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明細書 :高分子固定化ホウ素触媒とアルドール反応方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3764148号 (P3764148)
公開番号 特開2004-261749 (P2004-261749A)
登録日 平成18年1月27日(2006.1.27)
発行日 平成18年4月5日(2006.4.5)
公開日 平成16年9月24日(2004.9.24)
発明の名称または考案の名称 高分子固定化ホウ素触媒とアルドール反応方法
国際特許分類 B01J  31/06        (2006.01)
C07B  61/00        (2006.01)
C07C  45/00        (2006.01)
C07C  45/70        (2006.01)
C07C  49/245       (2006.01)
C07C  49/83        (2006.01)
C07C  49/835       (2006.01)
FI B01J 31/06 Z
C07B 61/00 300
C07C 45/00
C07C 45/70
C07C 49/245
C07C 49/83 Z
C07C 49/835
請求項の数または発明の数 4
全頁数 8
出願番号 特願2003-056312 (P2003-056312)
出願日 平成15年3月3日(2003.3.3)
審査請求日 平成15年3月4日(2003.3.4)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】小林 修
【氏名】森 雄一朗
個別代理人の代理人 【識別番号】100093230、【弁理士】、【氏名又は名称】西澤 利夫
審査官 【審査官】大工原 大二
参考文献・文献 特開2001-137710(JP,A)
特開2002-284729(JP,A)
調査した分野 B01J 21/00~38/74
JSTPlus(JOIS)
CAplus(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
次式
【化1】
JP0003764148B2_000010t.gif
(式中のPolyは高分子もしくはホウ素に結合する炭化水素鎖を含む高分子を示し、Rは、置換基を有していてもよい炭化水素基を示す)
で表わされることを特徴とするアルドール反応用高分子固定化ホウ素触媒。
【請求項2】
請求項1の高分子固定化ホウ素触媒の存在下に、水性媒体中において、次式
【化2】
JP0003764148B2_000011t.gif
(式中のR1は置換基を有していてもよい炭化水素基を示す)
で表わされるアルデヒド化合物と、次式
【化3】
JP0003764148B2_000012t.gif
(式中のR2、R3およびR4は、各々、同一または別異に、置換基を有していてもよい炭化水素基を示す)
で表わされるシリルエノールエーテル化合物とアルドール反応させて、次式
【化4】
JP0003764148B2_000013t.gif
(式中のR1、R2およびR3は前記のものを示す)
で表わされるヒドロキシケトン類を合成することを特徴とするアルドール反応方法。
【請求項3】
水性媒体中に界面活性剤を添加することを特徴とする請求項2のアルドール反応方法。
【請求項4】
水性媒体中に有機酸を添加することを特徴とする請求項2または3のアルドール反応方法。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
この出願の発明は、高分子固定化ホウ素触媒とアルドール反応方法に関するものである。さらに詳しくは、この出願の発明は、回収、再使用が可能であって、しかも環境負荷の小さい、水性媒体中での触媒能の発現が可能な新しい高分子固定化ホウ素触媒とこれを用いたヒドロキシケトン類合成を可能とする新しいアルドール反応方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、有機合成反応に用いる触媒については、反応後にこれを回収し再使用することが望まれており、また、触媒による反応をはじめとして、有機合成反応には、有機溶媒を使用することなく、環境負荷の小さな水性媒体中で反応を可能とすることが求められていた。
【0003】
このような状況において、この出願の発明者らは、水性媒体中の有機合成反応を実現すべく検討を進めてきており、これまでの検討の過程において、触媒量のジアリールボリン酸を用いることで、水中で、向山アルドール反応を可能とし、目的とする付加体を良好な収率で、高いジアステレオ選択性をもって得ることを可能としている(文献1および2)。
【0004】
そこで、発明者らは、この知見を踏まえて、水中での新しい反応場を構成すべく、回収、再使用が可能な触媒系の検討をさらに行ってきた。
【0005】
【文献】
1)Mori, Y.; Manabe, K.; Kobayashi, S. Angew. Chem. Int. Ed. 2001, 40, 2815.
2)Mori, Y.; Kobayashi, J.; Manabe, K.; Kobayashi, S. Tetrahedron2002, 58, 8263.
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
この出願の発明は上記のとおりの背景からなされたものであって、回収、再使用が可能で、しかも水性媒体中でも触媒能を発現できる新しい触媒と、これを用いて水性媒体中で反応を行うことのできる新しいアルドール反応方法を提供することを課題としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この出願の発明は、上記の課題を解決するものとして、第1には、次式
【0008】
【化5】
JP0003764148B2_000002t.gif
【0009】
(式中のPolyは高分子もしくはホウ素に結合する炭化水素鎖を含む高分子を示し、Rは、置換基を有していてもよい炭化水素基を示す)
で表わされることを特徴とするアルドール反応用高分子固定化ホウ素触媒を提供する。
【0010】
また、この出願の発明は、第2には、上記の高分子固定化ホウ素触媒の存在下に、水性媒体中において、次式
【0011】
【化6】
JP0003764148B2_000003t.gif
【0012】
(式中のR1は置換基を有していてもよい炭化水素基を示す)
で表わされるアルデヒド化合物と、次式
【0013】
【化7】
JP0003764148B2_000004t.gif
【0014】
(式中のR2、R3およびR4は、各々、同一または別異に、置換基を有していてもよい炭化水素基を示す)
で表わされるシリルエノールエーテル化合物とアルドール反応させて、次式
【0015】
【化8】
JP0003764148B2_000005t.gif
【0016】
(式中のR1、R2およびR3は前記のものを示す)
で表わされるヒドロキシケトン類を合成することを特徴とするアルドール反応方法を提供し、第3には、水性媒体中に界面活性剤を添加することを特徴とするアルドール反応方法を、第4には、水性媒体中に有機酸を添加することを特徴とするアルドール反応方法を提供する。
【0017】
【発明の実施の形態】
この出願の発明は上記のとおりの特徴をもつものであるが、以下にその実施の形態について説明する。
【0018】
この出願の発明における高分子固定化ホウ素触媒は前記の一般式のとおり表わされるものであるが、この場合の「Poly」は、ホウ素原子が主鎖に直接に、もしくは炭化水素鎖を介して主鎖に結合する高分子を示している。この高分子の種類、その構成は、特に限定されることはないが、ホウ素触媒の機能を阻害することのない、もしくはその機能に寄与するものであれば各種のものであってよい。実際的には入手しやすさ、あるいは合成の容易さ、そしてホウ素触媒を構成するホウ素原子との結合の形成の容易性や安定性等を考慮して選択される。
【0019】
このような高分子としては、たとえばポリスチレンがあり、ジビニルベンゼン架橋によるポリスチレン等が好適なものとして例示される。
【0020】
ホウ素触媒において、ホウ素原子が炭化水素鎖を介して高分子主鎖に結合する場合には、この炭化水素基は、鎖状もしくは環状、あるいはその両者の組合わせの状態であってよく、異種原子を介在させていてもよい。高分子が上記に例示したポリスチレンの場合には、ホウ素原子は、ベンゼン環に結合していてもよい。
【0021】
また、ホウ素触媒を構成するホウ素原子への結合基である前記一般式での符号Rは、置換基を有していてもよい炭化水素基を示している。この場合の炭化水素基としては、鎖状もしくは環状、飽和もしくは不飽和のうちの各種のものであってよい。環状の炭化水素基は、単環または多環であって、脂環式基、芳香族基、あるいは複素環基、さらにはこれらのもの、さらには鎖状のもの2種以上の結合して構成されていてもよい。
【0022】
ホウ素触媒の触媒活性としては、これらのうちの芳香族炭素水素基が好適なものとして考慮される。置換基は炭化水素基との組合わせにおいて、触媒能を阻害することなく、もしくはこれに寄与するものであればいずれでもよい。たとえばハロゲン原子、ヒドロキシル基、アルコキシ基、エステル基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基等が適宜に考慮される。
【0023】
この出願の発明のホウ素触媒の調製方法は様々に可能とされる。一般的には、高分子の側鎖にホウ素化合物を反応結合させることが好適である。たとえば、次の反応式に沿って、ホウ素化合物を調製し、次いでDVB(ジビニルベンゼン)架橋ポリスチレンに対してこのホウ素化合物を反応結合させることで一例としてのホウ素触媒を調製することができる。
【0024】
【化9】
JP0003764148B2_000006t.gif
【0025】
たとえばこの方法では、具体的に高分子重量当り0.356mmol/gのホウ素触媒を固定化することができる。
【0026】
たとえば以上のようなこの出願の発明の高分子固定化ホウ素触媒は、アルドール反応用触媒として優れた活性を有しており、しかも高分子固定化されていることで反応系からの回収と再使用が可能である。再使用時の触媒活性も良好である。そして、この出願の発明の高分子固定化ホウ素触媒は、水性媒体中でのアルドール反応に有効であるという大変に重要な特徴を有している。
【0027】
そこで、この出願の発明のアルドール反応方法について説明すると、反応基質としては、前記の一般式で表わされるアルデヒド化合物とシリルエノールエーテル化合物が用いられる。前記一般式における符号R1、R2、R3およびR4は、いずれも置換基を有してもよい炭化水素基を示している。この場合の炭化水素基としては、前記の符号Rの場合と同様に、鎖状もしくは環状、飽和もしくは不飽和のうちの各種のものであってよく、環状の炭化水素基は単環または多環であって、脂環式基、芳香族基、あるいは複素環基、さらには、これらのもの、さらには鎖状のものを含めて2種以上の結合として構成されていてもよい。
【0028】
また、置換基については、触媒アルドール反応を阻害するものでなく、さらにはこの反応に寄与するものであれば適宜であってよい。たとえばハロゲン原子、アルコキシ基、エステル基、ニトロ基、シアノ基等が適宜に考慮される。
【0029】
これらのアルドール反応のための反応基質を、前記のとおりの高分子固定化ホウ素触媒の存在下に、水性媒体中で反応させることにより、前記の一般式で表わされるヒドロキシケトン類が合成されることになる。
【0030】
反応のための水性媒体としては水のみでもよいし、水相溶性のアルコール等の有機溶媒が併用されてもよいが、媒体の主たる成分は水である。そして、特に、この出願の発明においては強調されることは水のみを用いることができることである。これによって、有機溶媒を用いる多くの合成反応に比べて、溶媒の回収、廃棄処理にともなう環境や健康への負荷は極めて小さなものとすることができる。
【0031】
反応基質の使用割合については、特に限定的ではないが、通常は、アルデヒド化合物とシリルエノールエーテル化合物とのモル比として、0.1:1~1:0.1程度の範囲とすることが、また前記の高分子固定化ホウ素触媒の使用割合については、0.01~1.0当量程度が考慮される。
【0032】
また、反応においては、水性媒体に界面活性剤や酸成分を添加することも有効である。
【0033】
界面活性剤は、硫酸系やスルホン酸系等のものを、0.01~1当量程度の範囲内で、また酸成分としては、安息香酸、プロピオン酸等の有機酸を0.001~0.1当量程度の範囲で用いることが考慮される。
【0034】
反応温度は、通常、0℃~50℃程度の範囲が、また反応雰囲気は、大気中あるいはアルゴンや窒素等の不活性ガス雰囲気が採用される。
【0035】
この出願の発明のアルドール反応は、高いジアステレオ選択と反応収率をもって進行する。
【0036】
次に実施例を示し、さらに詳しく説明する。もちろん、以下の例によって、発明が限定されることはない。
【0037】
【実施例】
前記の反応式に従って調製した1%DVB架橋ポリスチレン固定化ホウ素触媒(1)を用いて、次式
【0038】
【化10】
JP0003764148B2_000007t.gif
【0039】
のアルドール反応を行った。この反応では触媒(1)(0.1当量)とともに、水媒体を使用し、界面活性剤のSDS(0.2当量)と、安息香酸(0.01当量)を添加した。反応温度は30℃として、24時間反応させた。
【0040】
その結果、反応収率70%、Syn/Auti=87/13でヒドロキシケトン化合物が得られた。
【0041】
触媒(1)を反応系から回収して再使用したところ、アルドール反応によって、収率65%、Syn/Auti=86/14でヒドロキシケトン化合物が得られた。
【0042】
なお、界面活性のSDSを使用しないで反応を行ったところ、収率は低下したが、Syn/Auti=88/12と高いジアステレオ選択性が得られた。
【0043】
反応基質としてのアルデヒド化合物とシリルエノールエーテル化合物の種類を変更して、次式のとおりのアルドール反応を行った。その結果を表1に示した。
【0044】
【化11】
JP0003764148B2_000008t.gif
【0045】
【表1】
JP0003764148B2_000009t.gif
【0046】
【発明の効果】
以上詳しく説明したとおり、この出願の発明によって、回収、再使用が可能で、しかも水性媒体中でも触媒能を発現できる新しい高分子固定化ホウ素触媒と、これを用いて水性媒体中で高い反応収率とジアステレオ選択性をもって反応を行うことのできる新しいアルドール反応方法が提供される。