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明細書 :マイクロスフィアの連続製造装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3081880号 (P3081880)
公開番号 特開平11-276802 (P1999-276802A)
登録日 平成12年6月30日(2000.6.30)
発行日 平成12年8月28日(2000.8.28)
公開日 平成11年10月12日(1999.10.12)
発明の名称または考案の名称 マイクロスフィアの連続製造装置
国際特許分類 B01F  3/08      
B01D 17/00      
B01F  5/00      
B01J 13/00      
FI B01F 3/08 A
B01D 17/00
B01F 5/00
B01J 13/00
請求項の数または発明の数 4
全頁数 8
出願番号 特願平10-083946 (P1998-083946)
出願日 平成10年3月30日(1998.3.30)
審査請求日 平成10年4月1日(1998.4.1)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】591031360
【氏名又は名称】農林水産省食品総合研究所長
【識別番号】000195568
【氏名又は名称】生物系特定産業技術研究推進機構
発明者または考案者 【氏名】中嶋 光敏
【氏名】菊池 佑二
【氏名】佐野 洋
【氏名】鍋谷 浩志
【氏名】川勝 孝博
【氏名】小林 功
【氏名】鷹尾 宏之進
個別代理人の代理人 【識別番号】100085257、【弁理士】、【氏名又は名称】小山 有
審査官 【審査官】村山 禎恒
参考文献・文献 特開 平9-225291(JP,A)
特開 平5-337349(JP,A)
特開 昭50-104468(JP,A)
調査した分野 B01F 3/08
B01F 5/00
B01J 13/00
特許請求の範囲 【請求項1】
連続相に比較して比重の小さな分散相を連続相中に送り込んでマイクロスフィアを製造する装置において、この装置は、垂直方向または傾斜して配置される基板と、この基板に対向配置されるプレートを備え、前記基板には分散相の供給口が形成され、また前記基板のプレートとの対向面には分散相が供給される空間と連続相が供給される空間とを画成する境界部が分散相の供給口を囲むように設けられ、この境界部のうち前記分散相の供給口よりも上方となる箇所には一定幅のマイクロチャネルが上下方向に多数形成され、このマイクロチャネルを介して分散相と連続相とが接触する構造になっており、更に前記マイクロチャネルよりも上方位置にマイクロスフィアの取出口が設けられていることを特徴とするマイクロスフィアの製造装置。

【請求項2】
連続相に比較して比重の大きな分散相を連続相中に送り込んでマイクロスフィアを製造する装置において、この装置は、垂直方向または傾斜して配置される基板と、この基板に対向配置されるプレートを備え、前記基板には分散相の供給口が形成され、また前記基板のプレートとの対向面には分散相が供給される空間と連続相が供給される空間とを画成する境界部が分散相の供給口を囲むように設けられ、この境界部のうち前記分散相の供給口よりも下方となる箇所には一定幅のマイクロチャネルが上下方向に多数形成され、このマイクロチャネルを介して分散相と連続相とが接触する構造になっており、更に前記マイクロチャネルよりも下方位置にマイクロスフィアの取出口が設けられていることを特徴とするマイクロスフィアの製造装置。

【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のマイクロスフィアの製造装置において、前記基板に対向するプレートを透明プレートとしたことを特徴とするマイクロスフィアの製造装置。

【請求項4】
請求項1乃至請求項3に記載のマイクロスフィアの製造装置において、前記マイクロチャネルは基板に、エッチング処理、電子線照射、CVD法等の精密加工手法を施すことで形成されることを特徴とするマイクロスフィアの製造装置。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【01】

【発明の属する技術分野】本発明は食品工業、医薬或いは化粧品製造等に利用されるマイクロスフィア(エマルション及び微粒子浮遊液を含む)の製造装置に関する。

【02】

【従来の技術】水相と有機相のように熱力学的には分離している状態が安定状態である二相系を乳化によって準安定なエマルションとする技術が従来から知られている。一般的な乳化方法としては、エマルションの科学(朝倉書店:1971)に記載されるように、ミキサー、コロイドミル、ホモジナイザー等を用いる方法や音波で分散させる方法等が知られている。

【03】
前記した一般的な方法にあっては、連続相中の分散相粒子の粒径分布の幅が大きいという欠点がある。そこで、ポリカーボネイトからなる膜を用いて濾過を行う方法(Biochmica etBiophysica Acta,557(1979) North-Holland Biochemical Press)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)膜を用いて繰り返し濾過を行う方法(化学工学会第26回秋期大会 講演要旨集:1993)、更には均一な細孔を持つ多孔質ガラス膜を通して連続相に送り込み均質なエマルションを製造する方法(特開平2-95433号公報、特開平5-220382号公報、特開平6-315617号公報)も提案されている。

【04】
また、ドライエッチング或いはウェットエッチングにてメンブレンフィルタに形成した微細孔を介してエマルションを形成する方法が特開平6-71150号公報に提案され、ノズルを介して分散相を連続相に送り込んでエマルションを形成する方法が特開昭60-5223号公報に提案され、多孔板を用いたエマルションの製造方法が特開昭54-116389号公報に提案され、更に、層流滴下法(化学工学第21巻第4号:1957)も知られている。

【05】
更に、一定幅のマイクロチャネルを介して分散相を連続相に送り込んでエマルションを形成する方法が文献(JAOCS,74(1997)317-321)に提案されている。

【06】
上記したポリカーボネイトからなる膜を用いて濾過を行う方法とPTFE膜を用いて繰り返し濾過を行う方法にあっては、原理的に膜の細孔より大きいものは製造できず、膜の細孔より小さいものは分別できないという問題点がある。従って、特にサイズの大きいエマルションを製造する場合には適さない。

【07】
また、均一な細孔を持つ多孔質ガラス膜を用いる方法にあっては、膜の平均細孔径が小さい場合には粒径分布が広がらず、均質なエマルションを得ることができるが、膜の平均細孔径を大きくすると粒径分布が広がり、均質なエマルションを得ることができない。また、ノズルや多孔板を用いた層流滴下法では1000μm以上の粒径となり、分布も広く、均質なエマルションが得られない。

【08】
更に、文献(JAOCS,74(1997)317-321)に記載された一定幅のマイクロチャネルを用いる方法にあっては、粒径の揃った均質なエマルションを得られるが、バッチ式であり、連続的にエマルションを製造することができない。そして、チャネル径が大きいと生成されたエマルションのサイズも大きいため、移動することができずに合一が起きてしまい、均質なエマルションが得られなくなる。

【09】
そこで、本発明者等は国際公開WO97/30783号公報に連続的に均質なエマルションを製造し得る装置を提案している。図14に当該装置の構造を示す。即ち、エマルションの製造装置は、本体100の側壁にる連続相(W)の供給口101を形成し、また本体100の上部開口を閉塞する蓋体102の中央に分散相(O)の供給口103を形成し、中央から外れた箇所にエマルション(E)の取出し口104を形成し、蓋体102と基板105との間に設けた隔壁部材106にて分散相(O)の供給口101とエマルション(E)の取出し口104とを隔離し、更に、基板105の中央部には分散相(O)の供給口107が形成され、基板105と対向して配置されたプレート108との間に隙間109が形成され、また基板105に設けた境界部110にて分散相(O)と連続相(W)とを分けるとともに、境界部110に形成したマイクロチャネル111にて分散相(O)と連続相(W)とを接触せしめた構成としている。そして、供給口103を介して隔壁部材106の内側に供給された分散相(O)は基板105の供給口107を介してプレート108との隙間に入り、更に、境界部110を通過して連続相(W)に入り込んでエマルションが形成される。

【10】

【発明が解決しようとする課題】上述した装置によれば、均質なエマルションを連続的に得ることができるのであるが、エマルションの形成とエマルションの取出しに大きな動力が必要になり、コスト的に改良の余地がある。

【11】

【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため、請求項1に係るマイクロスフィアの連続製造装置は、連続相に比較して比重の小さな分散相を連続相中に送り込む装置であって、垂直方向または傾斜して配置される基板と、この基板に対向配置されるプレートを備え、前記基板には分散相の供給口が形成され、また前記基板のプレートとの対向面には分散相が供給される空間と連続相が供給される空間とを画成する境界部が分散相の供給口を囲むように設けられ、この境界部のうち前記分散相の供給口よりも上方となる箇所には一定幅のマイクロチャネルが上下方向に多数形成され、このマイクロチャネルを介して分散相と連続相とが接触する構造とするとともに、前記マイクロチャネルよりも上方位置にマイクロスフィアの取出口を設けた。

【12】
また、請求項2に係るマイクロスフィアの連続製造装置は、連続相に比較して比重の大きな分散相を連続相中に送り込む装置であって、垂直方向または傾斜して配置される基板と、この基板に対向配置されるプレートを備え、前記基板には分散相の供給口が形成され、また前記基板のプレートとの対向面には分散相が供給される空間と連続相が供給される空間とを画成する境界部が分散相の供給口を囲むように設けられ、この境界部のうち前記分散相の供給口よりも下方となる箇所には一定幅のマイクロチャネルが上下方向に多数形成され、このマイクロチャネルを介して分散相と連続相とが接触する構造とするとともに、前記マイクロチャネルよりも下方位置にマイクロスフィアの取出口を設けた。

【13】
このように、マイクロスフィアを形成するマイクロチャネルを上下方向とすることでマイクロチャネルにおいて比重差を利用してマイクロスフィアを形成することができる。

【14】
尚、前記基板に対向するプレートを透明プレートとすることができる。このようにすることで、分散相のチャネル移動および連続相との接触状態を光学的に直接観察することができ、マイクロスフィアの製造を制御することが可能となる。マイクロチャネルの形成方法としては、半導体集積回路の製造工程の1つであるエッチング工程を応用して基板に任意の形状で一定幅の多数のマイクロチャネルを形成することができる。

【15】

【発明の実施の形態】以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。図1は本発明に係るエマルション製造装置を組み込んだシステム全体図であり、マイクロスフィア製造装置1に分散相タンク2から分散相(O)がポンプ3及び配管4を介して供給され、またマイクロスフィア製造装置1に連続相タンク5から連続相(W)がポンプ6及び配管7を介して供給される。そして、マイクロスフィア製造装置1にて製造されたマイクロスフィア(MS)は配管8を介してヘッダ9に一旦保持され、このヘッダ9からバルブ10を備えた配管11を介してマイクロスフィアタンク12に貯留される。ここで、実施例としては加圧手段としてポンプを示したが、これ以外の水位差等の加圧手段を用いることが可能である。

【16】
次にマイクロスフィア製造装置1の構造を、図2乃至図7に基づいて説明する。ここで、図2はマイクロスフィア製造装置の縦断面図、図3は別実施例に係るマイクロスフィア製造装置の縦断面図、図4はマイクロスフィア製造装置内に組み込まれる基板の正面図、図5は同基板の斜視図、図6は基板に形成したマイクロチャネルの拡大斜視図、図7はマイクロチャネルの部分でマイクロスフィアが形成される様子を示す斜視図である。

【17】
マイクロスフィア製造装置1は横置き筒状をなす本体20の一方の開口を蓋体21で閉塞し、他方の開口をプレート22で閉塞している。蓋体21には前記配管4が接続される分散相供給口23と、前記配管7が接続される連続相供給口24が形成され、またプレート22にはガラス板などの透明板を使用し、後述するように肉眼あるいはカメラ等によってマイクロスフィアが形成される状況を観察できるようにしている。

【18】
また、前記蓋体21とプレート22間に形成される本体20内の空間には基板25を配置している。この基板25は垂直方向に配置されるとともに、蓋体21との間にOリング等の隔壁部材26を介在させることで、プレート22側に弾性的に押しつけられて保持されている。

【19】
前記隔壁部材26は分散相供給口23につながる分散相室27と連続相供給口24につながる連続相室28とを液密に画成し、基板25の中央には分散相室27につながる分散相供給口29が形成され、さらに基板25のプレート22に対向する面には前記分散相供給口29を矩形状に囲むように土手状の境界部30が形成され、基板25をプレート22側に押しつけた状態で当該境界部30の高さ分だけ基板25とプレート22との間に隙間31が形成される。

【20】
ここで、図2に示すマイクロスフィア製造装置は、形成されるマイクロスフィアの比重が連続相よりも小さい場合に適用する装置であり、本体20の最上部に前記配管8が接続されるマイクロスフィア取出口32が形成され、更に、前記境界部30のうち上辺部を構成する境界部の表面には図6にも示すようにマイクロチャネル33が形成されている。このマイクロチャネル33を含む境界部30の形成方法としては、ウェット或いはドライエッチングにて行う。

【21】
以上において、供給口23を介して隔壁部材26内側の分散相室27に供給された分散相(O)は基板25の供給口29を介してプレート22との隙間31に入り、この隙間31に入った分散相(O)はポンプ等の加圧手段による圧力でマイクロチャネル33を通過する際に一定径の粒子となって連続相(W)に入り込みマイクロスフィアを形成する。

【22】
そして形成されたマイクロスフィアはその比重に応じて、即ち連続相よりも軽い場合には図2に示すように、特別な動力を必要とせずに連続相内を浮上して取出口32から取り出される。この様子を図7に示すように、カメラ34などによって監視することが可能である。

【23】
一方、形成されたマイクロスフィアが連続相よりも重い場合には、図3に示すように沈降して、境界部30の下辺部に形成されたマイクロチャネル33及び本体の最下部に形成された取出口32を介して下方から取り出される。

【24】
尚、図示例では基板を垂直方向に配置した例を示したが、斜めに配置してもよい。要は、比重に応じてマイクロスフィアが自然に移動する構造であればよい。また基板については、マイクロスフィアの浮上または沈降を利用できる特定の方向のみに多孔質ガラス板を形成したものとしてもよい。

【25】
以下に、具体的な実施例について説明する。
(実施例)
分散相として0.3wt%のソルビタンモノラウレートを含むトリオレイン、連続相として水を用い、駆動圧力を1.08kPa、1.26kPa、1.35kPa及び2.44kPaとして、マイクロスフィアの製造を試みた。その結果を図8~図11の(a)及び(b)に示す。ここで、各図の(a)はマイクロチャネルの部分を示す顕微鏡写真、(b)は(a)に基づいて作成した図面である。

【26】
図8~図10から、駆動圧力が1.08kPa~1.35kPaと小さいと、分散相を連続相中に強制的に送り込むことができず、マイクロスフィアが生成されないことが分る。しかしながら、駆動圧力を2.44kPaまで上げることで図11に示すように分散相がマイクロチャネルを介して連続相中に送り込まれることが分る。

【27】
先に本発明者等が提案した装置(国際公開WO97/30783号公報に開示)を用いた場合には、同公報にも記載したように、駆動圧力を8.38kPaまで挙げなければマイクロスフィア(エマルション)は生成されなかったことと比較すると、大幅に改良されたことになる。

【28】
また、マイクロチャネルを介して連続相中に送り込まれた分散相粒子は、その比重に応じて、図12(a)及び(b)に示すように、連続相中を一列に連なるようにして浮上(又は沈降)し、更にこのようにして回収されたマイクロスフィアは図13(a)及び(b)に示すように極めて粒径の揃った均質なものであることが観察される。

【29】

【発明の効果】以上に説明したように本発明に係るマイクロスフィアの製造装置によれば、基板等に形成した一定幅の多数のマイクロチャネルを介して、加圧された分散相を連続相中に強制的に送り込んでマイクロスフィアを形成する際に分散相と連続相との比重差を利用したので、小さな動力でマイクロスフィアを形成することができる。また、比重差を利用してマイクロスフィアを回収するようにしたので、回収に要する動力も少なくて済む。

【30】
また、本発明に係るマイクロスフィアの製造装置によれば、装置本体内に垂直方向または傾斜して配置される基板と、この基板に対向配置されるプレートを備え、前記基板には分散相の供給口が形成され、また前記基板のプレートとの対向面には分散相が供給される空間と連続相が供給される空間とを画成する境界部が形成され、この境界部のうちマイクロスフィアをその比重に応じて、浮上または沈降により回収し得る箇所に一定幅のマイクロチャネルが上下方向に多数形成され、このマイクロチャネルを介して分散相と連続相とが接触するようにしたので、粒径分布が広がらず、均質なマイクロスフィアを連続して効率よく製造することができる。

【31】
特に、分散相と連続相との境界部を分散相の供給口を囲むように設け、この境界部のうち、マイクロスフィアをその比重に応じた浮上または沈降を利用できる特定の方向にのみマイクロチャネルを形成することで、作製されたマイクロスフィアを特別な駆動力を必要とせずに連続的に回収することができる。

【32】
また、マイクロスフィアの浮上または沈降を利用することで、マイクロチャネルの内側と外側の圧力差が大きくなるので、分散相の送り込み圧力を大きくしなくともマイクロスフィアを形成することができる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図11】
8
【図14】
9
【図9】
10
【図10】
11
【図12】
12
【図13】
13