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明細書 :イネいもち病菌非病原性遺伝子検出方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3721394号 (P3721394)
公開番号 特開2002-262874 (P2002-262874A)
登録日 平成17年9月22日(2005.9.22)
発行日 平成17年11月30日(2005.11.30)
公開日 平成14年9月17日(2002.9.17)
発明の名称または考案の名称 イネいもち病菌非病原性遺伝子検出方法
国際特許分類 C12N 15/09      
C12Q  1/68      
FI C12N 15/00 ZNAA
C12Q 1/68 A
請求項の数または発明の数 12
全頁数 16
出願番号 特願2001-063814 (P2001-063814)
出願日 平成13年3月7日(2001.3.7)
審査請求日 平成13年3月7日(2001.3.7)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】501203344
【氏名又は名称】独立行政法人農業・生物系特定産業技術研究機構
発明者または考案者 【氏名】平八重 一之
【氏名】藤田 佳克
【氏名】林 長生
個別代理人の代理人 【識別番号】100091096、【弁理士】、【氏名又は名称】平木 祐輔
【識別番号】100096183、【弁理士】、【氏名又は名称】石井 貞次
審査官 【審査官】田村 明照
参考文献・文献 Phytopathology, Vol.88,No.8,pp.822-827 (1998)
九州病害虫研究会報、第45巻第12-16頁
日本植物病理学会報、第64巻第2号第125-128頁
Phytopathology, Vol.88,No.3,pp.223-229 (1998)
調査した分野 C12N 15/00
C12Q 1/68
BIOSIS/WPI(DIALOG)
PubMed
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
JSTPlus(JOIS)
特許請求の範囲 【請求項1】
いもち病菌におけるAvr-Pish遺伝子の一部若しくは全部及び/又は当該Avr-Pish遺伝子に隣接して連鎖する、配列番号1の塩基配列及び配列番号2の塩基配列により挟み込まれる領域を含むDNA断片を特異的に増幅するプライマーセットを用いて、ポリメラーゼ連鎖反応を行うことを特徴とするイネいもち病菌非病原性遺伝子検出方法。
【請求項2】
上記プライマーセットは、配列番号1の塩基配列又は該塩基配列に相補的な塩基配列を含む第1のプライマーと、配列番号2の塩基配列又は該塩基配列に相補的な塩基配列を含む第2のプライマーとを含むことを特徴とする請求項1記載のイネいもち病菌非病原性遺伝子検出方法。
【請求項3】
上記プライマーセットは、以下のI群から選ばれる第1のプライマーと、以下のII群から選ばれる第2のプライマーとからなることを特徴とする請求項1記載のイネいもち病菌非病原性遺伝子検出方法。
I群:
配列番号3の塩基配列
配列番号3の塩基配列に相補的な塩基配列
配列番号4の塩基配列
配列番号4の塩基配列に相補的な塩基配列
II群:
配列番号5の塩基配列
配列番号5の塩基配列に相補的な塩基配列
配列番号6の塩基配列
配列番号6の塩基配列に相補的な塩基配列
【請求項4】
いもち病菌におけるAvr-Piks遺伝子の一部若しくは全部及び/又は当該Avr-Piks遺伝子に隣接して連鎖する、配列番号7の塩基配列及び配列番号8の塩基配列により挟み込まれる領域を含むDNA断片を特異的に増幅するプライマーセットを用いて、ポリメラーゼ連鎖反応を行うことを特徴とするイネいもち病菌非病原性遺伝子検出方法。
【請求項5】
上記プライマーセットは、配列番号7若しくは配列番号8の塩基配列又は該塩基配列に相補的な塩基配列を含む第1のプライマーと、配列番号8の塩基配列又は該塩基配列に相補的な塩基配列を含む第2のプライマーとを含むことを特徴とする請求項4記載のイネいもち病菌非病原性遺伝子検出方法。
【請求項6】
上記プライマーセットは、以下のIII群から選ばれる第1のプライマーと、配列番号12の塩基配列及び/又は配列番号12の塩基配列に相補的な塩基配列を含む2のプライマーとからなることを特徴とする請求項4記載のイネいもち病菌非病原性遺伝子検出方法。
III群:
配列番号9の塩基配列
配列番号9の塩基配列に相補的な塩基配列
配列番号10の塩基配列
配列番号10の塩基配列に相補的な塩基配列
配列番号11の塩基配列
配列番号11の塩基配列に相補的な塩基配列
【請求項7】
いもち病菌におけるAvr-Pish遺伝子の一部若しくは全部及び/又は当該Avr-Pish遺伝子に隣接して連鎖する、配列番号1の塩基配列及び配列番号2の塩基配列により挟み込まれる領域を含むDNA断片を特異的に増幅するプライマーセット。
【請求項8】
配列番号1の塩基配列又は該塩基配列に相補的な塩基配列を含む第1のプライマーと、配列番号2の塩基配列又は該塩基配列に相補的な塩基配列を含む第2のプライマーとを含むプライマーセット。
【請求項9】
以下のI群から選ばれる1のプライマーと、以下のII群から選ばれる2のプライマーとを含むプライマーセット。
I群:
配列番号3の塩基配列
配列番号3の塩基配列に相補的な塩基配列
配列番号4の塩基配列
配列番号4の塩基配列に相補的な塩基配列
II群:
配列番号5の塩基配列
配列番号5の塩基配列に相補的な塩基配列
配列番号6の塩基配列
配列番号6の塩基配列に相補的な塩基配列
【請求項10】
いもち病菌におけるAvr-Piks遺伝子の一部若しくは全部及び/又は当該Avr-Piks遺伝子に隣接して連鎖する、配列番号7の塩基配列及び配列番号8の塩基配列により挟み込まれる領域を含むDNA断片を特異的に増幅するプライマーセット。
【請求項11】
配列番号7若しくは配列番号8の塩基配列又は該塩基配列に相補的な塩基配列を含む第1のプライマーと、配列番号8の塩基配列又は該塩基配列に相補的な塩基配列を含む第2のプライマーとを含むプライマーセット。
【請求項12】
以下のIII群から選ばれる1のプライマーと、配列番号12の塩基配列及び/又は配列番号12の塩基配列に相補的な塩基配列を含む2のプライマーとを含むプライマーセット。
III群:
配列番号9の塩基配列
配列番号9の塩基配列に相補的な塩基配列
配列番号10の塩基配列
配列番号10の塩基配列に相補的な塩基配列
配列番号11の塩基配列
配列番号11の塩基配列に相補的な塩基配列
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、イネにいもち病を生じさせるイネいもち病菌非病原性遺伝子検出方法に関し、また、このイネいもち病菌非病原性遺伝子検出方法に使用するプライマーセットに関する。
【0002】
【従来の技術】
イネがいもち病菌に対して抵抗性を発揮するか否かは、イネ品種といもち病菌の病原性系統(レース)との組み合わせによって決定される。いもち病菌の新たなレースの出現によって、長年の努力で育成されたいもち病抵抗性品種が罹病化する現象が知られており、いもち病に影響されない安定な稲作を維持させるためには、いもち病菌の病原性変異機構の解明とともに、栽培地域に依存するレースの動向を常に把握しておく必要がある。
【0003】
現在、いもち病菌の病原性レースは、接種した菌株に対するイネ苗の反応型によって検定されており、日本における体系では、9或いは12のレースが判別可能である。しかし、イネの病斑型は、苗の生育状態や環境条件によって変動するため、判定には熟練を要することが多い。さらに、接種胞子の調製や判別品種苗の準備にも多大な労力と時間とを必要とする。このため、レースを正確に、そしてより迅速に判定するための簡易推定法の開発が望まれている。
【0004】
いもち病菌の病原性レースは、判別品種がもつそれぞれのいもち病抵抗性遺伝子に特異的に対応する菌の非病原性遺伝子によって決まることが知られている。従って、非病原性遺伝子のそれぞれが単離され、それらを特異的に検出する方法が確立されれば、レースの簡易推定法の開発に繋がるものと考えられている。さらに、非病原性遺伝子の単離とその機能の解析は、いもち病菌の病原性変異機構の解明にとどまらず、画期的いもち病防除法の開発やイネ品種育成の方向付けにも大きく貢献する研究分野として期待されている。
【0005】
これまで、海外において、幾つかの非病原性遺伝子のクローニングに関しての報告があるが、塩基配列情報はAvr-Pita(Orbach, M.J., Farrall, L., Sweigard, J.A., Chumley, F.G. and Valent, B. The Plant Cell 12: 2019 - 2032 (2000))のみに限られている。また、各国・地域別に栽培イネ品種群の構成を反映していもち病菌レースの判別体系が異なるため、対象とされる非病原性遺伝子の種類は様々である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明は、上述したような実状に鑑み、イネいもち病菌のレースを高精度に且つ迅速に判別するための手法を確立することを可能とする、イネいもち病菌の非病原性遺伝子のうち所定の遺伝子を検出する方法及び、このイネいもち病菌非病原性遺伝子検出方法に用いるプライマーセットを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
以上の目的を達成するために、本発明者が鋭意検討した結果、イネいもち病菌の非病原性遺伝子のうちAvr-Pish領域及びAvr-Piks領域を含むDNA断片を特異的に増幅する複数のプライマーを設計し、これらのプライマーを用いて増幅した断片を検出することによって、イネいもち病菌における非病原性遺伝子の存在を検出できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、以下を包含する。
(1)いもち病菌におけるAvr-Pish遺伝子の一部若しくは全部及び/又は当該Avr-Pish遺伝子に隣接して連鎖する領域を含むDNA断片を特異的に増幅するプライマーセットを用いて、ポリメラーゼ連鎖反応を行うことを特徴とするイネいもち病菌非病原性遺伝子検出方法。
【0009】
(2)上記プライマーセットは、配列番号1の塩基配列及び配列番号2の塩基配列により挟み込まれる領域を増幅するように設計することを特徴とする(1)記載のイネいもち病菌非病原性遺伝子検出方法。
【0010】
(3)上記プライマーセットは、配列番号1の塩基配列又は該塩基配列に相補的な塩基配列に基づいて設計した第1のプライマーと、配列番号2の塩基配列又は該塩基配列に相補的な塩基配列に基づいて設計した第2のプライマーとを含むことを特徴とする(1)記載のイネいもち病菌非病原性遺伝子検出方法。
【0011】
(4)上記第1のプライマーは以下のI群から選ばれ、上記第2のプライマーは以下のII群から選ばれることを特徴とする(3)記載のイネいもち病菌非病原性遺伝子検出方法。
I群:
配列番号3の塩基配列
配列番号3の塩基配列に相補的な塩基配列
配列番号4の塩基配列
配列番号4の塩基配列に相補的な塩基配列
II群:
配列番号5の塩基配列
配列番号5の塩基配列に相補的な塩基配列
配列番号6の塩基配列
配列番号6の塩基配列に相補的な塩基配列
【0012】
(5)いもち病菌におけるAvr-Piks遺伝子の一部若しくは全部及び/又は当該Avr-Piks遺伝子に隣接して連鎖する領域を含むDNA断片を特異的に増幅するプライマーセットを用いて、ポリメラーゼ連鎖反応を行うことを特徴とするイネいもち病菌非病原性遺伝子検出方法。
【0013】
(6)上記プライマーセットは、配列番号7の塩基配列及び配列番号8の塩基配列により挟み込まれる領域を増幅するように設計することを特徴とする(5)記載のイネいもち病菌非病原性遺伝子検出方法。
【0014】
(7)上記プライマーセットは、配列番号7若しくは配列番号8の塩基配列又は該塩基配列に相補的な塩基配列に基づいて設計した第1のプライマーと、配列番号8の塩基配列又は該塩基配列に相補的な塩基配列に基づいて設計した第2のプライマーとを含むことを特徴とする(5)記載のイネいもち病菌非病原性遺伝子検出方法。
【0015】
(8)上記第1のプライマーは以下のIII群から選ばれ、上記第2のプライマーは配列番号12の塩基配列及び/又は配列番号12の塩基配列に相補的な塩基配列を含むものであることを特徴とする(7)記載のイネいもち病菌非病原性遺伝子検出方法。
III群:
配列番号9の塩基配列
配列番号9の塩基配列に相補的な塩基配列
配列番号10の塩基配列
配列番号10の塩基配列に相補的な塩基配列
配列番号11の塩基配列
配列番号11の塩基配列に相補的な塩基配列
【0016】
(9)配列番号1の塩基配列又は該塩基配列に相補的な塩基配列に基づいて設計した第1のプライマーと、配列番号2の塩基配列又は該塩基配列に相補的な塩基配列に基づいて設計した第2のプライマーとを含むプライマーセット。
【0017】
(10)上記第1のプライマーが以下のI群から選ばれるものであり、上記第2のプライマーが以下のII群から選ばれるものであることを特徴とする(9)記載のプライマーセット。
I群:
配列番号3の塩基配列
配列番号3の塩基配列に相補的な塩基配列
配列番号4の塩基配列
配列番号4の塩基配列に相補的な塩基配列
II群:
配列番号5の塩基配列
配列番号5の塩基配列に相補的な塩基配列
配列番号6の塩基配列
配列番号6の塩基配列に相補的な塩基配列
【0018】
(11)配列番号7若しくは配列番号8の塩基配列又は該塩基配列に相補的な塩基配列に基づいて設計した第1のプライマーと、配列番号8の塩基配列又は該塩基配列に相補的な塩基配列に基づいて設計した第2のプライマーとを含むプライマーセット。
【0019】
(12)上記第1のプライマーが以下のIII群から選ばれるものであり、上記第2のプライマーが配列番号12の塩基配列及び/又は配列番号12の塩基配列に相補的な塩基配列を含むことを特徴とする(11)記載のプライマーセット。
III群:
配列番号9の塩基配列
配列番号9の塩基配列に相補的な塩基配列
配列番号10の塩基配列
配列番号10の塩基配列に相補的な塩基配列
配列番号11の塩基配列
配列番号11の塩基配列に相補的な塩基配列
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係るイネいもち病菌非病原性遺伝子検出方法を詳細に説明する。
本方法は、イネいもち病菌の非病原性遺伝子を検出する方法である。本方法において、判別対象となるイネいもち病菌は、完全世代であるMagnaporthe grisea、不完全世代であるPyricularia griseaまたは Pyricularia. oryzaeを意味する。
【0021】
本方法は、イネいもち病菌における非病原性遺伝子であるの一つであるAvr-Pish遺伝子及び/又はAvr-Piks遺伝子の存在を検出する方法である。本方法は、Avr-Pish遺伝子領域及び/又はAvr-Piks遺伝子領域をポリメラーゼ連鎖反応(以下、PCR)によって増幅する。本方法においては、Avr-Pish遺伝子領域及びAvr-Piks遺伝子領域のいずれか一方を検出しても良いし、両方を逐次又は同時に検出しても良い。
【0022】
ここで、Avr-Pish遺伝子領域とは、Avr-Pish遺伝子の一部又は全部を含むDNA断片、或いは、Avr-Pish遺伝子の近傍に位置して当該Avr-Pish遺伝子と密接に連鎖する領域を含むDNA断片を意味する。Avr-Piks遺伝子領域も、同様にAvr-Piks遺伝子の一部又は全部を含むDNA断片、或いは、Avr-Piks遺伝子の近傍に位置して当該Avr-Piks遺伝子と密接に連鎖する領域を含むDNA断片を意味する。
【0023】
本方法においては、Avr-Pish遺伝子及び/又はAvr-Piks遺伝子の全長を増幅する必要はなく、少なくとも当該遺伝子の一部をPCRによって増幅するか又は当該遺伝子の近傍のDNA断片を増幅することによって、Avr-Pish遺伝子及び/又はAvr-Piks遺伝子の存在を検出することができる。
【0024】
これらAvr-Pish遺伝子領域及び/又はAvr-Piks遺伝子領域を検出するPCRには、Avr-Pish遺伝子及びAvr-Piks遺伝子について分子連鎖地図を作成し、この分子連鎖地図を基にそれぞれの遺伝子と密接に連鎖するマーカーをクローニングして塩基配列の一部を決定し、マーカーの塩基配列に基づいて設計したプライマーを使用する。
【0025】
ここで、分子連鎖地図は、通常の方法を適用して作成することができる。例えば、分子連鎖地図は、Avr-Pish遺伝子及びAvr-Piks遺伝子の存在が同定されているイネいもち病菌の交配親系統及び交配後代を用いて、各遺伝子と連鎖するマーカーを検索することによって作成することができる。マーカーとしては、AFLP(Amplified restriction Fragment Length Polymorphism)マーカー、RAPD(Random Amplified Polymorphism DNA)マーカー等を用いることができる。
PCRに使用するプライマーは、分子連鎖地図上におけるAvr-Pish遺伝子に密接に連鎖するマーカー及びAvr-Piks遺伝子に密接に連鎖するマーカーをそれぞれクローニングし、それぞれのマーカーの塩基配列情報に基づいて設計することができる。
【0026】
例えば、Avr-Pish遺伝子に密接に連鎖するマーカーとしては、配列番号1に示す201bpからなるE1F及び、配列番号2に示す173bpからなるE1Rを例示することができる。すなわち、Avr-Pish遺伝子の存在を検出するためには、これらE1Fから第1のプライマー及びE1Rから第2のプライマーを設計することができる。
【0027】
Avr-Pish遺伝子の存在を検出するための第1のプライマーとしては、限定されないが例えば、
5’-ACG CAC AAC CGA TCC AAC CGC -3’(配列番号3:以下、PshF1と呼ぶ)
5’-TGC CGC ATC ACC TCG GTG TAT -3’(配列番号4:以下、PshF4と呼ぶ)
を挙げることができる。また、Avr-Pish遺伝子の存在を検出するための第2のプライマーとしては、限定されないが例えば、
5’-ACG CAC AAC CAA CAA ATT AGG -3’(配列番号5:以下、PshR1と呼ぶ)
5’-ATA TAC AGG TAG ACC AGA GTC -3’(配列番号6:以下、PshR4と呼ぶ)
を挙げることができる。
なお、配列番号1の塩基配列の相補的な塩基配列から設計した第1のプライマーと配列番号2の塩基配列の相補的な塩基配列から設計した第2のプライマーとを組み合わせてPCRに使用しても、Avr-Pish遺伝子の存在を検出することができる。
【0028】
具体的に、PshF1及びPshR1を用いてPCRを行うと、Avr-Pish遺伝子が存在する可能性が高い場合には約4000bpの塩基配列が増幅される。PshF1及びPshR4を用いてPCRを行うと、Avr-Pish遺伝子が存在する可能性が高い場合には約3900bpの塩基配列が増幅される。PshF4及びPshR1を用いてPCRを行うと、Avr-Pish遺伝子が存在する場合には約3900bpの塩基配列が増幅される。PshF4及びPshR4を用いてPCRを行うと、Avr-Pish遺伝子が存在する場合には約3700bpの塩基配列が増幅される。
【0029】
一方、Avr-Pish遺伝子が存在しない場合には、PshF1及びPshR1を用いてPCRを行うと約2300bpの塩基配列が増幅されるか又はDNA断片が増幅されない。Avr-Pish遺伝子が存在しない場合には、PshF4及びPshR4を用いてPCRを行うと約2000bpの塩基配列が増幅されるか又はDNA断片が増幅されない。
【0030】
また、Avr-Piks遺伝子に密接に連鎖するマーカーとしては、配列番号7に示す200bpからなるH1F及び、配列番号8に示す171bpからなるH1Rを例示することができる。すなわち、Avr-Piks遺伝子の存在を検出するためには、これらH1F若しくはH1Rから第1のプライマー及びH1Rから第2のプライマーを設計することができる。
【0031】
Avr-Piks遺伝子の存在を検出するための第1のプライマーとしては、限定されないが例えば、
5’-CTC AGC TGG CAG CCG TGG TAC -3’(配列番号9:以下、PksF1と呼ぶ)
5’-ACC GAT TCT TTC TGT CGT GTT -3’(配列番号10:以下、PksF2と呼ぶ)
5’-CCA CTA CTC CGT ATG TTT CGG -3’(配列番号11:以下、PksF3と呼ぶ)
を挙げることができる。Avr-Piks遺伝子の存在を検出するための第2のプライマーとしては、限定されないが例えば、
5’-CTC AGC TGG GTG GTG TAA GAT -3’(配列番号12:以下、PksR1と呼ぶ)
を挙げることができる。
なお、配列番号7の塩基配列の相補的な塩基配列から設計した第1のプライマーと配列番号8の塩基配列の相補的な塩基配列から設計した第2のプライマーとを組み合わせてPCRに使用しても、Avr-Piks遺伝子の存在を検出することができる。
【0032】
具体的に、PksF1及びPksR1を用いてPCRを行うと、Avr-Piks遺伝子が存在する可能性が高い場合には約1200bp又は約4700bpの塩基配列が増幅される。PksF2及びPksR1を用いてPCRを行うと、Avr-Piks遺伝子が存在する可能性が高い場合には約1000bp又は約2600bpの塩基配列が増幅される。PksF3及びPksR1を用いてPCRを行うと、Avr-Piks遺伝子が存在する可能性が高い場合には約168bpの塩基配列が増幅される。ここで、PksF1及びPksR1を用いて約1200bpの塩基配列が増幅される場合には、PksF2及びPksR1を用いた場合に約1000bpの塩基配列が増幅される。PksF1及びPksR1を用いて約4700bpの塩基配列が増幅される場合には、PksF2及びPksR1を用いた場合に約2600bpの塩基配列が増幅される。
【0033】
上述したようにPCRに使用するプライマーの組み合わせによって、イネいもち病菌の非病原性遺伝子の存在様式に応じて異なる長さのDNA断片が増幅されるか又は全くDNA断片が増幅されない。本方法では、所定のプライマーセットを用いた場合のDNA断片の長さを測定することによって、イネいもち病菌におけるAvr-Pish遺伝子及び/又はAvr-Piks遺伝子の存在を判定することができる。
【0034】
PCRに使用する鋳型DNAは、対象となるイネいもち病菌から抽出されたゲノムDNAや、ゲノムDNA用いて調製したゲノムDNAライブラリー、対象となるイネいもち病菌全RNAから調製したcDNAライブラリー等をいずれも使用することができる。
このような鋳型DNAは、Dioh, W., Tharreau, D., Notteghem, J. L., Orbach, M. and Lebrun, M-H, Mol. Plant-Microbe Interact. 13(2): 217-227 (200)等に記載されるように、定法に従って調製することができる。
【0035】
PCRによって増幅されたDNA断片を検出する際には、例えば、アガロースゲル電気泳動、ポリアクリルアミドゲル電気泳動等の手法を使用することができる。PCRによって増幅されたDNA断片を検出することによって、判別対象のイネいもち病菌におけるAvr-Pish遺伝子及び/又はAvr-Piks遺伝子の存在を判定することができる。具体的には、電気泳動等の手法を用いることによって、DNA断片の有無や、増幅したDNA断片の長さ等を検出し、その結果に基づいてイネいもち病菌におけるAvr-Pish遺伝子及び/又はAvr-Piks遺伝子の存在を判定することができる。
【0036】
【実施例】
以下、実施例を用いて本発明を更に詳細に説明するが、本発明の技術範囲は以下の実施例に限定されるものではない。
実施例1
本例では、日本産および中国産の併せて15菌株について非病原性遺伝子Avr-Pish遺伝子の存在を判定した。先ず、これらのイネいもち病菌をPDB(potato dextrose broth)培地を用いて25℃、96時間静置培養し、ろ紙上に新鮮な菌体を回収した。回収した菌体はセルラーゼ及びノボザイムを含む酵素液に懸濁してプロトプラスト化した後、遠心操作によって再び回収した。そして、回収した菌体を抽出用緩衝液(50mM トリス塩酸緩衝液(pH8.0)、50mM エチレンジアミン四酢酸、3% ドデシル硫酸ナトリウム、1% 2-メルカプトエタノール)に懸濁して粗DNA液を得た。粗DNA液をリボヌクレアーゼAで処理した後、フェノール、クロロホルムおよびセチルトリメチルアンモニウムブロミドで順次精製した。次に、精製したDNA液に含まれるDNAをイソプロパノールによって沈澱させ、遠心して得られたペレットを70%エタノールで洗浄後乾燥し、適当量のTE(10mM トリス塩酸緩衝液(pH8.0)、1mM エチレンジアミン四酢酸)緩衝液に溶解した。
【0037】
PCRに際しては、0.1×TE緩衝液を用いて得られたDNA溶液を10ng/μlの濃度に希釈した。このようにして得られたDNA溶液に対して、宝酒造株式会社製のEx Taq DNAポリメラーゼと添付バッファー(10×Buffer、20mM Mg2+ plus)を用いて、10ng/μl DNA溶液 2μl、10×Buffer 2μl、各2.5mM dNTP ミクスチャー(dATP、dGTP、dCTP、dTTP)1.6μl、一対のプライマー(1μMのPshF4及び1μMのPshR4)各2.5μl、蒸留水、Ex Taq DNAポリメラーゼ 0.5ユニットを加えて総量20μlの反応液とした。そして、反応液を94℃で3分間熱変性を行い、さらに94℃・1分、62℃・1分、72℃・2分の3段階の温度時間変化の操作を25回繰り返し、最後に72℃・5分の伸長反応を付加することでPCRを行った。これらの操作はパーキンエルマー社のDNAサーマルサイクラー(GeneAmp PCR System 9600)を用いて行った。
【0038】
PCR終了後、反応液3μlを1%アガロースゲル電気泳動に供し、臭化エチジウムで染色後、紫外線を照射して増幅したDNA断片を検出した。DNA断片の長さは、同時に泳動した分子量マーカーとの相対泳動度の比較により算出した。結果を図1に示す。図1に示すように、15菌株中3菌株で約2,700bpのDNA断片が検出された。
【0039】
いもち病抵抗性遺伝子Pi-shをもつイネ品種は、約2,700bpのDNA断片が検出された菌株に対して抵抗性を示した。この結果から、PshF4及びPshR4を用いてPCRを行うことによって、イネいもち病非病原性遺伝子Avr-Pishが存在するか否かを判定できることが明らかとなった。
【0040】
実施例2
本例では、PCRに際して1μMのPksF3及び1μMのPksR1を用いた以外は実施例1と同様にPCRを行った。PCR終了後、反応液3μlを2%アガロースゲル電気泳動に供し、臭化エチジウムで染色後、紫外線を照射して増幅したDNA断片を検出した。結果を図2に示す。図2に示すように、15菌株中9菌株で約170bpの断片が検出された。
【0041】
いもち病抵抗性遺伝子Pi-ksをもつイネ品種は、約170bpのDNA断片が検出された菌株に対して抵抗性を示した。この結果から、PksF3及びPksR1を用いてPCRを行うことによって、イネいもち病非病原性遺伝子Avr-Piksが存在するか否かを判定できることが明らかとなった。
【0042】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明によれば、イネいもち病菌における非病原性遺伝子の存在を高精度に且つ迅速に判定することができるイネいもち病菌非病原性遺伝子検出方法を提供することができる。本発明に係るイネいもち病菌非病原性遺伝子検出方法を用いることによって、対象となるイネいもち病菌に非病原性遺伝子が存在するか否かを正確に且つより迅速に判定することができ、イネいもち病菌レースの簡易推定方法の開発に繋がるとともに栽培地域に存在するレースの動向等の把握に利用することができる。また、本発明に係るイネいもち病菌非病原性遺伝子検出方法は、非病原性遺伝子の存在を判定できるため、非病原性遺伝子を離する際にも適用することができる。
【0043】
【配列表】
JP0003721394B2_000002t.gifJP0003721394B2_000003t.gifJP0003721394B2_000004t.gifJP0003721394B2_000005t.gifJP0003721394B2_000006t.gifJP0003721394B2_000007t.gif
【0044】
【配列表フリーテキスト】
配列番号3~6:合成プライマー。
配列番号9~12:合成プライマー。
【図面の簡単な説明】
【図1】 PshF4及びPshR4を用いてPCRを行った結果を示す1%アガロースゲル電気泳動写真である。
【図2】 PksF3及びPksR1を用いてPCRを行った結果を示す2%アガロースゲル電気泳動写真である。
図面
【図1】
0
【図2】
1