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明細書 :試料調製方法および装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3015870号 (P3015870)
公開番号 特開平10-300652 (P1998-300652A)
登録日 平成11年12月24日(1999.12.24)
発行日 平成12年3月6日(2000.3.6)
公開日 平成10年11月13日(1998.11.13)
発明の名称または考案の名称 試料調製方法および装置
国際特許分類 G01N  1/36      
G01N  1/28      
G01N 33/02      
FI G01N 1/28 Z
G01N 33/02
G01N 31/28
請求項の数または発明の数 3
全頁数 5
出願番号 特願平09-112799 (P1997-112799)
出願日 平成9年4月30日(1997.4.30)
審査請求日 平成9年9月4日(1997.9.4)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】591275126
【氏名又は名称】農林水産省農業研究センター所長
発明者または考案者 【氏名】堀金 彰
【氏名】田宮 誠司
【氏名】小巻 克己
【氏名】奥山 善直
【氏名】安東 郁男
【氏名】坂井 真
個別代理人の代理人 【識別番号】100067839、【弁理士】、【氏名又は名称】柳原 成
審査官 【審査官】亀田 宏之
参考文献・文献 特開 平4-229160(JP,A)
特開 平1-98464(JP,A)
実開 昭57-132611(JP,U)
調査した分野 G01N 1/36
G01N 1/28
G01N 33/02
特許請求の範囲 【請求項1】
試料容器に収容された試料を不活性ガス雰囲気下に、固形物およびイオンを含む妨害物質除去用フィルタを介して加圧器により加圧と圧力解除を繰返し圧搾し、フィルタを通過させて固形物およびイオンを除去するとともに均質化した搾汁液を分析用試料として採取することを特徴とする試料調製方法。

【請求項2】
試料を収容する試料容器と、試料容器の開口部を覆うように配置され固形物およびイオンを除去る妨害物質除去用フィルタと、貫通孔を有しかつフィルタの上方から試料容器の開口部を覆うように取付けられる蓋と、蓋を設置した状態で試料とフィルタ間に不活性ガスを注入するガス注入手段と、蓋の貫通孔に挿入されかつフィルタの上から試料を加圧と圧力解除を繰返し圧搾するとともに搾汁液を均質化する加圧器と、圧搾によりフィルタを通して得られる搾汁液を収容する採液室とを備えていることを特徴とする試料調製装置。

【請求項3】
試料容器、フィルタおよび加圧器は酵素および化学的に不活性な材料により形成されている請求項2記載の装置。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【01】

【発明の属する技術分野】本発明は分析用の試料調製方法および装置、特に生物試料の化学分析に適した試料調製方法および装置に関するものである。

【02】

【従来の技術】従来、野菜、果物等の農産物その他の生物試料の化学分析を行う際、分析用の試料を調製するためには、試料のナイフ、ミキサー等による細切、ホモジナイザ等による磨砕、均質化、ロート等による濾過、遠心分離などによる妨害物の除去などの操作が行われている。

【03】
これらの操作は手作業で行われることが多く、多くの機器および消耗品を使用し、はん雑な作業を長時間にわたって行う必要がある。その間空気中の酸素による試料の酸化、時間の経過による酵素の失活などが起こるため、還元物質や酵素の活性値等につき正確な分析値が得られない。このほか、多数の試料を迅速に処理することが困難であるなどの問題点がある。

【04】

【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、簡単な装置と操作により、迅速にかつ不活性雰囲気で分析用試料の調製が可能であり、これにより正確な分析値が得られるとともに、多点化も可能な試料調製方法および装置を提供することである。

【05】

【課題を解決するための手段】本発明は次の試料調製方法および装置である。
(1) 試料容器に収容された試料を不活性ガス雰囲気下に、固形物およびイオンを含む妨害物質除去用フィルタを介して加圧器により加圧と圧力解除を繰返して圧搾し、フィルタを通過させて固形物およびイオンを除去するとともに均質化した搾汁液を分析用試料として採取することを特徴とする試料調製方法。
(2) 試料を収容する試料容器と、試料容器の開口部を覆うように配置され固形物およびイオンを除去する妨害物質除去用フィルタと、貫通孔を有しかつフィルタの上方から試料容器の開口部を覆うように取付けられる蓋と、蓋を設置した状態で試料とフィルタ間に不活性ガスを注入するガス注入手段と、蓋の貫通孔に挿入されかつフィルタの上から試料を加圧と圧力解除を繰返して圧搾するとともに搾汁液を均質化する加圧器と、圧搾によりフィルタを通して得られる搾汁液を収容する採液室とを備えていることを特徴とする試料調製装置。
(3) 試料容器、フィルタおよび加圧器は酵素および化学的に不活性な材料により形成されている上記(2)記載の装置。

【06】
本発明において調製の対象となる試料は生物試料のように搾汁液を生成可能な試料であり、甘しょ、ニンジン、キャベツ等の野菜や、リンゴ、ミカン等の果物など、圧搾により直接搾汁液が生じるもののほか、イネ、麦等の種子のように水等の溶媒を加えて圧搾することにより搾汁液を生成するものを含む。この場合、柔軟な組織と粗剛な組織の混在するものであってもよい。

【07】
試料容器は内部に試料を収容し、上部開口部側に妨害物質除去用フィルタを配置して蓋を取付け、蓋の貫通孔を通して加圧器を挿入して試料を圧搾できるように構成される。このとき加圧器は試料容器の内壁との間にフィルタを介在させた状態でほぼ圧着するように、試料容器の内壁にほぼ対応する形状に形成されるのが好ましい。試料容器には圧搾により生じる搾汁液を収容するようにフィルタの外側に採液室が形成されている。

【08】
蓋はフィルタの上方から試料容器の開口部を覆うように構成され、加圧器を導入するように加圧器外径にほぼ対応した貫通孔を有するが、この貫通孔は蓋をした状態で不活性ガスの注入および採液を行えるように、補助開口部を有するのが好ましい。

【09】
妨害物質除去用フィルタは濾紙、イオン交換濾紙、不織布など、分析の目的に応じて固形分およびイオンを含む妨害物質を除去できる濾過体が使用できるが、これらのフィルタを介して圧搾できるように可撓性を有するものを使用する。濾紙は主として固形分を除去し、イオン交換濾紙はイオンを除去する。不織布は固形分を除去するほか、加圧解除時に搾汁液を吸収するため、加圧と圧力解除を繰返して搾汁液を均質化するのに適している。このためこれらを積層したものが好ましい。

【10】
注入手段は試料容器に試料を収容し、開口部にフィルタを配置して蓋を閉じた状態で試料とフィルタ間の空間に不活性ガスを注入できるように構成される。一般的には手持式の小形のボンベの先に取付けたノズルを補助開口部から採液室に挿入して不活性ガスを注入するものでよいが、試料容器に着脱可能なように取付けたものでもよい。

【11】
加圧器は支持台上に置いた試料容器に、上からピストンが下降して蓋の貫通孔を通して挿入され、フィルタ試料容器内に押込んで試料を加圧し、圧搾する構成を有するものが好ましい。この場合ピストンの加圧と圧力解除を交互に行えるようにする。試料容器、蓋、フィルタ、および加圧器は酵素および化学的に不活性な材料により形成されているのが好ましい。

【12】
上記の装置を用いる試料調製方法は、まず試料容器内に生物試料等の試料を入れ、開口部にフィルタを配置して蓋を閉じ、ガス注入手段により試料とフィルタ間に不活性ガスを注入する。これにより試料容器内の空気は各部のすき間を通して追出され、試料容器内は不活性ガス雰囲気になる。

【13】
この状態で加圧器により蓋の貫通孔を通してフィルタを押圧すると、フィルタは加圧器に押されて試料容器内に入り込み、試料容器の内壁に沿って押し込まれる。さらに加圧器が前進すると、試料が押されて圧搾される。圧搾により搾汁液が搾り出され、フィルタを通して採液室に入る。搾汁液はフィルタを通ることにより妨害物質が除去される。妨害物質としての固形分は濾紙により濾過され、イオンはイオン交換濾紙により吸着、除去される。

【14】
この状態で加圧器の加圧を解除すると、加圧器は元に戻ろうとするため負圧となり、採液室内の搾汁液はフィルタに吸引される。フィルタとして不織布のように空隙の多い材質を用いると、これに吸引される搾汁液の量が多くなる。さらに加圧器を加圧すると、フィルタに吸引された搾汁液は採液室に戻り、これを繰り返すことにより搾汁液は均質化し、試料に含まれている状態に近くなる。

【15】
最終的に加圧器を加圧した状態で、蓋の補助貫通孔を通してピペットを採液室に挿入して搾汁液を採取し、分析用試料とする。こうして得られる分析用試料は不活性ガス雰囲気下に搾汁され、かつ妨害物質が除去されているため、正確な分析値が得られる。

【16】

【発明の効果】本発明によれば、試料容器に収容される試料を不活性ガス雰囲気下に固形物およびイオンを含む妨害物質除去用フィルタを介して、加圧と圧力解除を繰返して圧搾するとともに均質化するようにしたので、簡単な装置と操作により、迅速にかつ不活性雰囲気で分析用試料の調製が可能であり、これにより正確な分析値が得られるとともに、多点化も可能である。

【17】

【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態について説明する。図1(a)は実施形態の試料調製装置の正面図、(b)はその一部の分解斜視図、図2(a)、(b)は使用状態を示す断面図である。

【18】
図中1は試料容器であって、内部に試料2を収容する試料室3を有し、上部に開口部4が形成されており、この開口部4の周辺部にはフィルタ支持部5a、5bが形成されている。試料容器1の側壁の一部には採液室6が溝状に形成され、その上部周壁側にはガス注入路7が形成されている。ガス注入路7の反対側の側壁には溝状のガス排出路8が形成されている。

【19】
フィルタ支持部5aには開口部4を覆うように、下から濾材9a、陽イオン交換紙9b、陰イオン交換紙9c、および不織布9dを重ねた妨害物質除去用フィルタ9が配置される。フィルタ支持部5bは小径のフィルタを使用するために設けられているが、図の場合は使用されていない。

【20】
濾材9aは試料を圧搾する圧力で破損しないように、レーヨンペーパ等の丈夫な不織布を用いるのが好ましい。陽、陰イオン交換紙9a、9bはイオン交換繊維を抄紙したイオン交換濾紙のほか、粒状のイオン交換材を抄き込んだ濾紙でもよい。不織布9dは多量の液を含浸できるようにスポンジ状のものが好ましく、例えばポリエステルの厚手濾紙などが使用できる。

【21】
蓋10はフィルタ9を挟むように試料容器1の開口部4に取付けられる構造になっており、貫通孔11およびこれに連なる補助開口部12を有する。加圧器13は支持台14上に試料容器1を置き、上からピストン15が下降するように、支柱16から伸びるアーム17にピストン15が上下動可能に設けられ、レバー18によって操作されるようになっている。

【22】
加圧器13のピストン15は、蓋11の貫通孔12を通して試料容器1の試料室3内に挿入されたとき、フィルタ9を介在させて試料容器1の内壁とほぼ圧着するように、試料容器1の内壁にほぼ対応する形状に形成されている。試料容器1、フィルタ9、蓋10、およびピストン15は酵素および化学的に不活性な材料により形成されている。20は手持式のガスボンベ、21はピペットである。

【23】
上記の装置を用いる試料調製方法は、まず試料容器1内に生物試料等の試料2を入れ、開口部3に濾材9a、陽イオン交換紙9b、陰イオン交換紙9c、不織布9dを積層したフィルタ9を配置して蓋10を閉じる。そして図2(a)に示すようにガスボンベ20の先端に取付けたノズル20aを補助開口部12からガス注入路7に挿入し、採液室6を通して試料室3の試料2とフィルタ9間に不活性ガスを注入する。これにより試料容器1内の空気は各部のすき間を通して追出され、試料容器1内は不活性ガス雰囲気になる。

【24】
この状態で試料容器1を加圧器13の支持台14上に置き、レバー18を操作してピストン15を下降させ、蓋10の貫通孔11を通して、フィルタ9を押圧すると、フィルタ9はピストン15に押されて試料容器1の試料室3内に入り込み、フィルタ9は試料容器1の内壁に沿って押し込まれる。さらにピストン9が前進すると、試料2が押されて圧搾され、圧搾試料9aとなる。この間試料室3内のガスは採液室6およびガス排出路8を通して排出される。圧搾により搾汁液22が搾り出され、フィルタ9を通して採液室6に入る。搾汁液22はフィルタ9を通ることにより、妨害物質が除去される。防害物質としての固形分は濾材9aおよび不織布9dにより濾過され、イオンはイオン交換紙9b、9cにより吸着、除去される。

【25】
この状態で加圧器13によるピストン15の加圧を解除すると、ピストン15は元に戻ろうとするため負圧となり、採液室6内の搾汁液22はフィルタ9に吸引される。フィルタ9の不織布9dはポリエステル不織布のような空隙の多い材質であるため、吸引される搾汁液の量が多くなる。続いてピストン15を加圧すると、フィルタ9に吸引された搾汁液は採液室6に戻る。これを繰り返すことにより搾汁液22は均質化し、試料2に含まれている状態に近い組成になる。

【26】
最終的に加圧器13によりピストン15を加圧した状態で、図2(b)に示すように、蓋10の補助開口部12を通してピぺット21を採液室6に挿入して搾汁液22を採取し、分析試料とする。こうして得られる分析用試料は不活性ガス雰囲気下に搾汁され、かつ妨害物質が除去されているため、正確な分析値が得られる。なお、イオン交換紙9a、9bの使用に代えて、あるいはイオン交換紙9a、9bの使用とともに、イオン交換樹脂および/または活性炭等を試料室3に加えて妨害物質を吸着させることができる。

【27】
上記のような試料調製の操作は、圧搾可能な試料にはすべて適用可能であり、例えば甘しょ等の野菜類はそのまま適用可能である。またかんきつ類のように比較的硬質の繊維質部分と、軟質のゼリー状部分が混在する場合でも硬質部分が圧搾可能である限り適用可能である。これらの試料は従来のように細切の必要はなく、輪切ないしチップ状に切断するだけで処理が可能である。

【28】
イネ、麦等の種子のような硬質の試料でも圧搾できる限り、処理可能であるが、圧搾しても搾汁が得られない場合は、水等の溶媒を存在させて加圧と圧力解除を繰返すことにより試料中の成分を抽出して搾汁液とすることができる。木質部のようにそのままで圧搾できない程度の硬質部分を有する場合はあらかじめ細切して上記の処理に適用することができる。

【29】
上記の試料調製操作は従来の操作に比べて、簡単な操作により迅速に行うことができ、しかも不活性雰囲気下に処理できるとともに、妨害物質の除去も同時に行えるため、正確な分析データが得られるうえ、多数の試料を迅速に処理して分析の多点化が可能である。

【30】
各種の甘しょを試料とし、図1、2の装置および上記操作により搾汁液を得、アミラーゼ活性を分析した結果を表1に示す。
【表1】
甘しょ搾汁液中のアミラーゼ活性
───────────────────────
品 種 水 分 アミラーゼ
(%) U/ml
───────────────────────
高系14号 73.7 286.8
泉13号 69.9 951.8
フサベニ 73.8 403.5
関東109号 77.6 833.8
サツマヒカリ 75.8 2.3
コガネセンガン 71.0 613.0
ヘルシーレッド 77.9 350.8
タマユタカ 79.0 450.2
ベニアズマ 76.1 669.7
───────────────────────
図面
【図1】
0
【図2】
1