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明細書 :キラル化合物の絶対配置決定方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3760265号 (P3760265)
公開番号 特開2004-264049 (P2004-264049A)
登録日 平成18年1月20日(2006.1.20)
発行日 平成18年3月29日(2006.3.29)
公開日 平成16年9月24日(2004.9.24)
発明の名称または考案の名称 キラル化合物の絶対配置決定方法
国際特許分類 G01N  21/19        (2006.01)
C07D 519/00        (2006.01)
FI G01N 21/19
C07D 519/00 311
請求項の数または発明の数 5
全頁数 17
出願番号 特願2003-029190 (P2003-029190)
出願日 平成15年2月6日(2003.2.6)
審査請求日 平成15年2月6日(2003.2.6)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】ビクター ボロフコフ
【氏名】ガイ ヘンブリー
【氏名】井上 佳久
個別代理人の代理人 【識別番号】100065215、【弁理士】、【氏名又は名称】三枝 英二
【識別番号】100076510、【弁理士】、【氏名又は名称】掛樋 悠路
【識別番号】100086427、【弁理士】、【氏名又は名称】小原 健志
【識別番号】100090066、【弁理士】、【氏名又は名称】中川 博司
【識別番号】100094101、【弁理士】、【氏名又は名称】舘 泰光
【識別番号】100099988、【弁理士】、【氏名又は名称】斎藤 健治
【識別番号】100105821、【弁理士】、【氏名又は名称】藤井 淳
【識別番号】100099911、【弁理士】、【氏名又は名称】関 仁士
【識別番号】100108084、【弁理士】、【氏名又は名称】中野 睦子
審査官 【審査官】樋口 宗彦
参考文献・文献 特開2001-220392(JP,A)
特開平9-255682(JP,A)
特開平2-237939(JP,A)
特開平6-58881(JP,A)
特開平11-237375(JP,A)
特開平 11-2606(JP,A)
特開2003-207444(JP,A)
特開2001-220392(JP,A)
特開2003-247933(JP,A)
BULL.CHEM.SOC.JAP. ,1997年,70(5),p1115-1123
TETRAHEDRON,1998年,VOL.54,p5041-5064
TETRAHEDRON LETTERS,1997年,Vol.38,No.9,p1603-1606
CHEM.COMMUN.,1997年,p1575-1576
CHEM.COMMUN.,1996年,p1867-1868
J.AM.CHEM.SOC.,2000年,VOL.122,p4403-4407
BULL.CHEM.SOC.JAP.,1997年,70(8),p1923-1933
CHIRALITY,2001年,13(6),p329-335
JOURNAL OF THE AMERICAN CHEMICAL SOCIETY,2001年,123(13),p2979-2989
JOURNAL OF PHYSICAL CHEMISTRY A,2000年,104(40),p9213-9219
BULLETIN OF THE CHEMICAL SOCIETY OF JAPAN,2000年,73(5), p1259-1275
ORGANIC LETTERS,2000年,2(11),p1565-1568
JOURNAL OF THE AMERICAN CHEMICAL SOCIETY ,2000年,122(18),p4403-4407
BULLETIN OF THE CHEMICAL SOCIETY OF JAPAN,1999年,72(8),p1887-1898
萬有製薬株式会社仙台シンポジウム要旨集,1998年,VOL.9th(1998),p23-25
調査した分野 PATOLIS JOIS ECLA INSPEC WPI/L
G01N21/00-21/61
特許請求の範囲 【請求項1】
ポルフィリン2量体とキラル化合物とを含む試料溶液について円二色分光光度分析を行い、コットン効果の符号から前記キラル化合物の不斉炭素の絶対配置を決定する方法であって、
前記ポルフィリン2量体が、
(a)炭素鎖で架橋されたポルフィリン2量体であり、
(b)一方のポルフィリン環は金属中心を有し、他方のポルフィリン環はフリーのポルフィリン環であり、且つ
(c)前記フリーのポルフィリン環において、架橋炭素鎖に結合した炭素からポルフィリン環の外周に沿って二つ目の炭素の少なくとも一方にメチル基以上にバルキーな置換基を有するポルフィリン2量体であり、
前記キラル化合物が、
(i)前記ポルフィリン2量体に配位可能なキラル化合物であり、且つ
(ii)前記ポルフィリン2量体に配位可能な基と不斉炭素が直接結合しているキラル化合物、または前記配位可能な基と不斉炭素との間に炭素原子が1原子介在しているキラル化合物である
ことを特徴とするキラル化合物の濃度に関係なくキラル化合物の不斉炭素の絶対配置を決定する方法。
【請求項2】
前記ポルフィリン2量体が、以下の式(1)で示される化合物である請求項1に記載の方法。
【化1】
JP0003760265B2_000012t.gif
[式中、M2+は、Zn2+、アルカリ土類金属イオンおよび遷移金属イオンからなる群から選択される2価の金属イオンを示し、
nは、2または3を示し、
Ra~Rdは、同一または相異なって、水素原子またはメチル基以上にバルキーな置換基を示し、
但し、RcおよびRdのいずれかは、メチル基以上にバルキーな置換基を示し、
R1~R12は、同一または相異なって、水素原子またはメチル基以上にバルキーな置換基を示す。]
【請求項3】
式(1)におけるRcおよびRdのいずれかが、1)炭素数1~8の炭化水素基、2)含酸素置換基、3)含窒素置換基、4)ハロゲン原子および5)ハロゲン化炭化水素基からなる群から選択される1種である請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ポルフィリン2量体が、以下の式(2)に示す化合物である請求項1に記載の方法。
【化2】
JP0003760265B2_000013t.gif

【請求項5】
キラル化合物が、1)ジアミン、2)モノアミン、3)モノアルコールおよび4)アミノアルコールからなる群から選択される1種の化合物である請求項1~4のいずれかに記載の方法。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、キラル化合物の絶対配置を決定する方法に関する。
【0002】
【従来技術】
従来から、キラル化合物の絶対配置を決定する方法として、キラル化合物と特定の化合物との複合体(例えば錯体)について、円二色(CD)分光光度分析を行い、コットン効果の符号とキラル化合物の絶対配置との相関関係を利用してキラル化合物の絶対配置を決定する方法が用いられている。
【0003】
例えば、非特許文献1には、長い架橋鎖で架橋されたポルフィリン二量体にキラル化合物が配位することによって円二色性が誘起され、コットン効果の符号とキラル化合物の絶対配置の間に相関がある旨報告されている。
【0004】
しかしながら、この系は、一分子のキラル化合物が同時に二つのポルフィリンユニットに配位することによって初めて円二色性が誘起されるので、ジアミン、アミノアルコールなどの二つの官能基を有するキラル化合物にしか適用できない。
【0005】
非特許文献2には、フェニルボロン酸ユニットを有するポルフィリン二量体が、各種の糖の存在下において円二色性を示すことが報告されている。
【0006】
この系は、ボロン酸との間に結合を作る糖にしか適用できない。しかも、糖が有する多数の不斉中心のうち、特定の不斉中心について絶対配置を直接決めることができない。
【0007】
以上のように、様々なキラル化合物に対して適用できるような絶対配置の決定方法は報告されていなかった。
【0008】
そこで、本発明者らは、様々なキラル化合物の絶対配置を精度良く、簡便に決定することのできるキラル化合物の絶対配置の決定方法を研究した。近年、金属ポルフィリン2量体であって、両方のポルフィリン環が金属中心としてZn、Fe、MnまたはRuを含む金属ポルフィリン二量体に、キラル化合物が配位することによって円二色性が誘起され、コットン効果の符号とキラル化合物の絶対配置の間に相関があることを見出し、新たなキラル化合物の絶対配置の決定方法を完成した(特許文献1)。
【0009】
しかしながら、この方法では、キラル化合物がアミノアルコールおよびジアミンの場合に、コットン効果の符号が、試料溶液に含まれるキラル化合物の濃度によって変化することがあるという問題点がある。
【0010】
【非特許文献1】
X. Huang, B. H. Rickmann, B. Borhan, N. Berova, K. Nakanishi, "Zinc Porphyrin Tweezer in Host-Guest Complexation: Determination of Absolute Configurations of Diamines, Amino Acids, and Amino Alcohols by Circular Dichroism", J. Am. Chem. Soc., 1998年, Vol. 120, 6185-6186頁。
【0011】
【非特許文献2】
M. Takeuchi, T. Imada, S. Shinkai, "Molecular Design of Highly Selective and Sensitive "Sugar Tweezers" from Boronic Acid-Appended μ-Oxo-bis[porphinatoiorn(III)]s", Bull. Chem. Soc. Jpn., 1998年, Vol. 71, 1117-1123頁。
【0012】
【特許文献1】
特開2001-220392号公報
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来技術の問題点を鑑みなされたものであって、簡便に、しかも高い感度で精度よくジアミン、アミノアルコールなどのキラル化合物の絶対配置を決定できる方法を提供することを主な目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、特定のポルフィリン2量体を用いることによって、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
即ち、本発明は、下記のキラル化合物の絶対配置決定方法に係るものである。
1.ポルフィリン2量体とキラル化合物とを含む試料溶液について円二色分光光度分析を行い、コットン効果の符号から前記キラル化合物の不斉炭素の絶対配置を決定する方法であって、前記ポルフィリン2量体が、
(a)炭素鎖で架橋されたポルフィリン2量体であり、
(b)一方のポルフィリン環は金属中心を有し、他方のポルフィリン環はフリーのポルフィリン環であり、且つ
(c)前記フリーのポルフィリン環において、架橋炭素鎖に結合した炭素からポルフィリン環の外周に沿って二つ目の炭素の少なくとも一方にメチル基以上にバルキーな置換基を有するポルフィリン2量体であり、
前記キラル化合物が、
(i) 前記ポルフィリン2量体に配位可能なキラル化合物であり、且つ
(ii) 前記ポルフィリン2量体に配位可能な基と不斉炭素が直接結合しているキラル化合物、または前記配位可能な基と不斉炭素との間に炭素原子が1原子介在しているキラル化合物であることを特徴とするキラル化合物の不斉炭素の絶対配置を決定する方法。
2.前記ポルフィリン2量体が、以下の式(1)で示される化合物である上記1に記載の方法。
【0016】
【化3】
JP0003760265B2_000002t.gif
【0017】
[式中、M2+は、Zn2+、アルカリ土類金属イオンおよび遷移金属イオンからなる群から選択される2価の金属イオンを示し、
nは、2または3を示し、Ra~Rdは、同一または相異なって、水素原子またはメチル基以上にバルキーな置換基を示し、但し、RcおよびRdのいずれかは、メチル基以上にバルキーな置換基を示し、R1~R12は、同一または相異なって、水素原子またはメチル基以上にバルキーな置換基を示す。]
3.式(1)におけるRcおよびRdのいずれかが、1)炭素数1~8の炭化水素基、2)含酸素置換基、3)含窒素置換基、4)ハロゲン原子および5)ハロゲン化炭化水素基からなる群から選択される1種である上記2に記載の方法。
4.前記ポルフィリン2量体が、以下の式(2)に示す化合物である上記1に記載の方法。
【0018】
【化4】
JP0003760265B2_000003t.gif
【0019】
5.キラル化合物が、1)ジアミン、2)モノアミン、3)モノアルコールおよび4)アミノアルコールからなる群から選択される1種の化合物である上記1~4のいずれかに記載の方法。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明は、以下の(a)~(c)に示す特性を有するポルフィリン2量体と以下の(i)~(ii)に示す特性を有するキラル化合物とを含む試料溶液について円二色分光光度分析を行い、コットン効果の符号から前記キラル化合物の不斉炭素の絶対配置を決定する方法に係る。
(a)炭素鎖で架橋されたポルフィリン2量体であり、
(b)一方のポルフィリン環は金属中心を有し、他方のポルフィリン環はフリーのポルフィリン環であり、且つ
(c)前記フリーのポルフィリン環において、架橋炭素鎖に結合した炭素からポルフィリン環の外周に沿って二つ目の炭素の少なくとも一方にメチル基以上にバルキーな置換基を有するポルフィリン2量体;
(i) 前記ポルフィリン2量体に配位可能なキラル化合物であり、且つ
(ii) ポルフィリン2量体に配位可能な基と不斉炭素が直接結合しているキラル化合物、または前記配位可能な基と不斉炭素との間に炭素原子が1原子介在しているキラル化合物。
【0021】
本発明の方法において用いることのできるポルフィリン2量体は、上記の条件(a)~(c)を満たす限り特に制限されないが、例えば、以下の式(1)で示される化合物を例示することができる。
【0022】
【化5】
JP0003760265B2_000004t.gif
【0023】
以下、式(1)で示される化合物を例に挙げながら、条件(a)~(c)を説明する。
【0024】
条件(a)について
条件(a)では、ポルフィリン2量体が、炭素鎖で架橋されていることを規定する。即ち、本発明において用いるポルフィリン2量体は、二つのポルフィリン環(ポルフィリンユニット)が、炭素鎖によって架橋されている。例えば、式(1)では、-(CH2)n-により二つのポルフィリン環が架橋されている。
【0025】
架橋炭素鎖の炭素数は、特に制限されず、通常2~3程度であり、好ましくは2である。例えば、式(1)では、nは2または3であり、2が好ましい。
【0026】
条件(b)について
条件(b)は、ポルフィリン2量体において、一方のポルフィリン環は金属中心を有し、他方のポルフィリン環は、フリーのポルフィリン環であることを規定する。例えば、式(1)で示される化合物では、左側のポルフィリン環は、金属中心であるM2+を有している。一方、右側のポルフィリン環はフリーであるので、ポルフィリン環は、中心に2原子の水素原子を有している。
【0027】
中心金属としては、例えば、Zn2+、アルカリ土類金属イオンおよび遷移金属イオンなどの2価の金属イオンを例示することができる。アルカリ土類金属イオンとしては、例えば、Mg2+, Ca2+, Sr2+, Ba2+などを例示できる。遷移金属イオンとしては、Fe2+, Ru2+, Mn2+などを例示できる。中心金属としては、Zn2+、Mg2+が好ましく、Zn2+が特に好ましい。
【0028】
式(1)におけるM2+としては、Zn2+、アルカリ土類金属イオンおよび遷移金属イオンなどの2価の金属イオンを例示することができ、これらの中ではZn2+、Mg2+が好ましく、Zn2+が特に好ましい。
【0029】
条件(c)について
条件(c)は、ポルフィリン2量体におけるフリーのポルフィリン環が、架橋炭素鎖に結合した炭素からポルフィリン環の外周に沿って二つ目の炭素の少なくとも一方にメチル基以上のバルキーな置換基を有することを規定する。例えば、式(1)で示される化合物の場合には、RcおよびRdが、フリーのポルフィリン環において、架橋炭素鎖に結合した炭素からポルフィリン環の外周に沿って二つ目の炭素に結合した置換基を示す。従って、式(1)で示される化合物の場合には、RcとRdのいずれかが、メチル基以上のバルキーな置換基であれば、条件(c)を満たす。
【0030】
式(1)においては、Ra~Rdは、同一または相異なって、水素原子またはメチル基以上にバルキーな置換基を示す。但し、RcとRdのいずれか1つは、メチル基以上にバルキーな置換基を示す。
【0031】
式(1)において、R1~R12は、同一または相異なって、水素原子またはメチル基以上にバルキーな基を示す。
【0032】
メチル基以上にバルキーな置換基とは、メチル基と同等またはそれ以上に嵩の大きな置換基を意味する。メチル基以上にバルキーな置換基としては、例えば、1)炭素数1~8の炭化水素基、2)含酸素置換基、3)含窒素置換基、4)ハロゲン原子、5)ハロゲン化炭化水素基などを例示することができる。上記1)~5)のなかでは、1)炭素数1~8の炭化水素基が好ましい。
【0033】
1)炭素数1~8の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、イソブチル基などの直鎖または分枝状アルキル基を例示することができる。この炭化水素基の炭素数は、通常1~10程度であり、好ましくは1~8程度であり、より好ましくは1~4程度である。
【0034】
2)含酸素置換基としては、例えば、エステル基、カルボキシアルキル基などを例示することができる。エステル基としては、例えば、メチルエステル基、エチルエステル基などアルキルエステル基を例示することができる。カルボキシアルキル基としては、例えば、カルボキシメチル基などを例示することができる。アルキルエステル基のアルキル部分よびカルボキシアルキル基のアルキル部分の炭素数は、通常1~10程度であり、好ましくは1~5程度である。
【0035】
3)含窒素置換基としては、例えば、アミノ基、アミド基、2-アミノエチル基などを例示することができる。
【0036】
4)ハロゲン原子としては、例えば、Cl、Br、Fなどを例示することができる。
【0037】
5)ハロゲン化炭化水素基としては、例えば、塩化メチル基、塩化エチル基、塩化プロピル基、塩化ブチル基などを例示することができる。ハロゲン化炭化水素基に含まれる炭素数は、通常1~10程度であり、好ましく1~5程度である。ハロゲン化炭化水素基に含まれるハロゲン原子の数は、特に制限されないが、通常1~23程度であり、好ましくは1~9程度である。
【0038】
本発明では、例えば、R1~R12およびRa~Rbが全て同一であって、メチル基以上にバルキーな置換基であるポルフィリン2量体を好適に用いることができる。このようなポルフィリン2量体の一例として以下の式(2)で示される化合物:[[5,5'-(エタン-1,2-ジイル)ビス[2, 3, 7, 8, 12, 13, 17, 18-オクタエチル-21H, 23H-ポルフィリネート](2-)]-κN21, κN22, κN23, κN24]]亜鉛を例示することができる。以下、式(2)で示される化合物を「化合物1」ということがある。
【0039】
【化6】
JP0003760265B2_000005t.gif
【0040】
本発明において用いるポルフィリン2量体の製造方法は、特に限定されず、公知の方法に従って合成することができる。例えば、V. V. Borovkov, J. M. Lintuluoto and Y. Inoue, Helv. Chem. Acta, 1999, 82, 919-934, V. V. Borovkov, J. M. Lintuluoto and Y. Inoue, Synlett, 1998, 768などに記載されている方法を例示することができる。より具体的には、金属中心が導入されていないポルフィリン2量体(以下「フリーのポルフィリン2量体」ということがある)と、所望の中心金属のカルボン酸塩、ハロゲン化物などとを反応させることにより、フリーのポルフィリン2量体の一方のポルフィリン環に中心金属を導入する方法などにより製造することができる。得られたポルフィリン2量体は、必要に応じて、公知の方法により精製してもよい。中心金属のカルボン酸塩としては、例えば、Zn(CH3COO)2などを例示することができる。ハロゲン化物としては、亜鉛のハロゲン化物;MgBr2・Et2Oなどのアルカリ土類金属のハロゲン化物などを例示することができる。
【0041】
上述したようなポルフィリン2量体と、以下の(i)および(ii)の特性を有するキラル化合物とを含む試料溶液について、円二色分光光度分析を行うと、コットン効果の符号から前記キラル化合物の不斉炭素の絶対配置を決定することができる。
(i)前記ポルフィリン2量体に配位可能なキラル化合物であり、且つ
(ii)前記ポルフィリン2量体に配位可能な基と不斉炭素が直接結合しているキラル化合物、または前記配位可能な基と不斉炭素との間に炭素原子が1原子介在しているキラル化合物。
【0042】
本発明の方法により絶対配置を決定できるキラル化合物は、前記ポルフィリン2量体に配位できる化合物、即ち、前記ポルフィリン2量体と錯体を形成できる化合物である。例えば、ポルフィリン2量体に配位可能な基として、アミノ基、水酸基などの塩基性基を有する化合物を例示できる。より具体的には、たとえば、1)ジアミン、2)一級モノアミン、二級モノアミンなどのモノアミン、3)モノアルコール、4)アミノアルコールなどを例示できる。
【0043】
ジアミンとしては、例えば1,2-ジアミノシクロヘキサン、1,2-ジアミノ-1,2-ジフェニルエタンなどが挙げられる。
【0044】
1級モノアミンとしては、例えば2-ブチルアミン、1-(1-フェニル)エチルアミン、1-(1-ナフチル)エチルアミン、1-シクロヘキシルエチルアミン、2-メチル-1-ブチルアミン、〔エンド-(1R)-1,7,7-トリメチルビシクロ〔2,2,1〕へプタン-2-アミン〕、1-ボルニルアミン、バリンメチルエステル、イソピノカンフェイルアミンなどが挙げられる。
【0045】
2級モノアミンとしては、例えばN-メチル-1-フェニルエチルアミンなどが挙げられる。
【0046】
アミノアルコールとしては、例えば1-アミノ-2-プロパノール、2-アミノ-4-メチル-1-ペンタノール、トレオニンメチルエステルなどが挙げられる。
【0047】
モノアルコールとして、例えばボルネオール、2-ブタノール、1-フェニルエタノール、メントールなどが挙げられる。
【0048】
本発明の方法により絶対配置を決定できるキラル化合物は、ポルフィリン2量体の一方のポルフィリン環が有する中心金属に配位可能な基と不斉炭素が結合しているキラル化合物、または前記配位可能な基と不斉炭素との間に炭素原子が1原子介在しているキラル化合物である。例えば、2-ブタノール、1-フェニルエタノール、1-フェニルエチルアミンなどは、ポルフィリン2量体の中心金属に配位可能な基と不斉炭素が直接結合しているキラル化合物に相当する。
【0049】
ジアミン、アミノアルコールなどのようにポルフィリン2量体に配位可能な基を2以上有するキラル化合物の場合には、実際にポルフィリンの金属中心に配位している基が結合している不斉炭素または前記のような配位している基と1原子の炭素を介して結合している不斉炭素の絶対配置を決定することができる。例えば、アミノアルコールの場合には、一般にアミノ基の方がポルフィリン2量体に配位しやすいので、通常はアミノ基に直接結合している不斉炭素またはアミノ基との間に炭素元素が1原子介在している不斉炭素について絶対配置を決定することができる。
【0050】
不斉炭素を複数有するキラル化合物を用いる場合には、ポルフィリン2量体の金属中心に配位可能な基に直接結合している不斉炭素、または前記配位可能な基と1原子の炭素原子を介して結合している不斉炭素について絶対配置を決定することができる。例えば、ボルニルアミンの場合には、2原子の不斉炭素のうちアミノ基が結合している不斉炭素の絶対配置を決定することができる。
【0051】
円二色分光光度分析に用いる試料溶液は、上記ポルフィリン2量体とキラル化合物を含んでいる。試料溶液には、所望の効果が得られる範囲内において添加成分が含まれていてもよい。
【0052】
試料溶液の調製方法は特に限定されず、例えば、ポルフィリン2量体、キラル化合物などを溶媒に溶解する方法などにより調製することができる。
【0053】
試料溶液を調製する時に使用する溶媒としては、ポルフィリン2量体に配位しない溶媒が好ましい。ポルフィリン2量体に配位しない溶媒としては、例えばクロロホルム(CHCl)、二塩化メタン(CHCl)、二塩化エタン(CHClCHCl)、四塩化エタン(CHClCHCl)、四塩化炭素(CCl)などのハロゲン化脂肪族炭化水素;ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素などを例示することができる。
【0054】
試料溶液中のキラル化合物およびポルフィリン2量体の濃度は、限定的ではない。試料溶液の円二色スペクトル(CDスペクトル)は、通常二つのピーク、即ち一つの極大値と一つの極小値を示す。以下、より長波長側のピークを「第1コットン効果」といい、より短波長側のピークを「第2コットン効果」ということがある。試料溶液中のキラル化合物およびポルフィリン2量体の下限は、第1または第2コットン効果を検知できる限り特に制限されず、用いるポルフィリン2量体の種類、キラル化合物の種類、溶媒の種類などに応じて適宜設定することができる。試料溶液中のキラル化合物の濃度の上限およびポルフィリン2量体の濃度の上限は、例えば円二色スペクトルにおいて第1または第2コットン効果の楕円率の値が、ノイズレベルの2倍以上程度(例えば1mdeg以上程度)となり、光電子増倍管の電圧が-700kV以内で第1または第2コットン効果の楕円率ができるだけ大きくなるよう設定するのが好ましく、第1または第2コットン効果の楕円率が、10mdeg~50mdeg程度となるよう設定するのがより好ましい。
【0055】
試料溶液中におけるキラル化合物の濃度は、キラル化合物の種類などに応じて適宜設定することができるが、通常10-6mol/l以上程度であり、好ましくは10-5~10-1mol/l程度であり、より好ましくは10-4~10-3mol/l程度である。
【0056】
試料溶液中におけるポルフィリン2量体の濃度は、キラル化合物の種類などに応じて適宜設定することができるが、通常10-7mol/l以上程度であり、好ましくは10-6 mol/l以上程度である。試料溶液中におけるポルフィリン2量体の濃度の上限は、特に制限されず、キラル化合物の種類などに応じて適宜設定することができるが、通常10-4mol/l以下程度であり、好ましくは10-5mol/l以下程度である。
【0057】
円二色分光光度分析を行う温度は、コットン効果を検知できる限り特に制限されないが、通常-80~+30℃程度である。通常、低温であるほど高感度で分析を行うことができる。
【0058】
試料溶液のCDスペクトルにおいて、第1コットン効果と第2コットン効果の符号は、正の場合と負の場合があり、第1コットン効果の符号と第2コットン効果の符号とは相異なる。例えば、図1に示す(S)-1-(1-ナフチル)エチルアミンのCDスペクトルを例にとると、第1コットン効果の符号は正(プラス)であり、第2コットン効果の符号は負(マイナス)である。また、キラル化合物が光学異性体同士の関係にある場合(例えばR体とS体の場合)には、それぞれのコットン効果の符号が逆になる。例えば、(R)-1-(1-ナフチル)エチルアミンを用いた場合には、図1とは符号が逆となり、第1コットン効果の符号は負となり、第2コットン効果の符号は正となる。絶対配置の決定には、いずれのピークの符号を用いてもよいが、第1コットン効果の方が検知しやすいのでより好適に用いることができる。
【0059】
試料溶液における各コットン効果の符号とキラル化合物の不斉炭素の絶対配置(R体かS体か)との間に一定の対応関係が成立することを明らかにするために、絶対配置が既知である様々なキラル化合物と本発明の試薬を含む試料溶液についてCDスペクトルを測定した。以下の表1に、様々なキラル化合物の絶対配置と試料溶液における各コットン効果の符号とを示す。なお、ポルフィリン2量体としては、以下の式(2)で示すポルフィリン(化合物1)を使用し、試料溶液中における濃度は、10-6mol/lとした。溶媒として、塩化メチレンを使用した。試料溶液における各キラル化合物の濃度は、表1中に記載した。
【0060】
【化7】
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【0061】
【表1】
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【0062】
表1から明らかなように、アミノ基などの配位可能な基のα位またはβ位にある不斉炭素の立体配置と各コットン効果の符号の間には、一定の対応関係が成立している。即ち、第1コットン効果の符号が正の場合には、上記α位またはβ位の不斉炭素の絶対配置は(S)となる。一方、第1コットン効果の符号が負の場合には、上記α位またはβ位の不斉炭素の絶対配置は(R)となる。この相関関係と未知試料溶液のコットン効果の符号とを利用することによって、未知試料溶液中のキラル化合物について、絶対配置を決定することができる。
【0063】
なお、表1において、B遷移とは、吸収帯がBバンド(ソーレー帯)となる二つのポルフィリン環のモーメントが共にポルフィリン環を結合する方向にある場合の遷移であり、B遷移とは、前記モーメントが共にポルフィリン環を結合する方向とは垂直の方向にある場合の遷移である。図2に、キラル化合物が配位する前のアキラルなポルフィリン2量体におけるモーメントの方向を実線で示す。
【0064】
一方、キラル化合物が配位したポルフィリン2量体では、図2において点線で示すように、B遷移及びB遷移のいずれの場合も、アキラルなポルフィリン2量体の場合に比べて、一方の環のモーメントの方向が他方のモーメントの方向に対して若干ずれる。
【0065】
以下、本発明において、誘導コットン効果が生じる機構を説明する。ポルフィリン2量体と上記のキラル化合物とを含む溶液を調製すると、キラル化合物がポルフィリン2量体の金属中心へ配位する。このようなキラル化合物の配位に伴って、ポルフィリン2量体は、syn型からanti型へコンホメーション変化を示すと同時に、anti型のコンホーマーに不斉が誘起され、図1に示すような円二色性を示す。
【0066】
不斉誘起の機構は、図3に示すようなポルフィリン環同士のねじれにより説明される。図3には、キラル化合物としてS体のアミンを用いた場合について図示されている。配位子であるキラル化合物のαまたはβ炭素(図3ではα炭素)に結合している最も大きな置換基(X)と、キラル化合物が配位していないポルフィリン環(フリーのポルフィリン環)に結合したメチル基以上にバルキーな置換基(図3ではEt:エチル基)との間に立体障害が生じることにより、ポルフィリンの配向にねじれが生じ、ポルフィリン間の励起子相互作用(エキシトンインターラクション)に基づく円二色性があらわれるものと理解できる。
【0067】
CDエキシトン・キラリテイー法によると、二つの相互に作用する電子遷移モーメントが手前から奥側に向かって時計回りに並ぶと正のキラリティーを創出し、反時計回りに並ぶと負のキラリティーを創出する(Harada, N., Nakanishi, K., "Circular Dichroic Spectroscopy-Exciton coupling in Organic Stereochemistry, University Science Books, Mill Valley,1983.、Nakanishi, K., Berova, N., "In Circular Dichroism; Principles and Applications", Woody, R., Ed, VCH Publishers; New York,1994; pp361-398)。
【0068】
例えば、絶対配置がSであるキラル化合物がポルフィリン2量体に配位すると、手前から奥側に向かって時計回りにねじれるので(図3参照)、第1コットン効果の符号は「正」となる。一方、絶対配置がRであるキラル化合物がポルフィリン2量体に配位すると、手前から奥側に向かって反時計回りにねじれるので、第1コットン効果の符号は「負」となる。
【0069】
本発明の方法では、円二色(CD)分光光度分析法を用いて、キラル化合物、ポルフィリン2量体などを含む試料溶液を分析する。即ち、本発明の方法では、ポルフィリン2量体に測定対象であるキラル化合物を配位させたときに得られるCDスペクトルのコットン効果の符号によって、前記キラル化合物の絶対配置を決定することができる。
【0070】
【発明の効果】
本発明によると、キラル化合物、特にジアミン、アミノアルコールなどのキラル化合物について、キラル化合物の濃度に関係なく、不斉炭素の絶対配置を決定することができる。
【0071】
本発明によると、ポルフィリン2量体に配位しうるキラル化合物について、ポルフィリン2量体に配位可能な基に直接結合している不斉炭素または前記の配位可能な基との間に炭素原子が1原子介在する不斉炭素の絶対配置を直接決定することができる。
【0072】
本発明によると、測定する際にキラル化合物に特殊な修飾基を導入する必要がない。従って、キラル化合物を必要に応じて容易に回収できる。例えば測定後の試料溶液と2 mol/l程度の塩酸水溶液とを撹拌すると、ポルフィリン2量体とキラル化合物からなる錯体は、フリーのポルフィリン2量体とキラル化合物の塩酸塩(例えば、キラルアミンの塩酸塩)に分解するので、キラル化合物を分離回収できる。分離回収したフリーのポルフィリン2量体は、もう一度中心金属イオンを導入することにより、再度使用することができる。
【0073】
本発明によると、非常に迅速にキラル化合物の絶対配置を決定することができる。試料調製とCDスペクトル測定に要する時間は、条件によっては10分以内である。
【0074】
大抵のキラル化合物の吸収は、400nm以下である。一方、本発明の方法において、コットン効果は、より長波長側、例えば400~450nm程度において検出することができる。即ち、キラル化合物自身の示すピークとは重複しない波長において、コットン効果を示すピークを検出することができる。従って、本発明によると、非常に広範囲のキラル化合物について、絶対配置を決定することが可能である。
【0075】
従来から、キラル化合物の絶対配置の決定方法として、X線回折法が知られている。しかしながら、この方法は、結晶性の化合物にしか適用できない。本発明によると、キラル化合物が結晶性であるかどうかに拘わらず絶対配置を決定することができる。
【0076】
【実施例】
以下、本発明の実施例を比較例とともに挙げ、本発明をより具体的に説明する。但し、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0077】
CDスペクトル測定には、JASCO J-720WIスペクトロポーラリメーターを使用した。
【0078】
製造例1
以下のスキームに従って、一方のポルフィリン環に金属中心を含むポルフィリン2量体を製造した。
【0079】
【化8】
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【0080】
フリーのポルフィリン2量体(化合物A)のCH2Cl2溶液を還流し、この還流溶液にZn(CH3COO)2のメタノール溶液を滴下した。Zn(CH3COO)2の量は、化合物Aに対して1.2当量とした。得られた反応混合物をクロマトグラフィー(充填材:シリカゲル、溶離液:CHCl3)により精製した。収率は、60%であった。
【0081】
実施例1
約10-6mol/lの化合物1と4.1×10-2mol/lの(S)-1-(1-ナフチル)エチルアミンとを含むCH2Cl2溶液について、3ml(光路長:1cm)のセルを用いてCDスペクトルを25℃において測定した。結果を図1に示す。
【0082】
図1から明らかなように、長波長側にある第1コットン効果の符号が正となった。1-(1-ナフチル)エチルアミンのアミノ基に結合している不斉炭素の絶対配置は、Sであることが確認された。
【0083】
実施例2
化合物1(5.41×10-6mol/l)と様々な濃度のL-トレオニンメチルエステルとを含むCH2Cl2溶液について、3ml(光路長:1cm)のセルを用いて、25℃においてCDスペクトルおよび紫外-可視吸収スペクトルを測定した。トレオニンメチルエステルは、二つの不斉炭素を有する。実施例2および以下の比較例1において使用したL-トレオニンメチルエステルは、アミノ基に直接結合した炭素の絶対配置がSであり、もう一方の炭素の絶対配置がRである。
【0084】
結果を図4に示す。紫外-可視吸収スペクトルについては、化合物1のみを含むCH2Cl2溶液についても測定した。各濃度の場合について、コットン効果の符号を以下の表2に示す。
【0085】
【表2】
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【0086】
いずれの濃度においても、第1コットン効果が正を示し、第2コットン効果が負を示した。化合物1には、トレオニンメチルエステルのアミノ基が配位する。従って、この結果は、トレオニンメチルエステルのアミノ基が直接結合した不斉炭素の絶対配置が、Sであることと一致する。
【0087】
比較例1
以下の式で示される二亜鉛ポルフィリン2量体(化合物B、5.76×10-6mol/l)と様々な濃度のL-トレオニンメチルエステルとを含むCH2Cl2溶液について、3ml(光路長:1cm)のセルを用いて、25℃においてCDスペクトルおよび紫外-可視吸収スペクトルを測定した。結果を図5に示す。紫外-可視吸収スペクトルについては、化合物Bのみを含むCH2Cl2溶液についても測定した。各濃度の場合について、コットン効果の符号を以下の表3に示す。
【0088】
【表3】
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【0089】
【化9】
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【0090】
図5の左上図および表3から明らかなように、キラル化合物であるL-トレオニンメチルエステルの濃度が高くなるにつれコットン効果の符号が逆転した。即ち、キラル化合物の濃度が低い場合には第1コットン効果の符号は、負であったが、キラル化合物の濃度が高い場合には、正へと逆転した。
【0091】
二亜鉛ポルフィリン2量体に対するアミノアルコールの濃度が低い場合には、二亜鉛ポルフィリン2量体とアミノアルコールとは、1:1錯体を形成する。一方、二亜鉛ポルフィリン2量体に対するアミノアルコールの濃度が高くなると、二亜鉛ポルフィリン2量体とアミノアルコールとは、1:2錯体を形成し、1:1錯体とはコットン効果の符号が反転する場合がある。二亜鉛ポルフィリン2量体とアミノアルコールとが1:1錯体を形成するように二亜鉛ポルフィリン2量体とアミノアルコールの濃度を設定した場合には、二亜鉛ポルフィリン2量体を用いても、アミノアルコールの絶対配置を決定することができる。
【0092】
化合物Bには、トレオニンメチルエステルの水酸基が配位する。従って、比較例1の結果から、トレオニンメチルエステルの水酸基が直接結合した不斉炭素の絶対配置が、Rであることが判る。
【0093】
また、キラル化合物としてジアミンを用いる場合も、アミノアルコールの場合と同様に、二亜鉛ポルフィリン2量体とジアミンとが1:1錯体を形成するように試料溶液を調製すると、二亜鉛ポルフィリン2量体を用いて、アミノアルコールの絶対配置を決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1の結果を示す。1-(1-ナフチル)エチルアミンを含む試料溶液のCDスペクトルである。
【図2】 ポルフィリン2量体の最大吸収バンドであるBバンドに関するモーメントの方向を示す図である。ポルフィリン環を楕円とし、架橋炭素鎖を直線として、ポルフィリン2量体を概略的に示す。二つの楕円(ポルフィリン環)は、同一平面上には存在せず、前後に位置する。二つの楕円の前後関係を図示ために、手前にある楕円を太線で示す。キラルな構造は右回りのキラリティを有する。
【図3】 ポルフィリン2量体における不斉誘起の機構を示した概要図である。二つのポルフィリン環のうち、手前にあるポルフィリン環(フリーのポルフィリン環)を太線で示している。
【図4】実施例2の結果を示す紫外-可視吸収スペクトルおよびCDスペクトルである。左上図が、CDスペクトルである。
【図5】比較例1の結果を示す紫外-可視吸収スペクトルおよびCDスペクトルである。左上図が、CDスペクトルである。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4