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明細書 :種なし果実の作出方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3376553号 (P3376553)
公開番号 特開平11-103705 (P1999-103705A)
登録日 平成14年12月6日(2002.12.6)
発行日 平成15年2月10日(2003.2.10)
公開日 平成11年4月20日(1999.4.20)
発明の名称または考案の名称 種なし果実の作出方法
国際特許分類 A01H  1/06      
A01H  5/08      
FI A01H 1/06
A01H 5/08
請求項の数または発明の数 1
全頁数 4
出願番号 特願平09-279331 (P1997-279331)
出願日 平成9年9月29日(1997.9.29)
審判番号 不服 2000-002814(P2000-002814/J1)
審査請求日 平成9年9月29日(1997.9.29)
審判請求日 平成12年3月2日(2000.3.2)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】501203344
【氏名又は名称】独立行政法人 農業技術研究機構
【識別番号】597144314
【氏名又は名称】杉山 慶太
発明者または考案者 【氏名】森下 昌三
【氏名】杉山 慶太
個別代理人の代理人 【識別番号】100074077、【弁理士】、【氏名又は名称】久保田 藤郎 (外1名)
参考文献・文献 Sharma S.K.et al.,Indian Journal of Genetics & Plant Breeding,Vol.49,No.1(1989),P.35-42
Dryanovska O.,Fitologiya,Vol.6,(1977),p.59-76
調査した分野 A01H 1/00 - 17/00
特許請求の範囲 【請求項1】
40~100Kradの軟X線を照射した2倍体スイカの花粉を交配に用いることを特徴とする種なしスイカの作出方法。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【01】

【発明の属する技術分野】本発明は、種なしスイカの作出方法に関し、詳しくは軟X線を照射した2倍体スイカの花粉を交配に用いることによって、簡易に種なしスイを作出する方法に関する。

【02】

【従来の技術】食生活の多様化に伴い、果物についても食べやすいものが求められるようになり、これまでに種なしブドウや種なしスイカなどが作出されている。このような種なし果実の作出には、植物ホルモン等の植物生育調節剤で処理する方法や染色体の相互転座系統を利用する方法等がある。また、スイカの場合は、3倍体を作出してこれを利用する方法が実用化されている。種なしスイカの主流となっている3倍体スイカは、アルカロイドであるコルヒチン処理によりできた4倍体と2倍体をかけあわせて作られるが、3倍体作出までにはかなりの年月を要し、種子が高価であるという問題がある。しかも、3倍体スイカは栽培が難しい上に、果実の品質も劣る等の理由から、世界的には未だ十分に普及していないのが現状である。

【03】
また、ウリ科植物において植物生育調節剤で処理する方法は、細胞の分裂・伸長や果実の成長を促進するオーキシン,サイトカイニン等の植物ホルモンを、花(子房)に直接塗布あるいは噴霧するという比較的簡便な方法で種なし果実を作出することができるが、果実が奇形になり易いことや薬剤使用に伴う安全性の面や、薬剤登録上の問題があり、ほとんど利用されてはいない。さらに、染色体相互転座系統を利用する方法は、スイカなどのウリ科植物の場合、染色体相互転座系統の開発から品種の育成までに長い年月を要することや、果実に少量の正常種子が入る等の問題があり、この方法も現在は利用されていない。メロン,カボチャにおいては、種なし果実を積極的に作出することは行われていないが、植物ホルモンなどの植物生育調節剤を利用した単為結果が試みられている。なお、メロンでは3倍体を利用した種なし果実の作出が行われたことがある。

【04】
ところで、花粉に対してX線照射する技術としては、キンギョソウの花粉にX線を照射してF2で分離する突然変異を調査した例(Z. indukt. Abstamm. u. Vererbungslehre 64: 181-204,1933)やアカバナの花粉にX線を照射し、ゲノム突然変異を調査した例(Z. indukt. Abstamm. u. Vererbungslehre 70: 161-169,1935)がある。また、スイカやメロンの花粉に200~300Gyのγ線を照射し、その花粉を交配に用いて半数体を得ている(Cucurbit Genetics Cooperative,(14), 109-110,1991、Hort Science, 29(10): 1189-1190,1994、Turkish J. Arg.Forestry, 16: 302-314,1992) 。

【05】

【発明が解決しようとする課題】上記したように、スイカの場合、種なし果実を得る方法としては、主に3倍体が利用されている。しかし、この方法は一般に栽培されている2倍体スイカに比べて育種に年月がかかること、栽培が困難であること、作出された果実の品質が劣ること等の理由から、広範囲に普及するまでには至っていない。そのため、2倍体スイカの優れた育種・栽培適性と果実品種を保持しつつ、簡易な方法で食品上安全な種なしスイカに変えることが望まれている。そこで、本発明の目的はスイカなどのウリ科植物に属するあらゆる品種に広く応用することができ、しかも通常の栽培に用いられている2倍体植物に、品質の優れた種なし果実を作出させる安全、かつ簡易な方法を提供することである。

【06】

【課題を解決するための手段】請求項1記載の本発明は、40~100Kradの軟X線を照射した2倍体スイカの花粉を交配に用いることを特徴とする種なしスイの作出方法である。

【07】

【発明の実施の形態】本発明の対象となるウリ科植物は、スイカであり、その品種に制限はない。本発明の方法においては、2倍体スイカから雄花を採取し、該雄花に付着している花粉に軟X線を照射する。雄花は、花粉に発芽能力を有するものであればよいが、好ましくは開花当日に採取する。なお、開花翌日に採取したものや貯蔵したものでも、花粉に発芽能力があれば使用できる。花粉を雄花より分離させない状態で軟X線照射を行うことが好ましい。しかし、花粉を雄花より分離して軟X線照射をしても良い。

【08】
また、花粉に照射するX線としては、特に制限はないが、軟X線といわれる約0.1~1Åの長波長で透過能の低いものを用いることが好ましい。この軟X線は、組織に対する透過力が弱いため、花粉への照射に有効である。軟X線は、市販の照射用軟X線発生装置を用いて発生させることができる。X線の照射線量は、スイカの品種などを考慮して適宜決定すればよいが、通常は40~100Krad、好ましくは80~100Kradである。照射線量が下限未満では、十分な効果が期待できない。一方、照射線量の上限については、100KradのX線を照射した花粉を交配に用いると、正常種子が認められず、しいなのみとなるので、一般的にはそれ以上の照射は必要としない。照射時間については、通常1~3時間が適当である。具体的なX線照射線量の例を挙げれば、スイカの品種「紅こだま」では、花粉を40Krad以上の線量で照射して交配に用いると、正常種子の形成が大幅に減少する。また、照射線量を100Kradとすると、交配による正常種子が観察されなくなり、しいなのみとなる。一方、スイカ品種「富士光TR」では、花粉を80Krad以上の線量で照射して交配に用いると、正常種子の形成が認められなくなり、100Kradで照射した場合は、正常種子は認められず、しいなのみが観察される

【09】
上記のようにして得たX線照射花粉を、未交配の2倍体スイカの雌花に常法により交配し、これを栽培する。その結果、正常な種子は著しく減少し、殆どがしいなとなり、種なし果実を作出することができる。なお、交配前の雌花は、他の花粉との交配を避けるため、開花前日に袋等で覆ったものを用いる。

【10】

【実施例】次に、本発明を実施例により詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1
2倍体のウリ科植物としてスイカの品種「紅こだま」および「富士光TR」を用い、当日開花した雄花を採取し、花粉を分離することなく該雄花に軟X線(照射用軟X線発生装置OM-60R、オーミック社製)を照射した。なお、X線照射線量は10,20,40,80および100Krad(それぞれ100,200,400,800および1000Gyに相当)とした。また、対照としてX線無照射の区を設けた。X線を照射した花粉を、開花前日に袋で覆った未交配の雌花と交配させた。その後、常法により栽培した。品種「紅こだま」は交配35日後、品種「富士光TR」は交配37日後に、果実が十分に成熟した状態となったときに収穫し、果実中の正常種子数およびしいな数を測定した。品種「紅こだま」における照射線量と種子数との関係を図1に、品種「富士光TR」における照射線量と種子数との関係を図2に示す。

【11】
スイカ品種「紅こだま」のX線無照射区における種子数の内訳は、正常種子数が約345粒、しいな数は約55粒であった。これに対して、X線照射区では正常種子数は、10Krad照射区で約90粒となり、無照射区に比べて73%も減少し、20Krad照射区では約35粒となり、90%減少した。さらに、40Krad以上の線量で照射した試験区では、正常種子の形成が殆ど見られなかった。一方、しいな数はX線照射区で多く認められ、20Krad照射区で最も多かったが、40Krad以上照射した試験区ではやや減少した。また、果実断面を観察した結果、10Krad照射区においては、無照射区との違いが認められなかったものの、20Krad照射区では、しいなが目立つようになり、40Krad以上照射した試験区では、正常種子は見られず、しいなのみが観察された。なお、X線照射区の果実の品質は、無照射区のものと変わらなかった。40Krad以上照射した試験区の果実は糖度が12.5~13%であり、無照射区のものより高かった。

【12】
また、スイカ品種「富士光TR」の無照射区における種子数の内訳は、正常種子数は約623粒、しいな数は約114粒であった。これに対して、図2から明らかなように、X線照射区の正常種子数は、10Krad照射区では約280粒となり、無照射区に比べて55%減少し、20Krad照射区では、約50粒で80%も減少した。また、40Krad照射区では約30粒で95%減少し、80Krad以上照射した試験区では、正常種子は観察されず、しいなのみとなった。一方、しいな数は、品種「紅こだま」の場合と同様に、20Krad照射区が最高値を示し、それ以上の線量を照射した試験区では減少したが、しいなは果実中で目立たない程の小さなものが多かった。80Krad以上照射した試験区の果実は糖度が約11.5であり、無照射区のものより高かった。以上の結果から、スイカ品種「紅こだま」では40~100Krad、「富士光TR」では80~100Kradの線量の軟X線を照射した花粉を交配に用いることによって、正常種子が形成されず、種なし果実が作出されることが示された。

【13】

【発明の効果】本発明によれば、一般に栽培されている2倍体スイカから、種なし果実を安全、かつ簡易な方法で作出することができる。しかも、従来の3倍体を利用する方法に比べて短期間に種なし果実を作出できるため、スイカの生産と消費の拡大に寄与することができる。
図面
【図1】
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【図2】
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