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明細書 :潜行板付きトロール網

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3398756号 (P3398756)
公開番号 特開2000-102333 (P2000-102333A)
登録日 平成15年2月21日(2003.2.21)
発行日 平成15年4月21日(2003.4.21)
公開日 平成12年4月11日(2000.4.11)
発明の名称または考案の名称 潜行板付きトロール網
国際特許分類 A01K 73/02      
FI A01K 73/02
請求項の数または発明の数 3
全頁数 6
出願番号 特願平10-292973 (P1998-292973)
出願日 平成10年9月30日(1998.9.30)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用申請有り 平成10年4月1日~4月5日東京水産大学において開催された平成10年度日本水産学会春季大会において頒布された講演要旨集第5ページの「講演番号109」に発表
特許法第30条第1項適用申請有り 平成10年9月23日~9月27日北海道大学水産学部において開催された平成10年度日本水産学会秋季大会において頒布された講演要旨集第5ページの「講演番号111」に発表
審査請求日 平成12年6月9日(2000.6.9)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】501168814
【氏名又は名称】独立行政法人水産総合研究センター
発明者または考案者 【氏名】大関 芳沖
【氏名】松田 皎
【氏名】胡 夫祥
個別代理人の代理人 【識別番号】100090941、【弁理士】、【氏名又は名称】藤野 清也
審査官 【審査官】山田 昭次
参考文献・文献 実開 昭54-32289(JP,U)
実開 昭58-52951(JP,U)
実開 昭48-24986(JP,U)
実開 昭57-194670(JP,U)
実公 昭58-23238(JP,Y2)
実公 昭57-19983(JP,Y2)
実公 昭61-35013(JP,Y2)
実公 平3-53653(JP,Y2)
実公 昭56-39315(JP,Y2)
実公 昭36-17058(JP,Y1)
実公 昭46-21081(JP,Y1)
調査した分野 A01K 73/00 - 73/05
特許請求の範囲 【請求項1】
垂直翼とその両側に張り出させた水平翼とからなり、水平翼は上方に湾曲させた断面を有し、両水平翼は翼面と水平面とのなす角度がそれぞれ等しくなるように接合してある湾曲型潜行板を、あらかじめ設定した迎角に相当する角度を保持して、トロール網の網口フレームの左右略中央部に取り付けた側板から略等しい長さの左右2本づつの吊り索で網口フレームの下方に吊り下げてある潜行板付きトロール網。

【請求項2】
網口フレームの上方にトロール網全体の水中重量をゼロに近づけるための浮子を付けてある請求項1に記載の潜行板付きトロール網。

【請求項3】
縦横比 6.0、反り比 15%、上反角20度に形成した請求項1に記載の湾曲型潜行板を、迎角20度を保持するように吊り下げてある請求項1又は2に記載の潜行板付きトロール網。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【0001】

【発明の属する技術分野】本発明は、稚仔魚の採集に適したトロール網装置に関する。さらに詳しくは、マイワシ、マサバ、カタクチイワシなどの小型浮魚類の稚仔魚を高速で定量的に採集するのに適したトロール網装置に関するものである。

【0002】

【従来の技術】稚仔魚を採集することによる魚種別資源量の推定は、漁業の資源管理に欠かせない手段である。従来から稚魚の調査には、アイザックスキッド中層トロール、タッカートロール、長方形中層トロール(RMT:Rectangular Midwater Trawl)、環境センサー付き多段開閉ネット(MOCNESS:Multiple Opening/Closing Net andEnvironmental sensing System)など各種の稚魚採集ネットが使用されている。しかし、アイザックスキッド中層トロールは 2.5m/秒以上の高速曳網ができるものの、曳網水深と網口断面積が船速などによって変化し、定量的な採集が困難である。長方形中層トロールは、網口が4本の水平棒で開閉できるが、曳網索は網口上部の棒のみに付いており、網口が傾くために曳網速度を 1.0m/秒以下に抑えざるを得ない欠点がある。また環境センサー付き多段開閉ネットは 0.7~ 1.2m/秒程度の曳網速度が限界である。このようなことから、漁獲対象魚種の稚魚を定量採集するためには、高い開口比(網目の開口部分の総面積を網口面積で除した値:網のろ過能力を示す)を持ち、かつ目的水深のサンプルのみを採集する機能を有し、さらに船速や海況などの変化により曳網水深及び網口面積が変化しない漁具を開発する必要がある。尚、小型のトロール網の網口フレームの下方に潜行板を取り付けたトロール網装置は、アイザックスキッド中層トロールにおいて、すでに使用されている。

【0003】

【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記の必要性に応じて開発されたもので、小型浮魚類の稚仔魚を高速で定量的に採集するのに適したトロール網装置を提供することを課題とする。

【0004】

【課題を解決するための手段】上記の課題を達成するための本発明は、湾曲型潜行板をトロール網の網口フレームの下方に一定迎角を保持するように吊り索で取り付けてある潜行板付きトロール網である。また好ましくは、この網口フレームの上方にトロール網全体の水中重量をゼロに近づけるための浮子を付けてある潜行板付きトロール網である。

【0005】
一般に、トロール網の開口部は、網口フレームとそれに取り付けた板枠及びその下方に吊り下げたディプレッサー(沈下用具)とで構成されている。本発明でいう潜行板は、ディプレッサーの一種で水中翼構造を有し、その下方の揚力によって網を沈める働きをする。トロール漁法における潜行板は、トロール網を目的の水深に沈ませるための重要な装置である。

【0006】
本発明の潜行板付きトロール網では、湾曲型潜行板を使用する。本発明でいう湾曲型潜行板とは、垂直翼とその両側に張り出させた水平翼とからなり、水平翼は上方に湾曲させた断面を有し、両水平翼は翼面と水平面とのなす角度がそれぞれ等しくなるように接合してある構造のものである。尚、水平翼を上方に湾曲させた断面を有するとは、水平翼の側面を上方に弧状にカーブさせ、水平翼を丁度雨どいのような形状に形成することをいう。本発明の湾曲型潜行板は、このように湾曲させた水平翼を備えているために高い沈降力を発生させることができる。

【0007】
本発明では、この湾曲型潜行板の水平翼を常に一定迎角を保持するような状態に取り付ける。具体的には、湾曲型潜行板は、あらかじめ設定した仰角に相当する角度を保持して、略等しい長さの左右2本づつの吊り索をもって取り付けることが好ましい。

【0008】
本発明の湾曲型潜行板の形状は、上反角(dihedral angle)、反り比(camberratio)、縦横比(aspect ratio)等の数値をもって表すことができる。尚、これらは、航空工学上で飛行機の翼の形状を表すのに使用されている用語であり、漁具の分野でも同じ意味を表す語として国際的に使用されている。参考までに説明すると、上反角とは、水平翼の翼面と水平面とのなす角度のことをいい、反り比とは、水平翼側面の湾曲の程度を表し、水平翼の幅(水平翼側面の前後方向の長さ)に対する雨どい状の湾曲の深さの比のことをいう。また縦横比とは、潜行板全体の翼長と翼幅の比率のことをいう。

【0009】
本発明の潜行板付きトロール網では、潜行力特性のすぐれた湾曲型潜行板を使用する。具体的には、縦横比 6.0、反り比 15%、上反角20度に形成した湾曲型潜行板を用いるのが好ましい。このように形成した湾曲型潜行板は、後記する試験例にも示すように、最大潜行力係数が1.57であり、従来のアイザックスキッド中層トロール用の潜行板に比べると、潜行特性が略2倍にアップすることが確認されている。

【0010】
また本発明の潜行板付きトロール網では、網口フレームの上方にはトロール網全体の水中重量をゼロに近づけるような浮子を付けることが望ましい。浮子の材質・形状・構造・取り付け方法等には限定はなく、目的水深の水圧に耐えられるものであるかぎり、従来の構成の浮子を使用して差し支えない。

【0011】

【作用】本発明の潜行板付きトロール網は、潜行力特性のすぐれた湾曲型潜行板を吊り索でトロール網の網口フレームの下方に一定迎角を保持するように取り付けてあるので、曳網船速が変化しても湾曲型潜行板は失速することなく、最大潜行力を維持することができ、操業時に安定的な水深を得ることができる。

【0012】
特に本発明の潜行板付きトロール網は、湾曲型潜行板を、網口フレームの左右略中央部に取り付けた側板からあらかじめ設定した仰角に相当する角度を保持して、略等しい長さの左右2本づつの吊り索をもって吊り下げたときには、合計4本の吊り索が曳網中もそれぞれ略平行を保っているため、網口フレームに傾きが生じないかぎり、船速が変化しても潜行板を常に同じ迎角に保つことができ、常に最大潜行力を発揮することができる。特に本発明において、縦横比 6.0、反り比 15%、上反角20度に形成した湾曲型潜行板を使用したときは、その潜行特性は従来のものに比べ、略2倍にアップする。尚、通常の場合は、曳網索は網口フレームの両側面中央部に取り付けてあり、網の全長が網口の高さ・幅に対して十分に大きい構造にしてあるので、曳網中に網口フレームが傾くようなことはほとんど生じ得ない。

【0013】
また本発明の潜行板付きトロール網は、上記のように曳網索の長さを略等長にするとともに、網口フレームの上方にトロール網全体の水中重量をゼロに近づけるための浮子を付けたときには、常に一定水深を曳網するように制御することができる。

【0014】
したがって、本発明の潜行板付きトロール網は、曳網索の長さをコントロールするだけで、船速や海況の変化に関係なく、常に潜行板が最大潜行力を発揮しながら、一定水深を高速曳網できる。したがって、目的水深において漁獲対象魚種の稚魚のサンプルを高速走行状態下で定量的に採集することができる。

【0015】

【発明の実施の形態】以下、図面に基づき実施例をもって、本発明をさらに説明する。

【0016】

【実施例1】図1は、本発明の潜行板付きトロール網の一実施例の概観を示す図である。図1において、1はトロール網(網口2.25m ×2.25m 、長さ12m )であり、2は湾曲型潜行板である。本実施例の湾曲型潜行板2は、垂直翼21とその両側に張り出させた水平翼22・22とからなり、水平翼22は上方に湾曲させた断面23・23を有し、翼面積 2000cm2、翼幅 244cm、縦横比 6.0、反り比 15%、上反角20度に形成してある。本実施例では、湾曲型潜行板2を、略正方形の網口フレーム3の左右の中央部に装着した側板6から、略長さの等しい左右2本づつの吊り索4・4、4・4をもって仰角20度になるように吊り下げてある。網口フレーム3の上方には、トロール網全体の水中重量をゼロに近づけるように、浮力35Kgの浮子7・7を付けてある。

【0017】
本実施例の湾曲型潜行板付きトロール網は、上記のとおりの構成であり、縦横比 6.0、反り比 15%及び上反角20度に形成した湾曲型潜行板2を使用しているので、後記する試験例に示すように、きわめてすぐれた潜行力特性を発揮することができる。また本実施例の潜行板付きトロール網は、この湾曲型潜行板2を、略正方形の網口フレーム3の左右の略中央部に装着した側板6から、略等しい長さの長さの吊り索4・4、4・4をもって仰角20度となるように吊り下げてあるので、4本の吊り索4・4、4・4がそれぞれ略平行になっているため、網フレーム3に傾きが生じないかぎり、潜行板2を常に側板6によって規定される仰角20度に保つことができる。

【0018】
また本実施例の潜行板付きトロール網は、トロール網1の網口フレーム3の上方に浮力35Kgの浮子7・7を付けてあるので、トロール網全体の水中重量をゼロにに近い状態にすることができ、したがって、常に一定水深を曳網することができる。

【0019】
したがって、本実施例の潜行板付きトロール網は、船上から曳網索5の長さを操作するだけで、目的水深において漁獲対象魚種の稚魚のサンプルを高速走行状態下で定量的に採集することができる。

【0020】
すなわち、本実施例の潜行板付きトロール網は、曳網索5の長さをコントロールするだけで、船速や海況の変化に関係なく、常に潜行板2が最大潜行力を発揮しながら、一定水深を高速曳網できる。

【0021】
以下、試験例をもって、本発明をさらに説明する。
【試験例1】実物の 1/5の模型を用いて、回流水槽において、潜行板の潜行力特性、抗力及び湾曲板が左右に傾いたときの復元モーメントを測定する模型実験を行なった。すなわち、翼面積397.7cm2、翼幅8.12cm、縦横比 6.0、反り比 15%、上反角20度の模型潜行板を用いて、回流水槽で、迎角10度~80度、流速30~100cm/秒の範囲において潜行力、抗力を計測した。さらに、左右の傾き角度を30度まで変えて潜行板が左右に傾いたときの復元モーメントと潜行力への影響も計測した。実験では実物網と同じ材料の高強度のポリエチレン製(ダイニーマ)網地(脚長1.95mm、網糸直径0.36mm)を用いて、潜行板と同じく 1/5の模型網を製作し、上記の湾曲型潜行板模型を取り付けて、実験水槽において、曳網索の長さ、流速を変えて網の曳網水深を計測した。

【0022】
実験の結果、図2に示すように、迎角20度で最大潜行力係数1.57の値が得られた。これは、従来のアイザックスキッド中層トロール用の平板型潜行板の最大潜行力係数0.84に比べて、略2倍であり、本発明の湾曲型潜行板の潜行力特性の高いことが確認された。この迎角における抗力係数は 0.4程度である。また最大潜行力係数を得る迎角において左右の傾き角度20度までは潜行力への影響はほとんど見られず、復元モーメントも平板型潜行板より大きいことが認められた。

【0023】

【試験例2】網口2.25m × 2.25m、長さ 12mの実物網の1/5 の大きさの模型網を実物網と同じ材料(脚長1.95mm、網糸直径0.36mmの高強度ポリエチレン)の網地で製作し、試験例1で使用した模型潜行板を網口フレームの下方に20度の迎角で取り付け、さらに網全体の水中重量をゼロに近づけるために、網口フレームの上方に浮力753gの浮子を取り付けた。このようにして、回流水槽において曳網索の長さ260m、310cm 、410m、流速20~90cm/ 秒に変えて網の水深を計測した。得られた結果を図3に示す。図3より、回流水槽における模型実験では、曳網索の長さが長ければ網の水深も大きいことが認められたが、いずれの曳網索の長さにおいても流速20~90cm/秒の広い範囲において網の水深はほとんど一定であることが確認された。また、実験中には流速が速くても網口フレームの傾きは見られず、潜行板も常に設定迎角を保つことができた。

【0024】

【試験例3】駿河湾の水深1000m の海域において、試験例1の湾曲型潜行板を使用して、網の曳網特性に関する実物実験を実施した。ただし、網口フレームに網の水中重量をなくすための浮子は付けなかった。実験で得られた曳網索の長さ及び船速を変化させた場合の網の曳網水深の結果を図4に示す。図4より、船速2.09ktの場合には、網の曳網水深が約1/2 の曳網索の長さに相当する値が得られており、潜行板には十分な潜行能力を有することが確かめられた。

【0025】

【発明の効果】以上説明のとおり、本発明の潜行板付きトロール網は、潜行力特性のすぐれた湾曲型潜行板を吊り索でトロール網の網口フレームの下方に一定迎角を保持するように取り付けてあるので、曳網船速が変化しても湾曲型潜行板は失速することなく、常に最大潜行力を維持することができ、操業時に安定的な水深を得ることができる。

【0026】
また本発明の潜行板付きトロール網は、湾曲型潜行板を、網口フレームの左右略中央部に取り付けた側板からあらかじめ設定した仰角に相当する角度を保持して、略等しい長さの左右2本づつの吊り索をもって吊り下げたときには、合計4本の吊り索が曳網中もそれぞれ略平行を保っているため、船速が変化しても潜行板を常に同じ迎角に保つことができ、常に最大潜行力を発揮することができる。また本発明の潜行板付きトロール網は、上記のように曳網索の長さを略等長にするとともに、網口フレームの上方にトロール網全体の水中重量をゼロに近づけるための浮子を付けたときには、常に一定水深を曳網することができる。

【0027】
したがって、本発明の潜行板付きトロール網は、曳網索の長さをコントロールするだけで、船速や海況の変化に関係なく、常に潜行板が最大潜行力を発揮しながら、一定水深を高速曳網でき、目的水深において漁獲対象魚種の稚魚のサンプルを高速走行状態下で採集することができる。以上のように、本発明によって、小型浮魚類の稚仔魚を高速で定量的に採集するのに適したトロール網装置を提供することができる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3