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明細書 :種子の殺菌方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第2899690号 (P2899690)
公開番号 特開平11-032514 (P1999-032514A)
登録日 平成11年3月19日(1999.3.19)
発行日 平成11年6月2日(1999.6.2)
公開日 平成11年2月9日(1999.2.9)
発明の名称または考案の名称 種子の殺菌方法
国際特許分類 A01C  1/08      
FI A01C 1/08
請求項の数または発明の数 2
全頁数 5
出願番号 特願平09-210165 (P1997-210165)
出願日 平成9年7月22日(1997.7.22)
審査請求日 平成9年7月22日(1997.7.22)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】591031360
【氏名又は名称】農林水産省食品総合研究所長
発明者または考案者 【氏名】林 徹
【氏名】鈴木 節子
個別代理人の代理人 、【弁理士】、【氏名又は名称】久保田 藤郎
審査官 【審査官】山田 昭次
参考文献・文献 特開 昭50-134854(JP,A)
調査した分野 A01C 1/08
特許請求の範囲 【請求項1】
アブラナ科又はマメ科植物の種子を回動させながら、該種子の表面にエネルギーが160~210keVの電子線を照射することを特徴とする種子の殺菌方法。

【請求項2】
種子に縦方向の振動と横方向の振盪を与えて回動させる請求項1記載の方法。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【01】

【発明の属する技術分野】本発明は、種子の殺菌方法に関し、詳しくは施設園芸などで用いられる種子の表面に低エネルギーの電子線を照射することにより、該種子に付着している微生物を殺菌する方法に関する。

【02】

【従来の技術】アブラナ科植物やマメ科植物などは、施設栽培される代表的な植物であるが、種子が植物病原菌や腐敗菌等で汚染されていると、それが原因となって栽培過程で罹病したり、腐敗することがある。種子を殺菌することにより、このような現象を防止することが可能であり、農作物の収量の向上に役立つ。しかし、殺菌剤や次亜塩素酸のような薬品を用いて殺菌を行うと、種子表面に付着している微生物には有効であっても、種皮の内側を汚染している微生物には効果がなかったり、発芽力を低下させることがある。また、種子の高圧処理や加熱処理は、発芽力を低下させずに完全に殺菌することは困難である。このような状況下、発芽力や発芽後の成長に悪影響を及ぼすことなく種子を確実に殺菌する技術の開発が強く望まれている。

【03】

【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、発芽力などに悪影響を与えずに種子の表面や種皮の内側に存在する植物病原菌、腐敗菌等の微生物を殺菌する技術を提供することであり、この技術は人体や環境に対しても無害でなければならない。

【04】

【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ね、電子線の殺菌効果と電子の透過力がエネルギーに依存することに着目し、電子線を利用する殺菌方法を確立し、本発明に到達した。

【05】
すなわち、本発明はアブラナ科又はマメ科植物の種子を回動させながら、該種子の表面にエネルギーが160~210keVの電子線を照射することを特徴とする種子の殺菌方法である。

【06】

【発明の実施の形態】本発明が適用される種子は特に制限されないが、施設園芸などで用いられるものが好ましく、例えばアブラナ科又はマメ科植物の種子が挙げられる。具体的には、もやしの原料種子であるブラックマッペ、マングビーンの種子、大豆、小豆、カイワレダイコン、小松菜、菜の花などがある。

【07】
本発明に用いる電子線は、本質的に透過力が弱いものであり、種子の表面や種皮の内側にしか到達することができないという性質を持っている。電子線源としては、スキャン形電子線照射装置とエリアビーム形電子線照射装置があるが、本発明にはエリアビーム形電子線照射装置を用いることが好ましい。本発明では、種子の表面や種皮の内側に存在する微生物の殺菌を目的としているため、低エネルギーの電子線、すなわちソフトエレクトロンを利用する。ここで、低エネルギーの電子線としてはエネルギーが160~210keVの電子線が好ましく、対象とする種子の種類、形状などを考慮して、この範囲内で適切な低エネルギーの電子線を選択する。例えば、ブラックマッペやマングビーンの種子に対しては180~190keV、大豆や小豆では170~200keV、カイワレダイコンでは170~180keVのソフトエレクトロンを照射することが適当である。照射時間については、ビーム量により異なるが、この場合も種子の種類、形状、量などを考慮して適宜決めればよい。例えば、ビーム量が20~50mAの場合は、1~10秒程度である。

【08】
種子の表層部や種皮の内側に存在する微生物を殺菌するためには、すべての種子の表面に電子線を均一に照射する必要がある。そのため、本発明では種子に縦方向の振動と横方向の振盪を同時に与えて回動させ、この状態で電子線を照射する。この場合、種子に与える振動や振盪の強さ(速度)は適切に調節しながら行う。振動と振盪のどちらか一方を単独で与えた場合は、それらの速度を変化させても、すべての種子を回動させて電子線を種子の表面に均一に照射することが困難であるばかりでなく、殺菌処理に長時間を要することとなり、殺菌効率が著しく低下する。

【09】
このため本発明者らは、既に回動装置を開発した。この装置は、種子の種類、形状や比重の違い等を考慮して、それぞれの種子に適した速度で振動および振盪を与えることによって、均一に種子を回動させることができる。この装置は、図1および図2に示した構造のものであり、試料トレー1、トレー載置台2、その下方に直列状に配設した振動器4および振盪器5、該振動器および振盪器から発生する振動と振盪を前記トレー載置台に伝える伝動具3、前記振動器と振盪器を作動させるための電源スイッチ6とこれらの作動用スイッチ7(振動器作動用)、8(振盪器作動用)並びに振動器と振盪器のスピードコントローラー9、10を主要な構成要素としている。なお、図中の11は装置の外板であり、装置正面の外板(計器板)には、図示したように、各種計器類が配設されている。12は電源ランプ、13は振動器ランプ、14は振盪器ランプ、15はヒューズ、16はアジャストボルトである。

【10】
この装置の材質や寸法は、使用目的等に応じて適宜に設定すればよいが、後記する実施例で用いた装置の本体(外板で囲った部分)は、幅35cm×奥行き30cm×高さ30cm(試料トレー上端までの高さは45cm)であり、トレーはプラスチック製が好適で、幅30cm×奥行き9cm×深さ3.5cmのものを使用した。また、トレー載置台上のトレーの振幅は3cm、上下動は0.2cmとなるように設定した。なお、伝動具としてはスプリングが好ましい。

【11】
この装置を使用して種子を殺菌する方法について説明する。まず、装置を電子線発生装置の下に置くと共に、装置を起動させるため、電源(図示してない)と接続する。次いで、殺菌を必要とする種子を2段乃至多段に重ならないように収容した試料トレー1をトレー載置台2上に取り付け、電源スイッチ6をONにする。さらに、振動器作動用スイッチ7並びに振盪器作動用スイッチ8をそれぞれONにして作動させる。振動器および振盪器によって発生した振動と振盪は、伝動具3を介してトレー載置台2に伝えられ、それに伴い試料トレー1内の種子は縦方向の振動と横方向の振盪が与えられて回動する。なお、振動器のスピードコントローラー9と振盪器のスピードコントローラー10により振動器および振盪器の動きを調節して試料トレー1内の種子が均一、かつ適切に回動するように設定することができる。

【12】
この状態で電子線発生装置からソフトエレクトロンを照射して種子の殺菌を行う。この場合、電子線発生装置からトレー底面までの距離は30cm程度まで、好ましくは10~15cmに調節する。この距離が近すぎると、種子表面を均一に殺菌することが困難となり、離れすぎると、十分な殺菌効果が得られない。ソフトエレクトロンを所定時間照射して種子表面の殺菌を終了した後、作動用スイッチ7、8をOFFとし、さらに電源スイッチ6をOFFとする。この装置において、1回の操作で処理可能な種子の量は、基本的にはトレーの底面積に依存するが、通常は10~100g、好ましくは20~60gである。

【13】

【実施例】次に、本発明を実施例によって詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1
もやしの原料種子であるブラックマッペおよびマングビーンの種子のそれぞれについて、殺菌試験と発芽試験を行った。すなわち、図示した回動装置を用いて各試料50gに振動と振盪を与えて回動させながら、バンデグラーフ型電子加速器を用いて170~200keVの範囲の加速電圧で発生させたソフトエレクトロンをビーム量4μAで1時間照射した後、生菌数と発芽率を測定した。なお、生菌数の測定は以下の方法で行った。試料2.5gを0.9%塩化ナトリウム水溶液(生理食塩水)25ml中でホモジナイザー(商品名:エースホモジナイザー、日本精機(株)製)を使用してホモジナイズして得た懸濁液0.2mlを普通寒天培地(商品名:ニッスイ普通寒天培地、日水製薬(株)製)上に塗布し、30℃で48時間培養した後、培地上に生成したコロニー数より求めた。生菌数が10個/g以下であれば、ほぼ殺菌されたと判定した。なお、無処理の種子に存在する生菌数は、後述するように、103 ~104 個/gである。また、発芽率は、湿らせた脱脂綿を敷いたシャーレに試料10gを均一に置いて蓋をし、30℃で培養して種子の発芽の様子を毎日観察し、発芽した種子を数えることにより求めた。ブラックマッペの結果を第1表に、マングビーンの結果を第2表に示す。

【14】

【表1】
JP0002899690B2_000002t.gif【0015】
【表2】
JP0002899690B2_000003t.gif【0016】実施例2
ブラックマッペおよびマングビーンの種子の代わりにカイワレダイコンの種子を用いたこと以外は、実施例1と同様に行った。結果を第3表に示す。

【17】

【表3】
JP0002899690B2_000004t.gif【0018】実施例3
ブラックマッペおよびマングビーンの種子の代わりに小豆の種子を用いたこと以外は、実施例1と同様に行った。結果を第4表に示す。

【19】

【表4】
JP0002899690B2_000005t.gif【0020】実施例4
ブラックマッペおよびマングビーンの種子の代わりに小松菜の種子を用いたこと以外は、実施例1と同様に行った。結果を第5表に示す。

【21】

【表5】
JP0002899690B2_000006t.gif【0022】
【発明の効果】本発明の方法によれば、種子を均一、かつ確実に回動させながら、殺菌に必要最低限度のエネルギーの電子線を照射することによって、発芽などに悪影響を与えることなく、種子の表面や種皮の内側に付着している微生物を効率良く殺菌することができる。
図面
【図1】
0
【図2】
1