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明細書 :微生物を定着させたおからからなる植物保護剤及びそれを用いた植物病害の防除方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3482462号 (P3482462)
公開番号 特開2002-145712 (P2002-145712A)
登録日 平成15年10月17日(2003.10.17)
発行日 平成15年12月22日(2003.12.22)
公開日 平成14年5月22日(2002.5.22)
発明の名称または考案の名称 微生物を定着させたおからからなる植物保護剤及びそれを用いた植物病害の防除方法
国際特許分類 A01N 63/02      
A01N 25/04      
A01N 25/08      
C12N  1/20      
C12R  1:07      
FI A01N 63/02 E
A01N 25/04
A01N 25/08
C12N 1/20
C12R 1:07
請求項の数または発明の数 7
全頁数 6
出願番号 特願2000-337012 (P2000-337012)
出願日 平成12年11月6日(2000.11.6)
審査請求日 平成12年11月6日(2000.11.6)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】501167644
【氏名又は名称】独立行政法人農業生物資源研究所
発明者または考案者 【氏名】吉田 重信
個別代理人の代理人 【識別番号】100102842、【弁理士】、【氏名又は名称】葛和 清司
審査官 【審査官】安藤 倫世
参考文献・文献 特開 平5-58832(JP,A)
特開2000-253870(JP,A)
特開 平9-227320(JP,A)
特開 平8-291012(JP,A)
特開 平8-53317(JP,A)
特開 平8-40815(JP,A)
特開 平11-246324(JP,A)
調査した分野 A01N 63/00
A01N 25/04
A01N 25/08
C12N 1/20
特許請求の範囲 【請求項1】
バチルス・アミロリクエファシエンスを定着させた乾燥おからを水に懸濁した、葉面処理用植物保護剤。

【請求項2】
バチルス・アミロリクエファシエンスがバチルス・アミロリクエファシエンスRC-2株であることを特徴とする、請求項1に記載の植物保護剤。

【請求項3】
請求項1または2に記載の植物保護剤を葉面処理することを特徴とする、植物病害の防除方法。

【請求項4】
各種植物糸状菌病害を防除することによって植物を保護することを特徴とする、請求項3に記載の植物病害の防除方法。

【請求項5】
病原糸状菌コレトトリカム・デマティウムによる病害を防除することによって植物を保護することを特徴とする、請求項3に記載の植物病害の防除方法。

【請求項6】
クワ炭疽病、クワ白紋羽病およびイネごま葉枯病を防除することによって植物を保護することを特徴とする、請求項3に記載の植物病害の防除方法。

【請求項7】
葉面処理の方法が、懸濁水の塗付または散布であることを特徴とする、請求項3~6のいずれかに記載の植物病害の防除方法。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【0001】

【発明の属する技術分野】本発明は、微生物を定着させた産業廃棄物からなる植物保護剤及びそれを用いた植物病害の防除方法に関する。

【0002】

【従来技術】作物生産において、病害虫防除には農薬を主とした人工の化学物質が植物保護剤として用いられ、顕著な効果を上げてきた。しかし、これらの長期にわたる連用に伴い、これらに含有される有効成分のみならず、それに含有される助剤による環境および標的外生物への影響が懸念されるようになってから久しい。環境問題の別の側面においては、産業廃棄物の処分問題が近年深刻化している。それらの様々な有効利用法・利用技術も試みられてはいるが、実用化に至っているものは未だ数少ない。

【0003】
一方、化学物質からなる有効成分を用いる病害虫防除方法に代わる新たな防除技術、すなわち生態系保全を目的とした総合管理技術の開発も志向されている。そうした中で有望視されているのが、自然界の微生物を用いた防除法、すなわち生物農薬による防除技術であり、すでに開発・製品化されているものもある。しかしながら、その数は未だ少なく、より効果の高い防除剤及び防除法の開発がさらに切望されている。

【0004】
産業廃棄物と微生物を利用した植物保護剤としては、糸状菌であるボーベリヤ・テネラを定着させたフスマを用いたキボシカミキリ防除剤(特開昭61-268609号公報)および天敵糸状菌を定着させたフスマまたはピートモスなどを用いたカミキリムシ類防除剤(特開平4-202104号公報)が開示されている。しかし、その例は未だ少数であり、さらなる産業廃棄物を利用した植物保護剤の開発が望まれている。

【0005】

【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記のような現状に鑑み、植物病害等を安全に防除し、かつ産業廃棄物を有効に利用するための植物保護剤およびそれを用いた植物病害の防除方法を提供することを目的とする。

【0006】

【課題を達成するための手段】本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、植物保護剤の担体および有効成分産生媒体として、おからおよび細菌をそれぞれ用いることによって、植物保護剤の環境および標的外生物に対する負荷を低減することができ、かつ産業廃棄物の処分にも貢献できることを見出し、本発明を完成するに至った。

【0007】
すなわち、本発明は、微生物を定着させたおからからなる、植物保護剤に関する。また、本発明は、微生物が細菌であることを特徴とする、前記の植物保護剤に関する。さらに、本発明は、細菌がバチルス・アミロリクエファシエンスであることを特徴とする、前記の植物保護剤に関する。また本発明は、バチルス・アミロリクエファシエンスがバチルス・アミロリクエファシエンスRC-2株であることを特徴とする、前記の植物保護剤に関する。

【0008】
さらに本発明は、前記の植物保護剤を用いることを特徴とする、植物病害の防除方法に関する。またさらに、本発明は、各種植物糸状菌病害を防除することによって植物を保護することを特徴とする、前記の植物病害の防除方法に関する。さらに本発明は、病原糸状菌コレトトリカム・デマティウムによる病害を防除することによって植物を保護することを特徴とする、前記の植物病害の防除方法に関する。また本発明は、クワ炭疽病、クワ白紋羽病およびイネごま葉枯病を防除することによって植物を保護することを特徴とする、前記の植物病害の防除方法に関する。さらにまた本発明は、植物保護剤を保護対象である植物、土壌、または栽培施設に施用することを特徴とする、前記の植物病害の防除方法に関する。また、本発明は、施用の方法が直接散布、またはその懸濁水の塗付または散布であることを特徴とする、前記の植物病害の防除方法に関する。

【0009】
おからは豆腐などの製造に伴って生じる一種の産業廃棄物であるが、その主成分はダイズであるから、環境への影響は極めて小さい。また、おからは食品でもあるから、人間を含む他の生物に対する影響も極めて小さい。したがって、おからを植物保護剤の担体として用いると、従来の農薬に用いられてきた担体より環境および標的外生物への影響は格段に小さく、しかも産業廃棄物の処理に貢献することもできる。さらに、このような植物保護剤は安価であるため、防除コストの低減にもつながる。

【0010】
バチルス・アミロリクエファシエンスはバチルス属に属する細菌の一種であり、いくつかの種は糸状菌や昆虫に寄生し、その寄主に有害な物質を産生することが知られている。したがって、バチルス・アミロリクエファシエンスは、糸状菌植物病害の防除媒体として有効である。特に、桑葉より単離したバチルス・アミロリクエファシエンス RC-2株は、各種植物病原糸状菌に対し拮抗作用を有し、広範な殺菌スペクトラムを有することが知られている。該菌株はクワ炭疽病を引き起こす病原糸状菌コレトトリカム・デマティウムにも拮抗作用を示すため、該菌株はクワ炭疽病防除にも有効である。

【0011】
本発明による植物保護剤を用いた植物病害防除法における施用部位または箇所は特に限定されず、保護対象である植物、土壌、または栽培施設のいずれでもよい。また、その施用の方法も、直接散布、またはその懸濁水の塗付または散布のいずれでもよい。水を用いない場合は、散布しなければならない剤の量が小さく、薬液の調製も不要であるため、特に簡便な施用が可能である。以下、本発明を詳細に説明する。

【0012】

【発明の実施の形態】本発明に用いるおからは、一般の豆腐製造業者から購入したものでよく、病害の防除に使用する場合は、オートクレーブ殺菌したおからにRC-2株の液体培養による培養液を注ぎ込み、数日間の培養後に風乾して、菌株を定着させた後に使用する。本発明に用いる微生物は、例えば桑葉より単離したバチルス・アミロリクエファシエンス RC-2株であり、本菌株は工業技術院生命工学技術研究所に平成10年(1998年)2月18日付で寄託番号FERM P-16641として寄託されている。

【0013】
RC-2株の培養には、特別な方法を用いる必要はなく、公知の好気性細菌と同様の方法を用いることができる。培地としては、資化可能な炭素源、窒素源、無機物及び必要な生育促進物質を適当に含有する培地であれば、合成培地、天然培地のいずれも用いることができる。具体的な培地を例示すると、ジャガイモ半合成培地、キングB培地、LB培地、PSA培地等を挙げることができる。なお、培地成分は実施例1及び試験例1に示した。培養に際しては、温度を20~35℃、好ましくは25~30℃に維持することが望ましい。以上のような条件下で1~2日程度培養を行うと、培地表面に十分な量のコロニーが形成されてくる。

【0014】
防除方法としては、上記のRC-2株を定着させた乾燥おからを、植物病原菌の宿主となる植物体またはその土壌、栽培施設等に直接散布、またはその懸濁水を塗付または散布することによって行う。本発明の植物保護剤の防除対象となる病害としては、クワ炭疽病、クワ白紋羽病、イネごま葉枯病等を挙げることができる。

【0015】

【実施例】以下、本発明を実施例、試験例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
[実施例1] RC-2株を定着させたおから粉末の作成
RC-2株の培養:ポリペプトンを添加したPD液体培地(ジャガイモ塊茎200gの煎汁1L、グルコース20g、ポリペプトン5g)50 ml中にRC-2株(工業技術院生命工学技術研究所に平成10年(1998年)2月18日付で寄託番号FERM P-16641として寄託済み)を移植し、25℃で2日間振とう培養した。
RC-2株のおからへの接種:上記の振とう培養液から遠心分離(3500rpm、10分)により得られた細菌菌体に、滅菌蒸留水を加えて細菌懸濁液(約3×109cfu/ ml)を作成した。この細菌懸濁液を、オートクレーブ(121℃、15分)滅菌したおからに生重30gあたり75mlずつ流し込み、その後おからを40℃暗黒条件下で3日間静置培養しておからにRC-2株を定着させた。
おから粉末の作成:培養したおからを40℃で3日間乾燥し、乾燥おからを粉砕機で粉末状に調整した。上記の手法により、粉末乾燥重1gあたりに約3.2×109cfuのRC-2株が定着している乾燥おから粉末(以降[RC-2おから]と略記)を得た。

【0016】
[試験例1] RC-2株を定着させた乾燥おからの各種植物病原糸状菌に対する生育阻害活性スペクトル
実施例1にて作成したRC-2おからが、どの植物病原糸状菌に対し生育抑制活性を有するかを調べた。コレトトリカム・デマティウム(Colletotrichum dematium)、コレトトリカム・アクテイタム(Colletotrichum acutatum)、コレトトリカム・オルビキュラア(Colletotrichum orbiculare)グロメレラ・シングラタ(Glomerella cingulata)、ロゼリニア・ネカトリクス(Rosellinia necatrix)、ディアポルテ・ノムライ(Diaporthe nomurai)、フザリウム・ソラニ(Fusarium solani)フザリウム・ラテリチウム(Fusarium lateritium)、 スクレロチニア・スクレロチオラム(Sclerotinia sclerotiorum)、 バイポラリス・レシアエ(Bipolaris leersiae)の10菌株を検定菌として用い、各菌株の菌叢ブロックをPSAの平板上の一方に置床して菌叢直径2.5~4cmのコロニーを形成させた。次いで、各菌叢先端部から15mmの距離の場所にRC-2おからを7mg置き、室内環境下で対峙培養した。その結果、すべての検定菌の菌糸生育がRC-2おからにより抑止され、特にフザリウム・ラテリチウム、ロゼリニア・ネカトリクス、スクレロチニア・スクレロチオラム、バイポラリス・レシアエで顕著な生育抑止効果が認められた(表1)。このことは、RC-2おからがこれらの各種植物病原糸状菌に対し、防除効果を有することを示している。

【0017】

【表1】
JP0003482462B2_000002t.gif【0018】[試験例2] 乾燥おからにおけるRC-2株の定着性
乾燥おからに定着させたRC-2株の、おから中における生菌数の時間的変化を調べた。常法により作成したRC-2株のストレプトマイシン耐性変異株を、実施例1と同様の手法により乾燥おからに定着させた後、5℃および25℃の恒温器、屋外、および雨が入り込まない屋外に設置した。その後4か月にわたり経時的に、各箇所に設置したおからから一定量ずつを回収し、滅菌水中に懸濁した。それらの各懸濁液の段階希釈液をストレプトマイシン200ppmを添加したLB培地上に塗沫して、40℃で1日培養後に出現した耐性変異株のコロニー数から、乾燥おから1g中に含まれる耐性株の生菌数を算出した。その結果、いずれの箇所に設置したおから中のRC-2株も、多少の増減は見られるものの、設置当初の生菌数を調査期間中ほぼ維持していることが判明した(図1)。この結果は、RC-2株がおから中で最低でも4カ月間安定して定着できることを示している。

【0019】
[試験例3] RC-2おからのコレトトリカム・デマティウムによるクワ炭疽病に対する防除効果
RC-2おからの植物病原糸状菌に対する実際の植物体上における防除効果を、クワ炭疽病菌コレトトリカム・デマティウムに対する防除効果を例として説明する。
切取葉試験:温室内で栽培・管理された桑葉(品種しんいちのせ)1枚から複数の葉片を作成し、それぞれの葉面にクワ炭疽病菌コレトトリカム・デマティウムの分生子懸濁液(106個/ml)10μlを無傷滴下接種した。接種の10日前、7日前、4日前、2日前、同時および1日後に、上記のRC-2おから20mgを1mlの滅菌水中に懸濁して作成した懸濁水を筆でそれぞれに塗付し、RC-2おからによる本病の防除効果を検討した。その結果、接種1日後にRC-2おから懸濁水を塗付した葉では発病したが、その他の塗付葉では、顕著な発病抑制効果が見られた(表2)。この結果から、RC-2おから懸濁水の塗付には治療効果は無いが、予防効果及び発病抑制効果があると判断された。

【0020】

【表2】
JP0003482462B2_000003t.gif【0021】ポット試験:温室内で管理された桑苗ポット(品種しんいちのせ)を用い、その着生葉の葉面にクワ炭疽病菌コレトトリカム・デマティウムの分生子懸濁液(105個/ml)を噴霧接種した。幾つかの接種葉に、上記のRC-2おから懸濁水を接種7日前、3日前、1日前、同時及び1日後に筆で塗付し、これらの塗付葉と本病原菌接種のみの対照葉との発病程度の比較により、本病の防除効果を検討した。その結果、大半のRC-2おから懸濁水を塗付した葉において、対照葉と比較して顕著な発病抑制効果が見られた(表3)。以上これらの結果は、RC-2おからが、実際の植物体上においても、クワ炭疽病菌コレトトリカム・デマティウムに対して防除効果を有することを示している。

【0022】

【表3】
JP0003482462B2_000004t.gif【0023】
【発明の効果】本発明の植物保護剤およびそれを用いた植物病害の防除法によれば、各種植物病害を安全に防除することが可能であり、かつ産業廃棄物の処分にも寄与することが可能である。
図面
【図1】
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