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明細書 :土壌生物の密度探知法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B1)
特許番号 特許第3007969号 (P3007969)
登録日 平成11年12月3日(1999.12.3)
発行日 平成12年2月14日(2000.2.14)
発明の名称または考案の名称 土壌生物の密度探知法
国際特許分類 A01M  1/00      
C12M  1/34      
G01N 33/24      
FI A01M 1/00 Q
C12M 1/34
G01N 33/24
請求項の数または発明の数 7
全頁数 6
出願番号 特願平11-046427 (P1999-046427)
出願日 平成11年2月24日(1999.2.24)
審査請求日 平成11年3月25日(1999.3.25)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】391027136
【氏名又は名称】農林水産省農業工学研究所長
発明者または考案者 【氏名】中里 裕臣
【氏名】竹内 睦雄
【氏名】小泉 健
【氏名】吉田 弘明
個別代理人の代理人 【識別番号】100086852、【弁理士】、【氏名又は名称】相川 守
審査官 【審査官】秋月 美紀子
調査した分野 A01M 1/00
G01N 33/24
要約 【課題】容易にかつ短時間で精密な線虫密度分布を得る。
【解決手段】第1の工程で、自然電位測定装置2により圃場3の自然電位を測定し、その圃場3の自然電位分布を作成する。第2の工程で、第1の工程により得られた自然電位分布のうち自然電位が異なる値を示す地点において土壌を採取する。次に、第3の工程で、第2の工程により得られた土壌からネグサレセンチュウの地中密度を測定し、測定された密度と採取された地点の自然電位との相関関係を判断する。第4の工程で、第3の工程により判断された土壌生物密度と自然電位との相関関係に基づき、第1の工程により得られた自然電位に対応させて上記圃場3の土壌生物の密度を探知するようにしている。
特許請求の範囲 【請求項1】
自然電位測定装置により所定の土地の自然電位を測定し、その土地の自然電位分布を作成する第1の工程と、第1の工程により得られた自然電位分布のうち自然電位が異なる値を示す地点において土壌を採取する第2の工程と、第2の工程により得られた土壌から所定の生物の地中密度を測定し、測定された密度と採取された地点の自然電位との相関関係を判断する第3の工程と、第3の工程により判断された土壌生物密度と自然電位との相関関係に基づき、第1の工程により得られた自然電位に対応させて上記土地の土壌生物の密度を探知する第4の工程とを備えていることを特徴とする土壌生物の密度探知法。

【請求項2】
予めある土壌生物の地中密度と自然電位との相関関係を判断し、探知対象の土壌生物を特定する工程を有することを特徴とする請求項1に記載の土壌生物の密度探知法。

【請求項3】
時間的間隔をおいて第1ないし第4の工程を繰り返し、土壌生物の、経時的に変化する密度分布を作成する工程を有することを特徴とする請求項1または2に記載の土壌生物の密度探知法。

【請求項4】
予め年間の時期的条件と自然電位との相関関係を導き、土壌採取時の時期に応じて自然電位分布を補正した後、土壌生物の密度分布を作成することを特徴とする請求項1ないし3のうちいずれか1に記載の土壌生物の密度探知法。

【請求項5】
予め気象条件と自然電位との相関関係を導き、土壌採取時の気象条件に応じて自然電位分布を補正した後、土壌生物の密度分布を作成することを特徴とする請求項1ないし4のうちいずれか1に記載の土壌生物の密度探知法。

【請求項6】
第2の工程において、自然電位が最大値、最小値及び中間値を示す地点において試料採取を行うことを特徴とする請求項1ないし5のうちいずれか1に記載の土壌生物の密度探知法。

【請求項7】
第3の工程において、土壌中の生物が有害線虫であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1に記載の土壌生物の密度探知法。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【01】

【発明が属する技術分野】本発明は、農耕地における土壌生物の密度探知法に関するものである。

【02】

【従来の技術】農耕地では、自活性線虫により土づくりがなされる一方、寄生性線虫による作物への被害が問題となっている。有害線虫の病害対策を有効なものとするには、寄生性線虫の分布状況の把握が不可欠である。従来、かかる寄生性線虫の分布状況の把握には、多数の地点で土壌を採取し、採取した試料中の線虫を分離し、分離した線虫を顕微鏡下で同定してその数を計数し、各地点における線虫密度を面で把握するようにしている。

【03】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の線虫密度分布の把握の仕方では、1試料の分析に1~2日程度の時間がかかり、試料が多くなればなるほど線虫の分離、及び計数に多大の労力と時間を必要としていた。このため、大量の試料の分析を行うことが難しく、単位面積あたりの精密な線虫密度分布を得にくく、線虫被害の予測あるいは対策に必要な情報の入手が困難であるという問題がある。また、経時的に変化する線虫密度分布を得るためには、何度も土壌のサンプリングを行う必要がある。さらに、採取された試料の数が少ないと、線虫の数のばらつきが生じやすく、標本としての意味を失う畏れがある。正確な線虫密度分布が得られないと、土壌消毒用の農薬の過剰投入を招いたり、消毒不十分により農作物の被害を招くという問題がある。

【04】
本発明は、上記問題点を除くためになされたもので、簡素な構成で測定の省力化をはかり、容易にかつ短時間で精密な線虫密度分布を得ることができる土壌生物の密度探知法を提供することを目的とするものである。

【05】

【課題を解決するための手段】本発明に係る土壌生物の密度探知法は、自然電位測定装置により所定の土地の自然電位を測定し、その土地の自然電位分布を作成する第1の工程と、第1の工程により得られた自然電位分布のうち自然電位が異なる値を示す地点において土壌を採取する第2の工程と、第2の工程により得られた土壌から所定の生物の地中密度を測定し、測定された密度と採取された地点の自然電位との相関関係を判断する第3の工程と、第3の工程により判断された土壌生物密度と自然電位との相関関係に基づき、第1の工程により得られた自然電位に対応させて上記土地の土壌生物の密度を探知する第4の工程とを備えるようにしたものである。

【06】
本発明に係る土壌生物の密度探知法では、まず初めに、第1の工程により自然電位測定装置により所定範囲の土地の自然電位を測定し、その土地の自然電位分布を作成し、第2の工程により第1の工程で得られた自然電位分布のうち電位が異なる値を示す地点において土壌を採取し、第3の工程により第2の工程で得られた土壌から所定の生物の地中密度を測定し、測定された密度と採取された地点の自然電位との相関関係を判断し、第4の工程により第3の工程で判断された土壌生物密度と自然電位との相関関係に基づき、第1の工程により得られた自然電位に対応させて上記土地の土壌生物の密度が探知される。このため、エネルギーが異なる値を示す地点を任意に選択し、その選択された地点の数に応じてサンプリングの点数が決定されるので、従来のものに較べてサンプリング点数を減らすことができるとともに、少ないサンプリング数でより精密な土壌生物密度の分布を得ることができる。また、第3の工程では、自然電位と土壌生物密度との間の相関関係を判断するようにしているので、相関関係の強弱に基づいて探知対象となる土壌生物が特定される。従って、自然電位の分布に基づいて土壌生物の密度が推定される。このため、一旦サンプリングにより相関関係が判断された土壌生物を絞り込んで、その土壌生物の土壌生物密度が判明すると、自然電位分布を調べるだけで、土壌生物密度の分布を得ることができる。

【07】

【発明の実施の形態】以下、図面に基づいて本発明の実施の形態について説明する。図1は、本発明の土壌生物の密度探知法に用いられる自然電位測定装置の一実施の形態を示す概念図である。本発明の自然電位測定装置2は、図1に示すように、非分極性電極l-1~l-15が接続された電極切替器4と、この電極切替器4と基準電極(非分極性電極)Sとにそれぞれ電気的に接続される自然電位測定器5とを備えて構成される。非分極性電極l-1~l-15は土壌生物密度を探る対象となる圃場3に、それぞれ所定の間隔で均一に設置される。ここで用いる非分極性電極l-1~l-15は電極-土壌間の接地抵抗の影響の小さいものである。自然電位測定装置2は、電極切替器4により、基準電極Sと非分極性電極l-1との電位差、基準電極Sと非分極性電極l-2との電位差、というように順次切り替えて圃場3の自然電位の測定を行うようになっている。この測定に基づいて、圃場3の自然電位分布が得られる。基準電極Sは、圃場のある地点の電極(図3のStandard Point参照))を0mVとして基準化するようになっている。

【08】
ところで、図2は、ある実験用圃場3の自然電位の経時的な変化を示す自然電位モニター図である。この図2に示すように、土壌中の自然電位分布には様々な要因が作用し、気温や降雨等によっても変化する。しかしながら、そのような短期的な要因による自然電位の変化幅は10~20mV程度(図2参照)である。ところが、実験用圃場(以下圃場と称す)3では、図3に示すように、これ以上の70mVの変化幅を持つ定常的な自然電位分布が存在している。このような自然電位分布は、植物の根の活性度や線虫の生育に影響を与えると予想される。

【09】
そこで、圃場3において、線虫密度の測定と、自然電位の分布とを調査したところ、ある種の線虫の密度と自然電位との間には相関関係があることが判明した(図4参照)。そこで、本願の発明者らは、この相関関係に着目し、自然電位を測定することにより、ある種の線虫の密度、特に、農耕地における有害線虫の密度の把握に成功した。すなわち、本発明の土壌生物の密度探知法では、まず、自然電位測定装置2により圃場3の自然電位を測定し、圃場3の自然電位分布を作成する(以下、第1の工程と称す、図3参照)。図3は、1998年4月12日-25日にかけて行った13回の自然電位探査の平均による自然電位分布であり、X=60m、Y=0m点の電極を0Vとして基準化して表示したものである。この点(X=60m、Y=0m)は図2に示した自然電位のモニター点である。これにより得られた自然電位分布のうち自然電位が異なる値を示す地点において土壌を採取する(以下、第2の工程と称す)。このとき、試料採取を行う地点は、自然電位が最大値、最小値及び中間値を示す地点とすることが好ましい。

【10】
この第2の工程により得られた土壌から所定の生物の地中密度を測定し、測定された密度と採取された地点の自然電位との相関関係を判断する(以下、第3の工程と称す)。本実施の形態では、図4に示すように、土壌生物を、有害なネグサレセンチュウと、有害性が認められない自活性線虫とについて行ったところ、ネグサレセンチュウの地中密度と自然電位との間に正の相関関係が認められ、自活性線虫の地中密度と自然電位との間には相関関係が認められなかった。そして、ネグサレセンチュウの地中密度と自然電位とについて図4に示すように、自然電位-ネグサレセンチュウ密度の回帰直線Lを導く。このとき、予めある土壌生物(例えば、ネグサレセンチュウ、自活性線虫等)の地中密度と自然電位との相関関係を判断した後、相関関係の強い土壌生物(例えば、ネグサレセンチュウ等)を密度分布探知の対象とし、相関関係が明確でない土壌生物(例えば、自活性線虫等)を対象から外しておくようにしてもよい。

【11】
第3の工程により導かれた土壌生物密度と自然電位との相関関係(図4の自然電位-ネグサレセンチュウ密度の回帰直線L参照)に基づき、第1の工程により得られた自然電位分布(図3参照)に対応させて圃場3の土壌生物(ネグサレセンチュウ)の密度分布を作成する(以下、第4の工程と称す)ようにしている。従って、一旦サンプリングにより相関関係のある土壌生物について土壌生物密度が判明すると、自然電位分布を調べるだけで、土壌生物密度の分布を得ることができるので、簡素な構成で測定の省力化をはかり、短時間で精密な線虫密度分布を得ることができる。本実施の形態では、予めある土壌生物(例えば、ネグサレセンチュウ、自活性線虫等)の地中密度と自然電位との関連を判断し、関連が認められた土壌生物(例えば、ネグサレセンチュウ等)のみを密度分布探知の対象とし、関連が認められない土壌生物(例えば、自活性線虫等)を対象から外すようにしてるが、これに限られるものではなく、第3の工程で、ある土壌生物の地中密度と自然電位との相関関係の有無を判別し、相関関係が認められた土壌生物(例えば、ネグサレセンチュウ等)を特定する工程を設け、この特定された土壌生物のみを密度分布探知の対象とするようにしてもよい。

【12】
自然電位は、図2に示すように、気温や降雨等によって変化する。このため、予め気象条件と自然電位との相関関係を導き、土壌採取時の気象条件に応じて自然電位分布を補正した後、土壌生物の密度分布を作成することが好ましい。また、自然電位は、年間の時期的条件(季節等)によっても変化する。このため、予め年間の時期的条件と自然電位との相関関係を導き、土壌採取時の時期に応じて自然電位分布を補正した後、土壌生物の密度分布を作成することが好ましい。さらに、時間的間隔をおいて第1ないし第4の工程を繰り返し、気候的条件や時期的条件を補正し、土壌生物の、経時的に変化する密度分布を作成することもできる。このように、経時的に変化する土壌生物密度の分布をも得ることができるので、事前に土壌生物(線虫)密度の予測が可能となる。

【13】
なお、上記実施の形態では、自然電位と有害土壌生物(ネグサレセンチュウ)との相関関係について述べたがこれに限られるものではなく、土壌生物密度と関連性を有するものであれば、自然電位に限られるものでなく、磁場(電磁場)、放射線等の自然エネルギーであってもよい。また、上記実施の形態では、土壌生物としてネグサレセンチュウを対象に挙げているがこれに限られるものではなく、他の有害な生物や有益な生物であってもよい。また、上記実施の形態では、自然電位分布に基づいて、土壌生物の密度分布を作成するようにしているが、これに限られるものではなく、上記圃場3のある地点における土壌生物の密度を自然電位に対応させて探知するようにしてもよいのは勿論である。

【14】

【実施例】次に、上記構成に係る自然電位測定装置を用いて実験を行った一実施例を示す。実験は、本出願人の畑地かんがい圃場において行った。図3に示す所定範囲の圃場3において、X方向に6m間隔12列、Y方向に6m間隔で7行、14m間隔で1行の計96点に非分極性電極を設置し、自然電位測定装置により測定範囲外200m地点に設置した非分極性電極と圃場内各電極との電位差を自然電位として測定した。図表を説明すると、図1は、自然電位測定装置2の概念図、図2は、自然電位の経時変化図である。図2の測定値は図3のX=60m、Y=0m点と測定範囲外200m地点に設置した非分極性電極間の電位差であり、変動幅は20mV以内である。図3は、66×50mの範囲(圃場3)に設置した96点の非分極性電極による自然電位分布図であり、黒丸(●)印で示す点が電極点である。表示した値は、1998年4月12日~25日にかけて行った13回の測定値を平均し、X=60m、Y=0m点を0mVとして正規化したものである。自然電位分布の変化幅は70mVに及ぶ。図4は、図3において+印を付した電極点において採取した土壌の線虫密度と自然電位の相関を示したグラフである。探査期間中は圃場3は無作付け状態であった。

【15】
図3において、近接して高電位から低電位を示すY=12m行のX=0m,X=6m,X=12m,X=18mの地点および低電位を示すX=42m、Y=36mの地点の5地点において土壌試料を採取し、線虫密度測定を行った。その結果、図4に示すように、自活性線虫密度と自然電位には相関は認められなかったが、有害線虫であるネグサレセンチュウ類の線虫密度と自然電位の間には正の相関が認められた。この結果から、自然電位分布から線虫密度分布を検出可能であることが確認された。

【16】

【発明の効果】以上説明したように本発明の土壌生物の密度探知法は、自然電位測定装置により所定の土地の自然電位を測定し、その土地の自然電位分布を作成する第1の工程と、第1の工程により得られた自然電位分布のうち自然電位が異なる値を示す地点において土壌を採取する第2の工程と、第2の工程により得られた土壌から所定の生物の地中密度を測定し、測定された密度と採取された地点の自然電位との相関関係を判断する第3の工程と、第3の工程により判断された土壌生物密度と自然電位との相関関係に基づき、第1の工程により得られた自然電位に対応させて上記土地の土壌生物の密度を探知する第4の工程とを備えているため、簡素な構成で測定の省力化をはかることができる。また、容易にかつ短時間で精密な土壌生物密度分布を得ることができる。さらに、一旦サンプリングにより土壌生物密度が判明すると、自然電位分布を調べるだけで、土壌生物密度の分布を得ることができるので、従来困難であった土壌生物密度分布の事前予測が可能となる。また、精密な土壌生物密度分布が得られるので、対象となる土壌生物が有害線虫の場合、農耕地において土壌消毒等に用いる農薬の量を必要最小限の量に抑えることができるので、コストの低減化や農薬低投入農業の実現をはかることができる効果がある。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3