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明細書 :昆虫外皮切開装置及び昆虫外皮切開方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3336386号 (P3336386)
公開番号 特開2001-352861 (P2001-352861A)
登録日 平成14年8月9日(2002.8.9)
発行日 平成14年10月21日(2002.10.21)
公開日 平成13年12月25日(2001.12.25)
発明の名称または考案の名称 昆虫外皮切開装置及び昆虫外皮切開方法
国際特許分類 A01K 67/033     
A01K 67/04      
FI A01K 67/033 502
A01K 67/04
請求項の数または発明の数 4
全頁数 8
出願番号 特願2000-178184 (P2000-178184)
出願日 平成12年6月14日(2000.6.14)
審査請求日 平成12年6月14日(2000.6.14)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】501167644
【氏名又は名称】独立行政法人農業生物資源研究所
発明者または考案者 【氏名】小林 亨
【氏名】古田 要二
個別代理人の代理人 【識別番号】100091096、【弁理士】、【氏名又は名称】平木 祐輔 (外1名)
審査官 【審査官】長井 啓子
参考文献・文献 特開 平9-19238(JP,A)
調査した分野 A01K 67/033
A01K 67/04
A61B 17/00
特許請求の範囲 【請求項1】
処置対象の昆虫を固定して保持する載置台と、
上記載置台に保持された昆虫に対して赤外線レーザー光を照射するレーザー照射手段と、
上記載置台を所定の方向に移動制御する移動手段と、
上記移動手段により移動する上記載置台の移動方向に対して、上記レーザー照射手段よりも前段側に配設されるとともに上記載置台に保持された昆虫の位置を検出する位置検出手段とを備え、
上記位置検出手段が検出した昆虫の位置信号を上記レーザー照射手段に入力するとともに、上記レーザー照射手段が上記位置信号に基づいて検知した昆虫に赤外線レーザー光を照射することによって、上記載置台に保持された昆虫の外皮を切開及び/又は穿孔することを特徴とする昆虫外皮切開装置。

【請求項2】
昆虫を保持するための負圧を発生させる負圧発生手段を有する、処置対象の昆虫を固定して保持する載置台と、
上記載置台に保持された昆虫に対して赤外線レーザー光を照射するレーザー照射手段とを備え、
上記負圧発生手段から生じた負圧により昆虫を上記載置台に保持することによって、当該昆虫を鉛直下方向に吊るした状態で、上記レーザー照射手段が当該昆虫に対して赤外線レーザー光を照射することによって、当該昆虫の外皮を切開及び/又は穿孔することを特徴とする昆虫外皮切開装置。

【請求項3】
処置対象の昆虫を載置台に保持し、
上記載置台に保持された昆虫の位置を検出し、当該昆虫の位置情報に基づいて検知した昆虫に赤外線レーザー光を照射することによって、当該昆虫の外皮を切開及び/又は穿孔することを特徴とする昆虫外皮切開方法。

【請求項4】
処置対象の昆虫に対して負圧を加えることにより当該昆虫を鉛直下方向に吊るした状態で載置台に保持し、鉛直下方向に吊るされた昆虫に対して赤外線レーザー光を正中線方向に照射することによって、当該昆虫の外皮を切開及び/又は穿孔することを特徴とする昆虫外皮切開方法。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【0001】

【発明の属する技術分野】本発明は、例えば、蚕等の昆虫の外皮に対して切開及び/又は穿孔処理を施す昆虫外皮切開装置及び昆虫外皮切開方法に関する。

【0002】

【従来の技術】一般に、生物工学の分野では、昆虫の外皮を切開及び/穿孔して、当該昆虫の体液等の内容物を取り出したり、穿孔部からバキュロウィルス等の組換えウィルスを感染させるような処置が施されている。特に、昆虫の中でも蚕は、古くから有用物質の産生宿主として使用されており、このような切開及び/又は穿孔処置が施されている。

【0003】
また、蚕の切開方法としては、特開平6-90778号公報に開示されているように、高圧液体を用いて蚕外皮を切開及び穿孔する手法や、特開平9-19238号公報に開示されているように、超音波を発する刃物を接触させて蚕の表皮または体を切る手法や、特開平9-70241号公報に記載されているように、回転刃に蚕を接触させて外皮を切開する手法が知られている。

【0004】
しかしながら、これら何れの手法を用いても、蚕の外皮のみを切開及び/又は穿孔することは困難であり、蚕に対する傷害が大きいといった問題点がある。また、これら何れの手法を用いても、蚕の外皮のみを切開及び/又は穿孔することは困難であるため、蚕の体液を純粋な状態で取り出すことができず、取り出した体液中に多量の不純物が混入してしまうといった問題点がある。

【0005】
言い換えると、上述した各公開公報に代表されるような従来の昆虫外皮切開技術では、昆虫を正確に切開及び/又は穿孔することができず、純粋な体液を抽出することができないのが現状である。

【0006】

【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明は、上述した問題点を鑑みてなされたものであり、処置対象の昆虫を必要以上に損傷することがなく、昆虫の外皮のみを正確に切開及び/又は穿孔することができる昆虫外皮切開装置及び昆虫外皮切開方法を提供することを目的とする。

【0007】

【課題を解決するための手段】上述した目的を達成した本発明に係る昆虫外皮切開装置は、処置対象の昆虫を固定して保持する載置台と、上記載置台に保持された昆虫に対して赤外線レーザー光を照射するレーザー照射手段とを備え、上記レーザー照射手段から出射された赤外線レーザー光により、上記載置台に保持された昆虫の外皮を切開及び/又は穿孔することを特徴とするものである。

【0008】
以上のように構成された本発明に係る昆虫外皮切開装置は、昆虫の外皮に対して赤外線レーザー光を照射することによって、処置対象の外皮を確実に切開及び/又は穿孔する。赤外線レーザー光は、そのエネルギーが水分に吸収され易いため、外皮を切開及び/又は穿孔した後、外皮内部の体液等により減衰することになる。これにより、この昆虫外皮切開装置によれば、赤外線レーザー光を用いて外皮を切開及び/又は穿孔しても、外皮に覆われた内部組織や器官を損傷することなく維持することができる。

【0009】
また、本発明に係る昆虫外皮切開装置は、上記載置台を所定の方向に移動制御する移動手段と、上記移動手段により移動する上記載置台の移動方向に対して、上記レーザー照射手段よりも前段側に配設されるとともに上記載置台に保持された昆虫に対向して配設され、当該昆虫の位置を検出する位置検出手段とを備え、上記位置検出手段が検出した昆虫の位置信号を上記レーザー照射手段に入力するとともに、上記レーザー照射手段が上記位置信号に基づいて検知した昆虫に赤外線レーザー光を照射することが好ましい。

【0010】
この場合、昆虫外皮切開装置は、位置検出手段を備えるため、処置対象の昆虫に対して赤外線レーザー光を高精度に照射することができる。したがって、この場合、昆虫外皮切開装置によれば、昆虫の外皮の所望の位置を正確に切開及び/又は穿孔できるとともに、外皮に覆われた内部組織や器官の損傷を防止することができる。

【0011】
さらに、本発明に係る昆虫外皮切開装置は、上記レーザー照射手段により切開及び/又は穿孔された昆虫から、当該昆虫の体液を取り出す体液取出し手段を有することが好ましい。

【0012】
さらにまた、本発明に係る昆虫外皮切開装置は、上記レーザー照射手段の前段側に配設され、処置対象の昆虫を上記載置台に供給する供給手段と、上記レーザー手段の後段側に配設され、上記載置台に保持された昆虫を回収する回収手段とを備えることが好ましい。

【0013】
さらにまた、本発明に係る昆虫外皮切開装置は、上記載置台が昆虫を保持するための負圧を発生させる負圧発生手段を有してなり、上記負圧発生手段から生じた負圧により昆虫を上記載置台に保持することによって、当該昆虫を鉛直下方向に吊るした状態で、上記レーザー照射手段が当該昆虫に対して赤外線レーザー光を照射することが好ましい。

【0014】
一方、本発明に係る昆虫外皮切開方法は、処置対象の昆虫を載置台に保持し、上記載置台に保持された昆虫に対して赤外線レーザー光を照射することによって、当該昆虫の外皮を切開及び/又は穿孔することを特徴とするものである。

【0015】
以上のように構成された本発明に係る昆虫外皮切開方法は、昆虫の外皮に対して赤外線レーザー光を照射することによって、処置対象の外皮を確実に切開及び/又は穿孔する。本手法において、赤外線レーザー光は、そのエネルギーが水分に吸収され易いため、外皮を切開及び/又は穿孔した後、外皮内部の体液等により減衰することになる。これにより、この昆虫外皮切開方法によれば、赤外線レーザー光を用いて外皮を切開及び/又は穿孔しても、外皮に覆われた内部組織や器官を損傷することなく維持することができる。

【0016】
また、本発明に係る昆虫外皮切開方法は、上記載置台に保持された昆虫の位置を検出し、当該昆虫の位置情報に基づいて検知した昆虫に赤外線レーザー光を照射することが好ましい。

【0017】
この場合、本手法によれば、処置対象の昆虫に対して赤外線レーザー光を高精度に照射することができる。したがって、この場合、昆虫外皮切開方法によれば、昆虫の外皮の所望の位置を正確に切開及び/又は穿孔できるとともに、外皮に覆われた内部組織や器官の損傷を防止することができる。

【0018】
さらに、本発明に係る昆虫外皮切開方法は、処置対象の昆虫に対して負圧を加えることにより当該昆虫を鉛直下方向に吊るした状態で保持し、鉛直下方向に吊るされた昆虫に対して赤外線レーザー光を正中線方向に照射することが好ましい。

【0019】

【発明の実施の形態】以下、本発明に係る昆虫外皮切開装置及び昆虫外皮切開方法の具体的な実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の例では、切開及び穿孔する対象の昆虫として蚕の幼虫又は蛹や、凍結又は低温麻酔した蚕の幼虫を例示して説明するが、本発明に係る昆虫外皮切開装置及び昆虫外皮切開方法では、昆虫として蚕に限定されず、その他の昆虫を対象としてもよい。

【0020】
本発明を適用した昆虫外皮切開装置は、図1に示すように、ベルトコンベアー1におけるベルト部2の一主面上に固定して配設された複数の載置台3と、ベルトコンベアー1の一方主面側に対向してベルト部2の移動方向に沿って順に配された、蚕供給部4、位置検出センサー5、レーザー照射装置6及び蚕回収部7と、ベルトコンベアー1の他方主面側に対向してベルト部2の移動方向に沿って順に配された、載置台洗浄装置8及び載置台乾燥装置9とを備えている。

【0021】
ベルトコンベアー1は、環状に形成されたベルト部2の両端部に一対の駆動ローラ10a,10bを有している。これら一対の駆動ローラ10a,10bが駆動することによって、ベルト部2が図1中矢印aで示す方向に駆動することができる。これにより、載置台3は、ベルト部2の駆動にともなって、図1中矢印aで示す方向に順次搬送されることとなる。

【0022】
複数の載置台3は、それぞれ所定の間隔をもって併設されており、蚕11を保持するための保持手段をそれぞれ有している。蚕11を保持するための保持手段としては、粘着力により蚕11を水平に保持する粘着テープ又は水平に配列した複数の蚕11を押さえつける透明な平板或いはシート等が挙げられる。これら保持手段によれば、蚕11の運動を抑制し、蚕11を載置台3における所定の位置に固定することができる。さらに、処置対象の蚕11として、凍結した蚕11や低温麻酔した蚕11を用いることによって、蚕11の運動はより確実に抑制されることとなる。

【0023】
蚕供給部4は、処置対象の蚕11を保有しており、載置台3上に当該蚕11を載置する。蚕供給部4は、載置台3の所定の位置に蚕11を水平方向に供給し、載置台3の保持手段により蚕11を固定させる。

【0024】
位置検出センサー5は、載置台3上に保持された蚕11の位置を検出するための、例えば、CCDカメラや光学センサー等を有している。位置検出センサー5は、蚕11の位置を検出すると位置情報信号をコントローラ12に対して出力するとともに、ベルト部2の移動速度に対応する蚕11の移動速度信号をコントローラ12に対して出力する。なお、コントローラー12に対しては、予め蚕11の移動速度信号を入力しておいても良い。

【0025】
コントローラ12は、位置検出センサー5から入力した位置情報及び移動速度信号に基づいて、レーザー照射装置6に対して制御信号を出力する。この制御信号は、レーザー照射装置6から出射される赤外線レーザー光の照射タイミング及び照射位置を制御する信号である。すなわち、コントローラ12は、蚕11を切開及び/又は穿孔する位置を制御するとともに、蚕11の移動速度に基づいて所定の出力と照射速度に規定された赤外線レーザー光の照射時間を制御する。

【0026】
レーザー照射装置6は、例えば、市販のレーザーマーカー等を使用することができる。また、レーザー照射装置6は、出射する赤外線レーザー光の位置を変位させるためのレーザー変位装置とレーザーの出力を制御する出力制御部を備えている。また、これらレーザー変位装置及び出力制御部は、コントローラ12からの制御信号により制御される。したがって、赤外線レーザー光は、制御信号に基づいてレーザー変位装置により所望の位置に照射されるとともに、制御信号に基づいて出力制御部により照射エネルギの強度制御及び照射時間がオン・オフ制御されることとなる。

【0027】
レーザー照射装置6は、上述したように制御信号により動作を制御されることによって、所定の速度で移動する蚕11に対して赤外線レーザー光を所定の時間照射することができる。これによって、蚕11は、所定の部位における外皮のみを切開及び/又は穿孔されることになる。

【0028】
また、この昆虫外皮切開装置は、ベルト部2の下方に配設され、切開又は穿孔部位から自噴する体液を採取するための容器13を有している。すなわち、レーザー照射装置6で切開又は穿孔された蚕11から自噴する体液をベルト部2に形成された開口部から落下させ、落下した体液を容器13内部に収容させることができる。

【0029】
蚕回収部7は、ベルト部2の移動方向の最終端近傍に配設され、内部に蚕11を収容することができる。すなわち、ベルトコンベアー1により搬送された載置台3がベルト部2の移動に伴って垂直方向になり、その後、当該載置台3上に保持された蚕が剥離して落下する位置に、蚕回収部7が配設されている。この蚕回収部7では、処置後の蚕11を回収するとともに、容器13で採取されなかった残存体液を採取溶液中に溶出させて採取することができる。

【0030】
なお、蚕回収部7は、このようなものに限定されず、例えば、吸引装置により処置後の蚕11を吸引して回収するようなものであってもよいし、載置台3を振動させて処置後の蚕11を載置台3から剥離するようなものであってもよい。また、この蚕回収部7では、回収した蚕11から体液を吸引手段によって積極的に採取してもよいし、また、吸引手段を用いて載置台3上に残存した体液を採取しても良い。載置台3に残存した体液を吸引手段によって回収する場合には、採取対象である体液の採取率を向上させることができる。

【0031】
一方、載置台洗浄装置8は、ベルトコンベアー1の他方主面側に対向して配設され、洗浄液を所定の圧力で載置台3内部に吹き付けるためのノズルを有している。載置台洗浄装置8は、載置台3に保持した蚕11に対して切開等の処置を施すことによって付着した蚕11の体液等を洗浄することができる。

【0032】
載置台乾燥装置9は、ベルトコンベアー1の他方主面側に対向して配設され、上記載置台洗浄装置8により洗浄された載置台3を乾燥するためのドライヤーを有している。載置台乾燥装置9は、載置台3を洗浄した後に当該載置台3に付着した洗浄液を乾燥させ、載置台3を再度使用できる状態にすることができる。

【0033】
以上のように構成された昆虫外皮切開装置では、先ず、蚕供給部4から処置対象の蚕11を載置台3に供給するとともに、載置台3上において蚕11を固定する。その後、ベルトコンベアー1により当該載置台3を搬送することによって、位置検出センサー5に載置台3を対向させる。このとき、位置検出センサー5は、載置台3に固定された蚕11の正確な位置を検出するとともに蚕11の移動速度を検出し、処置対象の蚕11の位置情報信号及び移動速度信号をコントローラー12へ出力する。

【0034】
次に、昆虫外皮切開装置では、ベルトコンベアー1により載置台3を搬送してレーザー照射装置6に対向させる。このとき、レーザー照射装置6は、上記位置情報信号及び上記移動速度信号に基づいてコントローラ12から出力される制御信号が入力される。そして、レーザー照射装置6は、この制御信号に基づいて、処置対象の蚕11における所定の位置に所定の強度の赤外線レーザー光を高速度で照射する。具体的に、赤外線レーザー光は、レーザー照射装置6のレーザー変位装置により照射位置が制御され、レーザー照射装置6の出力制御部により出力及び出力タイミングが制御される。但し、赤外線レーザー光の出力に関しては、予め設定しておいてもよい。

【0035】
このように、赤外線レーザー光を蚕11の所望の位置に照射することによって、当該蚕11の所望の位置を切開したり、当該蚕11の所望の位置を穿孔することができる。この赤外線レーサーは、照射された位置の外皮を焼失させる一方で、外皮に覆われる内容物に含まれる水分により減衰する性質を有している。このため、赤外線レーザー光は、外皮に覆われた内容物を損傷することなく、外皮のみを切開及び/又は穿孔することができる。

【0036】
このため、この昆虫外皮切開装置によれば、蚕11の外皮を切開して体液を採取する際、採取した体液中に外皮や体内組織、中腸液等が混入することなく、体液のみを高純度に採取することができる。同時に、この昆虫外皮切開装置によれば、蚕11の膨圧を低下させること無く外皮のみを切開することができるため、蚕11の自噴量を高く維持することができる。したがって、この昆虫外皮切開装置を用いれば、体液中の有用物質を変質させることなく、優れた精製効率で当該有用物質を得ることができる。

【0037】
また、この昆虫外皮切開装置によれば、赤外線レーザー光を用いているため、蚕11の外皮に穿孔して形成された当該孔にバキュロウィルス等を感染させる際、蚕11に対して与える損傷や苦痛を大幅に低減することができる。このため、穿孔処置を施されバキュロウィルスを感染させた蚕11の衰弱を抑制することができ、当該蚕11の有用物質産生能を高く維持することができる。

【0038】
特に、この昆虫外皮切開装置では、処置対象の蚕11の位置情報信号及び移動速度信号に基づいて、切開及び/又は穿孔処置を施している。このため、この昆虫外皮切開装置によれば、赤外線レーザー光を高速に動作する照射位置装置により高速照射が行えることによって、短時間に大量の蚕11を切開及び/又は穿孔することができる。

【0039】
また、この昆虫外皮切開装置では、載置台3上に蚕11を固定しているため、処置対象の蚕11が移動してしまうことを防止でき、赤外線レーザー光の照射位置の精度をより向上させることができる。これにより、赤外線レーザー光の誤照射を確実に防止して、昆虫外皮切開装置の処置精度を大幅に向上させることができる。

【0040】
さらに、この昆虫外皮切開装置においては、処置後の蚕11を蚕回収部7で回収するとともに、蚕が回収された後の載置台3を洗浄及び乾燥することができ、載置台3を複数回にわたって再利用することができる。すなわち、ベルトコンベアー1のベルト部2に沿って載置台3を周回させることによって、蚕11の切開及び/又は穿孔処置を繰り返して行なうことができ、自動的に多量の蚕11を処置することができる。

【0041】
ところで、本発明は、上述した実施の形態に限定されず、例えば、図2に示すような昆虫外皮切開装置であっても良い。すなわち、本発明を適用した昆虫外皮切開装置は、図2に示すように、複数の蚕11が重なり合わないように固定された載置台20と、この載置台20上に蚕11を供給するとともに蚕11の位置を検出する蚕供給及び位置検出装置21と、この蚕供給及び位置検出装置21の後段に配設され赤外線レーザー光を照射するレーザー照射装置6とを備えている。

【0042】
この昆虫外皮切開装置において、蚕供給及び位置検出装置21は、載置台20上に複数の蚕11を固定するとともに、当該載置台20面内に固定された複数の蚕11の位置を平面的に検出する。そして、蚕供給及び位置検出装置21は、載置台20面内における蚕11の位置情報信号をコントローラー12に対して出力する。

【0043】
コントローラー12では、この位置情報信号に基づいて赤外線レーザー光の照射位置を制御する制御信号をレーザー照射装置6に対して出力する。このとき、制御信号は、載置台20面内に固定された複数の蚕11に対して、赤外線レーザー光を順次照射させるようにレーザー照射装置6を制御する。したがって、レーザー照射装置6は、コントローラー12から出力された制御信号に基づいて、複数の蚕11に対して赤外線レーザー光を順次照射する。

【0044】
このように、この昆虫外皮切開装置は、載置台20面内に固定された複数の蚕11の位置を一括して検出するため、複数の蚕11に対して非常に高速に処置を施すことができる。また、特に、この昆虫外皮切開装置は、蚕11の外皮を穿孔して孔を形成する際に使用されることが好ましい。

【0045】
また、この昆虫外皮切開装置によれば、赤外線レーザー光を用いているため、外皮に覆われた内部組織や器官を損傷することなく、外皮のみを切開及び/又は穿孔することができる。このため、この昆虫外皮切開装置によれば、蚕11の外皮を切開して体液を採取する際、採取した体液中に外皮や体内組織、中腸液等が混入することなく、体液のみを高純度に採取することができる。同時に、この昆虫外皮切開装置によれば、蚕11の膨圧を低下させること無く外皮のみを切開することができるため、蚕11の自噴量を高く維持することができる。したがって、この昆虫外皮切開装置を用いれば、体液中の有用物質を変質させることなく、優れた精製効率で当該有用物質を得ることができる。

【0046】
さらに、本発明は、図1或いは図2に示すような昆虫外皮切開装置に限定されず、図3に示すような昆虫外皮切開装置にも適用される。図3に示す昆虫外皮切開装置は、ベルトコンベアー1を載置台3として使用し、当該ベルトコンベアー1内に負圧発生装置(図示せず)を配設してなり、当該負圧発生装置により処置対象の蚕11を吸引して保持し、処置対象の複数の蚕11をベルト部2の他主面側に鉛直下方向に、頭部を上に尾部を下にして吊るした状態とする。この状態で、昆虫外皮切開装置は、位置検出センサー5、コントローラー12及びレーザー照射装置6により、上述した実施の形態と同様に、処置対象の蚕11に対して切開及び/又は穿孔を行なう。

【0047】
また、この昆虫外皮切開装置は、レーザー照射装置6の後段側に、体液を回収するための容器30及び洗浄ノズル採取装置31を備えている。この容器30は、切開及び/又は穿孔処置が施された後、ベルトコンベアー1により搬送される蚕11と対向する位置に配設され、重力により抽出される体液を採取することができる。また、洗浄ノズル採取装置31は、体液を抽出するための採取液を蚕11に吹き付けるノズル部32と、採取液を吹き付けることによって採取された体液を採取液とともに回収する回収容器33とから構成されている。この洗浄ノズル採取装置31によれば、重力により抽出されなかった体液を採取液により略完全に採取して回収することができる。

【0048】
さらに、この昆虫外皮切開装置は、洗浄ノズル採取装置31の後段に配設された蚕回収容器34を有している。この昆虫外皮切開装置では、体液を回収し終わった蚕11に印加している吸引力を解除することによって、蚕11を蚕回収容器34に落下させて回収する。

【0049】
このように構成された昆虫外皮切開装置では、赤外線レーザー光を使用することによって、外皮に覆われた内部組織や器官を損傷することなく、外皮のみを切開及び/又は穿孔することができる。このため、この昆虫外皮切開装置によれば、蚕11の外皮を切開して体液を採取する際、採取した体液中に外皮や体内組織、中腸液等が混入することなく、体液のみを高純度に採取することができる。同時に、この昆虫外皮切開装置によれば、蚕11の膨圧を低下させること無く外皮のみを切開することができるため、蚕11の自噴量を高く維持することができる。したがって、この昆虫外皮切開装置を用いれば、体液中の有用物質を変質させることなく、優れた精製効率で当該有用物質を得ることができる。

【0050】
特に、この昆虫外皮切開装置では、蚕11を鉛直下方向に吊るした状態で、体液を略完全に採取するために体液を損失することなく、体液の採取効率に優れたものとなる。また、体液の採取に際して、載置台洗浄装置及び載置台乾燥装置等を必要としないため、装置全体の構成を簡略化することができ、コストを低く抑えることができる。

【0051】
ところで、上述した各例では、レーザー照射装置6を制御信号で制御することによって、赤外線レーザー光の照射位置を調節したが、本発明はこのような構成に限定されるものではない。すなわち、本発明は、載置台3を移動自在に駆動する駆動手段を配設し、コントローラー12からの制御信号を当該駆動手段に入力して載置台3を移動させ、赤外線レーザー光を所定の位置に照射させるような構成であっても良い。すなわち、この場合、赤外線レーザー光は、その出力及び照射タイミングのみが制御される。そして、載置台3自体が移動することによって、処置対象の蚕11における所定の位置に赤外線レーザー光が照射される。この場合でも、赤外線レーザー光は、蚕11の外皮のみを正確に切開及び/又は穿孔することができる。

【0052】

【実施例】以下、本発明に係る昆虫外皮切開装置及び昆虫外皮切開方法を適用した実施例について説明するが、本発明は以下に記載する実施例に限定されるものではない。
[実施例1]実施例1では、蚕の外皮を切開して体液を採取する実験を行なった。この実験に使用された蚕は、5齢4日である雄の蚕及び雌の蚕と5齢5日である雄の蚕及び雌の蚕とを、それぞれ10頭ずつ使用した。これらの蚕はともに「しんあさぎり」である。

【0053】
まず、これら蚕に対して赤外線レーザー光を、出力を5W、照射時間を0.5秒として照射し、切開処置を施した。このとき、赤外線レーザー光の照射相対速度を2.5cm/secとした。その結果、切開長11mm、切開幅0.7mmで切開することができた。

【0054】
そして、切開処置から1分後、蚕から流出した体液の重さを測定し、流出率として検査した。結果を表1に示す。なお、ここで、流出率は、100×(体液流出量[g])/(処置前の蚕全体重[g])として算出した。

【0055】

【表1】
JP0003336386B2_000002t.gif【0056】この表1から判るように、5齢4日の蚕及び5齢5日の蚕ともに高い流出率を示している。このことから、赤外線レーザー光によって蚕を切開することによって、体液の採取を効率よく行なえることが判る。

【0057】
これに対して、高圧液体を用いて処置を行った場合には、蚕の体の組織を貫通してしまうため、内部組織や器官が体液中に混入してしまい、高純度な体液を得ることはできなかった。また、超音波を発する刃物を用いて処置を行った場合には、超音波(2万Hz)による刃先の振動によって体液が霧状に出てきてしまうため、体液の回収が困難であると同時に、皮膚のみを切開することが困難であり内部組織や器官が体液中に混入してしまった。したがって、超音波を発する刃物を用いた場合には、蚕体液を高純度で回収するために複雑な装置を必要とした。さらに、回転刃を接触させて処置を行った場合には、蚕の外皮のみを切開することは困難であり、内部組織や器官が体液中に混入してしまった。したがって、回転刃を用いた場合には、蚕の外皮のみを切開するための非常に高精度な制御を必要とした。

【0058】
このように、赤外線レーザー光を用いて処置を行う場合には、上述したいずれの手法と比較しても、優れた回収効率で高純度な体液を採取することができることが明らかになった。

【0059】
[実施例2]実施例2では、蚕の外皮を穿孔して体液を採取する実験を行なった。この実験に使用された蚕は、5齢5日の「雄のしんあさぎり」及び「雌のしんあさぎり」である。この実施例2では、これら蚕を11頭ずつ使用した。

【0060】
まず、これら蚕に対して、赤外線レーザー出力を5W、7W、9W及び10Wとし、それぞれの出力で照射時間を0.1秒、0.2秒及び0.3秒にして穿孔処置を施した。なお、穿孔場所としては、星状紋中央の一点とした。

【0061】
そして、穿孔処置後、蚕から流出した体液の重さを測定し、流出率として検査した。結果を表2に示す。なお、ここで、流出率は、100×(体液流出量[g])/(処置前の蚕全体重[g])として算出した。

【0062】

【表2】
JP0003336386B2_000003t.gif【0063】この表2から判るように、如何なる条件においても高い流出率を示している。このことから、赤外線レーザー光によって蚕を穿孔することによって、体液の採取を効率よく行なえることが判る。但し、赤外線レーザー光を10Wで0.3秒といった強い条件で照射した場合には、体液の流出量が低下しており、また、赤外線レーザー光の出力が同じであっても0.3秒といった比較的長時間にわたって照射した場合にも、体液の流出量が低下している。このことから、赤外線レーザー光の出力及び照射時間を適宜制御して、最も効率よく体液を採取できる条件で穿孔処置を施すことが好ましい。

【0064】
一方、これと比較して、直径0.7mmのミニドリルを7000rpmで回転させて蚕の星状紋を穿孔したところ、流出率は6頭の平均で0.73g、12.7%であった。しかしながら、穿孔に要する時間は1秒以上必要であり、また、2~3頭の蚕を処置した後にミニドリルの溝に詰まった組織等を除去する必要もあり、さらには、ミニドリルが内部組織や器官に達することも頻繁に発生した。このため、ミニドリルを用いて機械的に穿孔する手法では、処置効率が著しく低下し、且つ、純粋な体液のみを採取することも困難であった。

【0065】
[実施例3]実施例3では、蚕に穿孔処置を施した後に蚕の核多角体病ウィルス(以下、NPV)を接種し、NPVに起因する発病率を検討する実験を行なった。この実験に使用された蚕は、5齢起蚕の「BCSL1×BNL1」と蛹の「しんあさぎり」である。また、接種したNPVは、病蚕体液の遠心上清液で-logLD50値が5.50である。この実験では、赤外線レーザー光の出力を3Wとし、照射時間を0.1秒とした。また、NPVの接種に際しては、NPV液を含浸させた脱脂綿により塗布する方式と、NPV液中に3分間浸せきさせる方式を採用した。結果を表3に示す。

【0066】

【表3】
JP0003336386B2_000004t.gif【0067】この表3に示すように、赤外線レーザー光の照射回数が1回又は2回に拘わらず、各品種ともに高い発病率を示している。特に、蛹の場合には、発病率が高くなっている。

【0068】

【発明の効果】以上、詳細に説明したように、本発明に係る昆虫外皮切開装置は、赤外線照射手段により、赤外線レーザー光を用いて昆虫の外皮を切開及び/又は穿孔している。このため、本発明によれば、処置対象の昆虫を必要以上に損傷することがなく、昆虫の外皮のみを正確に切開及び/又は穿孔することができる。

【0069】
また、本発明に係る昆虫外皮切開方法では、赤外線レーザー光を昆虫外皮に照射することによって、昆虫外皮を切開及び/又は穿孔している。このため、本発明によれば、処置対象の昆虫を必要以上に損傷することがなく、迅速に昆虫の外皮のみを正確に切開及び/又は穿孔することができる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2