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明細書 :2-メチル-{4-O-(2-アミノ-2-デオキシ-β-グルコピラノシル)-1、2-ジデオキシ-α-グルコピラノ}(2、1-d)-2-オキサゾリンおよびその塩

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3012924号 (P3012924)
公開番号 特開平11-246588 (P1999-246588A)
登録日 平成11年12月17日(1999.12.17)
発行日 平成12年2月28日(2000.2.28)
公開日 平成11年9月14日(1999.9.14)
発明の名称または考案の名称 2-メチル-{4-O-(2-アミノ-2-デオキシ-β-グルコピラノシル)-1、2-ジデオキシ-α-グルコピラノ}(2、1-d)-2-オキサゾリンおよびその塩
国際特許分類 C07H  9/06      
C08B 37/08      
FI C07H 9/06
C08B 37/08
請求項の数または発明の数 1
全頁数 6
出願番号 特願平10-059038 (P1998-059038)
出願日 平成10年2月25日(1998.2.25)
審査請求日 平成10年2月25日(1998.2.25)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】591031360
【氏名又は名称】農林水産省食品総合研究所長
発明者または考案者 【氏名】徳安 健
【氏名】森 隆
【氏名】北川 由樹
【氏名】林 清
個別代理人の代理人 【識別番号】100074077、【弁理士】、【氏名又は名称】久保田 藤郎 (外1名)
審査官 【審査官】中木 亜希
参考文献・文献 特開 平9-3088(JP,A)
Agric.Biol.Chem.,Vol.54,No.12(1990)p.3191-3199
調査した分野 C07H 9/06
C08B 37/08
特許請求の範囲 【請求項1】
下記の式(1)で表される2-メチル-{4--(2-アミノ-2-デオキシ-β-グルコピラノシル)-1、2-ジデオキシ-α-グルコピラノ}(2、1-d)-2-オキサゾリンまたはその酸付加塩。
【化1】
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発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【01】

【発明の属する技術分野】本発明は、2-メチル-{4--(2-アミノ-2-デオキシ-β-グルコピラノシル)-1、2-ジデオキシ-α-グルコピラノ}(2、1-d)-2-オキサゾリンおよびその酸付加塩に関するものである。

【02】

【従来の技術】豊富な生物生産量を誇るバイオマスであるキチンは、-アセチルグルコサミンの直鎖ポリマーであり、工業的には甲殻類の外殻より抽出することによって得られる。しかしながら、キチンを溶解する適当な溶媒がないことなどから、誘導体の調製が困難である。そのため、キチンの素材としての応用範囲は狭く、付加価値が低いものである。一方、キチンの脱アセチル化物であるキトサンは、酸に溶解するのみでなく、反応性に富み、抗菌性やコレステロール吸収抑制等の特異的な性質を示す基となるアミノ基を持つことから、誘導体化が容易であり、様々な分野において活用されており、現在も基礎・応用研究の双方が盛んに行われている。そのような中で、キチンとキトサンの中間的なものである、部分的に脱アセチル化されたキチンおよびその低分子化物が、水溶性、高い保湿性や金属吸着性、あるいは高い植物エリシター活性等を示すことが明らかになり、応用性の高い素材として注目を浴びつつある。

【03】
しかしながら、部分脱アセチル化キチンの製造方法は、キチンを高度に膨潤させた後に濃アルカリ中で脱アセチル化するか、あるいはキトサンを溶解したのちに、一定量の無水酢酸を加えてアセチル化するというものであり、アセチル基の分布が完全には均一でなく、部分脱アセチル化キチン製品の品質がばらつくという問題がある。また、植物に対するエリシター活性を検定する場合も、部分脱アセチル化キチンを加水分解することによって得られる部分脱アセチル化キチンオリゴ糖の混合物をエリシター活性物質として用いており、その構造が不均一であることから、現象の把握から一歩踏み込んだ作用機作の解明を行うことが非常に困難となっている。さらに、部分脱アセチル化キチンおよびそのオリゴ糖等に存在し、反応性に富む遊離アミノ基を化学修飾する際に、生成した部分脱アセチル化キチンおよびそのオリゴ糖等の誘導体上に存在している置換基は完全には規則的に配列していないため、誘導体の品質がばらつく原因となっている。

【04】

【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上記した従来の課題を解決してキチン質の一層高度な活用方法を開発することである。

【05】

【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、新規な2糖である2-メチル-{4--(2-アミノ-2-デオキシ-β-グルコピラノシル)-1、2-ジデオキシ-α-グルコピラノ}(2、1-d)-2-オキサゾリンの製造に成功した。本発明は、この知見に基づいて完成されたのである。

【06】
請求項1記載の本発明は、下記の式(1)で表される2-メチル-{4--(2-アミノ-2-デオキシ-β-グルコピラノシル)-1、2-ジデオキシ-α-グルコピラノ}(2、1-d)-2-オキサゾリンまたはその酸付加塩である。
【化2】
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【0007】
【発明の実施の形態】本発明の新規物質である2-メチル-{4--(2-アミノ-2-デオキシ-β-グルコピラノシル)-1、2-ジデオキシ-α-グルコピラノ}(2、1-d)-2-オキサゾリンは、キチン2量体を出発原料として合成されたオキサゾリン骨格を持つキチン2量体誘導体である2-メチル-{4--(2-アセトアミド-2-デオキシ-β-グルコピラノシル)-1、2-ジデオキシ-α-グルコピラノ}(2、1-d)-2-オキサゾリンを脱アセチル化することによって得られる。このオキサゾリン骨格をもつキチン2量体誘導体は、既知の方法で製造することができる。例えば、ジ--アセチルキトビオースヘキサアセテートを原料として特開平9-3088号公報に記載された反応式Aにしたがって製造することができる。

【08】
本発明の新規物質を基質として脱アセチル化処理を行うことにより、下記の式(2)で表される繰り返し構造を持つ50%脱アセチル化キチンまたはそのオリゴ糖を得ることができる。この脱アセチル化処理は酵素的に行うことにより、該基質の非還元末端側の糖のアセチル基のみを脱離するのである。
【化3】
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【0009】酵素的な脱アセチル化処理を行うために用いる脱アセチル化酵素としては、例えば不完全菌由来のキチン脱アセチル化酵素、具体的にはコレトトリカム・リンデムチアナム (Colletotrichum lindemuthianum) ATCC 56676株由来のキチン脱アセチル化酵素(Biosci, Biotech, Biochem., 60(10), 1598-1603, 1996)などがある。この酵素は、例えば特開平8-289785号公報に記載されている方法によって得ることができる。すなわち、上記の不完全菌の胞子を液体培地(1%麦芽抽出物、0.4%酵母抽出物および0.4%グルコースを含む培地)で培養した後、培養物から活性画分を回収することによって得ることができる。これを粗酵素液として用いることができる他、常法にしたがって精製し、精製酵素として用いることもできる。

【10】
本酵素を上記の基質に作用させることによって、該基質の非還元末端側の-アセチルグルコサミン残基のアセチル基のみを脱離し、グルコサミン残基に変換して、上述の物質を製造することができる。酵素的な脱アセチル化処理を具体例により説明する。最終濃度が0.1~1.0%、好ましくは0.8%となるように調製した基質と上記のキチン脱アセチル化酵素を0.5~20ユニット/ml、好ましくは4ユニット/mlとを混合し、これを20mM炭酸アンモニウム緩衝液(pH8.5)中にて、25~45℃、好ましくは30℃で1~12時間、好ましくは2~4時間処理する。このようにして、前記の式(1)で表される2-メチル-{4--(2-アミノ-2-デオキシ-β-グルコピラノシル)-1、2-ジデオキシ-α-グルコピラノ}(2、1-d)-2-オキサゾリンが得られる。なお、酸付加塩としては、塩酸塩や酢酸塩などがあり、下記の式で表される。

【11】

【化4】
JP0003012924B2_000005t.gif【0012】前記式(2)で表される50%脱アセチル化キチンまたはそのオリゴ糖あるいはそれらの酸付加塩は、キチン鎖上の糖残基の2つに1つが規則的に脱アセチル化されているという構造的特徴を有している化合物である。これらの化合物は、上記のようにして得られた式(1)で表される本発明の新規物質またはその酸付加塩を合成原料として製造することができる。すなわち、式(1)で表される本発明の新規物質またはその酸付加塩を酵素触媒重合付加反応に供することにより製造することができる。ここで用いる酵素触媒としては、バチルス由来のキチナーゼ等を挙げることができる。式(1)で表される本発明の新規物質またはその酸付加塩をクエン酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)などの緩衝液に溶解(終濃度は10~100mM程度が適当)した後、前記酵素を加えて25~45℃、好ましくは40℃で酵素触媒重合付加反応を行うことによって、式(2)で表される化合物が得られる。この際、15mM程度の濃度になるように2-アセチルアミノ-4--(2-アミノ-2-デオキシ-β-D-グルコピラノシル)-2-デオキシ-D-グルコースを加えることが望ましい。なお、オリゴ糖およびそれらの酸付加塩は、この化合物を直接、あるいは酸または揮発性塩の添加後、凍結乾燥することによって得ることができる。これらの化合物は、植物エリシターや保湿剤としての用途を持つ他、該化合物を出発物質として、糖残基上の水酸基や均一に分散したアミノ基を適当な試薬を用いて化学修飾することによって、アミノ基あるいは置換基の立体構造が制御された新規化合物を合成することが可能である。

【13】
キチン分子またはキトサン分子中に存在する水酸基や遊離アミノ基を修飾する方法は数多く知られており、例えば「キチン、キトサン実験マニュアル」(キチン・キトサン研究会編、技報堂出版発行)等のマニュアルに従うことによって、当業者であれば化学修飾反応を極めて容易に行うことができる。

【14】
なお、前記式(1)で表される本発明の化合物やその酸付加塩は、前記したように、酵素触媒重合付加による高分子化を行う際のユニットとなり、式(2)で表される化合物やそのオリゴ糖およびそれらの酸付加塩を製造するための原料とすることができるが、この他に2-メチル-{4--(2-アセトアミド-2-デオキシ-β-グルコピラノシル)-1、2-ジデオキシ-α-グルコピラノ}(2、1-d)-2-オキサゾリン(特開平9-3088号公報に記載されている化合物)と一定の比率で混合させて、同様にして重合付加反応を行うことにより、50%以下の任意の脱アセチル化度のキチンまたはそのオリゴ糖およびそれらの酸付加塩を合成することができる。

【15】

【実施例】以下に、実施例等により本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらによって制限されるものではない。
実施例1(キチン脱アセチル化酵素の精製)
不完全菌コレトトリカム・リンデムチアナム ATCC 56676株を0.28%グルコース、0.123%硫酸マグネシウム(7水和物)、0.2%プロテオース・ペプトン、0.272%リン酸二水素カリウムおよび2.0%寒天を含む培地に接種し、25℃の暗所にて7日間静置培養して黒色の菌体を誘導した。

【16】
次いで、該菌体を1%麦芽抽出物、0.4%酵母抽出物および0.4%グルコースを含む200mlの培地(pH5.8)が入った500ml容三角フラスコに接種し、22℃の暗所にて1分間に100回転の条件で振盪培養を行った。培養中、インドール塩酸法(J. Biol. Chem.,184, 517-522(1950))により培養液の酵素活性を測定した。その結果、8日目頃から酵素活性を示すものが培養液中に分泌され、18日目まで該活性が増加した。培養開始から18日目に培養を終了し、菌体培養液をナイロンフィルターで濾過した後、ガラスファイバーを通過させて微粒子を除き、培養濾液を回収した。

【17】
こうして得た培養濾液に4℃下で80%飽和になるように硫安を加え、一晩静置した後、遠心分離により沈澱を回収した。この沈澱を少量の50mM四ほう酸ナトリウム・塩酸緩衝液(pH8.5)に溶解し、同緩衝液中で透析を行った。透析後の粗酵素液をブチルトヨパールカラム(株式会社 東ソー製)にのせ、酵素を硫安濃度の直線グラジェントにより溶出させて回収し、1mMの同緩衝液により透析を行った。透析後、回収した酵素液に対して200mMのトリエタノールアミン・塩酸(TEA-HCl)緩衝液(pH7.5)を加えて同緩衝液の最終濃度を20mMにした後、Q-セファロースFAST FLOW(ファルマシア社製)にのせた。酵素は、食塩濃度の直線グラジェントによって溶出させ、活性画分を20mM TEA-HCl緩衝液(pH7.5)により透析し、粗酵素液を得た。次いで、この粗酵素液をリソースQカラム(ファルマシア社製)にのせ、食塩濃度の直線グラジェントにより酵素を溶出させ活性画分を回収して4℃で保存した。その結果、本酵素は回収率4.05%、精製度944倍に精製され、SDS-PAGEゲル上で単一バンド(分子量:約31,500、ゲル濾過法による分子量:約33,000)を示した。得られた精製酵素について、その特性を調べたところ、特開平8-289785号公報の実施例3に記載した通りであった。

【18】
製造例1
特開平9-3088号公報の実施例1に記載された方法により、2-メチル-{4--(2-アセトアミド-2-デオキシ-β-グルコピラノシル)-1、2-ジデオキシ-α-グルコピラノ}(2、1-d)-2-オキサゾリンを製造した。すなわち、ジ--アセチルキトビオースヘキサアセテートをメタノールに溶解させたのち、ナトリウムメトキシドを加えて反応させ、部分的にアセチル化させたジ--アセチルキトビオース混合物を得た。次に、該混合物に塩化アセチルを加えて反応させ、塩化3,6-ジ--アセチル-2-アセトアミド-2-デオキシ-4--〔3,4,6-トリ--アセチル-2-アセトアミド-2-デオキシ-β-グルコピラノシル〕-グルコピラノシルを得た。該化合物をアセトニトリルに溶かし、塩化テトラエチルアンモニウムおよび炭酸水素ナトリウムに加えて反応させることにより、2-メチル-{3,6-ジ--アセチル-4--〔3,4,6-トリ--アセチル-2-アセトアミド-2-デオキシ-β-グルコピラノシル〕-1,2-ジデオキシ-α-グルコピラノ}〔2,1-d〕-2-オキサゾリンを得、これをクロロホルムに溶解させた後、無水メタノールを加えた。さらに、ナトリウムメトキシドを加えて反応させることにより、上記化合物を得た。

【19】
実施例2
実施例1で得た精製キチン脱アセチル化酵素(4ユニット/ml)に、製造例1で得た2-メチル-{4--〔2-アセトアミド-2-デオキシ-β-グルコピラノシル〕-1,2-ジデオキシ-α-グルコピラノ}〔2,1-d〕-2-オキサゾリンを最終濃度が0.8%になるように混合し、20mM炭酸アンモニウム緩衝液(pH8.5)中で30℃にて酵素的脱アセチル化反応を行った。酵素反応による基質の変化は、高速液体クロマトグラフィー(以下、HPLCと称する。)によって観察した。HPLCの条件は、以下の通りである。
HPLCの条件
カラム:Asahipak NH2-P50(島津製作所)
溶離液:水/アセトニトリル=25/75
流速:1ml/分
検出器:UV-8020(東ソー社製)
検出波長:UV210nm

【20】
その結果、反応基質としてのオキサゾリン骨格をもつキチン2量体、それが開環したキチン2量体およびキチン2量体の非還元末端の-アセチルグルコサミン残基が脱アセチル化された化合物のいずれとも異なる化合物由来のピークが、基質の減少とともに増加した。このピーク画分を回収し、濃縮後に質量分析計(JEOL社製)により解析を行ったところ、[ M+H+ ] =365のシグナルが検出され、分子量が364であることが推定された。質量スペクトルを図1に示す。さらに、これを1H-NMRによって解析した結果、該化合物が新規物質である2-メチル-{4--(2-アミノ-2-デオキシ-β-グルコピラノシル)-1、2-ジデオキシ-α-グルコピラノ}(2、1-d)-2-オキサゾリンであることが確認された。1H-NMRスペクトルを図2に示す。

【21】

【発明の効果】本発明により、キチンとキトサンの中間的な物質である部分的にアセチル化された2-メチル-{4--(2-アミノ-2-デオキシ-β-グルコピラノシル)-1、2-ジデオキシ-α-グルコピラノ}(2、1-d)-2-オキサゾリンおよびその酸付加塩並びに50%脱アセチル化キチンまたはそのオリゴ糖およびそれらの酸付加塩が提供される。この物質を用いることにより、規則的に脱アセチル化された50%脱アセチル化キチンまたはそのオリゴ糖等の調製が可能である。そのため、一定の品質を保持したキチン関連素材を提供することができるようになり、廃棄物資源であるキチン質の医薬分野などへの高度利用に道を拓くことがてきる。
図面
【図1】
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【図2】
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