TOP > 国内特許検索 > ウイルス等の接種液の被接種体への接種方法 > 明細書

明細書 :ウイルス等の接種液の被接種体への接種方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3333872号 (P3333872)
公開番号 特開平11-169164 (P1999-169164A)
登録日 平成14年8月2日(2002.8.2)
発行日 平成14年10月15日(2002.10.15)
公開日 平成11年6月29日(1999.6.29)
発明の名称または考案の名称 ウイルス等の接種液の被接種体への接種方法
国際特許分類 C12N 15/09      
A01K 67/04      
C12M  1/00      
C12M  1/26      
FI A01K 67/04 Z
C12M 1/00
C12M 1/26
C12N 15/00
請求項の数または発明の数 4
全頁数 6
出願番号 特願平09-342725 (P1997-342725)
出願日 平成9年12月12日(1997.12.12)
審査請求日 平成9年12月12日(1997.12.12)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】501167644
【氏名又は名称】独立行政法人農業生物資源研究所
発明者または考案者 【氏名】古田 要二
【氏名】早坂 昭二
個別代理人の代理人 【識別番号】100091096、【弁理士】、【氏名又は名称】平木 祐輔 (外1名)
審査官 【審査官】鵜飼 健
参考文献・文献 特開 平9-51742(JP,A)
特開 昭62-213849(JP,A)
実開 昭63-32636(JP,U)
調査した分野 C12N 15/00 - 15/90
C12M 1/00 - 3/10
特許請求の範囲 【請求項1】
ウイルス等の接種液を被接種体に接種する接種方法であって、前記接種液を無害の染色剤で着色し、接種装置の注射針等で前記被接種体に接種することを特徴とする接種液の被接種体への接種方法。

【請求項2】
前記染色剤は、トリパンブルー等の生体染色剤から選ばれたものであることを特徴とする請求項1に記載の接種液の被接種体への接種方法。

【請求項3】
前記被接種体は、蚕等の昆虫であり、該昆虫はその体液中で前記ウイルスを増殖させてインターフェロン等の有用物質を生産できるものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の接種液の被接種体への接種方法。

【請求項4】
前記接種装置は、前記注射針を有する注射器に、チューブを介して空気孔が穿設されているスポイトを接続したものであり、所定量の接種液を収容する前記注射器の注射針を被接種体に刺した後、前記スポイトの空気孔を閉鎖して一瞬に押し潰し、該スポイトによって発生される空気圧を前記チューブを介して前記注射器に与えて前記注射器内の接種液を所定量だけ前記被接種体に接種し、接種後、前記空気孔を開放して押し潰しを開放することを特徴とする請求項1に記載の被接種体への接種方法。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【0001】

【発明の属する技術分野】本発明は、例えば蚕等の昆虫に組替えウイルス等を接種する接種方法に係り、特にスポイトによる空気圧を利用した接種方法に関する。

【0002】

【従来の技術】近年、遺伝子組み換えウイルスを蚕等の昆虫に感染させ、該蚕の体液中でそのウイルスを増殖させて例えばネコのウイルス病治療に使うインターフェロン等の有用物質を生産する研究が行なわれている。該ウイルスを前記蚕等の昆虫に感染させる方法として、前記蚕を1頭毎に手にとって接種する方法が取られており、具体的にはガラスキャピラリーに接種液を充填し口で吹いて液を送り込む方法、注射器を手で持って行う方法、注射器を微量注射装置に設置して行う方法等がある。

【0003】
また、特開平9-51742号公報に示されるように、小型ポンプを利用して接種液を送りながら連続的に接種する方法がある。これは、例えば図5に示すように、注射針1とハンドスイッチ2とを備えた注射器3に、圧送体4を有したベリスタリックポンプ5に連結されているテフロンチューブ6を接続すると共に、該テフロンチューブ6の先端部7を薬液容器8に挿入させたものである。そして、前記ハンドスイッチ2を押すと前記ベリスタリックポンプ5の前記圧送体4が駆動し、前記薬液容器8内部の薬液が前記テフロンチューブ6を介して送り出され、前記注射針1から飼育容器9内部の蚕10に対して接種液が連続的に接種されるようになっている。

【0004】
更に、図6に示すように、フットスイッチ11の足踏み操作により、空気圧発生源12からの空気圧を調整する微量圧力調整装置13が作動し、チューブ14を介して連結されている注射器15の注射針16から接種液が連続的に接種されるものもある。

【0005】

【発明が解決しようとする課題】ところで、上述したような各接種方法によって前記インターフェロン等の有用物質を生産するためには、大量の蚕等の昆虫に遺伝子組換えウイルス等を接種し増殖させる必要がある。ところが、前記のガラスキャピラリーに接種液を充填し口で吹いて液を送り込む方法、注射器を手で持って行う方法、注射器を微量注射装置に設置して行う方法等は何れも蚕を1頭毎に手にとって接種する必要があるため、大量の蚕への接種処理に適さず、極めて効率が悪いものであった。

【0006】
また、前記図5に示した小型ポンプである前記ベリスタリックポンプ5を用いたものでは、該ベリスタリックポンプ5が前記注射器3毎に必要となるため、接種装置自体が大がかりなものとなってしまうばかりか、持ち運びに不便であるといった不具合がある。更に、前記ベリスタリックポンプ5を用いたものでは、接種液が連続的に送られるため、接種液に無駄が生じる等の不具合もある。

【0007】
更にまた、前記図6に示したフットスイッチ11の足踏み操作によるものでは、該フットスイッチ11に加えて前記空気圧発生源12と前記微量圧力調整装置13とが必要となるため、前記ベリスタリックポンプ5を用いたものと同様に、接種装置自体が大がかりなものとなってしまうばかりか、持ち運びに不便であり、しかも接種液が連続的に送られるため、接種液に無駄が生じる等の不具合がある。

【0008】
また、これら図5及び図6の接種装置では、装置自体が大がかりなものとなることで、接種後の前記接種装置の消毒が完全に行なわれないことも予想され、このような場合には接種液が人体に付着するおそれがあり、安全面での管理が不十分になるおそれもある。更にまた、前記何れの接種方法においても、接種液はほぼ透明であるため、接種済みと未接種との識別を容易に行なうことが困難であるといった不具合もある。

【0009】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は、大量の蚕等の昆虫への接種を効率良く行なうことができ、しかも装置の簡素化が図れ、更には安全面での管理を充分に行なうことができるとともに、接種済みと未接種との識別を容易に行なうことができる接種装置及びその接種方法を提供することである。

【0010】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成すべく、本発明に係る接種装置は、注射針を有する注射器に、チューブを介しスポイトを接続して成り、該スポイトに空気孔を穿設することを特徴としている。上述の如く構成された本発明に係る接種装置では、前記スポイト側からの空気圧が前記チューブを介し前記注射器に与えられることで、前記注射針から所定量の接種液が排出されるため、装置を構成する部品点数が少なくしかもそれぞれの部品を小さいものとすることができるばかりか、接種後の前記装置の消毒を完全に行なうことが容易となる。

【0011】
また、前記注射針にストッパーを設けることで、被接種体に対する接種深度が一律とされ、均一な接種が可能となると共に、該被接種体を手にとることなく接種が行なえる。更に、本発明に係る接種方法は、所定量の接種液を収容する前記注射器の注射針を被接種体に刺した後、前記スポイトを一瞬押し潰し、該スポイトによって発生される空気圧を前記チューブを介して前記注射器に与えることで前記被接種体への接種を行なうと共に、前記スポイトを押し潰すときは、該スポイトの空気孔を閉鎖して押し潰し、接種後は、前記空気孔を開放して押し潰しを解除することを特徴としている。

【0012】
上述の如く構成された本発明に係る接種方法では、前記注射器の注射針を前記被接種体に刺した後、前記スポイトの空気孔を指等で塞ぐようにして一瞬押し潰すと、該スポイトによって発生される空気圧が前記チューブを介して前記注射器に与えられ、前記注射針を介して前記注射器内の接種液が所定量だけ前記被接種体に接種され、その後、直ちに指等を前記空気孔から開放して押し潰しを解除することで接種が停止するため、前記被接種体を手にとることなく接種が行なえる。

【0013】
また、前記接種液を前記被接種体に対して無害の例えば生体染色剤によって着色することで、前記被接種体への接種後、前記注射針を前記被接種体から抜き出すとき、該被接種体の体表に前記染色剤によって着色された前記接種液が付着するため、接種済みと未接種との識別を行なうことができる。

【0014】

【発明の実施の形態】以下、図面により本発明の実施の形態について説明する。図1は、本発明の接種装置に係る実施の形態の概念を示す斜視図である。図1に示すスポイト20は、例えばゴム等の弾性体によって構成されるものであり、該スポイト20に設けられている空気孔21を塞いだ状態で該スポイト20の周囲を指で押し潰すことで空気圧が発生し、該スポイト20の周囲から指を離すことで、前記空気孔21から該スポイト20内部に空気が補充され該スポイト20が元の状態に復帰するようになっている。

【0015】
該スポイト20の端部20aと注射器22の後端部22bとの間には、シリコンチューブ23が取り付けられており、前記スポイト20側で発生した空気圧が前記シリコンチューブ23を通して前記注射器22側に送られるようになっている。ここで、前記注射器22の後端部22bに対して前記シリコンチューブ23の端部が着脱自在とされており、該シリコンチューブ23の端部を前記注射器22の後端部22bから外すことで、該注射器22内部に接種液を補充することができるようになっている。

【0016】
前記注射器22内部には、予め蚕等の昆虫に無害な染色剤(トリパンブルー等)で着色された接種液が充填されている。このように、前記接種液を着色することで、接種後に前記蚕等の昆虫の体表に前記着色された接種液が付着するため、接種済みと未接種との識別を容易に行なうことができるようになっている。前記注射器22の先端部分22aには、ストッパー24を有した注射針25が取り付けられている。該ストッパー24により、各蚕等の昆虫に対する針の貫通が避けられ接種深度が一律となるため、均一な接種が可能となると共に、各蚕等の昆虫を手に取ることなく接種が行なえる。

【0017】
図2は、図1の接種装置の具体的構成を示す斜視図である。尚、以下に説明する図において図1と共通する部分には同一符号を付し重複する説明を省略する。すなわち、図2の前記注射器22の後端部22bには、該注射器22内部を密閉状態に封印するシリコン栓22cが取り付けられているとともに、シリコン栓22cの図示しない挿通孔には、前記該シリコンチューブ23の端部が圧入されている。よって、シリコン栓22cを前記注射器22の後端部22bから取り外すことで、該注射器22内部への前記接種液の補充が容易となっている。また、該注射器22の周囲には、目盛22eが刻設されており、該注射器22内部の前記接種液の残量が一目で確認することができるようにもなっている。

【0018】
ここで、前記蚕等の昆虫に対する接種液の接種量は、前記注射針25及び前記シリコンチューブ23の太さや前記スポイト20の大きさ、更には該スポイト20の空気孔21を塞いだ状態での該スポイト20の押し潰している時間等によって多少の差異が生じるが、所定の接種量が得られるようにこれらは適宜選定されている。ちなみに、これらスポイト20や注射器22は、市販のものを利用することができるため、極めて安価であり、しかもその構成も極めて簡単なものとすることができる。

【0019】
続いて、以上のような構成の接種装置による接種方法について説明する。

【0020】
まず、前記シリコンチューブ23の端部を前記注射器22の後端部22bから取り外し、該注射器22内部に例えば上記図5に示した前記蚕10に無害な染色剤で着色された接種液を充填した後、前記注射器22を一方の手で持ち、前記スポイト20を他方の手で持つ。

【0021】
この状態で、上記図5に示した飼育容器9内の前記蚕10の腹部背面に前記注射器22の注射針25を突き刺す。このとき、該注射針25には前記ストッパー24が設けられているため、該蚕10に対し前記注射針25の貫通が避けられ、接種深度が規制される。そして、前記スポイト20に設けられている空気孔21を塞いだ状態で該スポイト20の周囲を指で押し潰すことで空気圧が発生し、前記スポイト20側で発生した空気圧が前記シリコンチューブ23を通して前記注射器22側に送られると、前記注射器22内部の染色剤(トリパンブルー等)で着色された接種液が前記注射針25から前記蚕10に送り出される。

【0022】
このときの接種液の接種量は、上述したように、前記注射針25及び前記シリコンチューブ23の太さや前記スポイト20の大きさ、更には該スポイト20の空気孔21を塞いだ状態での該スポイト20の押し潰している時間等によって多少の差異が生じるものの、所定の接種量が得られるように適宜選定されている。また、このとき前記スポイト20の周囲から素早く指を離すことで、前記空気孔21から該スポイト20内部に空気が補充され該スポイト20が元の状態に復帰することで、注射針25からの接種液の排出が停止されるとともに、前記スポイト20内部への空気の補充による該スポイト20の内圧により前記注射器22側からの接種液の逆流が阻止される。

【0023】
このような接種操作を複数の前記蚕10に対して連続的に繰り返すことで、多量の蚕10に対する接種が可能となる。また、それぞれの蚕10に対する接種後、前記注射針25を前記蚕10から抜き出すとき、各蚕10の体表に前記着色された接種液が付着するため、接種済みと未接種との識別が容易となり、未接種の前記蚕10に対しての接種を確実に行なうことができる。ここで、図3の前記接種装置による接種液の排出量を示す図と、図4の前記接種装置による接種時間及び感染率を示す図とを用いて、前記接種装置の接種液の排出量と接種装置による接種時間及び感染率との関係について説明する。

【0024】
まず、図3においては、前記スポイト20を2mlと5mlとし、前記注射針25を0.2mmと0.25mmとしたときの空気中と蚕体内とにおける接種液の排出量を比較したものであり、比較に際してそれぞれの排出量は100回当たりとしている。従って、図2から蚕体内では接種液の排出抵抗によって空気中より排出量が若干低下するものの、約4.6~6.9μl程度の接種液を接種することができることが解る。

【0025】
また、図4においては、供試ウイルスを病蚕体液遠心上清(10-2)と培養液(10-1)とし、供試齢期を5齢(但し、培養液にあっては4齢と5齢)とするとともに、前記スポイト20を2mlと5mlとし、前記注射針25を0.2mmと0.25mmとしたときの接種時間と感染率を示したものである。ここで、供試頭数は100頭とし、供試蚕品種は”はばたき”としている。更に、接種時間は、供試頭数である100頭全体の合計時間であり、1頭に対しては1秒強の接種時間となっている。

【0026】
同図から解る通り、供試ウイルスが病蚕体液遠心上清(10-2)である場合、前記スポイト20を2mlと5mlとしたとき、前記注射針25を0.25mmとすることで、100%の感染率が得られた。但し、前記スポイト20を2mlとし、前記注射針25を0.20mmとした場合でも、98%の感染率が得られることが解る。

【0027】
また、供試ウイルスが培養液(10-1)である場合、供試齢期が4齢で、前記スポイト20を2mlとしたとき、前記注射針25を0.20mmとすることで、100%の感染率が得られた。但し、前記スポイト20を2mlとし、前記注射針25を0.25mmとした場合でも、97%の感染率が得られることが解る。

【0028】
よって、本実施の形態の前記接種装置を用いることで、前記蚕10に対し1頭当たり約4.6~6.9μl程度の接種液を接種することができ、接種された前記蚕10を100%感染させることも可能となる。ちなみに、本実施の形態の前記接種装置を用いた場合の接種時間は少々の慣れに伴い、1万頭を一人で4時間以内で行なうことも可能である。また、例えば5mlの前記注射器22を用いると、該注射器22が1本当たり1回で600~700頭の前記蚕10に対する接種が可能である。

【0029】
このように、本実施の形態では、前記スポイト20側からの空気圧が前記シリコンチューブ23を介し前記注射器22に与えられることで、前記注射針25から所定量の接種液が排出されるようにしたので、装置を構成する部品点数が少なくしかもそれぞれの部品を小さいものとすることができるばかりか、装置を構成する部品点数が少ないため、接種後の前記装置の消毒を完全に行なうことが容易となる。また、前記注射針25にストッパー24を設けることで、被接種体である前記蚕10に対する接種深度が一律とされ、均一な接種が可能となると共に、該蚕10を手に取ることなく接種が行なえる。

【0030】
更に、前記注射器22の注射針25を前記蚕10に刺した後、前記スポイト20を一瞬押し潰すと、該スポイト20によって発生される空気圧が前記シリコンチューブ23を介して前記注射器22に与えられ、前記注射針25を介して前記注射器22内の接種液が所定量だけ前記蚕10に接種されるようにしたので、前記蚕10を手にとることなく接種が行なえる。また、前記接種液を前記蚕10に対して無害な染色剤によって着色することで、前記蚕10への接種後の該蚕10の体表への前記接種液の付着により、接種済みと未接種との識別を容易に行なうことができる。なお、本実施の形態における接種対象を蚕10とした場合について説明したが、この例に限らず蚕10以外の昆虫に対しても接種可能である。

【0031】

【発明の効果】以上の説明から理解されるように、本発明に係る接種装置によれば、該装置を構成する部品点数が少なくしかもそれぞれの部品を小さいものとすることができるばかりか、接種後の該装置の消毒を完全に行なうことが容易となるとともに、前記注射針にストッパーを設けることで、被接種体に対し注射針の貫通が避けられて接種深度が一律とされ、均一な接種が可能となるので、装置の簡素化が図れ、更には安全面での管理を充分に行なうことができるばかりか、前記被接種体を手にとることなく接種が行なえるので、昆虫への接種を効率良く行なうことができる。

【0032】
また、本発明に係る接種方法によれば、前記被接種体を手にとることなく接種が行なえるとともに、前記接種液を前記被接種体に対し無害な染色剤によって着色したので、大量の蚕等の昆虫への接種を効率良く行なうことができるばかりか、接種済みと未接種との識別を容易に行なうことができる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図4】
2
【図3】
3
【図5】
4
【図6】
5