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明細書 :浅層型スラリーインジェクタ

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3593560号 (P3593560)
公開番号 特開2003-038012 (P2003-038012A)
登録日 平成16年9月10日(2004.9.10)
発行日 平成16年11月24日(2004.11.24)
公開日 平成15年2月12日(2003.2.12)
発明の名称または考案の名称 浅層型スラリーインジェクタ
国際特許分類 A01C 23/02      
FI A01C 23/02 E
請求項の数または発明の数 1
全頁数 8
出願番号 特願2001-229356 (P2001-229356)
出願日 平成13年7月30日(2001.7.30)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用申請有り 平成13年4月1日 農業機械学会発行の「第60回農業機械学会年次大会講演要旨」に発表
審査請求日 平成13年7月30日(2001.7.30)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】501203344
【氏名又は名称】独立行政法人農業・生物系特定産業技術研究機構
発明者または考案者 【氏名】澤村 篤
【氏名】住田 憲俊
【氏名】糸川 信弘
【氏名】石田 三佳
個別代理人の代理人 【識別番号】100063565、【弁理士】、【氏名又は名称】小橋 信淳
【識別番号】100118898、【弁理士】、【氏名又は名称】小橋 立昌
審査官 【審査官】小野 忠悦
参考文献・文献 特開平07-000001(JP,A)
特開2000-224909(JP,A)
実開平03-085805(JP,U)
特開平08-000034(JP,A)
調査した分野 A01C 15/00-23/04
A01C 3/00- 3/08
特許請求の範囲 【請求項1】
トラクタ(1)に連結され、幅方向に複数条設けられて家畜糞尿のようなスラリーを圃場土中に連続して施用するインジェクタ(2)において、
前記インジェクタ(2)は、掘削刃(16)の後にスラリー注入管(17)及び覆土板(18)を配設し、該掘削刃(16)、スラリー注入管(17)及び覆土板(18)を、本体フレーム(6)に対して先端部が回転支持部材(10)を介して左右回動可能に支持された支持アーム(11)の後部側に、上下方向に作動する平行リンク(12)、該平行リンク(12)に架設されたバネ(13)及び上下移動範囲規制部材(14)を介して支持し、
前記本体フレーム(6)に、ゲージホイール(19)を上下移動してインジェクタ(2)によるスラリーの圃場土中への施用深さを調節する上下調節支持装置(20)及びインジェクタ(2)の作業を安定させるウエイト(32)を備え、インジェクタ(2)によるスラリーの圃場土中への施用深さを、地表から15cm付近までの浅層に設定し、
前記インジェクタ(2)を、前記平行リンク(12)、バネ(13)、上下移動範囲規制部材(14)及び前記回転支持部材(10)により圃場の凹凸に対して独立して追従可能に懸架し、インジェクタ(2)が土中の障害物に接触すると上方、左右に移動でき、スラリーの注入深さを確保して圃場表面への露出を防ぐようにし、かつ前記回転支持部材(10)によりインジェクタ(2)を土中に挿入したまま旋回可能に支持したことを特徴とする浅層型スラリーインジェクタ。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、家畜糞尿のようなスラリーを圃場の浅層に施用する浅層型スラリーインジェクタに関する。
【0002】
【従来の技術】
家畜糞尿のようなスラリーを圃場に施用する場合、バキュームタンカ等で圃場表面に散布(表面施用)すると臭気の発生がひどく、府県等の住宅地が近接した条件では臭気公害の問題が発生している。臭気を防ぐには、従来の土中20~30cmの深層にスラリーを施用する技術があるが、この方式では地下水汚染や肥料成分の効率的な利用が行われないなどの問題や、特に作業上、高馬力のトラクタを必要とし、表面施用の場合と比べて作業能率が極端に悪いことが問題としてあった。加えて、圃場端でインジェクタを持ち上げた場合にスラリーの滴下が生じ、臭いの発生や作業機への付着等の問題があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
こうした問題を解決するために、表面施用と同程度の能力を有するとともに、臭気の発生を防ぎ、地下水汚染も防止できる浅層型スラリーインジェクタを開発し、スラリーの圃場施用を促進することが急務とされている。
本発明は、このような事情に基づいてなされたもので、上記の問題を解決するようにした浅層施用型のスラリーインジェクタを提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明は、以下の手段を特徴としている。
A.トラクタ1に連結され、幅方向に複数条設けられて家畜糞尿のようなスラリーを圃場土中に連続して施用するインジェクタにおいて、
前記インジェクタは、掘削刃16の後にスラリー注入管17及び覆土板18を配設し、該掘削刃16、スラリー注入管17及び覆土板18を、本体フレーム6に対して先端部が回転支持部材10を介して左右回動可能に支持された支持アーム11の後部側に、上下方向に作動する平行リンク12、該平行リンク12に架設されたバネ13及び上下移動範囲規制部材14を介して支持し、
前記本体フレーム6に、ゲージホイール19を上下移動してインジェクタ2によるスラリーの圃場土中への施用深さを調節する上下調節支持装置20及びインジェクタ2の作業を安定させるウエイト32を備え、インジェクタによるスラリーの圃場土中への施用深さを、地表から15cm付近までの浅層に設定した
【0005】
B.前記インジェクタ2を、前記平行リンク12、バネ13、上下移動範囲規制部材14及び前記回転支持部材10により圃場の凹凸に対して独立して追従可能に懸架し、インジェクタ2が土中の障害物に接触すると上方、左右に移動でき、スラリーの注入深さを確保して圃場表面への露出を防ぐようにし、かつ前記回転支持部材10によりインジェクタ2を土中に挿入したまま旋回可能に支持した
【0006】
【作用】
上記A.及びB.の構成によって本発明の浅層型スラリーインジェクタは、次のような作用をする。
a.圃場の地表から15cm付近までの浅層にスラリーを注入することで、臭気を防ぎ、肥料成分の効率的な利用が図られ、また、高馬力のトラクタを必要とせず、表面施用に近い作業能率が得られる。
【0007】
b.圃場の凹凸に対して、各インジェクタが独立して上下動し、圃場の凹凸に追従してスラリーの注入深さを確保し、地表面への露出を防ぐ。
c.土中に石礫等の障害物がある場合でも、平行リンクとバネによりインジェクタが上方に逃げ、石礫の多い圃場でも、スラリーの施用が可能であり、かつスラリーの露出を低減できる。
d.圃場端でのスラリーの滴下を防止することができ、旋回しながらの施用も可能となるので、能率よく作業が行える。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について、添付した図面を参照して説明する。
図1及び図2において、符号1はトラクタ、2は浅層型のスラリーインジェクタ、3はスラリータンカ(あるいはバキュームタンカ)である。トラクタ1の後部には、トップリンク4及び左右一対のロアリンク5からなる3点リンクが設けられ、この3点リンクに、左右方向に延びるスラリーインジェクタの本体フレーム6の中央部に設けられたトップマスト7及び左右一対のロアリンク連結部8を連結し、スラリーインジェクタ2及びスラリータンカ3がトラクタ1により牽引されて作業を行うようにしている。また、トラクタ1から後方に向けて突出された図示しないPTO軸から、PTO伝動軸9を介して本体フレーム6に動力が伝達される。
【0009】
スラリーインジェクタ2は、本体フレーム6の左右長さ方向に7組のユニットが左右間隔調節可能に支持されている。また、本体フレーム6の左右両端側は、それぞれ1組のスラリーインジェクタ2を装着した状態で、回動支持部6aから上下に折り畳み可能であり、スラリーインジェクタ2が路上移動するときに折り畳んで機体幅を狭くして移動することができる。各スラリーインジェクタ2は、前部に設けた回動支持部材10に支持アーム11の前端部を左右回動自在に取り付け、この支持アーム11に前後一対の平行リンク12、バネ13及び上下移動範囲規制部材14を介して、花形ディスク15及びサブソイラ形状の掘削刃16が取り付けられている。この掘削刃16の後部に、スラリー注入管17及び覆土板18が取り付けられ、覆土板18は上下調節が可能である。本体フレーム6には、左右一対のゲージホイール19が、上下調節支持装置20により上下調節可能に支持され、スラリーインジェクタ2の作業深さを調節することができる。
【0010】
本体フレーム6の左右方向の中央部から後方に向け連結フレーム21が延び、この連結フレーム21の後端部にヒッチ装置22を介してスラリータンカ3の車体フレーム23の先端部が左右回動可能に連結される。車体フレーム23上にはスラリータンク24が搭載されている。車体フレーム23の前部に、図3及び図4に示すように容積型ポンプ25が搭載され、変速装置26を介して動力が伝達される。この変速装置26には、PTO伝動軸9を介して本体フレーム6に伝達された動力が動力伝達軸27を介して入力される。なお、ポンプ25をスラリータンク24後方の車体フレーム23に搭載するようにしてもよい。
【0011】
一方、本体フレーム6上に分配機28が搭載され、ここで分配したスラリーをパイプ29を介してスラリー注入管17に供給するようにしている。分配機28は、トラクタ1から受ける油圧により作動して、ポンプ25からホース30を介して供給されるスラリーを攪拌すると共にスラリー中に含まれる固形物や敷きわら等を粉砕してパイプ29に分配する機能を有している。スラリータンク24に設けられた吸入部31からは、スラリーを投入するほか種子等を投入してスラリーと共に圃場の浅層に注入することができる。また、ポンプ25は、スラリータンク24からスラリーを吸い上げてホース30を介して分配機28に送り、分配されたスラリーをパイプ29を介してスラリー注入管17に送って土中に注入すると同時に、ポンプ25により吸い上げたスラリーの一部をスラリータンク24内に戻し(ドレンし)ポンプ25によるスラリーの循環路を構成してスラリータンク24内のスラリーを攪拌し、種子等の沈殿を防止するようにしている。符号32は、スラリーインジェクタ2の作業を安定させるためのウエイトである。なお、トラクタ1にスラリータンカ3を直装し、スラリーインジェクタ2をスラリータンカ3の後部に装着するようにしてもよい。
【0012】
次に、上記構成のスラリーインジェクタ2の動作について説明する。
スラリーインジェクタ2は、トラクタ1に直装されてスラリータンカ3やバキュームタンカからポンプ25により吸い上げたスラリーを、スラリー注入管17を介して地表から15cm付近までの浅層に注入し、覆土板18により覆土して注入時は勿論のこと圃場端でも圃場表面にスラリーを露出させない。また、インジェクタ2を幅方向に複数条(この実施例では7条)設け、各インジェクタ2が上下方向に作動する平行リンク12とバネ13により独立懸架され、圃場の凹凸に対して独立して追従可能であり、花形ディスク15や掘削刃16が土中の障害物に接触すると、上方に移動して損傷を回避する。また、インジェクタ2は回動支持部材10により左右回動可能であり、インジェクタ2を土中に挿入したまま旋回が可能である。
【0013】
この実施例では、スラリーインジェクタ2はトラクタ1の後部に直装され、スラリータンカ3をインジェクタ2の後部に装着して牽引することを基本構成としているが、スラリータンカ3をトラクタ1の後部に直装し、インジェクタ2をスラリータンカ3の後部に装着して作業することもできる。スラリーインジェクタ2及びスラリータンカ3はトラクタ1により牽引され、タンカ3ヘの動力はインジェクタ2の上部を通って動力伝達軸27を介してポンプ25の変速装置26ヘ供給される。本体フレーム6に取り付けられた分配機28は、トラクタ1から供給される油圧により駆動し、スラリー内の夾雑物を細かく切断し、インジェクタ2のパイプ29やスラリー注入管17内での詰まりを防止すると共に、各条のインジェクタ2へ均一な量のスラリーを分配する。
【0014】
インジェクタ2はゲージホイール19により花形ディスク15及び掘削刃16の作用深さを調節し、スラリー注入管17によるスラリーの注入深さを一定に保つと共に、花形ディスク15は、例えば牧草等の根茎を切断し、掘削刃16の牽引力を低減させる。スラリーは、掘削刃16の後部に配置されたスラリー注入管17を通じて、その下端まで導かれて圃場の浅層に施用される。スラリーの施用量を確保するために、掘削刃16の先端にサブソイラと同様のウイングを取り付け、下層部の土を膨軟にし、施用後は覆土板18により覆土を行い、花形ディスク15及び掘削刃16により切削した縦溝を閉鎖しスラリーの臭気の拡散を防止する。
【0015】
圃場に石礫等の障害物がある場合や圃場面の凹凸に対応して、各インジェクタ2が平行リンク12とバネ13により、上下移動範囲規制部材14の規制範囲で上下動しながら作業を行う。特に石礫がある圃場では、石礫のある条のインジェクタ2だけが平行リンク12及びバネ13によって上方に逃げ、その後下降することで圃場面へのスラリーの露出を低減する。また、花形ディスク15、掘削刃16、スラリー注入管17、覆土板18などは、回動支持部材10により左右回動可能に取り付けられているので、圃場端においてインジェクタ2を持ち上げることなく旋回することができる。さらに、インジェクタ2の左右への振れは、石礫の回避にも役立つ。
【0016】
そして、従来のように、スラリーがバキュームタンカ等による表面施用や、20~30cmの土中に深層施用されると、大気蒸散や地下浸透により、住環境へ悪臭問題や地下水汚染の問題を引き起こし、特に、悪臭問題は混住化が進んだ府県の酪農地帯では大きな問題となり、スラリーの圃場施用ができない場合も生じているのを、本発明においては解決できる。また、本発明のインジェクタ2は、バキュームタンカ等による表面施用と同程度の能率を有すると共に、土中の浅層にスラリーを施用することにより、悪臭の大気蒸散や肥料成分の地下浸透を抑制し、肥料成分を作物の根圏に施用することにより肥料成分の効率的な利用が促進される。特に、本発明の装置は、スラリーの地表面への露出をできる限り少なくすることにより、悪臭等の公害問題が顕在化している地域でも利用することができ、家畜糞尿(スラリー)の圃場還元が促進され、環境に優しい技術となる。
【0017】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によるスラリーインジェクタは、請求項1の構成を有することにより、以下の効果を奏することができる。
【0018】
イ.地表から15cm付近までの浅層にスラリーを安定して注入することができる。
ロ.圃場の凹凸に対して、各条のスラリーインジェクタを独立して左右回動、上下移動可能に取り付け、圃場の凹凸に追従してスラリーの注入深さを確保し、かつスラリーの露出を防ぐことができる。
ハ.石礫等の障害物がある場合は、平行リンクとバネによる独立懸架ならびに回転支持部材によりインジェクタを上方ならびに左右に逃がし、石礫圃場でも、スラリーの施用が可能であり、かつスラリーの露出を低減することができる。
ニ.圃場端でのスラリーの滴下を防ぐために、インジェクタを注入したまま旋回可能なようにインジェクタを左右に独立して回動する構造としたため、旋回しながらのスラリー施用も可能であり、能率よい作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるスラリーインジェクタの側面図である。
【図2】同スラリーインジェクタの平面図である。
【図3】スラリータンカの側面図である。
【図4】スラリータンカの側面図である。
【符号の説明】
1 トラクタ
2 スラリーインジェクタ
3 スラリータンカ
4 トップリンク
5 ロアリンク
6 インジェクタの本体フレーム 6a 回動支持部
7 トップマスト
8 ロアリンク連結部
9 PTO伝動軸
10 回動支持部材
11 支持アーム
12 平行リンク
13 バネ
14 上下移動範囲規制部材
15 花形ディスク
16 掘削刃
17 スラリー注入管
18 覆土板
19 ゲージホイール
20 上下調節支持装置
21 連結フレーム
22 ヒッチ装置
23 車体フレーム
24 スラリータンク
25 容積型ポンプ
26 変速装置
27 動力伝達軸
28 分配機
29 パイプ
30 ホース
31 吸入部
32 ウエイト
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3