペースは第2マイクロチャネルでつながり、これら第1マイクロチャネル及び第2マイクロチャネルは前記境界壁に形成され、前記第2マイクロチャネルの幅は前記第1マイクロチャネルの幅よりも大きくされ、更に前記基板のプレートと反対側面には、ラバープレートを介してジョイントブロックが設けられ、このジョイントブロックには前記第1スペースに分散相を供給する分散相の供給路、前記第2スペースに連続相を供給する連続相の供給路、前記第3スペースに連続相を供給する連続相の供給路および前記第3スペースから複合型エマルションを回収する回収路が形成されていることを特徴とする単分散複合型エマルションの製造装置。
【請求項2】
請求項1に記載の単分散複合型エマルションの製造装置において、前記基板は部分的に疎水性及び親水性を呈する処理がなされていることを特徴とする単分散複合型エマルションの製造装置。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、食品、医薬品或いは化粧品などに広く利用される複合型エマルションに関する。
【0002】
【従来の技術】
製品の保存期間を延ばすとともに食べやすさや使用しやすさを向上するため、多くの製品がエマルションとして製造・販売されている。例えば、食品としてはマーガリンやアイスクリーム、医薬品としては軟膏、化成品としては化粧クリームなどが挙げられる。
【0003】
また、エマルションの形態としては、水を連続相とし油を分散相とした水中油滴(oil-in-water(O/W))型、油中水滴(water-in-oil(W/O)型の他に、(water-in-oil-in-water(W/O/W)型や(oil-in-water-in-oil(O/W/O)型などの複合型エマルションが知られている。この複合型エマルションはDDS(薬理送達システム)やFDS(機能性食餌成分送達システム)などへの応用が期待されている。
【0004】
上記の複合エマルションを製造する方法としては、2段階乳化法と転相乳化法が知られている。
2段階乳化法は、比較的多量の親油性界面活性剤を用いてW/Oエマルションを調製し、W/Oエマルションを比較的希薄な非イオン界面活性剤水溶液に投入して複合エマルションとする方法であり、一般的な製造法として利用されている。
転相乳化法は、油に水相を添加してW/Oエマルションを作り、そこに糖や塩、酢酸などを含む水相を加えて転相させることにより複合エマルションを得る方法である。この方法では使用する界面活性剤や油相、添加物の組み合わせが限定される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
複合型エマルションの生体内での挙動をコントロールするには複合エマルションのサイズをコントロールできるようにすることが必要である。
しかしながら、前記2段階乳化法では複合エマルションのサイズをコントロールすることは困難である.一方、転相乳化法によれば複合エマルションのサイズをコントロールすることは可能であるが、界面活性剤と油相との組み合わせが限定されてしまう。
【0006】
また、本発明者らは均一の粒径のエマルションを効率よく製造できるマイクロチャネル式の装置を、特許第2981547号、特許第3012608号或いは特許第3089285号等として提案しているが、これらの装置では複合タイプのエマルションを一連の操作で製造することはできない。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決すべく本発明に係る単分散複合型エマルションの製造装置は、分散相が供給される第1スペースと、この第1スペースに隣接するとともに連続相が供給される第2スペースと、この第2スペースに隣接するとともに連続相として前記第1スペースで供給される分散相と同一または別の連続相が供給される第3スペースとを備え、これら第1スペース、第2スペース及び第3スペースは枠部と境界壁からなる基板をプレートに重ねることで扁平に画成され、また第1スペースと第2スペースは第1マイクロチャネルでつながり、前記第2スペースと第3スペースは第2マイクロチャネルでつながり、これら第1マイクロチャネル及び第2マイクロチャネルは前記境界壁に形成され、前記第2マイクロチャネルの幅は前記第1マイクロチャネルの幅よりも大きくされ、更に前記基板のプレートと反対側面には、ラバープレートを介してジョイントブロックが設けられ、このジョイントブロックには前記第1スペースに分散相を供給する分散相の供給路、前記第2スペースに連続相を供給する連続相の供給路、前記第3スペースに連続相を供給する連続相の供給路および前記第3スペースから複合型エマルションを回収する回収路が形成された構成とした。
【0008】
前記第1スペース、第2スペース及び第3スペースは、例えば基板とプレートの間に画成された扁平なスペースで、また、前記第1マイクロチャネル及び第2マイクロチャネルは基板に形成する構成とする。
このように、マイクロチャネルを基板に形成する場合には集積回路の形成技術を応用することで、微細且つ正確な寸法のマイクロチャネルを形成することができ、分散相の粒径を均一にすることができる。
【0009】
また、装置の具体的な構成としては、基板のプレートと反対側面に、ラバープレートを介して分散相の供給路、連続相の供給路及びエマルションの回収路を形成したジョイントブロックを設ける構成が考えられる。
このような構成とすることで、配管の取り廻し等が簡略化され、装置全体がコンパクトになる。
【0010】
また、基板を部分的に疎水性及び親水性にすることで、効率よく単分散複合型エマルションを製造することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて詳述する。ここで、図1は本発明に係る単分散複合型エマルションの製造装置を組み込んだモジュールの斜視図、図2は同モジュールを下から見た図、図3は同単分散複合型エマルションの製造装置の側面図、図4はジョイントブロックの斜視図、図5はマイクロチャネル基板の平面図、図6は同マイクロチャネル基板の拡大斜視図である。
【0012】
エマルションの製造モジュールは円盤状ベース1の中央部に開口2が形成され、両サイドに支柱3、3を設け、この支柱3、3間に支持バー4を架設し、この支持バー4の中間に複合型エマルションの製造装置5を固定している。
【0013】
複合型エマルションの製造装置5は基板6の一面側にガラスプレート7を、他面側にラバープレート8を介してジョイントブロック9を液密に当接して構成され、ガラスプレート7は前記円盤状ベース1の開口2に嵌まり込む。
【0014】
前記基板6のガラスプレート7との対向面にはドライエッチング技術などにより枠部61と境界壁62、63が他の部分よりも高く形成され、基板6とガラスプレート7とを合わせた状態で、扁平な第1スペース11、第2スペース12及び第3スペース13が画成される。
【0015】
また、前記境界壁62にはドライエッチング技術などにより第1マイクロチャネル21が形成され、前記境界壁63には第2マイクロチャネル22が形成され、
第1マイクロチャネル21により第1スペース11と第2スペース12とが連通し、第2マイクロチャネル22により第2スペース12と第3スペース13とが連通している。
【0016】
本発明にあっては、第2マイクロチャネル22の幅を第1マイクロチャネル21の幅よりも大きくしている。具体的には、第1マイクロチャネル21の最も狭くなっている個所の寸法は約5μm、第2マイクロチャネル22の最も狭くなっている個所の寸法は約15μmである。
【0017】
また、前記基板6の第1スペース11を画成する面には分散相の供給口64、64が開口し、第2スペース12を画成する面には連続相の供給口65、65が開口し、第3スペース13を画成する面には連続相の供給口66と複合型エマルションの回収口67が開口している。
【0018】
また、前記ジョイントブロック9はアクリル樹脂などの透明材料からなるキュービック状をなし、このジョイントブロック9には前記分散相の供給口64、64につながる分散相の供給路91,91、前記連続相の供給口65、65につながる連続相の供給路92,92及び前記連続相の供給口66につながる連続相の供給路93と複合型エマルションの回収口67につながる回収路94が形成されている。なお、分散相の供給路91にはシリンジポンプを介して分散相が供給され、連続相の供給路92,93にはペリスタポンプ(登録商標)を介して連続相が供給される。
【0019】
ところで、マイクロチャネル装置でエマルションを作る場合、基板6及びガラスプレート7は連続相のみに濡れている必要がある。つまり、W/O型エマルションを作成する場合には、基板6及びガラスプレート7は表面が疎水性を呈する必要があり、O/W型エマルションを作成する場合には、基板6及びガラスプレート7は表面が親水性を呈する必要がある。
【0020】
例えば、第1マイクロチャネル21でW/O型エマルションを作成し、第2マイクロチャネル22でW/O/W型の複合エマルションを作成する場合には、第1マイクロチャネル21及び第2スペース12を画成する基板6及びガラスプレート7の部分は疎水性とし、第2マイクロチャネル22及び第3スペース13を画成する基板6及びガラスプレート7の部分は親水性とする必要がある。
【0021】
上記のように1枚の基板6及びガラスプレート7に部分的に疎水性および親水性の表面特性を与えるため、本発明は図7に示す処理を施した。尚、図7では基板6に対する処理を示すが、ガラスプレート7に対する処理も同様である。
【0022】
先ず、基板6の表面は(a)に示すように元来親水性を呈する。この親水性を呈する基板6の表面全体にシランカップリング剤であるオクタデシルトリクロロシラン-トルエン溶液を用いてシランカップリング反応を行い、(b)に示すように基板6の表面全体を疎水化する。次いで、(c)に示すように、疎水性を残しておきたい部分つまり第1マイクロチャネル21よりも上流側になる部分にホトレジストでマスキングし、更に(d)に示すように基板6全面に酸素プラズマを3分程照射し、マスキングされていない部分を親水化せしめ、この後マスキングを除去することで、トリオレイン-水系での接触角が49.8°の親水性を呈する部分と,154.4°の疎水性を呈する部分を有する基板が得られた。
【0023】
以上の製造装置を用いて単分散複合型エマルションを製造するには、第2スペース12内にジョイントブロック9の連続相供給路92、供給口65を介して連続相を供給した状態で、ジョイントブロック9の分散相供給路91及び供給口64を介して第1スペース11内に分散相を供給する。また、これと同時に第3スペース13内にジョイントブロック9の連続相供給路93、供給口66を介して連続相を供給する。ここで第3スペース13に供給する連続相は第1スペースに供給する分散相と同一でも或いは異なっていてもよい。
【0024】
上記の状態から、第1スペース11内に供給する分散相の圧を高めることで、分散相が第1マイクロチャネル21を介して第2スペース12内の連続相内に分散してエマルションが生成される。そして、第2スペース12内の圧力を高めることで第2スペース12内に形成されたエマルションは第2マイクロチャネル22を介して第3スペース13内の連続相内に分散し、目的とする複合型エマルションが生成される。
【0025】
上記の分散相として油相(O)、第2スペース12に供給する連続相として水相(W)、第3スペース13に供給する連続相として油相(O)を用いた場合には、O/W/O型の複合型エマルションが生成され、分散相として水相(W)、第2スペース12に供給する連続相として油相(O)、第3スペース13に供給する連続相として水相(W)を用いた場合には、W/O/W型の複合型エマルションが生成される。
【0026】
図8は第1スペース11に供給する分散相として水相(W)、第2スペース12に供給する連続相として油相(ヒマワリ油)(O)を用い、界面活性剤としてCR-310を添加した場合の、第1マイクロチャネル21によるエマルションの生成状況を示す写真である。この写真から本発明装置により平均粒径10.7μmのW/Oエマルションが連続して生成されることが分る。
【0027】
図9は第3スペース13に連続相として水相(W)を供給し、界面活性剤としてCR-310を添加した場合の、第2マイクロチャネル22による複合型エマルションの生成状況を示す写真である。この写真から本発明装置により均一な粒径のW/O/W複合型エマルションが連続して生成されることが分る。
【0028】
W/O/W複合型エマルションを製造する際に用いる界面活性剤として、疎水性のHGPO、親水性のDGMLを用いて同様に実験を行った。結果を以下の(表)に示す。(表)からは極めて強い疎水性を示すCR-310が界面活性剤として最も優れていることが分る。
【0029】
【表1】
JP0004182195B2_000002t.gif【0030】
また、本発明によればW/O/W複合型エマルション、O/W/O複合型エマルションに限らず、WまたはOの代わりにE(エタノールなどのアルコール)を用いた複合型エマルションの製造も可能である。即ち、水および油に対して不溶性若しくは低溶解性物質をエマルション分散系として活用する方法はこれまで確立されていないが本発明によれば各種の機能性エマルションの製造が可能になる。
【0031】
例えば、水および油に対して不溶性もしくは溶解性の低い物質をアルコールに溶解し、このアルコールを分散相として油中に分散せしめてエマルションとし、更にこのエマルションを水中に分散せしめた複合型エマルションが考えられる。
【0032】
上記水および油に対して不溶性もしくは溶解性の低い物質としては、食品関連物質としてはカテキン類、アントシアニン、ケルセチンなどのポリフェノールを挙げることができる。カテキン類、アントシアニン水に僅かに溶けるポリフェノールとして知られており、またケルセチンなどの多くのポリフェノールは水に殆ど溶解しない。植物油に僅かに溶解するものもあるが、エタノール等のアルコールに対しては、20~30%近くの高い溶解度を示し、本発明のように当該アルコールを油中に分散せしめることで安定な高濃度分散系を実現できる。
また、水や油に対して不溶性もしくは溶解性が低い物質としては、ステロイドホルモンとして知られるアンドロステンジオンや制ガン性テルペノイドであるタキソール、或いは紋枯病防除薬として知られるバリダマイシンなどを挙げることができる。
【0033】
【発明の効果】
以上に説明したように本発明に係る製造装置によれば、単分散複合型エマルションを連続して製造することができ、工業的に極めて有意義である。
また、本発明に係る製造装置によれば、マイクロチャネルの形状を変更することで生成されるエマルションの粒径をコントロールすることができ、DDS(薬理送達システム)やFDS(機能性食餌成分送達システム)などへの応用が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る単分散複合型エマルションの製造装置を組み込んだモジュールの斜視図
【図2】同モジュールを下から見た図
【図3】同単分散複合型エマルションの製造装置の側面図
【図4】ジョイントブロックの斜視図
【図5】マイクロチャネル基板の平面図
【図6】同マイクロチャネル基板の拡大斜視図
【図7】マイクロチャネル基板の処理方法を説明した図
【図8】第1のマイクロチャネルでのエマルション化を示す拡大写真
【図9】第2のマイクロチャネルでのエマルション化を示す拡大写真
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8