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明細書 :家畜飼養場所の泥濘化防止方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3550664号 (P3550664)
公開番号 特開2003-088264 (P2003-088264A)
登録日 平成16年5月14日(2004.5.14)
発行日 平成16年8月4日(2004.8.4)
公開日 平成15年3月25日(2003.3.25)
発明の名称または考案の名称 家畜飼養場所の泥濘化防止方法
国際特許分類 A01K  3/00      
FI A01K 3/00
請求項の数または発明の数 2
全頁数 7
出願番号 特願2001-282976 (P2001-282976)
出願日 平成13年9月18日(2001.9.18)
審査請求日 平成13年9月18日(2001.9.18)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】501203344
【氏名又は名称】独立行政法人農業・生物系特定産業技術研究機構
発明者または考案者 【氏名】佐藤 義和
個別代理人の代理人 【識別番号】100063565、【弁理士】、【氏名又は名称】小橋 信淳
【識別番号】100118898、【弁理士】、【氏名又は名称】小橋 立昌
審査官 【審査官】坂田 誠
参考文献・文献 特公平7-40845(JP,B2)
調査した分野 A01K 1/00 - 3/00
特許請求の範囲 【請求項1】
舗装を行っていない家畜飼養場所において家畜による泥濘化を防止する方法であって、
木口断面の長辺が垂直になるようにして作成した木材薄板製すのこを地表面に埋設することによって、家畜の蹄による土のねり返しを防ぎ、雨水などの水分は地下に浸透させ、土が泥濘化することを防止することを特徴とする家畜飼養場所の泥濘化防止方法。
【請求項2】
使用する木材薄板は、それのみで家畜による荷重に耐えるほどの断面のものではなく、すのこの隙間に充填される土質材料と複合材料となることで十分な強度を持つようにし、さらに、すのこの隙間は、家畜の蹄が2ないし3本の薄板に載るように過不足なく設定し、単位面積当たりに使用する木材の材積(量)を減少させるとともに、該すのこを埋設した場所の土の軟らかさを損なわないようにしたことを特徴とする請求項1記載の家畜飼養場所の泥濘化防止方法。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、家畜飼養場所を、舗装を行うことなく木材薄板によって作製したすのこを地表面に埋設することによって、泥濘(ねい)化を防ぐことができるようにした,家畜飼養場所の泥濘化防止方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
畜産において、家畜の運動、あるいは家畜への飼料給与を行うために、屋外で家畜を飼養することが一般的に行われている。飼養場所は、コンクリートやアスファルトによる舗装を行わないと、家畜の蹄による土のねり返しと、糞の混入による土の目詰まりなどによって、土が泥濘化することになる。
【0003】
その結果、以下のような弊害があった。
▲1▼.降雨時や降雨後は特に泥濘化の程度が大きくなるため、飼養場所が使用できなくなる。
▲2▼.泥濘化によって家畜の肢蹄が土中に埋まるため、家畜が普通に運動できなくなる。
▲3▼.泥の付着によって家畜が汚れる。
▲4▼.蹄が常に湿った状態になるため、蹄病の発生が増加する。
【0004】
このため従来は、泥濘化を防止するために、コンクリートあるいはアスファルトによって舗装を行う方法か、土壌硬化剤を用いて土を固める方法などがとられていた。
【0005】
コンクリートあるいはアスファルトによって舗装を行うか、土壌硬化剤を用いて土を固める方法以外に泥濘化を防止する方法として、本出願人(旧農林水産省北海道農業試験場)は特公平7-40845号において、「地表面にプラスチックネットの下側にエキスパンドメタルを重合させた網材料を、土中に埋没しない状態に鉄ピンにより展張することによって、家畜の蹄による土のねり返しを防ぎ、雨水や家畜の尿などの水分は地下に浸透させ、土が泥濘化することを防止する」手段を提案している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記前者のように飼養場所をコンクリートやアスファルトで舗装を行う場合、または土壌硬化剤を使用して土を固める場合には、家畜飼養場所の表面は硬くなり、かつ滑りやすくなる。また、地面の表面が硬くなることは、家畜の肢蹄に悪影響を及ぼし、滑りやすくなることは家畜が転倒して怪我をするなどの事故の原因となっている。さらに、コンクリートやアスファルトで舗装したり、土壌硬化剤で固化した場合には、地表面からの水分の蒸発が抑制されるため、夏期には地表面温度が上昇し、照り返しが強くなる。また、コンクリートやアスファルト、あるいは土壌硬化剤を使用するには、多くの費用を必要とすると共に、家畜飼養場所の移動が必要となった場合には、移動した場所に新たに施工する必要があり、さらに、舗装や土壌硬化剤による固化を行った場所を元の状態の戻すためには重機などを用いた破砕、撤去工事を行う必要があった。
【0007】
また、上記後者のように、地表面にプラスチックネットの下側にエキスパンドメタルを重合させた網材料を、土中に埋没しない状態に鉄ピンにより展張する場合には、最上部にプラスチックネットを使用しているので、フロントローダやトラクタを用いて網材料上の糞を除去する際に、鋼製の排土板やバケットを使用すると、プラスチックネットが容易に破損してしまうため、タイヤを利用したようなゴム製の特殊なスクレーパを使用する必要があった。また、金属からなるエキスパンドメタルを使用しているので、コスト高になるという問題もあった。
【0008】
本発明は、上記の事情に基づき、家畜の飼養場所の舗装を行わずに、木材薄板によって作製したすのこを地表面に埋設することだけによって、泥濘化を防ぐことができ、上記のような弊害を容易に回避することが可能となる,家畜飼養場所の泥濘化防止方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために本発明は、
A.舗装を行っていない家畜飼養場所において家畜による泥濘化を防止する方法であって、木口断面の長辺が垂直になるようにして作成した木材薄板製すのこを地表面に埋設することによって、家畜の蹄による土のねり返しを防ぎ、雨水などの水分は地下に浸透させ、土が泥濘化することを防止することを特徴としている。
【0010】
B.使用する木材薄板は、それのみで家畜による荷重に耐えるほどの断面のものではなく、すのこの隙間に充填される土質材料と複合材料となることで十分な強度を持つようにし、さらに、すのこの隙間は、家畜の蹄が2ないし3本の薄板に載るように過不足なく設定し、単位面積当たりに使用する木材の材積(量)を減少させるとともに、該すのこを埋設した場所の土の軟らかさを損なわないようにしたことを特徴としている。
【0011】
【作用】
上記の手段によって本発明の家畜飼養場所の泥濘化防止方法は、埋設された木材薄板製すのこが家畜の蹄による荷重を分散させ、また、木材薄板製すのことすのこの隙間に充填した土質材料の複合体は家畜の蹄による荷重で破壊されることがないので、家畜の蹄による土のねり返しが無くなり、雨水などの水分は地下に浸透し、地表面は乾いた状態に保持されて、泥濘化するのが防止される。また、木材薄板製すのこの撤去は容易に行うことができるし、移動も可能である。さらに、フロントローダやトラクタの鋼製の排土板やバケットをそのまま使用して糞を除去してもすのこは壊れない。さらにまた、すのこは家畜の荷重に耐えるばかりでなく、フロントローダやトラクタなどの作業機械の荷重にも耐える。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施の形態について、添付の図面を参照して具体的に説明する。
【0013】
まず、本発明の泥濘化防止方法の実施に当たっては、以下の点を考慮した。
1)家畜飼養場所の土が持っている軟らかさをある程度残すために、コンクリートや金属などの材料をできるだけ使用せず、木材を主な使用材料とすること。
2)本泥濘化防止方法を実施しても、家畜が滑り易くならないように土を固化させる方法をとらないこと。
3)すのこ状の構造をした材料を使用することによって、地表面からの水分の蒸発は抑制されず、夏期にも地表面温度の上昇を抑えることができるようにすること。
【0014】
4)一段的に流通している木材を主とした材料を簡単な加工方法で使用することにより、コンクリートやアスファルトによる舗装や土壌硬化剤による固化、あるいはプラスチックネットの下側にエキスパンドメタルを重合させた網材料と比較して安価な施工を可能にすること。
5)家畜飼養場所の移動が必要となった場合には、木材薄板製すのこを移動することが可能となり、資材を新たに購入する必要がないようにすること。さらに、重機などを用いた破砕、撤去工事を行わずに、施工した場所を施工する前の状態に戻せること。
【0015】
6)地表面を家畜の蹄による土のねり返しから守るために、家畜の蹄による荷重を分散して地面に伝えるようにすること。
7)そのために用いる、すのこを作製するための木材の断面をできるだけ小さいものとし、すのこの隙間に充填される土質材料と複合されることにより、家畜の荷重に耐えられるものとすることにより、単位面積当たりに使用する木材の材積(量)を減少させること。
【0016】
上記のような点から本発明の方法では、家畜の蹄による荷重を分散させるすのこ1を作製するための主材料として、図1に示すように、木材の薄板(板材)2を採用した。また、すのこ1の隙間を家畜の蹄が2ないし3本の薄板2に載るように過不足なく設定するために使用するスペーサ3には、木材、あるいはパイプを採用した。すのこ1の主材料である板材2とスペーサ3とを交互に配置するために、板材2とスペーサ3の両者に穴をあけ、通しボルト・ナット4によって固定した。
【0017】
木口断面の長辺が垂直になるようにして使用した場合の木材薄板2は、垂直方向の荷重に対しては非常に強い。しかし、荷重の方向が垂直方向からわずかでもずれて、薄板2がねじれてしまうと強度はきわめて小さくなってしまう。そこで、すのこ1を地表面に埋設することによって、すのこ1の隙間に土質材料5が充填されるようにした。そうすることによって、荷重が垂直方向からずれても隙間に充填された土質材料5によって、木材薄板2はねじれることがなく大きな強度を保つことが可能となる。また、すのこ1の隙間を家畜の蹄が3ないし3本の薄板2に載るように設定することによって、土質材料5は蹄による練り返しを受けることがないため、泥濘化が発生しない。
【0018】
すのこ1の主材料2とスペーサ3の両者に穴をあけ、通しボルト・ナット4で固定することによって、あらかじめすのこ1を作製する。本方法を実施しようとする場所の地表面をすのこ1の高さ分だけ掘削し、すのこ1をその場所に置いた後に掘削した土や粗粒火山灰などの土質材料5ですのこ1の隙間を埋め戻す。地表面を掘削せずにすのこ1を置き、すのこ1の高さまで粗粒火山灰などの土質材料5で覆っても施工可能である。
【0019】
この実施例においては、幅約2m、奥行き約1mの牛(成牛)の飲水のための水槽の前側に本方法を実施した。すのこ1の主材料2としては、木口断面が12mm(D)×90mm(H)、長さ3.6mの木材薄板2を使用した。すのこ1の主材料2には、その中央と両端の合わせて3箇所に通しボルト・ナット4用の穴をあけた。スペーサ3としては木口断面が45mm(S)×90mm(H)、長さ100mmの木材片を使用した。スペーサ3には90×100mmの面の中央に1箇所通しボルト・ナット4用の穴をあけた。成牛の蹄の長さ及び幅は120mm余りあるため、すのこ1の隙間を45mmとすることで、牛の蹄は常に2から3本のすのこ主材料2の上に載る。通しボルト・ナット4は直径9mm、長さ1mのものを使用した。18枚のすのこ主材料2の中央および両端の3箇所にスペーサ3を交互に配置して通しボルト・ナット4によって固定し、幅1m、長さ3.6mのすのこ1を作製した。同一のすのこ1を8枚作製し、上記の水槽の前に、幅8m、奥行き3.6mとなるように設置した。設置にあたっては、当該場所の地表面を約9cm掘削し、8枚のすのこ1を置いた後にすのこ1の隙間を粗粒火山灰5によって充填した。
【0020】
当該水槽には放し飼いにされた体重約600kgの牛、約40頭が約8ヶ月間、飲水のために訪れた。本方法を実施した場所ではすのこ材料によって家畜の蹄による荷重が分散され、土の練り返しがなされなかったため、泥濘は発生しなかった。また、すのこが破損することも、土中に埋没していくこともなかった。それに対して、本方法を実施した場所の外側では水溜まりができるなど、泥濘化の発生が認められた。
【0021】
図2に、一般的に屋外の家畜飼養場所で泥濘化の発生が著しい春期における、本方法を実施した場所及び実施した場所の外側の場所における地表面の山中式硬度、期間中の半旬別降水量を示す。地表面の山中式硬度については、それぞれ20点の測定点の平均値を示している。地表面の山中式硬度は常に本方法を実施した場所で大きい値を示し、本方法を実施した場所では降雨があっても短期間のうちに山中式硬度が回復する傾向が図から読みとれる。
【0022】
すなわち、本方法を実施しなかった場所では、家畜の蹄による土の練り返しが行われたため、土が軟化して泥濘化が発生し、地表面の山中式硬度が低下したものと考えられる。それに対して本方法を実施した場所では、家畜の蹄による土の練り返しが行われなかったために泥濘化が発生せず、地表面の山中式硬度が大きく維持され、降雨後に一時的に小さくなっても短期間で回復したものと推察される。
【0023】
上記実験結果から明らかなように、本発明による泥濘化防止方法は、十分な実用性が証明された。また、すのこ1上の糞を除去するために、フロントローダやトラクタの鋼製の排土板やバケットをそのまま使用してもすのこ1は壊れることはなく、フロントローダやトラクタの荷重にも耐えた。
【0024】
【発明の効果】
以上説明したように本発明の家畜飼養場所の泥濘化防止方法によれば、木口断面の長辺が垂直になるようにして作成した木材薄板のすのこを地表面に埋設することによって、家畜の蹄による土のねり返しを防ぎ、雨水などの水分は地下に浸透させ、土が泥濘化することを防止するようにし、また、使用する木材薄板はそれのみで家畜による荷重に耐えるほどの断面のものではなく、すのこの隙間に充填される土質材料と複合材料となることで十分な強度を持つようにし、さらに、すのこの隙間は、家畜の蹄が2ないし3本の薄板に載るように過不足なく設定し、単位面積当たりに使用する木材の材積(量)を減少させるとともに、本方法を実施した場所の土の軟らかさを損なわないようにしたので、従来の、コンクリートやアスファルトによる舗装、あるいは土壌硬化剤によって土を固める方法や金属からなるエキスパンドメタルを使用する方法に比較して、簡便に、しかも安価に家畜飼養場所の泥濘化を防止することが可能となる。
【0025】
また、家畜飼養場所の移動が必要となった場合には、埋設したすのこを掘り起こし、移動することによって、新しい家畜飼養場所でも同様の泥濘化防止効果を得ることができる。さらに、屋外の飼養場所が常に使用でき、泥濘化によって家畜の肢蹄が土中に埋まることがないので家畜が普通に運動でき、泥の付着によって家畜が汚れることがなく、蹄が乾燥しているため蹄病の発生が抑制される。さらにまた、すのこは家畜の荷重に耐えるばかりでなく、フロントローダやトラクタなどの作業機械の荷重にも耐えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の模式的な図であり、地表面へすのこを埋設した状態の部分斜視図である。
【図2】本発明の実施例における、すのこを埋設した場所及びすのこを埋設しない場所の地表面の土の山中式硬度を示すグラフである。
【符号の説明】
1 すのこ
2 すのこの主材料である木材薄板
3 スペーサ
4 通しボルト・ナット
5 粗粒火山灰などの土質材料
図面
【図1】
0
【図2】
1