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明細書 :単分散固体脂質マイクロスフィアの製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B1)
特許番号 特許第3030364号 (P3030364)
登録日 平成12年2月10日(2000.2.10)
発行日 平成12年4月10日(2000.4.10)
発明の名称または考案の名称 単分散固体脂質マイクロスフィアの製造方法
国際特許分類 C08J  3/16      
B01J 13/00      
FI C08J 3/16
B01J 13/00
請求項の数または発明の数 5
全頁数 8
出願番号 特願平11-078862 (P1999-078862)
出願日 平成11年3月24日(1999.3.24)
審査請求日 平成11年3月24日(1999.3.24)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】591031360
【氏名又は名称】農林水産省食品総合研究所長
【識別番号】000195568
【氏名又は名称】生物系特定産業技術研究推進機構
発明者または考案者 【氏名】中嶋 光敏
【氏名】菊池 佑二
【氏名】鍋谷 浩志
【氏名】仝 継紅
【氏名】関 実
【氏名】杉浦 慎治
個別代理人の代理人 【識別番号】100085257、【弁理士】、【氏名又は名称】小山 有
審査官 【審査官】▲吉▼澤 英一
参考文献・文献 特開 平9-75015(JP,A)
特開 平11-32676(JP,A)
特開 平5-184895(JP,A)
特開 平3-293026(JP,A)
特開 平2-95433(JP,A)
調査した分野 C08J 3/00 - 3/28
B01J 13/00
B01F 3/08
要約 【課題】 粒径が数10μmでしかも均一な高融点天然油脂からなるマイクロスフィアを効率よく連続的に製造する。
【解決手段】 高融点油脂を融点以上に加熱して液状とし、この液状となった高融点油脂からなる分散相を加圧し、多数のマイクロチャネルを介して連続相中に分散せしめてエマルションを形成し、更にこのエマルションから連続相を除去することで高融点油脂のマイクロスフィアを回収する。
特許請求の範囲 【請求項1】
以下の工程からなることを特徴とする単分散固体脂質マイクロスフィアの製造方法。
(1)高融点油脂を融点以上に加熱して液状にする工程。
(2)前記液状となった高融点油脂からなる分散相を加圧し、この分散相を一定幅の多数のマイクロチャネルを介して連続相中に分散せしめてエマルションを生成する工程。
(3)前記エマルションを冷却し凝固させることにより、固体マイクロスフィアの懸濁液を作製する工程。
(4)前記固体マイクロスフィアの懸濁液から連続相を除去することで高融点油脂のマイクロスフィアを回収する工程。

【請求項2】
請求項1に記載の単分散固体脂質マイクロスフィアの製造方法において、前記マイクロチャネルはシリコン基板に微細加工技術を用いて0.1μm~100μmの大きさで設けられていることを特徴とする単分散固体脂質マイクロスフィアの製造方法。

【請求項3】
請求項1に記載の単分散固体脂質マイクロスフィアの製造方法において、前記マイクロチャネルは基板の表面に設けられた突条をなすテラスの上に多数の壁体を設け、これら壁体間をマイクロチャネルとしていることを特徴とする単分散固体脂質マイクロスフィアの製造方法。

【請求項4】
請求項1に記載の単分散固体脂質マイクロスフィアの製造方法において、分散相には液状となった高融点油脂の他に界面活性剤を添加することを特徴とする単分散固体脂質マイクロスフィアの製造方法。

【請求項5】
請求項1に記載の単分散固体脂質マイクロスフィアの製造方法において、前記エマルションから連続相を除去する工程は、エマルションを凍結乾燥する手段を含むことを特徴とする単分散固体脂質マイクロスフィアの製造方法。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【01】

【発明の属する技術分野】本発明は、食品工業、医薬或いは化粧品製造等の各種用途に利用される単分散固体脂質マイクロスフィア(微粒子)の製造方法に関する。

【02】

【従来の技術】現在、魚油、動物脂等の高融点天然油脂の多くは廃油として廃棄されている。このことは省資源の見地からは大きな損失である。そこで、魚油、動物脂等の高融点天然油脂を食品、医薬或いは化成品等として利用することが考えられるが、これらに利用するには高融点天然油脂を数10μmの大きさでしかも均一な粒子に調整する必要がある。

【03】
固体マイクロスフィアの製造法としては従来から懸濁重合法や乳化重合法が知られている。懸濁重合法は、エマルションの分散相を重合させてマイクロスフィアを合成する方法であり、乳化重合法は、界面活性剤ミセル中で重合反応を行うことによりマイクロスフィアを合成する方法である。

【04】

【発明が解決しようとする課題】上記した懸濁重合法では、作製されるマイクロスフィアの粒径分布は元のエマルションの粒径分布に依存するため、単分散なマイクロスフィアを作製することが困難である。また、乳化重合法で通常合成できるマイクロスフィアの粒径は0.1μm程度である。シード乳化重合法や二段階膨潤法を用いれば数10μmのマイクロスフィアを作製することは可能であるが、煩雑な手順が必要でコストがかかる。また従来の方法では、連続して且つ大量にマイクロスフィアを製造することができない。

【05】

【課題を解決するための手段】本発明は水素添加魚油や牛脂等の高融点天然油脂のマイクロスフィアを、数10μmの大きさでしかも標準偏差を小さく(均一で)して連続的に得ることができる方法を提供することを目的とする。

【06】
斯かる目的を達成するため、本発明は以下の(1)乃至(3)の工程からなることを特徴とする。
(1)高融点油脂を融点以上に加熱して液状にする工程。
(2)前記液状となった高融点油脂からなる分散相を加圧し、この分散相を一定幅の多数のマイクロチャネルを介して連続相中に分散せしめてエマルションを形成する工程。
(3)前記エマルションを冷却し凝固させることにより、固体マイクロスフィアの懸濁液を作製する工程。
(4)前記固体マイクロスフィアの懸濁液から連続相を除去することで高融点油脂のマイクロスフィアを回収する工程。

【07】
上記エマルションを生成する装置としては、本出願人が特開平9-225291号公報として提案した装置を応用することが好ましい。即ち、特開平9-225291号公報に提案した装置は、室温で液状の分散相を連続相に分散せしめてエマルションを製造する装置であるので、そのまま高融点天然油脂を分散相としたエマルションの生成には用いることができないが、高融点天然油脂の加熱装置及び恒温装置を付加することによって本発明の実施に用いることができる。

【08】
尚、上記装置にはマイクロチャネルが形成され、このマイクロチャネルを介して分散相が連続相内に入り込む構成になっているが、マイクロチャネルとしては、基板の表面に突条を設け、この突条の上面となるテラスの上に多数の壁体を設け、これら壁体間をマイクロチャネルとしたものが好ましい。

【09】
また、分散相には液状となった高融点油脂の他に界面活性剤を添加することが好ましい。界面活性剤を添加することで界面張力が低下し、ブレークスルー圧力(分散相が連続相へ進入するための最低圧力)を下げることができる。

【10】
上記したように、分散相を連続相へ進入させるにはある程度の圧力を分散相に加える必要がある。その圧力としては、テラスが基板の端から2~4mmの位置に加工されており、幅10~20μm、深さ5~10μmのマイクロチャネルを用いる場合には、0.5kPa以上1.3kPa以下が好ましい。0.5kPa未満では分散相の連続相への進入が起こりにくく、逆に1.3kPaを超えると分散相が繋がってしまいマイクロスフィアを形成しにくくなる。

【11】
分散相がマイクロスフィアの状態で連続相中に分散しているエマルションからマイクロスフィアを回収する手段としては、エマルションを室温に所定時間放置した後に、凍結乾燥する手段が考えられる。

【12】

【発明の実施の形態】以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。図1は本発明方法の概略を工程順に示したブロック図であり、本発明にあっては先ず、水素添加魚油や牛脂などの高融点天然油脂を用意する。

【13】
次いで、高融点天然油脂を融点以上に加熱して溶解し液状にする。この液状高融点天然油脂を分散相として水等の連続相中に分散して単分散エマルションを生成する。この後、室温に放置して単分散固体脂質マイクロスフィア懸濁液とし、この懸濁液を凍結乾燥して単分散固体脂質マイクロスフィアを回収する。

【14】
以下に単分散エマルションを生成する装置の一例を図2乃至図5に基づいて説明する。ここで、図2はエマルション生成装置の全体図、図3は同エマルション生成装置の要部の拡大模式図、図4(a)は基板の平面図、(b)は基板の裏面図、図5はマイクロチャネルの部分の拡大斜視図である。

【15】
エマルション生成装置は本体1を恒温槽2につなげて本体1の温度を所定の温度に制御可能としている。そして、本体1の一方の開口にガラス板などから構成されるプレート3を嵌め込み、他方の開口に蓋体4を嵌め込み、蓋体4の中央に分散相(O)の供給口5を形成し、蓋体4の中央から外れた箇所(図では上方)に連続相の供給口6を形成し、更に蓋体4の中央から外れた箇所(図では下方)にエマルション(E)の取出口7を形成している。

【16】
そして、分散相(O)の供給口5には配管を介して分散相リザーバ8を接続し、配管の周囲にはヒータ9を設け、また、連続相の供給口6には配管を介して連続相リザーバ10を接続し、更にエマルション(E)の取出口7には回収用配管11を接続している。ここで、分散相リザーバ8及びは連続相リザーバ10は上下位置を調整可能とされ、分散相(連続相)に作用する圧力を調整できる構成になっている。

【17】
また、プレート3と蓋体4との間の空間には基板12が配置されている。基板12の中央には開口13が形成され、基板12のプレート3に対向する正面側には開口13を矩形状に囲むように突条14が形成され、この突条14の上面を平坦なテラス15にし、このテラス15上に突部16を一定間隔で多数形成し、これら突部16,16間をマイクロチャネル17としている。マイクロチャネル17の寸法としては、例えば幅13.1μm、高さ5.7μm、テラス長さ26.2μmとする。また、マイクロチャネル17を含む突条14の形成方法としては、ウェット或いはドライエッチングが適当である。

【18】
更に、基板12と蓋体4の間にはOリング等の隔壁部材18を介在させ、この隔壁部材18の弾発力で前記突部16をプレート3内側に当接している。そして、隔壁部材18にて囲まれる内側領域には前記分散相(O)の供給口5が開口し、外側領域には連続相の供給口6及びエマルション(E)の取出口7が開口している。尚、プレート3の外側には、ビデオシステムにつながるカメラ19が配置されている。

【19】
以上において、供給口5を介して隔壁部材18の内側に加圧されて供給された分散相(O)は基板12の開口13を介してプレート16との隙間に入り、この隙間に入った分散相(O)はマイクロチャネル17を介して連続相(W)に入り込む。この時、分散相(O)は一定径の粒子となり、連続相(W)に一定径の分散相(O)が分散したエマルション(E)が形成される。

【20】
単分散エマルションを生成する装置としては、上記の構成に限定されるものではない。例えば、図示例にあっては、プレート3、蓋体4及び基板12を縦方向に配置したが、これらを水平方向に配置してもよい。また、他の装置としては、ケース内に基板を配置し、この基板とプレートとの間に連続相の流路を形成し、この流路に対し交差する方向に開口するマイクロチャネルを前記基板に形成し、流動状態にある連続相に対して交差する方向から分散相を供給するクロスフロータイプとしてもよい。

【21】
次に具体的な実施例と好ましい条件について示す。
(実施例1:粒径分布)分散相に非イオン系界面活性剤であるソルビタンモノパルミテート(Span40)を1%の濃度で溶解したトリパルミチン(融点約58℃)を用い、連続相に水を用いて70℃でマイクロチャネル乳化を行った。マイクロチャネル乳化の際に分散相リザーバの高さを上げてゆくと、分散相の供給圧力が0.53kPaに達したときに分散相がマイクロチャネルを通過し始め、エマルションの生成が始った。更に、圧力を上げてゆくと、90%のマイクロチャネルからエマルションが生成されるようになった。生成されたエマルションを回収し、室温に放置することにより凝固させ、単分散固体脂質マイクロスフィアの懸濁液を得た。この後、この懸濁液を凍結乾燥したところ白色粉末が得られた。粉末化された単分散固体脂質マイクロスフィアは図6及び図7に示すように、平均粒径が21.7μm、標準偏差は0.78μmであった。尚、図6(a)は実施例1で得られた乾燥したマイクロスフィアを示す図、(b)は(a)の基になった顕微鏡写真、図7は実施例1で得られたマイクロスフィアの粒径分布を示すグラフである。

【22】
(実施例2:マイクロチャネル乳化に対する圧力の影響)分散相に非イオン系界面活性剤であるポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート(Tween40)を0.3%の濃度で溶解したトリパルミチン(融点約58℃)を用い、連続相に水を用いて70℃でマイクロチャネル乳化を行った。マイクロチャネル乳化の際に分散相リザーバの高さを上げていき、平均粒径とマイクロスフィア生成に関与しているマイクロチャネルの数の変化を調べた。その結果を図8に示す。図8から以下のことが分った。即ち、圧力が0.5kPaから1.3kPaの範囲では圧力が高くなればなるほどマイクロスフィア(液滴)を生成するチャネル数が増加し、それぞれのチャネルにおけるマイクロスフィアの生成速度も増加した。また、この範囲ではエマルションの粒径分布は圧力の影響を殆ど受けない。圧力が1.3kPaを超えると、分散相の流量が速くなりすぎて、大きな液滴が生成され、更には分散相が連続的に流出する現象が観察された。尚、この現象を解消するにはマイクロチャネルの出口側に連続相を安定に供給する必要があることも判明した。

【23】
(実施例3:マイクロチャネル乳化に対する界面活性剤添加の影響)分散相に水素添加魚油を用い、連続相に水を用い、70℃でマイクロチャネル乳化を行った。この際に添加する界面活性剤を変化させ、マイクロチャネル乳化の可能性と、乳化挙動を検討した結果を以下の(表1)に示す。

【24】

【表1】
JP0003030364B1_000002t.gif【0025】(表1)から、今回使用した界面活性剤の中では、ラウリル硫酸ナトリウム等のアニオン系の界面活性剤や、Span系界面活性剤等の非イオン系で乳化能の強い界面活性剤を使用した場合に、安定なマイクロチャネル乳化が確認された。また、界面活性剤にSpan40を用いて界面活性剤濃度を変化させた。この際に界面張力と界面張力とブレークスルー圧力との関係を検討した結果を図9に示す。図9に示す結果は、曲った界面の内側と外側の圧力差を表すLaplaceの式から導かれる理論式とよく一致した。

【26】
(実施例4:マイクロチャネル乳化に対するマイクロチャネル形状の影響)分散相に非イオン系界面活性剤であるポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート(Tween40)を0.3%の濃度で溶解したトリパルミチン(融点約58℃)を用い、連続相に水を用いて70℃でマイクロチャネル乳化を行った。この際に、図10(a)~(d)に示す4種類のマイクロチャネルを用い、マイクロチャネルの形状の影響を調べた。図10(a)に示すマイクロチャネルにはテラスも仕切壁もなく、図10(b)に示すマイクロチャネルは、テラスはあるが仕切壁がなく、図10(c)に示すマイクロチャネルは、テラスと仕切壁の両方があり、図10(d)に示すマイクロチャネルは図10(b)のマイクロチャネルと同様にテラスはあって仕切壁がないが、マイクロチャネルの高さを低くしている。上記の各マイクロチャネルを形成した基板を用いてマイクロチャネル乳化を行った際の最大有効チャネル率(安定して液滴を生成しているチャネルの割合)を調べた。結果を以下の(表2)に示す。

【27】

【表2】
JP0003030364B1_000003t.gif【0028】(表2)から、安定して液滴を生成するにはテラスが必要であり、仕切壁があると、マイクロチャネル乳化の安定性が増し、マイクロチャネルの高さは低くなっても安定したマイクロチャネル乳化が可能であることが分る。

【29】

【発明の効果】以上に説明したように、本発明によれば、高融点油脂を融点以上に加熱して液状とし、この液状となった高融点油脂からなる分散相を加圧し、この分散相を一定幅の多数のマイクロチャネルを介して連続相中に分散せしめてエマルションを形成し、更にこのエマルションから連続相を除去することで高融点油脂のマイクロスフィアを回収するようにしたので、高融点油脂のマイクロスフィアとして、平均粒径が数10μmでしかも均一なもの(標準偏差が5%以下)を、連続して大量に製造することができる。

【30】
また、アニオン系或いは非イオン系界面活性剤を添加することで、安定したマイクロチャネル乳化が可能になり、また本発明では、ブレークスルー圧力をLaplaceの式から予測できるので、分散相に加える圧力をコントロールすることで効率よくマイクロスフィアを生成することができる。更に、マイクロチャネル形状を工夫することで更にマイクロスフィアの生成効率を向上できる。

【31】
したがって、従来廃棄されていた魚油、動物脂等の食品、医薬或いは化成品への応用を更に高め、省資源に寄与する。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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