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明細書 :p-ニトロフェニル 2-アセチルアミノ-4-O-(2-アミノ-2-デオキシ-β-D -グルコピラノシル)-2-デオキシ-β-D -グルコピラノシドおよびその塩並びにその製造法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3062591号 (P3062591)
公開番号 特開平10-330392 (P1998-330392A)
登録日 平成12年5月12日(2000.5.12)
発行日 平成12年7月10日(2000.7.10)
公開日 平成10年12月15日(1998.12.15)
発明の名称または考案の名称 p-ニトロフェニル 2-アセチルアミノ-4-O-(2-アミノ-2-デオキシ-β-D -グルコピラノシル)-2-デオキシ-β-D -グルコピラノシドおよびその塩並びにその製造法
国際特許分類 C07H 15/203     
C12P 19/26      
FI C07H 15/203
C12P 19/26
請求項の数または発明の数 3
全頁数 7
出願番号 特願平09-156091 (P1997-156091)
出願日 平成9年5月30日(1997.5.30)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用申請有り キチン・キトサン研究 第3巻 第2号(平成9年5月15日)日本キチン・キトサン学会発行 第142-143頁 に発表
審査請求日 平成9年5月30日(1997.5.30)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】591031360
【氏名又は名称】農林水産省食品総合研究所長
発明者または考案者 【氏名】徳安 健
【氏名】小野 裕嗣
【氏名】亀山 眞由美
【氏名】森 隆
【氏名】濱松 潮香
【氏名】林 清
個別代理人の代理人 【識別番号】100074077、【弁理士】、【氏名又は名称】久保田 藤郎
審査官 【審査官】深草 亜子
調査した分野 C07H 15/203
C12P 19/26
特許請求の範囲 【請求項1】
下記の式(1)で表される-ニトロフェニル 2-アセチルアミノ-4--(2-アミノ-2-デオキシ-β-D -グルコピラノシル)-2-デオキシ-β-D -グルコピラノシドまたはその酸付加塩。
【化1】

【請求項2】
JP0003062591B2_000002t.gif キチン2量体の-ニトロフェニル誘導体にコレトトリカム・リンデムチアナムATCC56676株由来の脱アセチル化酵素を作用させることを特徴とする請求項1記載の-ニトロフェニル 2-アセチルアミノ-4--(2-アミノ-2-デオキシ-β-D -グルコピラノシル)-2-デオキシ-β-D -グルコピラノシドまたはその酸付加塩の製造法。

【請求項3】
キチン2量体の-ニトロフェニル誘導体が、-ニトロフェニル-ジ--アセチル-β-D -キトビオシドである請求項2記載の方法。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【01】

【発明の属する技術分野】本発明は、-ニトロフェニル 2-アセチルアミノ-4--(2-アミノ-2-デオキシ-β-D -グルコピラノシル)-2-デオキシ-β-D -グルコピラノシドおよびその塩、並びにその製造法に関する。本物質は、キチン分解酵素のうち、エキソ型のものには反応せず、エンド型の酵素により分解を受け、呈色性の-ニトロフェノールを遊離する性質を有している。このことから、本物質は現在市販されている基質と比較して、酵素の分解様式に対する特異性および感度の高い酵素活性測定基質となり得る。

【02】

【従来の技術】キチン分解酵素は、細菌,菌類,植物,節足動物および脊椎動物に広く分布しており、それぞれにおける存在意義の解明および産業への活用を目的とした研究が活発に行われている。一方、キチン分解酵素の活性測定法としては、比濁法,粘度法,放射活性を利用した方法および還元糖定量法等があるが、どの方法も測定に長時間を要したり、手間がかかる等の問題があった。

【03】
また、糖鎖工学の発展に伴い、還元末端に-ニトロフェニル基を有する単糖誘導体を用いる酵素活性測定法が開発され、主にエキソ型の酵素に対する迅速な活性測定法となった。しかしながら、エンド型の酵素に対する活性測定法については、有効な方法が開発されていない。さらに、エンド型の酵素活性を測定することができると考えられたキチンオリゴ糖の-ニトロフェニル誘導体についても、オリゴ糖を端から順次分解するエキソ型の酵素に対する基質にもなり得ることから、エンド型の酵素に対して特異性の高い基質の開発が待たれている。実際に、エンド型かエキソ型を見分けるのには、反応の進行に伴う粘度の低下速度が速い(エンド型酵素による)、または遅い(エキソ型酵素による)かを調べるというような煩雑な方法がとられている。

【04】

【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上記した従来の課題を解決し、エキソ型のキチン分解酵素には作用せず、エンド型のものに対して特異的な基質になり得る化合物およびその製造法を提供することである。

【05】

【課題を解決するための手段】請求項1に記載の本発明は、下記の式(1)で表される-ニトロフェニル2-アセチルアミノ-4--(2-アミノ-2-デオキシ-β-D -グルコピラノシル)-2-デオキシ-β-D -グルコピラノシドまたはその酸付加塩である。

【06】

【化2】
JP0003062591B2_000003t.gif
【0007】請求項2に記載の本発明は、キチン2量体の-ニトロフェニル誘導体にコレトトリカム・リンデムチアナムATCC56676株由来の脱アセチル化酵素(以下、微生物由来の脱アセチル化酵素と略記することがある。)を作用させることを特徴とする請求項1記載の-ニトロフェニル 2-アセチルアミノ-4--(2-アミノ-2-デオキシ-β-D -グルコピラノシル)-2-デオキシ-β-D -グルコピラノシドまたはその酸付加塩の製造法である。請求項3に記載の本発明は、キチン2量体の-ニトロフェニル誘導体が、-ニトロフェニル-ジ--アセチル-β-D -キトビオシドである請求項2記載の方法である。

【08】

【発明の実施の形態】p-ニトロフェニル基の結合した糖鎖誘導体は、糖質加水分解酵素等の活性測定基質等として製造、市販されているが、本発明に係る上記式(1)で表される化合物は、文献未記載の新規化合物である。また、本化合物の塩としては酸付加塩があり、例えば塩酸塩,酢酸塩などがある。このものは下記の式(2)で表される。

【09】

【化3】
JP0003062591B2_000004t.gif
【0010】以下に、本発明の-ニトロフェニル 2-アセチルアミノ-4--(2-アミノ-2-デオキシ-β-D -グルコピラノシル)-2-デオキシ-β-D -グルコピラノシドおよびその塩の製造法について説明する。本発明に係る化合物は、キチン2量体の-ニトロフェニル誘導体に微生物由来の脱アセチル化酵素を作用させることによって得ることができる。キチン2量体の-ニトロフェニル誘導体としては、市販品を用いることができ、例えば-ニトロフェニル-ジ--アセチル-β-D -キトビオシドなどは好ましいものである。

【11】
また、微生物由来の脱アセチル化酵素としては、例えば不完全菌由来のキチン脱アセチル化酵素、具体的にはコレトトリカム・リンデムチアナム(Colletotrichum lindemuthianum)ATCC56676株由来のキチン脱アセチル化酵素(Biosci. Biotech. Biochem., 60(10), 1598-1603,1996) がある。この酵素は、例えば次の方法によって得ることができる。上記の不完全菌の胞子を液体培地で培養した後、培養物から活性画分を回収する。これを粗酵素液として用いる他、常法により精製して精製酵素とすることができる(特開平8-289785号公報)。本酵素を原料化合物である上記のキチン2量体の-ニトロフェニル誘導体に作用させることにより、該誘導体の非還元末端の-アセチルグルコサミン残基のアセチル基のみを脱離し、グルコサミン残基に変換して、目的とする-ニトロフェニル 2-アセチルアミノ-4--(2-アミノ-2-デオキシ-β-D -グルコピラノシル)-2-デオキシ-β-D -グルコピラノシドを製造することができる。

【12】
具体的には、キチン2量体の-ニトロフェニル誘導体を四ほう酸ナトリウム・塩酸緩衝液(pH8.5)に溶解し、基質濃度0.1~0.5%、好ましくは0.2%程度の溶液とする。この溶液に微生物由来のキチン脱アセチル化酵素を0.01~0.3ユニット、好ましくは0.1ユニット程度加えたのち、30~60℃、好ましくは45℃で1~6時間、好ましくは2~4時間反応させる。その後、反応生成物を陽イオン交換樹脂に吸着させることによって、未反応の原料物質を除去し、さらにpHを上げることによって目的物を溶出させる。このとき用いる陽イオン交換樹脂としては、アンバーライトCG-120カラム,CM-セファデクス等が好ましい。次いで、溶出液を水で平衡化した逆相カラムに供し、吸着した目的物をメタノールで溶出させて脱塩、精製する。このときに用いる逆相カラムとしては、Sep-Pak plus C-18 が好ましい。所望により、これに塩酸,酢酸等の適当な酸を加えることにより、塩形成された化合物を調製することができる。

【13】
このようにして得られた物質の構造解析を質量分析,核磁気共鳴分析により行った。さらに、ケミカルアブストラクツにより本物質を検索(1957~1997)した結果、文献上の記載が認められなかった。以上のことから、本物質は新規な化合物であると判定された。

【14】
また、本物質の主な利用法としては、エンド型キチナーゼの活性測定基質としての利用が挙げられる。前記したように、キチナーゼに関するこれまでの呈色性活性測定基質では、エキソ型の酵素の混入した状態で、エンド型酵素の活性のみを測定することが不可能であった。しかし、本発明による新規化合物は、エキソ型のキチン分解酵素による分解を受けることなくエンド型酵素によってのみ分解を受ける性質を有することから、キチン分解酵素の分解機構の解析方法の提供、並びにエンド型酵素の活性測定の効率化という観点から役立つと考えられる。

【15】

【実施例】次に、本発明を実施例によって詳しく説明するが、本発明はこれらによって制限されるものではない。
実施例1
(1)キチン脱アセチル化酵素の精製
不完全菌コレトトリカム・リンデムチアナム ATCC56676株を0.28%グルコース,0.123%硫酸マグネシウム(7水和物),0.2%プロテオース・ペプトン,0.272%りん酸二水素カリウムおよび2.0%寒天を含む培地に接種し、25℃で暗所に7日間静置培養して黒色の菌体を誘導した。

【16】
次いで、菌体を1%麦芽抽出物,0.4%酵母抽出物,0.4%ブドウ糖を含む200mlの培地(pH5.8)が入った500ml容三角フラスコに接種し、22℃にて暗所下で1分間に100回転の条件で振とう培養を行った。8日目頃から酵素活性を示すものが培養液中に分泌され、18日目まで該活性が増加した。18日経過した時点で培養を終了し、菌体培養液をナイロンフィルターでろ過したのち、ガラスファイバーを通過させて微粒子を除き、培養ろ液を回収した。該培養ろ液に4℃下で80%飽和になるように硫安を加え、一晩静置したのち遠心分離により沈澱を回収した。この沈澱を少量の50mM 四ほう酸ナトリウム・塩酸緩衝液(pH8.5)に溶解し、同緩衝液中で透析を行った。透析後の粗酵素液を疎水クロマトグラフィーおよび陰イオンクロマトグラフィーを用いて分画、精製し、SDSゲル電気泳動的に単一バンドを示すキチン脱アセチル化酵素を得た(特開平8-289785号公報)。

【17】
(2)-ニトロフェニル 2-アセチルアミノ-4--(2-アミノ-2-デオキシ-β-D -グルコピラノシル)-2-デオキシ-β-D -グルコピラノシドの製造
-ニトロフェニル-ジ--アセチル-β-D -キトビオシド(生化学工業株式会社製)0.40mgを0.2mlの20mM 四ほう酸ナトリウム・塩酸緩衝液(pH8.5)に溶解し、これに上記(1)で得た不完全菌コレトトリカム・リンデムチアナム由来の精製キチン脱アセチル化酵素を0.05ユニット加え、45℃で3時間反応させた。この反応を6回繰り返して得た反応液をまとめたのち、塩酸で平衡化した後に水で洗浄した陽イオン交換樹脂(アンバーライトCG-120カラム、オルガノ株式会社製)に通し、反応生成物を保持させた後に、50mM 四ほう酸ナトリウム・塩酸緩衝液(pH8.5)を流して溶出させた。その後、水で平衡化した固相抽出カラム(Sep-Pak plus C-18 、ウォーターズ社製)に供して保持させた後に、100%メタノールで溶出した。

【18】
精製した化合物を質量分析計(JEOL社製)により調べた結果、[M+H+]=504のシグナルが検出され、分子量が503であると推定された。また、1H-NMR による分析の結果、本物質の構造は-ニトロフェニル 2-アセチルアミノ-4--(2-アミノ-2-デオキシ-β-D -グルコピラノシル)-2-デオキシ-β-D -グルコピラノシドであると決定された。図1は質量スペクトル、図2は1H-NMR スペクトルである。

【19】
実施例2
実施例1で得た精製-ニトロフェニル 2-アセチルアミノ-4--(2-アミノ-2-デオキシ-β-D -グルコピラノシル)-2-デオキシ-β-D-グルコピラノシド 0.05%に、エキソ型のキチン分解酵素活性を備えたβ-N-アセチルヘキソサミニダーゼ(Penicillum oxalicum由来、生化学工業株式会社製)0.007ユニットを50mM クエン酸ナトリウム緩衝液(pH4.5)中で、37℃で1時間反応させた。反応液0.01mlを0.49mlの200mM ほう酸緩衝液(pH8.6)と混合して、黄色化した-ニトロフェノールを400nmでの吸光度を測定することにより定量した。なお、対照として-アセチルグルコサミンの-ニトロフェニル誘導体を基質として用いた。その結果、同量の-アセチルグルコサミンの-ニトロフェニル誘導体を基質として用いた場合と比較して、本発明の化合物の-ニトロフェノールの遊離は2%程度に抑えられていた。

【20】
実施例3
実施例1で得た精製-ニトロフェニル 2-アセチルアミノ-4--(2-アミノ-2-デオキシ-β-D -グルコピラノシル)-2-デオキシ-β-D-グルコピラノシドを、ストレプトコッカス・グリセウス (Streptomyces griseus)由来のエンド型キチナーゼ(SIGMA社製)0.004ユニットを用い、20mM リン酸ナトリウム緩衝液中で37℃で1時間反応させて分解させた。その結果、反応開始直後より、-ニトロフェノールの遊離に起因する反応液の黄色化が見られた。また、この試料を高速液体クロマトグラフィー(DIONEX社製カラム, CarbopakPA-1 ,溶離液:15mM NaOH,パルスド・アンペロメトリー検出器)によって分析し、遊離した糖の構造を調べた。図3は、高速液体クロマトグラフィーで分析したクロマトグラムである。その結果、遊離糖は2-アセトアミド-2-デオキシ-4--(2-アミノ-2-デオキシ-β-D -グルコピラノシル)-D -グルコース標品と同一の保持時間を示し、本化合物がエンド型キチナーゼによって2糖単位で切断を受けていることが確認された。

【21】

【発明の効果】本発明によれば、新規物質である-ニトロフェニル 2-アセチルアミノ-4--(2-アミノ-2-デオキシ-β-D -グルコピラノシル)-2-デオキシ-β-D -グルコピラノシドおよびその塩が提供される。この化合物を用いることによって、混在するエキソ型の酵素の影響を受けることなく、エンド型キチナーゼの活性を迅速に測定することができる。
図面
【図1】
0
【図3】
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【図2】
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