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明細書 :穀物の殺菌方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3096730号 (P3096730)
公開番号 特開平10-215765 (P1998-215765A)
登録日 平成12年8月11日(2000.8.11)
発行日 平成12年10月10日(2000.10.10)
公開日 平成10年8月18日(1998.8.18)
発明の名称または考案の名称 穀物の殺菌方法
国際特許分類 A23B  9/00      
A23L  3/26      
FI A23B 9/00
A23L 3/26
請求項の数または発明の数 2
全頁数 6
出願番号 特願平09-311081 (P1997-311081)
出願日 平成9年10月28日(1997.10.28)
優先権出願番号 1996339099
優先日 平成8年12月5日(1996.12.5)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成9年10月28日(1997.10.28)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】591031360
【氏名又は名称】農林水産省食品総合研究所長
発明者または考案者 【氏名】林 徹
【氏名】鈴木 節子
【氏名】大坪 研一
【氏名】豊島 英親
【氏名】岡留 博司
個別代理人の代理人 【識別番号】100074077、【弁理士】、【氏名又は名称】久保田 藤郎 (外1名)
審査官 【審査官】鈴木 恵理子
参考文献・文献 特開 平5-57204(JP,A)
食品工業,(1996)Vol.39,No.22,p.45-51
調査した分野 A23B 9/00
A23L 3/26
特許請求の範囲 【請求項1】
玄米、籾、小麦、殻付蕎麦、小豆、黒豆及び大豆から選ばれた穀物に、縦方向の振動と横方向の振盪を同時に与えて回動させながら、回動している穀物の表面に160~250keVの低エネルギーの電子線を照射することを特徴とする穀物の殺菌方法。

【請求項2】
玄米、籾、小麦、殻付蕎麦、小豆、黒豆及び大豆から選ばれた穀物を収容する試料トレー、トレー載置台、その下方に直列状に配設した振動器および振盪器、該振動器および振盪器から発生する振動と振盪を前記トレー載置台に伝える伝動具、前記振動器と振盪器を作動させるための電源スイッチとこれらの作動用スイッチ並びに振動と振盪のスピードコントローラーを具備した穀物回動装置を電子線発生装置の下に置き、試料トレーに収容した穀物に縦方向の振動と横方向の振盪を与えながら低エネルギーの電子線を照射する請求項1記載の殺菌方法。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【01】

【発明の属する技術分野】本発明は、加工食品の原材料として使用される穀物の殺菌方法に関し、詳しくは回動している穀物の表面に低エネルギーの電子線を均一に照射することによって、該穀物表面に付着している微生物を殺菌する方法に関する。

【02】

【従来の技術】加工食品の腐敗や加工食品が原因となる食中毒を防止するためには、加工食品の微生物汚染を防ぐことが必要である。したがって、原材料の殺菌は、加工食品の微生物汚染を防止する上で重要な事項である。従来、食品原材料の殺菌は、化学的方法、物理的方法などにより行われているが、これらの方法に使用されていたエチレンオキサイド,臭化メチル,過酸化水素等は人体や環境に有害な影響を与えるばかりでなく、それらの残留物についても人体に及ぼす影響が懸念されるなど、安全性の点で種々の問題が指摘されており、その多くは使用が禁止されているか、もしくは使用が制限されつつある。

【03】

【発明が解決しようとする課題】ところで、穀物のような乾燥状態の食品原材料の表面を汚染している微生物の多くは、耐熱性の細菌であり、これらの細菌は耐久型の細胞である芽胞を形成している。この芽胞は、増殖中の細菌に比べて熱や殺菌剤あるいは乾燥等に対する抵抗力が強いため、穀物の乾燥状態を維持したまま加熱しても容易に殺菌することができず、品質に影響を及ぼさずに加熱殺菌することは非常に困難である。一方、殺菌効果に優れ、乾燥状態の穀物を容易に殺菌することができる放射線照射による殺菌は、食品自体の温度上昇がわずかであるため、熱による品質低下を受けにくい反面、完全殺菌のためには比較的多くの線量が要求されるため、澱粉の損傷や脂質の酸化等の成分変化を引き起し、加工原料としての価値を失わせるなど実用化困難な食品も多い。このように、人体や環境に対して無害であり、しかも穀物中の澱粉や脂質等の成分変化を引き起こさずに、換言すれば穀物の品質変化を起こすことなく、殺菌する方法は未だ開発されていない。そのため、人体や環境は勿論のこと、品質を変化させることなく穀物を殺菌し、無菌の穀物を提供する方法の開発が望まれている。

【04】

【課題を解決するための手段】そこで本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ね、電子線の殺菌効果と電子の透過力がエネルギーに依存することに着目し、電子線を利用した穀物の殺菌方法を完成すると共に、当該方法に用いる穀物の回動装置についても検討して、本発明に到達した。

【05】
第1の本発明は、玄米、籾、小麦、殻付蕎麦、小豆、黒豆及び大豆から選ばれた穀物に、縦方向の振動と横方向の振盪を同時に与えて回動させながら、回動している穀物の表面に160~250keVの低エネルギーの電子線を照射することを特徴とする穀物の殺菌方法である。第2の本発明は、玄米、籾、小麦、殻付蕎麦、小豆、黒豆及び大豆から選ばれた穀物を収容する試料トレー、トレー載置台、その下方に直列状に配設した振動器および振盪器、該振動器および振盪器から発生する振動と振盪を前記トレー載置台に伝える伝動具、前記振動器と振盪器を作動させるための電源スイッチとこれらの作動用スイッチ並びに振動と振盪のスピードコントローラーを具備した穀物回動装置を電子線発生装置の下に置き、試料トレーに収容した穀物に縦方向の振動と横方向の振盪を与えながら低エネルギーの電子線を照射する請求項1記載の殺菌方法である。

【06】

【発明の実施の形態】現在用いられている放射線には、透過力が強く食品深部の殺菌が可能なγ線(電磁波)、電子線加速装置から得られる電子線、X線発生装置によるX線(電磁波)がある。このうち本発明に用いる電子線は、本質的に透過力が弱いものであり、穀物の表層部にしか到達することができないという性質を持っている。電子線源としては、スキャン形電子線照射装置とエリアビーム形電子線照射装置があるが、本発明にはエリアビーム形電子線照射装置を用いることが好ましい。本発明では、穀物の表層部に生育している微生物の殺菌を目的としているため、低エネルギーの電子線、すなわちソフトエレクトロンを利用する。ここで、低エネルギーの電子線としてはエネルギーが160~250keVの電子線が好ましく、対象の穀物の種類、形状などを考慮して、この範囲内で適切な低エネルギーの電子線を選択する。例えば、玄米や小麦などに対しては160~180keV、籾や殻付蕎麦豆類などに対しては200~250keVのソフトエレクトロンを照射することが適当である。穀物への電子線の照射時間は、ビーム量により異なるが、さらに穀物の種類、形状、量などを考慮して適宜決定すればよい。例えば、ビーム量が20~50mAの実用機の場合は1~10秒程度を目安とすればよい。

【07】
本発明の対象とされる穀物は、玄米、籾、小麦、殻付蕎麦、小豆、黒豆及び大豆から選ばれたものである。以下、これらを単に「穀物」と称する。なお、本発明の方法は穀物の他に粒コショウ、コリアンダー、セージ等の香辛料にも適用することができる。

【08】
穀物表面に付着している微生物を殺菌するためには、すべての穀物表面に電子線を均一に照射する必要がある。そのため、本発明では穀物に縦方向の振動と横方向の振盪を同時に与えて回動させ、この状態で電子線を照射する。この場合、穀物に与える振動や振盪の強さ(速度)は適切に調節しながら行う。振動と振盪のどちらか一方を単独で与えた場合は、それらの速度を変化させても、すべての穀物を回動させて電子線を穀物表面に均一に照射することが困難であるばかりでなく、殺菌処理に長時間を要することとなり、殺菌効率が著しく低下する。

【09】
このため本発明者らは、穀物に振動と振盪を与えて回動させることのできる穀物回動装置を開発した。この装置は、穀物の種類、形状や比重の違い等を考慮して、それぞれの穀物に適した速度で振動および振盪を与えることによって、均一に穀物粒を回動させることができる。この穀物回動装置は、図1および図2に示した構造のものであり、試料トレー1、トレー載置台2、その下方に直列状に配設した振動器4および振盪器5、該振動器および振盪器から発生する振動と振盪を前記トレー載置台に伝える伝動具3、前記振動器と振盪器を作動させるための電源スイッチ6とこれらの作動用スイッチ7(振動器作動用)、8(振盪器作動用)並びに振動器と振盪器のスピードコントローラー9、10を主要な構成要素としている。図中の11は装置の外板であり、装置正面の外板(計器板)には、図示したように、各種計器類が配設されている。12は電源ランプ、13は振動器ランプ、14は振盪器ランプ、15はヒューズ、16はアジャストボルトである。

【10】
この装置の材質や寸法は、使用目的等に応じて適宜に設定すればよいが、後記する実施例で用いた装置の本体(外板で囲った部分)は、幅35cm×奥行き30cm×高さ30cm(試料トレー上端までの高さは45cm)であり、トレーはプラスチック製が好適で、幅30cm×奥行き9cm×深さ3.5cmのものを使用した。また、トレー載置台上のトレーの振幅は3cm、上下動は0.2cmとなるように設定した。なお、伝動具としてはスプリングが好ましい。

【11】
この装置を使用して穀物を殺菌する方法について説明する。まず、装置を電子線発生装置の下に置くと共に、装置を起動させるため、電源(図示してない)と接続する。次いで、殺菌を必要とする穀物を2段乃至多段に重ならないように収容した試料トレー1をトレー載置台2上に取り付け、電源スイッチ6をONにする。さらに、振動器作動用スイッチ7並びに振盪器作動用スイッチ8をそれぞれONにして作動させる。振動器および振盪器によって発生した振動と振盪は、伝動具3を介してトレー載置台2に伝えられ、それに伴い試料トレー1内の穀物は縦方向の振動と横方向の振盪が与えられ、回動する。なお、振動器のスピードコントローラー9と振盪器のスピードコントローラー10により振動器および振盪器の動きを調節して試料トレー1内の穀物が均一、かつ適切に回動するように設定することができる。

【12】
この状態で電子線発生装置からソフトエレクトロンを照射して穀物の殺菌を行う。この場合、電子線発生装置からトレー底面までの距離は30cm程度まで、好ましくは5~20cmに調節する。この距離が近すぎると、穀物表面を均一に殺菌することが困難となり、離れすぎると、十分な殺菌効果が得られない。ところで、電子線発生装置から照射されたソフトエレクトロンが穀物に当たるときのエネルギーは、下記の計算式により測定することができる。

【13】

【数1】電子のエネルギー(keV) = 元のエネルギー(keV) -阻止能(keV・cm2/g)×物質の厚さ(cm)×比重(g/cm3)

【14】
例えば、電子線発生装置からトレー底面までの距離が5cmの場合、電子線発生装置出口直近(チタン窓箔の内側)での電子エネルギーが160keVのときは、該装置出口(チタン窓箔の外側)での電子エネルギーを上記の式から求めると、チタンの阻止能: 2287keV・cm2/g (ICRU REPORT 37、Stopping Powers for Electrons and Positrons 、84頁、1984年10月1 日発行を参照) 、物質(チタン窓箔)の厚さ:0.005cm、比重:4.54g/cm3を代入して108.1keVとなる。電子線発生装置から5cm離れた位置、すなわち穀物に当たるときの電子エネルギーは、空気の阻止能: 3637keV ・cm2/g (ICRU REPORT 37、Stopping Powers for Electrons and Positrons 、120 頁、1984年10月1 日発行を参照) 、物質の厚さ:5cm、比重:1.20 ×10-3g/cm3 を代入して 86.3keVとなる。該装置から20cm離れた位置、すなわち穀物に当たるときの電子エネルギーは、同様の計算により 20.8keVとなる。一方、電子線発生装置からの電子エネルギーが250keVのとき、該装置からトレー底面までの距離が5cmの場合、穀物に当たるときのエネルギーは同様の計算により、194.2keV、該装置からトレー底面までの距離が20cmの場合、穀物に当たるときのエネルギーは 149.6keV となる。

【15】
ソフトエレクトロンを所定時間照射して穀物表面の殺菌を終了した後、作動用スイッチ7、8をOFFとし、さらに電源スイッチ6をOFFとする。本発明の穀物回動装置において、1回の操作で処理可能な穀物の量は、基本的にはトレーの底面積に依存するが、通常は10~70g、好ましくは20~40gである。

【16】

【実施例】次に、本発明を実施例によって詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1
玄米、籾、小麦および殻付蕎麦のそれぞれについて別々に殺菌試験を行った。すなわち、各試料20gを試料トレー上に収容し、穀物回動装置(図示)で前記した操作によって回動させながら、バンデグラーフ型電子加速器を線源とした160~230keVの範囲の低エネルギーの電子線(ソフトエレクトロン)をビーム量4μAで1時間照射した後、穀物表面の生菌数および穀物の粘度を測定した。

【17】
生菌数の測定は、以下の方法で実施した。試料5gを0.9%塩化ナトリウム水溶液(生理食塩水)25ml中でホモジナイズ(日本精機(株)製、「エースホモジナイザー」を使用)した懸濁液を用いた。この懸濁液0.2mlを普通寒天培地(日水製薬(株)製、「ニッスイ普通寒天培地」)上に塗布し、30℃で48時間培養した後、培地上に生成したコロニー数より求めた。生菌数が100個以下、特に10個以下であれば、ほぼ殺菌されたとした判定した。なお、無処理の穀物表面に存在する生菌数は、後記するように、104 ~107 個程度である。また、粘度の測定は、以下の方法で実施した。試料をコーヒーミルを用いて粉砕した後、精製水を加えて7.5%の濃度の水懸濁液40mlを調製し、これに33%水酸化ナトリウム溶液2mlを加え、よく攪拌した後に沸騰水浴中で30分間加熱した。次に、25℃で3時間放置し、回転粘度計(ハーケ社製)にて測定した。なお、対照として、電子線を照射しない(無処理)穀物について上記と同様に測定した。生菌数の測定結果を第1表に、粘度測定の結果を第2表に示す。

【18】
比較例1
電子線の代わりに、線源として60Coを用いてγ線を10kGy照射したこと以外は、すべて実施例1と同様に行った。生菌数の測定結果を第1表に、粘度測定の結果を第2表に示す。

【19】

【表1】
第 1 表 穀物表面の生菌数
────────────────────────────────────
エネルギー 玄米 籾 小麦 殻付蕎麦
────────────────────────────────────
無処理 5.8×106 3.8×107 3.5×104 2.1×106
150 3.7×104 4.8×106 1.4×103 3.1×105
160 <10 7.3×105 <10 6.0×104
170 <10 5.1×105 <10 4.7×103
180 <10 8.8×104 <10 3.8×103
190 <10 7.3×103 <10 8.3×102
200 <10 <10 <10 <10
210 <10 <10 <10 <10
220 <10 <10 <10 <10
230 <10 <10 <10 <10
γ線 <10 <100 <10 <10
────────────────────────────────────
単位は、すべて個/gである。

【20】

【表2】
第 2 表 穀物の粘度
────────────────────────────────────
エネルギー 玄米 籾 小麦 殻付蕎麦
────────────────────────────────────
無処理 208.0 154.9 291.7 223.8
150 207.2 155.7 291.6 211.6
160 210.8 153.0 292.8 221.9
170 205.9 159.1 290.2 218.1
180 205.5 152.0 291.5 225.5
190 195.3 153.1 278.6 214.1
200 188.8 151.7 243.0 220.6
210 132.6 153.3 208.4 210.1
220 103.4 133.9 194.3 194.5
230 96.6 111.9 145.8 133.5
γ線 21.1 31.9 34.6 26.8
────────────────────────────────────
単位は、すべてmpa.sである。

【21】
第1表の生菌数の測定結果から、玄米と小麦では160keV以上、籾と殻付蕎麦では200keV以上のエネルギーのソフトエレクトロンを照射することによって、表面に存在した微生物をほぼ殺菌することができた。一方、粘度については、第2表から明らかなように、玄米と小麦では190keV以上、籾と殻付蕎麦では220keV以上のソフトエレクトロンを照射した場合に、粘度の低下が観察された。また、電子線の代わりにγ線を照射した場合は、いずれの穀物の場合もほぼ殺菌されていたが、穀物の粘度が著しく低下していた。以上のことから、玄米と小麦では160~180keV、籾と殻付蕎麦では200~210keVの電子線を照射した場合、澱粉の分解を殆ど起こさずに殺菌できることが示された。

【22】
実施例2
前記の穀物回動装置を用いて、玄米20gを回動させながら、バンデグラーフ型電子加速器を線源とした160~200keVの電子線をビーム量4μAで1時間照射した後、歩留り90%または88%となるように搗精した精米について、脂質の過酸化の指標としてチオバルビツル酸価(以下、TBA値と称する。)を測定した。なお、対照として無搗精米についても同様に試験した。TBA値の測定は、試料250mgを用い、常法(金田 尚志、植田 伸夫編集、「過酸化脂質実験法」、医歯薬出版(株)発行、p84~85)に基づいて測定した。その結果を第3表に示す。

【23】
比較例2
電子線を照射しないこと以外は、すべて実施例2と同様に行った。得られた結果を第3表に示す。

【24】
比較例3
電子線の代わりに、線源として60Coを用いてγ線を10kGy照射したこと以外は、すべて実施例2と同様に行った。得られた結果を第3表に示す。

【25】

【表3】
第 3 表
───────────────────────────
玄米粉および精米粉のTBA値
───────────────────────────
無搗精 搗精歩留り
エネルギー 90% 88%
(玄米) (精米) (精米)
───────────────────────────
無処理 18.3 4.5 4.4
160 27.6 4.7 4.5
170 29.8 4.9 4.7
180 34.2 8.4 4.8
190 41.4 9.5 9.4
200 55.2 14.3 14.4
γ線 56.2 46.6 45.2
───────────────────────────

【26】
第3表から明らかなように、ソフトエレクトロンのエネルギーに関わらず、ソフトエレクトロンで処理した無搗精(玄米)のTBA値は、無処理の1.5~3.0倍を示した。しかし、160~170keVのエネルギーで処理した後、90%もしくは88%の歩留りで搗精した精米においては、無処理のものと同様のTBA値を示した。また、180keVの電子線で処理後、88%の歩留りで搗精した精米においても、無処理のものと同様のTBA値を示した。しかし、190keV以上のエネルギーのソフトエレクトロンで処理した玄米では、90%もしくは88%の歩留りで搗精した場合、いずれも無処理のものよりも2.1~3.3倍という高いTBA値を示した。したがって、玄米の場合は、160~170keVの低エネルギーの電子線で処理後、90%の歩留りで搗精することによって、電子線の照射された部分は除去され、このため精白米(胚乳部)の脂質は電子線による影響を受けていない。なお、歩留り88%で搗精する場合は、180keVまでの電子線で処理すれば、精白米(胚乳部)の脂質は電子線による影響を受けない。一方、電子線の代わりにγ線を照射した場合、無搗精の玄米では無処理の3.1倍、歩留り90%もしくは88%で搗精した精米においては、いずれも無処理の約10倍のTBA値を示し、搗精後の精白米においても脂質の過酸化が進んでいることが明らかとなった。

【27】
実施例3
実施例1において、玄米等の代わりに豆類を用いたこと以外は同様にして殺菌試験を行った。穀物表面の生菌数の測定結果を第4表に示す。

【28】

【表4】
第 4 表 穀物表面の生菌数
─────────────────────────────
エネルギー 小豆 黒豆 大豆
─────────────────────────────
無処理 7.5×103 1.5×104 2.8×103
150 <100 <100 <100
160 <10 <10 <10
170 <10 <10 <10
180 <10 <10 <10
190 <10 <10 <10
200 <10 <10 <10
220 <10 <10 <10
230 <10 <10 <10
γ線 <10 <100 <10
─────────────────────────────
単位は、すべて個/gである。

【29】
表から明らかなように、豆類の場合は、160keV以上のエネルギーのソフトエレクトロンを照射することにより、表面に存在した微生物をほぼ殺菌することができた。

【30】

【発明の効果】本発明の方法によれば、穀物を均一、かつ確実に回動させながら、殺菌に必要最低限度のエネルギーの電子線を照射することによって、穀物成分の澱粉に損傷を与えることなく、穀物表面に付着している微生物を効率良く殺菌することができる。また、玄米の殺菌を行った場合は、処理後に搗精することによって、電子線が照射された部位を除去することができるので、本発明の方法により殺菌した玄米から得られる精白米は、脂質の酸化を受けていない。本発明の方法は、穀物回動装置を用いることにより効率よく実施できる。
図面
【図1】
0
【図2】
1