TOP > 国内特許検索 > 食用キノコ由来の色素を用いる染色方法 > 明細書

明細書 :食用キノコ由来の色素を用いる染色方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B1)
特許番号 特許第3020159号 (P3020159)
登録日 平成12年1月14日(2000.1.14)
発行日 平成12年3月15日(2000.3.15)
発明の名称または考案の名称 食用キノコ由来の色素を用いる染色方法
国際特許分類 D06P  1/34      
C09B 61/00      
FI D06P 1/34
C09B 61/00
請求項の数または発明の数 5
全頁数 9
出願番号 特願平10-287713 (P1998-287713)
出願日 平成10年10月9日(1998.10.9)
審査請求日 平成10年10月9日(1998.10.9)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】391030284
【氏名又は名称】農林水産省蚕糸・昆虫農業技術研究所長
発明者または考案者 【氏名】白田 昭
【氏名】加藤 弘
個別代理人の代理人 【識別番号】100091096、【弁理士】、【氏名又は名称】平木 祐輔 (外1名)
審査官 【審査官】原 健司
参考文献・文献 特開 平2-234988(JP,A)
特開 平5-5282(JP,A)
特開 平6-192978(JP,A)
調査した分野 D06P 1/34
C09B 61/00
要約 【課題】 食用キノコ由来の色素を用いる染色方法の提供。
【解決手段】 以下の工程:(1) 食用キノコから有機溶媒及び/又は水で色素を抽出する工程、(2) 得られた色素抽出物を染色対象に添加する工程、を包含する染色対象の染色方法。
特許請求の範囲 【請求項1】
以下の工程:
(1) ヒラタケ属に属するキノコからメタノール若しくはエタノール及び/又は水で色素を抽出する工程、
(2) 得られた色素抽出物を染色対象に添加する工程、を包含する、染色対象の染色方法。

【請求項2】
メタノール若しくはエタノール及び/又は水の存在下で染色対象及び食用キノコを浸漬処理することを特徴とする染色対象の染色方法。

【請求項3】
染色対象が繊維製品、食品、飼料、化粧品又は医薬品である請求項1又は2記載の染色方法。

【請求項4】
メタノール若しくはエタノールの濃度が80~95%である請求項1~3のいずれか1項に記載の染色方法。

【請求項5】
ヒラタケ属に属するキノコがトキイロヒラタケである請求項1~4のいずれか1項に記載の染色方法。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【0001】

【発明の属する技術分野】本発明は、食用キノコから有機溶媒及び/又は水で抽出された色素を用いた染色方法に関する。

【0002】

【従来の技術】従来、衣料の染色には、合成色素が多く使用されてきた。しかし、最近は穏やかな風合いで染色される天然色素に人気が集まり、草木染めはブームになっている。また、染色工場から出る廃液の問題など、環境への影響からも合成色素よりも、分解されやすく安全性の高い天然色素を使用することが好ましい。さらに、食品、飼料、化粧品等の分野でも、人体への影響から、合成色素は敬遠され、天然色素の重要性はますます増大してきている。

【0003】
特に、近年、食品に添加される色素の大半が、合成色素から天然色素に変わりつつある。食品の中でも、特に清涼飲料、チューインガム、飴、カプセル状食品、タブレット状食品等の嗜好的食品や健康食品に添加する色素としては、そのヘルシーなイメージから、天然色素が用いられる傾向が強い。

【0004】
飼料分野においては、例えば、ブラウンフィッシュミール、ホワイトフィッシュミール、植物性タンパク質などを主成分とする飼料の場合、飼料中でのその配合割合が、飼料製造時の収穫量や価格により変動するため、飼料の色彩を一定に保つことができず、消費者に不安感を抱かせることが問題になっている。消費者の中には飼料を購入するに当たり、飼料の色彩を判断材料として選択する場合もあり、飼料の色彩が製造ロットにより変化することは好ましくない。従って、外観性及び安全性の面から、天然色素を用いる飼料の染色方法の開発が望まれている。

【0005】
工業的に用いられている天然色素による染色方法としては、エンジムシ由来のコチニールなど動物由来の天然色素を用いる方法、ニンジン由来のβ-カロチン、ベニバナ由来のカルサミン、紫根由来のシコニンなど植物由来の天然色素を用いる方法、モナスカス属(Monascus)に属するかび由来の赤色及び黄色系色素、セラチア属(Serratia)に属する細菌由来の赤色系色素など微生物由来の天然色素を用いる方法などが挙げられる。しかし、微生物の一種であるキノコ、特に安全性の面からも利用価値が高いものと思われる食用キノコに由来する色素を用いる染色方法はほとんど知られていない。

【0006】

【発明が解決しようとする課題】本発明は、食用キノコから有機溶媒及び/又は水で抽出された色素を用いる染色方法を提供することを目的とする。

【0007】

【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、食用キノコから抽出した色素が染色に有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下の工程:
(1) 食用キノコから有機溶媒及び/又は水で色素を抽出する工程、(2) 得られた色素抽出物を染色対象に添加する工程、を包含する、染色対象の染色方法である。

【0008】
さらに、本発明は、有機溶媒及び/又は水の存在下で染色対象及び食用キノコを浸漬処理することを特徴とする染色対象の染色方法である。食用キノコとしては、ヒラタケ属に属するキノコ(例えばトキイロヒラタケ)が挙げられる。染色対象としては、繊維製品、食品、飼料、化粧品又は医薬品が挙げられる。有機溶媒としては,メタノール又はエタノール(例えば80~95%メタノール又は80~95%エタノール)が挙げられる。以下、本発明を詳細に説明する。

【0009】

【発明の実施の形態】本発明の染色方法は、従来からよく用いられている合成色素による染色方法とは異なり、食用キノコ、特に、ヒラタケ属に属するキノコ(例えばトキイロヒラタケ)から抽出したトキイロ色素を用いる染色方法である。
1. キノコの栽培及び収穫
本発明に用いる色素(本色素ともいう)の採取源となる生物は食用キノコである。本明細書において、食用キノコとは、子実体を形成し得る菌類を意味し、特に、ヒラタケ属に属するキノコ、例えばトキイロヒラタケ(Pleurotus ostreatus)、タモギタケ(Pleurotus citrinopileatus)等が挙げられる。

【0010】
これらのヒラタケ属に属するキノコの中では、鮮やかなトキ色を呈する食用キノコとして知られていることから、特にトキイロヒラタケが好ましい。本発明に用いられるトキイロヒラタケは、市販のもの(例えば村田椎茸本舗製のトキイロヒラタケ)を用いることができるが、天然の林地から、収穫してもよく、またほだ木栽培、おがくず栽培、菌糸の培養等により人工的に栽培・収穫することもできる。

【0011】
例えばヒラタケ属に属するトキイロヒラタケは、天然の林地では、ヤナギ、ポプラ、フジ、シデなどの広葉樹の枯木に多数重なり合って発生し、特に、7月~10月にかけて収穫することができる。さらに、トキイロヒラタケのほだ木栽培では、ポプラなどの原木に種菌を接種し、主に林地で、ほだ木を育成して子実体を栽培・収穫することができる。さらに、トキイロヒラタケのおがくず栽培の場合、例えば、ナラ由来のおがくずに米糠と適度の水分を混和したものを瓶、袋、または箱に詰め、高温で殺菌後、種菌を接種し、菌糸を生長させ、温度を下げることにより子実体を発生させ、その後適切な期間栽培することにより子実体を生育・収穫させることができる。

【0012】
さらに、トキイロヒラタケの菌糸は、液体培地又は固体培地等の人工培地を用いて培養増殖させることもできる。
2. キノコからの色素の抽出及び精製
ヒラタケ属に属するキノコからの色素の抽出及び精製には、一般の天然物からの色素の抽出及び精製に慣用される様々な方法が適用される。例えば、溶媒にキノコの子実体を浸漬させることにより色素を抽出する方法が挙げられる。具体的には、生の子実体又は乾燥させた子実体を浸漬後、色素が十分抽出されるまで放置する。得られた抽出液は、そのまま染色液として用いることができるが、減圧下で溶媒除去後、カラムクロマトグラフィー(例えば、分配、吸着、分子ふるい、イオン交換クロマトグラフィー等)を使用してより色素を高純度に精製することもできる。

【0013】
ここで、キノコからの色素の抽出には、有機溶媒及び/又は水などを用いることができる。有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、ラウリルアルコール、セタノール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、ベヘニルアルコール等の炭素数1~22個の直鎖の1価アルコール又は側鎖を有する1価アルコール;プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ポリエチレングリコール等のグリコール類;グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン等の3価アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸エチル、脂肪酸のエチルエステル等の各種エステル類;ジクロルメタン、クロロホルム、ジクロルエタン等のハロゲン化アルカン(主として塩化物);ジエチルエーテル、エルセロソルブ等の各種エーテル類;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素等の各種極性有機溶媒、各種非極性有機溶媒等を挙げるこができ、使用に際しては単独又は混合物として用いることができる。また、酸性、アルカリ性にpH調整して利用することもできる。

【0014】
特に、生の又は乾燥したトキイロヒラタケの子実体からの色素の抽出は、メタノール、エタノール、アセトン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン等の有機溶媒を含有する抽出溶媒を用いて行うことが好ましい。抽出度は使用する有機溶媒の種類及び濃度によって異なり、メタノール及びエタノールの場合80~95%位が好ましい。ここで、トキイロヒラタケから抽出した色素をトキイロ色素という。トキイロ色素を用いると、繊維などの染色対象物は、染色条件の違いにより、ピンク色~肌色のトキ色や黄色~黄土色に染色される。得られた色素の生体への影響は、ウサギ、マウス、ラットなどを用いる動物実験や、イネごま葉枯病菌、クワ芽枯病菌などを用いる微生物実験により調べることができる。

【0015】
3. 繊維製品の染色法
ヒラタケ属に属するキノコから抽出した色素を用いて様々な繊維製品を染色することができる。例えば、トキイロヒラタケの子実体から抽出したトキイロ色素を用いて、以下のようにして、繊維製品を染色することができる。本発明の染色方法の対象となる繊維製品としては、天然繊維製、化学繊維製又はそれらの混紡繊維製のものが挙げられる。そして、天然繊維としては、絹、綿、麻、獣毛など、化学繊維としては、ビニロン、ポリエステル、アクリル、ナイロン、アセテート、レーヨンなど、混紡繊維としては、それらを所望の割合で含有するものが挙げられる。また、それらの繊維から作られる繊維製品としては、糸、織物、編物、不織布などが挙げられ、複合繊維の布帛には混紡織物、混紡編物、混紡不織布、交織物、及び交編物などが含まれる。

【0016】
(1) 同時染色法
本発明においては、色素の抽出と、該色素による染色とを同時に行うことができる。この方法を同時染色法という。乾燥したトキイロヒラタケの子実体の傘の部分を砕き、適当な溶媒(例えば前記有機溶媒及び/又は水など)を加え、前記繊維製品を浸漬することにより色素の抽出を行うとともに、繊維製品の染色を行う。その結果、色素の抽出と染色が同時に行われる。染色した繊維製品は、水洗いし、陰干しする。

【0017】
さらに、染色に及ぼす溶媒に対するトキイロヒラタケの量、抽出染色時間及び温度などの影響を調べることにより、染色に最も適した条件を調べることができる。染色に及ぼす溶媒に対するトキイロヒラタケの量の影響は、一定量の溶媒に対して様々な量のトキロヒラタケを浸漬し、同時に浸漬した布の染色具合を肉眼で検定することにより調べることができる。また、染色に及ぼす溶媒に対する抽出染色の影響は、一定量の溶媒の存在下で一定量の布及びトキイロヒラタケを、様々な時間浸漬し、布の染色具合を肉眼で検定することにより調べることができる。さらに、染色に及ぼす温度の影響は、一定量の溶媒の存在下で一定量の布及びトキイロヒラタケを様々な温度で浸漬し、布の染色具合を肉眼で検定することにより調べることができる。

【0018】
(2) 抽出染色法
本発明においては、色素の抽出と、該色素による染色とを別々に行うこともできる。この方法を抽出染色法という。すなわち、乾燥したトキイロヒラタケの子実体の傘の部分を砕き、上記2.に記載の適当な溶媒(抽出溶媒という)を加えて色素を抽出する。得られた色素抽出液をそのまま染色液として用いることもできるが、一旦、色素抽出液を風乾し、得られた色素乾固物を所望の色素濃度になるように別の溶媒(染色溶媒という)に溶解したものを染色液として用いることもできる。このようにして得られた染色液に、繊維製品を適当な時間浸漬して染色する。その後、染色した繊維製品を水洗し、陰干しする。

【0019】
本発明においては、同じトキイロヒラタケから抽出されたトキイロ色素を用いても、染色溶媒の組成によって異なる色に染色することができる。例えば、絹布をトキ色に染色する場合は、水及び/又はメタノールで抽出した色素を80~100%のメタノール水溶液中で染色し、絹布を黄色~黄土色に染色する場合には、60%以下のメタノノール水溶液又は水中で染色することができる。

【0020】
(3) 染め分け法
本発明においては、色素の各繊維に対する染色性の違いを利用して、繊維の染め分けに利用することもできる。例えば、トキイロ色素により、ビニロン及びナイロンは良く染色されるが、ポリエステル、アクリル、レーヨンはとんど染色されないので、染色したい部分のみをナイロン繊維で、染色したくない部分をポリエステルアクリル、レーヨン繊維で織り上げた繊維製品を、本色素に浸漬することによって、ナイロン繊維部分のみ染色された繊維製品を作製することができる。
(4) 染色堅牢度試験
染色した繊維製品の染色の堅牢度はJIS規格に基づく試験法に従って行うことができる。

【0021】
4.食品及び飼料の染色方法
トキイロヒラタケは、食用にされているものであり、そこから抽出されたトキイロ色素を添加した食品は、安全性が高いと考えられる。したがって、本色素は、菓子類、ソフトクリーム、パン、麺など各種食品、あるいは動物用飼料への着色料資材として、利用することもできる。本色素を食品の着色料として使用する場合は、上記3(2)において得られた色素抽出物を固体のまま、または液体(好ましくは水)に適切な濃度になるように溶解し、食品に、例えば、混合、浸漬、塗布、噴霧等の方法で添加処理し得る。その結果、本色素は、食品に良好な色彩を付与することができる。この場合、本色素の添加量は、食品の成分全量に対して、0.01~1.0重量%、好ましくは0.03~0.3重量%である。

【0022】
一方、色素を配合する飼料としては、飼料の色調が製品の付加価値に影響を及ぼすような飼料が挙げられる。例えば、そのような飼料の例として、イヌ<HAN>、</HAN>ネコ<HAN>、</HAN>鑑賞魚<HAN>、</HAN>トリ等の動物用の配合飼料が挙げられる。そして、これらの飼料の形状としては、ペレット状、クランブル状、顆粒状、粉末状等であり得る。この場合、本色素の添加量は、上記食品に添加する場合と同様である。

【0023】
5.化粧品及び医薬品の染色方法
トキイロ色素は、化粧品及び医薬品を所望の色に着色するために用いることができる。例えば、上記3(2)において得られた色素抽出物を、ローション、乳液、クリーム、パック剤、石鹸、パップ剤、プラスター剤、ペースト剤、軟膏、エッセンス、ゲル剤、シャンプー、リンス、パウダー、ファンデーション、化粧水、浴用剤等の化粧品、又は錠剤、丸剤、顆粒剤、散剤、トローチ、軟膏、カプセル等の医薬品に配合させ、それらを着色することができる。この場合、色素の添加量は、化粧品の場合、全量に対して0.01~1.0重量%、好ましくは0.03~0.3重量%、医薬品の場合、全量に対して0.001~0.5重量%、好ましくは0.003~0.1重量%である。

【0024】
6.シルク製品の染色方法
シルク製品とは、蚕の繭由来のものであって、加水分解シルク、シルクパウダー、シルクセリシン抽出液を意味する。これらは食品添加物や化粧品の原料として利用されている。上記3(2)において得られた色素抽出物をシルク製品に添加することによって着色されたシルク製品を得ることができる。例えば、色素抽出物の添加量は、シルク製品全量に対して、0.01~1.0重量%、好ましくは0.03~0.3重量%である。そして、本色素で着色したシルク製品を添加するものとして、アイスクリーム、各種ドリンク、スープの素、麺類、豆腐、麩などの食品、クリーム、乳液、ローション、おしろい、アイシャドウ、ファンデーションなどの化粧品が挙げられる。

【0025】

【実施例】以下、本発明を実施例、試験例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
〔実施例1〕トキイロ色素を用いる繊維製品の染色方法
(1) 同時染色法
絹布を同時染色法により染色した。すなわち、各種有機溶媒に市販(村田椎茸本舗製)の乾燥トキイロヒラタケの子実体及び絹布を浸漬し、室温に2日間放置した。次いで、絹布を水洗い後、陰干しした。

【0026】
各種溶媒による絹の染色度と色調の結果を表1に示した。溶媒濃度が100%の場合、メタノールではトキ色(ピンクがかった肌色)に、水では黄色に染色された。また、溶媒濃度が80%の場合、絹布はメタノール、エタノール又はテトラヒドロフランを用いたときにはトキ色に、アセトン又は酢酸エチルを用いたときには黄色に染色された。色の濃さは、80%又は90%のメタノールを用いた場合が最も濃かった。また、色相(H)、明度(V)、彩度(C)を表すマンセル値は、80%メタノール液中で染色した絹布の場合、H・V/C=9R・7.93/5であった。すなわち、色相は、紅梅やチリアンパープル(貝紫)に近い赤紫色、明度は高い(V=7.93)が、彩度はそれほど高くなく(C=5)、柔らかい印象を与える温和な色であった。

【0027】

【表1】
JP0003020159B1_000002t.gif【0028】次いで、トキイロヒラタケ子実体及び80%メタノールを用いる同時染色法により絹のネッカチーフを染色した。図1に示したように、ネッカチーフはむらなく奇麗に染色(トキ色)されることを確認した。
(2) 抽出染色法
絹布を抽出染色法により染色した。すなわち、抽出溶媒として水、染色溶媒としてメタノールを用いた場合について検討した。まず、乾燥トキイロヒラタケ10gを水100mlに1日浸漬後、濾過した。次いで、得られた抽出液を2mlとり、そこに水及びメタノールを合計8ml加え、一定量の色素を含む0、20、40、60、80%メタノール溶液中で1日染色し、染色度を比較した。その結果、表2に示したように、80%液で染色した場合に最も濃いトキ色に染色された。40%では黄色掛かった色調に染色された。また0%の水溶液の場合は、淡い黄土色に染色された。

【0029】

【表2】
JP0003020159B1_000003t.gif【0030】次に、抽出溶媒及び染色溶媒のいずれもメタノールを用いた場合について検討した。すなわち、乾燥トキイロヒラタケ5gを80%メタノール100mlに浸漬し、6時間抽出後、等量ずつシャーレに分注して風乾した。得られた抽出残渣に100、95、90、80、又は50%メタノール液を加え、各液中での絹布の染色性を比較した。その結果、表3に示したように、95、90%液で最も濃いトキ色に染まった。また、50%液では黄土色~黄色に染色された。

【0031】

【表3】
JP0003020159B1_000004t.gif【0032】以上のように、染色液中に同一濃度のトキイロ色素が含有されていても、染色に用いる溶媒の組成を変化させることにより異なる色調に染色できることがわかった。
〔実施例2〕同時染色法による染色性に及ぼすトキイロヒラタケの量、時間及び温度の影響

【0033】
(1) トキイロヒラタケの量と染色性
同時染色法により絹布を染色した場合の染色性に及ぼすトキイロヒラタケの量の影響を調べた。すなわち、80%メタノール100mlに対して、様々な量(0.5、1、2、4、6、8、10、15g)の乾燥トキイロヒラタケ及び絹布を浸漬し、室温に1日間放置した。その後、水で絹布を洗浄後、陰干しした。その結果、表4に示したように、トキイロヒラタケが0.5~4gの間ではトキイロヒラタケの量に依存して染色度は濃くなる傾向を示したが、6g以上ではトキイロヒラタケの量を増やしても染色度に差は認められなかった。

【0034】

【表4】
JP0003020159B1_000005t.gif【0035】上記(1)の条件のもとで、染色時間を、セット時から0~6時間、0~24時間、24~48時間の3区に分けて染色度を調べた。その結果、染色程度はトキイロヒラタケの量によって異なり、0.5~4g量の場合は、、の順であり、6~15gの場合は、、、の順であった。すなわち、80%メタノール中で同時染色を行う場合、染色程度のピークは高濃度では6時間程度、低濃度では24時間程度であり、24時間以後、染色力は低下した。

【0036】
次に、80%メタノール100mlに対して、5gのトキイロヒラタケを用いる同時染色法における染色度の経時的変化を調べた。すなわち、抽出と同時に布を浸漬し、セット時から0.5、1、2、4、6、8時間後及び1、2、3、4、6日後に布を取り出して染色程度を比較した。その結果、表5に示したように、布の染色度は0.5~8時間の間では増加したが、1日を過ぎると逆に減少する傾向がみられ、本条件下では、4時間~1日間の染色で、十分濃い染色を達成できることがわかった。

【0037】

【表5】
JP0003020159B1_000006t.gif【0038】次いで、染色に及ぼす温度の影響を調べた。すなわち、80%メタノール及び水抽出液を用いて5、20、37℃での染色性を調べた。セット4及び24時間後に染色の程度を比較した結果、80%メタノールではトキ色に染色され、染色速度は20℃と37℃間では殆ど差が見られなかった。5℃では遅くなり染色の程度は他の温度に比べ、約1/4程度であった。また、4時間後でも比較的染色された。水の場合は黄土色に染色され、その程度は高温ほど、また時間が経過するほど濃く染色された。

【0039】
〔実施例3〕色素の安定性の検討
抽出したトキイロ色素の水中での安定性を調べた。すなわち、乾燥トキイロヒラタケ10gを水100gで1日抽出し、布で濾過した液を20mlずつに分けて室温に0、1、2、4日間放置した後、4倍量のメタノールを加え、80%メタノール染色液を調製した。得られた染色液に絹布を室温で1日浸漬し、水で洗浄した後、陰干しした。その結果、いずれも同程度の濃さのトキ色に染色され、本色素の染色力は水に溶けた状態でも安定に維持されることがわかった。

【0040】
〔実施例4〕各種繊維に対する染色性
トキイロ色素の各種繊維に対する染色性を抽出染色法によって調べた。すなわち、トキイロヒラタケ10gに90%メタノール100mlを加え6時間抽出した。得られた抽出液中に各種繊維でできた布を浸漬し、16時間放置した。次いで水洗い後、陰干しした。その結果、表6及び図2に示したように、最も良く染色されたのはビニロン及びナイロンで、ついで絹(生糸)であった。ポリエステル、アクリル、レーヨン、アセテート、羊毛、綿ではほとんど染色されなかった。従って、ビニロンなどの染色度の良好な繊維とポリエステルなどのほとんど染色されない繊維とを用いて織り上げた繊維製品を、本色素を含む染色液に浸漬することによって、本色素で染色されやすい繊維のみを染め分けることが可能であることがわかった。

【0041】

【表6】
JP0003020159B1_000007t.gif【0042】〔実施例5〕染色堅牢度試験
同時染色法によりトキイロ色素で染色した絹布を供試し、染色の堅牢度を測定した。染色堅牢度の試験はJIS規格に基づいて行った。日光試験以外は無色の絹で染色布を挟んで処理し、無色布への色の移り(汚染)と染色布の色の変化(変退色)で調べた。その結果、堅牢度は表7に示した通りであり、耐光度を除き、優れた堅牢度を示した。

【0043】

【表7】
JP0003020159B1_000008t.gif【0044】〔実施例6〕色素の微生物の増殖に及ぼす影響
トキイロヒラタケからメタノール又は水で抽出した色素の微生物の増殖に及ぼす影響を調べた。すなわち、実施例1(2)と同様の手順により水で抽出した色素を濾過滅菌後、得られた抽出液10μlを、真菌(イネごま葉枯病菌、クワ芽枯病菌又は白紋羽病菌)又は細菌(野菜軟腐病菌、クワ縮葉細菌病菌、レタス腐敗病菌又はヒラタケ腐敗病菌)を播種したジャガイモ・スクロース寒天平板(剥皮したジャガイモ250gを1Lの水で約30分間煮沸し、ガーゼ濾過した濾液にスクロース20g及び寒天18g加えたもの、pH6.0)上に滴下し、菌の増殖を調べた。

【0045】
その結果、いずれの微生物もトキイロヒラタケ抽出物による増殖の阻害は認められず、トキイロヒラタケ由来の色素は、生細胞の増殖にはほとんど影響を与えないことがわかった。

【0046】

【発明の効果】本発明の食用キノコの子実体から有機溶媒及び/又は水で抽出された色素を用いて染色処理することを特徴とする染色方法は、繊維製品、食品、飼料又は化粧品の染色に有用である。
図面
【図1】
0
【図2】
1