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明細書 :凍結乾燥方法、装置および凍結乾燥物

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3005657号 (P3005657)
公開番号 特開平11-151080 (P1999-151080A)
登録日 平成11年11月26日(1999.11.26)
発行日 平成12年1月31日(2000.1.31)
公開日 平成11年6月8日(1999.6.8)
発明の名称または考案の名称 凍結乾燥方法、装置および凍結乾燥物
国際特許分類 A23L  3/37      
A23L  3/44      
F25B 19/00      
FI A23L 3/37 A
A23L 3/44
F25B 19/00
請求項の数または発明の数 8
全頁数 9
出願番号 特願平09-318744 (P1997-318744)
出願日 平成9年11月19日(1997.11.19)
審査請求日 平成9年11月25日(1997.11.25)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】597162592
【氏名又は名称】堀金 彰
【識別番号】591275126
【氏名又は名称】農林水産省農業研究センター所長
発明者または考案者 【氏名】堀金 彰
個別代理人の代理人 【識別番号】100067839、【弁理士】、【氏名又は名称】柳原 成
審査官 【審査官】六笠 紀子
参考文献・文献 特開 昭53-139749(JP,A)
特開 平7-250663(JP,A)
特開 平9-98727(JP,A)
調査した分野 A23L 3/36 - 3/54
A23L 1/00 - 1/035
A23B 4/00 - 5/22
F25B 19/00
特許請求の範囲 【請求項1】
被処理物をドライアイスと混合し、発生する炭酸ガスで気相を置換するとともに実質的に瞬時に凍結させ、凍結物を真空乾燥することを特徴とする凍結乾燥方法。

【請求項2】
被処理物とドライアイスとを混合、破砕し、発生する炭酸ガスで気相を置換するとともに、被処理物をドライアイスとの混合物として実質的に瞬時に凍結させ、凍結物を真空乾燥することを特徴とする凍結乾燥方法。

【請求項3】
請求項1記載の方法により得られる凍結乾燥物。

【請求項4】
請求項記載の方法により得られる多孔質の凍結乾燥物。

【請求項5】
被処理物とドライアイスとを混合、破砕し、発生する炭酸ガスで気相を置換するとともに、被処理物を微細なドライアイスとの混合物として実質的に瞬時に凍結させる混合破砕装置と、
混合破砕装置に被処理物およびドライアイスを供給する原料供給手段と、
混合破砕装置から凍結物を取出す凍結物取出手段とを有する凍結装置、ならびにこの凍結装置から得られる凍結物を真空乾燥させる真空乾燥装置を含むことを特徴とする凍結装置。

【請求項6】
混合破砕装置がバッフルを有するシリンダと、
シリンダ内で回転して被処理物およびドライアイスを混合破砕して送り出すスクリューと、
スクリューの先端部に設けられて回転するカッタと、
カッタに対向して設けられた凍結物通路を有するダイとを有する請求項5記載の凍結乾燥装置。

【請求項7】
混合破砕装置がケーシングと、
ケーシング内に設けられたダイと、
ダイとの間に被処理物およびドライアイスを挟んで圧縮して混合破砕するパンチとを有する請求項5記載の凍結乾燥装置。

【請求項8】
混合破砕装置がケーシングと、
ケーシング内に設けられた凍結物通路を有するダイと、
ダイとの間に被処理物およびドライアイスを挟んで圧縮して混合破砕し、凍結物通路を通して送り出すパンチとを有する請求項5記載の凍結乾燥装置。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【01】

【発明の属する技術分野】発明は生物体、有機物、食品、薬物、生物試料、飼料、工業原料等の変質しやすい被処理物の凍結乾燥方法、この方法から得られる凍結乾燥物、ならびに凍結乾燥装置に関するものである。

【02】

【従来の技術】動植物、菌体等の生物体、有機物、食品、薬物、生物試料、工業原料等の有機物を含む変質しやすい物を保存、運搬、使用するために、これらを凍結し、または凍結乾燥することが行われている。生物試料の場合は分析する際に、生物体を凍結、乾燥、粉砕、均質化等の工程で試料調製が行われる。

【03】
これらの凍結は一般的には冷凍庫により行われるが、凍結温度に達するまでに長時間を要し、その間酸素あるいは酵素が存在するため変質が起こり、また凍結後も酸素が介在するため、保存性は必ずしも良好とはいえない。凍結乾燥の場合は、凍結に先立って破砕、均質化等を行う場合が多いが、破砕時に熱が発生して高温になる。この発生した熱により、あるいはさらに系内に存在する酸素により被処理物が変質するため、処理前の品質、性状等を保持したまま破砕、均質化、凍結等を行うことができない。

【04】
このような点を防止するために破砕、均質化装置を冷却し、あるいはさらに酸素を遮断することも行われるが、大がかりな装置と複雑な装置を必要とするにもかかわらず、冷却または酸素除去は完ぺきではなく、その間に被処理物が変質するのは避けられない。

【05】
このことは例えば乾燥野菜等の乾燥食品、インスタント食品等において広く知られているように、食品等の味、色、成分が変質、劣化することを示しており、商品として価値を低下させることになり、分析用の試料の場合には分析結果に影響を及ぼす。食品の場合、特に野菜などは、加熱処理によるブランチングを行って凍結させることも行われるが、ブランチング処理は食品内の酵素を失活させて凍結を容易にするが、被処理物の変質を伴い易い。

【06】

【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、簡単な装置と操作により酸素および熱等による変質を受けることなく、処理前の品質、性状等を保持したまま、被処理を凍結乾燥する方法、そのための装置、ならびにそれらから得られる凍乾燥物を提供することである。本発明の他の課題は簡単な装置と操作により酸素および熱等による変質を受けることなく、処理前の品質、性状等を保持したまま、破砕、均質化した状態で被処理物を凍結乾燥する方法、そのための装置、ならびにそれらから得られる多孔質の凍結乾燥物を提供することである。

【07】

【課題を解決するための手段】本発明は次の凍結乾燥方法、装置および凍結乾燥物である。
(1) 被処理物をドライアイスと混合し、発生する炭酸ガスで気相を置換するとともに実質的に瞬時に凍結させ、凍結物を真空乾燥することを特徴とする凍結乾燥方法。
(2) 被処理物とドライアイスとを混合、破砕し、発生する炭酸ガスで気相を置換するとともに、被処理物をドライアイスとの混合物として実質的に瞬時に凍結させ、凍結物を真空乾燥することを特徴とする凍結乾燥方法。
(3) 上記(1)記載の方法により得られる凍結乾燥物。
(4) 上記()記載の方法により得られる多孔質の凍結乾燥物。
(5) 被処理物とドライアイスとを混合、破砕し、発生する炭酸ガスで気相を置換するとともに、被処理物を微細なドライアイスとの混合物として実質的に瞬時に凍結させる混合破砕装置と、混合破砕装置に被処理物およびドライアイスを供給する原料供給手段と、混合破砕装置から凍結物を取出す凍結物取出手段とを有する凍結装置、ならびにこの凍結装置から得られる凍結物を真空乾燥させる真空乾燥装置を含むことを特徴とする凍結装置。
(6) 混合破砕装置がバッフルを有するシリンダと、シリンダ内で回転して被処理物およびドライアイスを混合破砕して送り出すスクリューと、スクリューの先端部に設けられて回転するカッタと、カッタに対向して設けられた凍結物通路を有するダイとを有する上記(5)記載の凍結乾燥装置。
(7) 混合破砕装置がケーシングと、ケーシング内に設けられたダイと、ダイとの間に被処理物およびドライアイスを挟んで圧縮して混合破砕するパンチとを有する上記(5)記載の凍結乾燥装置。
(8) 混合破砕装置がケーシングと、ケーシング内に設けられた凍結物通路を有するダイと、ダイとの間に被処理物およびドライアイスを挟んで圧縮して混合破砕し、凍結物通路を通して送り出すパンチとを有する上記(5)記載の凍結乾燥装置。

【08】
発明で凍結乾燥の対象とする被処理物は、生物体、有機物、食品、薬物、生物試料、飼料、工業原料などの変質しやすい物であり、特に酸素、熱等により変質しやすい還元性の官能基等を有する有機物を含む物があげられる。これらの被処理物は塊状、液状、ゼリー状、スラリー状など、任意の形態のものが含まれ、破砕状物、粉状物等であってもよい。そしてこれらは含水状態のものが被処理物として典型的であるが、乾燥物であっても、水または含水物と混合して均質化する場合などには適用可能である。

【09】
前記生物体、有機物、食品、薬物、生物試料、飼料、工業用原料などは並列的な概念ではなく、単に被処理物となり得るものを羅列したものにすぎない。生物体としては動植物の個体の全体または部分(組織)などがあげられる。有機物としてはこれらの生物体のほか生物体から得られる有機性物質があげられる。食品、飼料としては有機物が主たるものであるが、無機物が含まれていてもよい。薬物、工業原料などは生物体、有機物等を含むものが一般的であるが、無機物であっても変質しやすいものは本発明の対象となり得る。生物試料は生物体からなる分析用の試料が一般的であるが、他の試料であってもよい。

【10】
ドライアイスは固体の二酸化炭素を押し固めたものであり、大気圧下では-78.5℃で昇華して炭酸ガスとなる。このようなドライアイスとしては、一般に冷却剤等として市販されているものが使用できる。このドライアイスは混合破砕装置により圧力を加えると容易に破砕できるので、任意の形状、大きさのものを用いることができるが、例えば粒径1~5cm程度のものが好ましい。ドライアイスの使用量は被処理物の種類、含水率、性状等により変わるが、被処理物1重量部に対して0.01~100重量部、好ましくは0.1~10重量部程度とすることができる。

【11】
本発明の凍結乾燥方法では、被処理物をドライアイスと混合し、発生する炭酸ガスで気相を置換るとともに実質的に瞬時に凍結させるが、被処理物とドライアイスとを混合破砕装置において混合破砕し、このとき発生する炭酸ガスにより気相を置換して酸素を追出すと同時に、被処理物を凍結させて凍結物を生成するのが好ましい。この場合、ドライアイスは混合破砕装置により容易に破砕されて被処理物と微細な粒子で混合され、この時吸熱により発生する炭酸ガスが空気と置換して不活性雰囲気を形成するとともに、被処理物を実質的瞬時に凍結させる。

【12】
被処理物が塊状の場合、被処理物は凍結の前後または凍結とともに破砕されるが、凍結前に破砕される場合でも、破砕後瞬時に凍結する。被処理物が液状、ゼリー状、スラリー状等の場合は、表面に露出した部分、あるいはドライアイスと接触している部分から凍結が始まり、その後凍結部分が破砕されて液状部分が露出し、ドライアイスと接触すると、その部分も凍結することになる。これらの動作は比較的短時間で生じるので、全体として実質的に瞬時に凍結が起こる。ここで被処理物の破砕は粉砕であってもよく、また被処理物の大部分が破砕されるが、残留する部分により繋がった状態であってもよい。

【13】
このように被処理物とドライアイスの混合、破砕により、短時間で酸素が炭酸ガスに置換されて不活性雰囲気になるとともに凍結により酵素が失活し、凍結が瞬時に起こるため、被処理物は変質を受けることなく、凍結した状態で混合、破砕され、均質化する。これにより被処理物の成分、味、色等が処理前のままで凍結した凍結物が得られる。凍結物の粒度は混合、破砕の条件を選ぶことにより、任意に設定することができる。混合破砕により発生する熱はドライアイスにより冷却されるため変質の原因となることはなく、むしろこの熱により炭酸ガスが発生して酸素が追い出されるので好ましい。

【14】
こうして得られる凍結物は、そのままの状態で保存、運搬することができる。粗剛な食品などを本発明で処理すると繊維質が破砕され、柔らかで食感のすぐれた食品あるいは食品原料が得られる。凍結物は界面に炭酸ガスが濃縮された状態で存在するため、不活性な状態を維持する。

【15】
このように凍結物は凍結状態で保存、運搬したのち、あるいは凍結後直ちに凍結状態で真空乾燥することにより、凍結乾燥物を得ることができ、この状態保存、運搬、使用することができる。凍結乾燥物は上記により得られる凍結物をそのまま真空乾燥装置に導入して真空状態に置くことにより、凍結物中に含まれるドライアイスおよび水分が昇華して乾燥が行われる。真空乾燥の真空度は10~500×10-3MBar、好ましくは10~50×10-3MBarとすることができる。このときも不活性雰囲気で液相を経由することなく乾燥が行われるので、変質のおそれはない。また先にドライアイスが昇華して多孔質になった状態で氷が昇華するので、真空乾燥の効率が高く、短時間で乾燥を行うことができる。

【16】
こうして得られる凍結乾燥物は凍結物と同様に、処理前の成分、色、味等を維持した状態で得られ、ドライアイスと混合粉砕したものは破砕物の集合体として得られ、必要により粉砕して製品とされる。この凍結乾燥物は酸素と接触しない状態で得られ、そのまま不活性な状態で保存、運搬、使用できるが、乾燥物は吸水させない限り、空気と接触させた状態で保存、運搬、使用しても変質は少ない。

【17】
凍結乾燥物として利用できるものは、生物体、有機物など任意のものがあげられ、具体的には野菜、果物、肉、乳製品等の食品、生物体から得られる生薬等の薬物、生物体、組織等を均質化した分析用の生物試料、酵母、細菌のイノキュラム等の菌体、パン生地、デンプン、タンパク等の工業用原料などがあげられる。菌体は生きたまま不活性な状態で得られ、酵母、パン生地などは水を加えて培養条件に戻すことにより増殖が行われる。このため弱毒ウイルス等を植物体に感染させた凍結乾燥物はワクチンとしての使用が可能になる。

【18】
上記のような凍結を行うための凍結装置としては、混合破砕装置に原料供給手段と凍結物取出手段を備えた装置が使用できる。混合破砕装置は被処理物とドライアイスを混合、破砕できるものであればよい。その破砕強度は被処理物によって変わるので、破砕強度に応じてクラッシャー、ミル、エクストルーダ、ミキサー、プレスなどと呼ばれているものが広く使用でき、その混合、破砕方式も回転刃式、スクリュー式、ピストン(加圧)式など任意のものが使用できる。

【19】
好ましい混合破砕装置としては、一般に挽肉機として使用されているスクリュー式のエクストルーダとカッターおよびダイを組合せた装置、あるいは打錠機等に用いられているパンチとダイを組合せたプレス装置が好ましい。スクリュー式のエクストルーダは内壁にバッフルを有するシリンダ内でスクリューが回転して内容物を混合、破砕しながら移送する装置である。カッターはエクストルーダの先端部にスクリューとともに回転するように設けられ、これに対向して内容物の通過孔を有するダイが配置される。

【20】
また打錠機等に用いられているパンチとダイを組合せたプレス装置も好ましい。この装置はピストンの前進、後退によりパンチを移動させてダイに押付けて加圧圧縮する装置である。ダイは凍結物通路を有するもの、あるいは有しないもののいずれを用いてもよい。ダイが凍結物通路を有しない場合は、打錠機と同様にタブレットまたは盤状の凍結物を得るように構成される。ダイが凍結物流路を有する場合は凍結物が凍結物流路を通して破砕状態で押出すように構成される。また被処理物の種類、性状によっては高圧に加圧する場合、ダイあるいはシリンダーの側面に長方形の開口部を設けると帯状の凍結物が得られる。

【21】
上記の装置による凍結方法は、原料供給手段から被処理物とドライアイスを混合破砕装置に供給すると、ここで被処理物とドライアイスは混合、破砕されて凍結物が生成し、凍結物取出手段により取出される。混合破砕装置としてスクリュー式のエクストルーダとカッターおよびダイとを組合せる装置の場合はシリンダ内に供給された被処理物およびドライアイスはスクリューで押出される間に混合、破砕されて凍結が生じ、先端物においてカッターおよびダイにおいてさらに混合破砕が行われて取出される。

【22】
混合破砕装置として凍結物通路を有しないダイを備えたプレス装置を用いる場合は、パンチとダイ間にドライアイスと被処理物を挟んでプレスすることにより圧縮し、これにより被処理物とドライアイスを圧延しながら混合、破砕するとともに凍結させ、タブレットまたは盤状の凍結物を得る。凍結物は部分的に破砕されるが、一部が繋がった状態で凍結する。このような凍結物はパンチの後退と同時にダイを押上げて取出すことができる。プレスの圧力は15~3000MPa、好ましくは30~600MPaとされる。

【23】
混合破砕装置として凍結物流路を有するダイを備えたプレス装置を用いる場合は、パンチとダイ間にドライアイスと被処理物を挟んでプレスすることにより圧縮すると、被処理物とドライアイスが混合破砕されるとともに凍結し、ドライアイスの気化によりさらに圧力が高まり少しずつ凍結物通路を通過して凍結状態で押出される。プレスの圧力は15~3000MPa、好ましくは30~600MPaとされる。この圧力より高いと凍結物が凍結物通路を通過しない場合があるので、前記凍結物通路を有しないダイを有する装置と同様に処理される。プレス法はバッチ処理であるため大量処理には適さないが、水溶液、果物など水分の多い被処理物の凍結に適している。

【24】
凍結乾燥装置はこうして得られる凍結物を真空乾燥するように、凍結装置と真空乾燥装置が組合わされたものである。この場合凍結装置の凍結物取出装置はそのまま真空乾燥装置への移送手段として利用することができる。真空乾燥装置としては前記真空度に維持できるものが好ましい。

【25】
真空乾燥装置の減圧手段は特に制御されないが、真空ポンプで減圧するものが一般的である。この真空乾燥装置は被処理物の温度を制御するために、加熱および/または冷却装置を備えるのが好ましく、被処理物を20~50℃に加熱して昇華速度を上げるための加熱装置および昇華した水分を-50℃でトラップする冷却コイルを冷やすための冷凍機を備えているものが、特に好ましい。

【26】
上記の凍結乾燥装置では、凍結装置において得られる凍結物を真空乾燥機に移送して減圧下に置くことにより、凍結物に含まれる水分(氷)が昇華し、凍結乾燥物が得られる。

【27】

【発明の効果】本発明の凍結乾燥方法および装置によれば被処理物をドライアイスと混合し、発生する炭酸ガスで気相を置換するとともに実質的に瞬時に凍結させ、凍結物を真空乾燥するようにしたので、簡単な装置と操作により酸素、酵素および熱等による変質を受けることなく、処理前の品質、性状等を保持したまま被処理物を凍結乾燥させることができる。

【28】
本発明の凍結乾燥物は酸素および熱等による変質を受けることなく、処理前の品質、性状等を保持したままの不活性な凍結乾燥物であり、そのまま保存、運搬、使用でき、変質のない状態で使用することができる。

【29】
本発明の凍結乾燥方法および装置におい、被処理物とドライアイスとを混合、破砕し、発生する炭酸ガスで気相を置換するとともに、被処理物を凍結させた後真空乾燥させることにより、酸素および熱等による変質を受けることなく、処理前の品質、性状等を保持したまま、破砕、均質化した状態で被処理物を凍結乾燥させることができ、乾燥に要する時間も短くなる。

【30】
こうして得られる凍結乾燥物は、酸素および熱等による変質を受けることなく、処理前の品質、性状等を保持したままの不活性な凍結乾燥物であり、そのまま保存、運搬、使用することができ、高機能性を有する食品、薬物、飼料等としての利用が可能である。

【31】

【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面について説明する。図1は実施形態の凍結装置の分解斜視図、図2はそのカッターとダイの正面図であり、ダイは断面図で示されている。

【32】
図1において、1は凍結装置であって、内周にバッフル2を有するシリンダ3内にスクリュー4が回転可能に設けられ、その先端にカッター5、ダイ6およびキャップ7が設けられた混合破砕装置10に原料供給装置11および凍結物取出装置12が設けられている。

【33】
シリンダ3は中空円筒状に形成され、一端部に減速機構8を介して電動機9が取付けられており、これらは架台15上に設置されている。バッフル2はスクリュー4の回転による内容物の移動の抵抗となるように設けられていればよく、その方向は軸方向に限らず、スクリュー4のフィン4aの方向と同一または逆方向に傾斜して配置されていてもよい。

【34】
スクリュー4には回転軸13が設けられて減速機構8に接続している。この回転軸13内には別の回転軸14が設けられてカッタ5の軸穴5aに係合し、その反対側は減速機構8に接続している。回転軸13,14は異なる回転数となるように減速機構8に接続している。カッタ5は回転刃式のものであり、4個の鈍い刃5bが放射方向に伸びている。

【35】
ダイ6は円板状に形成され回転軸14が入って空回りする軸受穴6aの周囲に内向の環状溝6bが形成され、この環状溝6bの底部に弧状の貫通穴6cが形成されている。ダイ6の周辺部には係合凹部6dが形成され、シリンダに設けられた係合凸部3aに係合するようになっている。キャップ7はスクリュー4、カッター5およびダイ6をシリンダ3内に収容した状態でシリンダ3の端を閉止するように、シリンダ3の外ねじ3bにねじ付けられる内ねじ7aを有する。

【36】
原料供給装置11はフィードパン11aと供給路11bからなり、シリンダ3の一端部に被処理物とドライアイスを供給するように接続している。凍結物取出装置12は貫通穴6cから排出される凍結物を集めて取出すように構成されているが、詳細な図示は省略されている。

【37】
上記の凍結装置は、原料供給装置11のフィードパン11aに被処理物とドライアイスを混合状態で入れ、供給路11bからシリンダ3に供給する。そして電導機9を駆動して減速機構8から回転軸13,14に回転力を伝え、スクリュー4およびカッター5を回転させる。ここでスクリュー4よりもカッター5の回転が速くなるように設定することができる。スクリュー4の回転数は10~120rpm、カッター5の回転数は10~120rpmとされる。スクリュー4の回転によりシリンダ3内の被処理物とドライアイスは、スクリュー4の溝4bに沿って移動する際、バッフル2によって一部の移動が阻止されるため、混合、破砕が起こり、被処理物は凍結する。スクリュー4の回転によって混合、破砕が繰返されて、次第に細粒化するが、最終的にシリンダ3の末端部においてカッター5により混合、破砕されて均質化する。

【38】
このときカッター5はダイ6の中央部に実質的に接した状態で回転するが、刃5bをほぼ直角の鈍いエッジで構成し、貫通穴6cのエッジと刃5bの間には環状溝6bのような間隙を形成することにより、目詰まりなしに凍結物を容易に取出すことができる。凍結物の粒径は貫通穴6cの口径、貫通穴6cと刃5bの間隙(環状溝6bの深さ)等を変えたダイ6を複数個準備し、これを取替えることにより、任意の粒径に調整することができる。

【39】
貫通穴6cを通過した凍結物は凍結物取出装置12から取出され、そのまま保存、運搬、または使用される。上記の装置では、制御装置により間欠的にスクリュー4およびカッター5の回転を止めて逆回転させるのが好ましく、これにより凍結物のバッフル2およびスクリュー4への付着を防止することができる。

【40】
図3は実施形態の凍結乾燥装置の構成図であり、凍結装置1としては図1に示した凍結装置が用いられ、凍結物取出装置により真空乾燥装置20に接続している。真空乾燥装置は真空ポンプにより減圧して真空乾燥を行う公知の装置であって、被処理物を20~30℃に加熱して昇華速度を上げるための加熱装置および昇華した水分を-50℃でトラップする冷却コイルを冷やすための冷凍機を備えた市販品が使用されている。

【41】
上記の凍結乾燥装置では、凍結装置1から得られる凍結物を凍結物取出装置により真空乾燥装置20に搬入して減圧下に保持し、凍結物中の氷を昇華させて凍結乾燥物を得る。この場合ドライアイスが昇華して多孔質になった状態で氷が昇華するので、真空乾燥速度は速くなり、通常の凍結乾燥で約7日間必要な乾燥時間が約2日間に短縮される。真空乾燥装置20への搬入、搬出は一般にバッチ式に行われるが、大気を遮断する移送路を設けることにより連続式に行うことも可能である。

【42】
図4は他の実施形態のプレス型の凍結装置の断面図である。図4において、混合破砕装置10はシリンダ状のケーシング16の支持部17に凍結物通路を有しないダイ18が摺動可能に支持され、被処理物21を粒状のドライアイス22間にサンドイッチ状に挟んで投入し、その上からパンチ19が流体圧シリンダ23のピストン24により圧縮するように摺動可能に配置されている。ダイ18も他のピストン25により押上げられるように構成されている。原料供給装置11および凍結物取出装置12としてベルトコンベアが用いられている。26は押出部材である。

【43】
上記の凍結装置では、混合破砕装置10の流体圧シリンダ23のピストン24の後退によりパンチ19を引上げた状態で原料供給装置11によりドライアイス22を投入してピストン24を前進させてパンチ19でドライアイスを潰し、さらにピストン24を後退させて被処理物21およびドライアイス22を供給してダイ18上にサンドイッチ状に配置し、ピストン24を前進させてパンチ19でプレスして圧縮することにより、被処理物21とドライアイスを圧延して混合破砕するとともに凍結させる。被処理物21はドライアイス22により押しつぶされて部分的に破砕するが、残留する一部の組織により繋がった状態でタブレットまたは盤状の凍結物が得られる。凍結物はピストン24を後退させ、ピストン25を押上げ、押出部材26を前進させて押すことにより凍結物取出装置12から取出される。

【44】
被処理物の種類、性状によっては高圧に加圧すると流動状態となるので、ケーシング16の側壁に長穴状の押出路27を設けると、シート状の押出物が得られ、この押出物は押出とともに凍結し、板状の凍結物を得ることができる。

【45】
図5はさらに他の実施形態のプレス型の凍結装置の断面図であり、図4と同一または相当部分には同一符号を付している。この装置ではダイ18は支持部17に固定的に支持され、凍結物通路18aを有している。凍結物取出装置12としてはスクリューコンベアが用いられ、ダイ18の下部に配置されており、押出部材26は省略されている。他の構成は図4と同様である。

【46】
上記の装置では図4の場合と同様にして被処理物21およびドライアイス22をダイ18上に投入してピストン24によりパンチ19を前進させてプレスすることにより圧縮すると、被処理物21とドライアイス22が混合破砕されるとともに凍結し、ピストンの圧力およびドライアイスの気化による膨圧により少しずつ凍結物通路18aを通過して凍結状態で押出され、凍結物取出装置12により取出される。取出される凍結物は図1に示すエクストルーダ式のものと同様のものである。

【47】

【実施例】以下、本発明の実施例について説明する。
実施例1~3
図1の凍結装置(ダイ6の外径70mm)を用い、甘しょ、ベニアズマ(実施例1)、同じく甘しょヘルシーレッド(実施例2)およびユズの果実(実施例3)をそれぞれ被処理物として凍結を行った。このとき被処理物1kgに対して2cm角のドライアイス1kgをフィードパン11aから供給して、スクリュー4の回転数120rpm、カッタ5の回転数120rpmで混合破砕して凍結物を得た。この凍結物を真空乾燥機に移し、真空度20×10-3MBar、乾燥棚温度20℃で48時間真空乾燥し、凍結乾燥物を得た。

【48】
比較例1~3
実施例1~3において、ドライアイスを用いることなく、常温で混合、破砕を行い、混合破砕物を真空乾燥装置において-50℃に予備凍結した後真空乾燥を行い、凍結乾燥物を得た。

【49】
上記実施例1~3および比較例1~3の凍結乾燥物をJIS Z 8722定義の45-0法により色彩色差計(CR-300,ミノルタカメラ)を用いて、L*(明度)、a*(赤-緑)、b*(黄-青)法により色調を測定した。結果を表1に示す。

【50】

【表1】
JP0003005657B2_000002t.gif【0051】表1から明らかなように実施例1~3では、明度(L*)が高く、未処理の被処理物に近い色調の凍結乾燥物が得られた。これに対して比較例1~3では明度が低下し、特に比較例1、2では褐変現象が現われ、ポリフェノール等の酸化による品質低下が生じていることがわかる。このほか実施例1~3特に実施例3は未処理物に近い芳香を有していたが、比較例1~3では芳香は低下した。

【52】
実施例1~3の凍結物の細菌検査の結果を表2に示す。
【表2】
JP0003005657B2_000003t.gif
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4