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明細書 :シグナル配列を用いた遺伝子のクローニング方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3357915号 (P3357915)
公開番号 特開2001-224389 (P2001-224389A)
登録日 平成14年10月11日(2002.10.11)
発行日 平成14年12月16日(2002.12.16)
公開日 平成13年8月21日(2001.8.21)
発明の名称または考案の名称 シグナル配列を用いた遺伝子のクローニング方法
国際特許分類 C12N 15/09      
C12Q  1/68      
FI C12Q 1/68 A
C12N 15/00
請求項の数または発明の数 2
全頁数 12
出願番号 特願2000-399623 (P2000-399623)
分割の表示 特願平08-305365 (P1996-305365)の分割、【原出願日】平成8年11月15日(1996.11.15)
出願日 平成8年11月15日(1996.11.15)
審査請求日 平成12年12月27日(2000.12.27)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】501167644
【氏名又は名称】独立行政法人農業生物資源研究所
発明者または考案者 【氏名】門脇 光一
個別代理人の代理人 【識別番号】100078282、【弁理士】、【氏名又は名称】山本 秀策
審査官 【審査官】鈴木 恵理子
参考文献・文献 Gene,Vol.70,No.1(1988),p.75-84
調査した分野 C12Q 1/68
C12N 15/00 - 15/09
特許請求の範囲 【請求項1】
植物葉緑体に局在するタンパク質をコードする遺伝子をクローニングする方法であって、植物葉緑体に局在するタンパク質をコードする遺伝子のシグナル配列をコードするヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドをプローブとして用いてハイブリダイゼーションを行う工程を包含する、方法。

【請求項2】
前記ヌクレオチド配列が、少なくとも15個の連続したヌクレオチドを含有するヌクレオチド配列ある、請求項1に記載の方法。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【0001】

【発明の属する技術分野】本発明は、シグナル配列を用いて新規遺伝子をクローニングする方法に関する。さらに詳しくは、オルガネラへの局在化に関するシグナル配列をコードするヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドを用いて、該オルガネラに局在化するタンパク質をコードする新規遺伝子をクローニングする方法に関する。さらに本発明は、このクローニングにより得られたイネの呼吸鎖において機能するタンパク質複合体を構成するサブユニットおよびそれをコードする遺伝子に関する。さらに詳しくは、イネCOXVbタンパク質、およびそれをコードするcoxVb遺伝子に関する。さらに本発明は、coxVb遺伝子に相補的なヌクレオチド配列、この相補的なヌクレオチド配列を用いてCOXVbタンパク質の発現を抑制する方法、いわゆる「アンチセンス法」、およびCOXVbタンパク質に結合する抗体に関する。さらに本発明は、COXVbタンパク質およびcoxVb遺伝子の改変体の利用に基づく、植物新品種の育成法に関する。

【0002】

【従来の技術】ミトコンドリアは、ほとんどの真核細胞にみられる細胞小器官であり、細胞内での物質代謝に寄与する。ミトコンドリアの主要な役割は、エネルギー変換器官として、物質の酸化によるエネルギーを用いてATPを合成することである。ATP合成において多数の酵素が機能している。例えば、ピルビン酸や脂肪酸からアセチルCoAを生成するもの、クエン酸回路によってアセチルCoAを酸化するものなどがある。この酸化過程で生じる最終産物はCO2とNADHであり、CO2は細胞から老廃物として排出され、NADHは呼吸鎖に沿って流れる電子の主な供給源となる。呼吸鎖を構成する酵素は複合体を形成してミトコンドリア内部に埋め込まれており、膜結合型呼吸酵素複合体と呼ばれる。これらの酵素複合体は、正常時には電気化学的プロトン勾配を形成しており、これらを経由して電子は移動し、最終的に酸素に至る。現在までに、3つの主要な膜結合型呼吸酵素複合体が同定、精製されており、それぞれNADH脱水素酵素複合体、チトクロムb-c1複合体、チトクロム酸化酵素複合体と呼ばれている。呼吸鎖において、NADH脱水素酵素複合体は、NADHから電子を受け取り、フラビンと少なくとも5個の鉄-硫黄中心を介してユビキノンに渡す。ユビキノンは、電子を次のチトクロムb-c1複合体に渡す。次いでb-c1複合体は、受け取った電子をチトクロムcに渡し、チトクロムcからチトクロム酸化酵素複合体に渡され、最終的にチトクロム酸化酵素複合体から酸素に渡される。これらの膜結合型呼吸酵素複合体の中で最も研究が進んでいるのは、チトクロム酸化酵素複合体であり、哺乳動物では、約30万ドルトンの二量体として単離されている。単量体は9種以上のポリペプチドからなり、チトクロム2個と銅原子2個を含むことが知られており、これらのポリペプチドをコードする数種の遺伝子がクローニングされている。哺乳動物におけるこのような研究にも関わらず、植物においては、チトクロム酸化酵素複合体を構成する因子および呼吸鎖機構の解明は進んでいない。

【0003】
細胞の生命活動に重要な位置を占めるエネルギー変換の場であるミトコンドリアの呼吸鎖機構を解明することは、真核細胞および生命体の生理機能の解明およびその調節、さらには分子生物学的アプローチによる植物新品種の創出のために重要である。

【0004】
ミトコンドリアに限られず、真核生物等におけるオルガネラの機能を解明することは、有用な物質生産、新規植物体の創出、病気の治療等にとっても重要である。そのためには、オルガネラのタンパク質、特にオルガネラに局在するタンパク質の機能を解明することはきわめて重要である。

【0005】
ミトコンドリアのようなオルガネラにおいて、局所的に存在するタンパク質をコードする構造遺伝子のクローニングは、タンパク質の精製、アミノ酸配列決定、cDNAライブラリーのスクリーニング、および塩基配列決定と多大な労力が必要とされる。これは、遺伝子およびオルガネラの機能解析の進展を妨げるものである。ホモロジー検索からポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を利用したクローニング法等が開発されているが、これらの方法では、既知構造遺伝子に塩基配列の相同性が高い遺伝子のクローニングに限られる。従って従来の技術では、特定のオルガネラに関連する、塩基配列およびタンパク質の機能が異なる多種多様な未知遺伝子を効率良くクローニングすることは困難である。従って、特定のオルガネラに局在化するタンパク質をコードする遺伝子を効率良くクローニングする方法が望まれている。

【0006】

【発明が解決しようとする課題】本発明は上記の問題を解決するためのものであり、その目的とするところは、前駆体ポリペプチドに含まれるシグナル配列を用いる新規の遺伝子単離技術を提供することにある。このような遺伝子をクローニングする方法が提供され、新規遺伝子の構造、機能が明らかにされることによって、オルガネラの構造、機能が解明される。従って本発明は、例えば、植物における新品種の育成、あるいはバイオセンサーおよび人工ミトコンドリアの作出に道を開くものである。

【0007】
さらには、植物のミトコンドリアの呼吸鎖において電子伝達に機能するチトクロム酸化酵素複合体を構成するサブユニットをコードするcoxVb遺伝子を提供することであり、さらには、coxVb遺伝子の種々の改変体およびcoxVb遺伝子に相補的な配列を有するポリヌクレオチドを用いて植物の新品種を提供することである。

【0008】

【課題を解決するための手段】本発明は、オルガネラに局在するタンパク質をコードする遺伝子をクローニングする方法であって、オルガネラへの局在化に関連するシグナル配列をコードするヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドをプローブとして用いてハイブリダイゼーションを行う工程を包含する、方法に関する。

【0009】
好適な実施態様においては、前記オルガネラはミトコンドリアであり、前記プローブは、ミトコンドリアへの局在化に関連するシグナル配列をコードするヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドである。

【0010】
好適な実施態様においては、前記プローブは、少なくとも15個の連続したヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドであって、配列番号4または5によって示されるヌクレオチド配列中に存在するヌクレオチド配列を有する。

【0011】
好適な実施態様においては、前記プローブは、少なくとも15個の連続したヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドであって、配列番号4または5によって示されるヌクレオチド配列を有する。

【0012】
好適な実施態様においては、前記プローブは、少なくとも15個の連続したヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドであって、配列番号6または7によって示されるアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を有する。

【0013】
好適な実施態様においては、前記プローブは、少なくとも15個の連続したヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドであって、配列番号6または7によって示されるアミノ酸配列において1もしくは複数のアミノ酸が付加、欠失もしくは置換されたアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドである。

【0014】
好適な実施態様においては、前記プローブは、少なくとも15個の連続したヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドであって、配列番号8または9によって示されるアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を有する。

【0015】
好適な実施態様においては、前記プローブは、少なくとも15個の連続したヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドであって、配列番号8または9によって示されるアミノ酸配列において1もしくは複数のアミノ酸が付加、欠失もしくは置換されたアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドである。

【0016】
本発明は、イネCOXVbタンパク質であって、該ポリペプチド配列が、配列番号2によって示されるアミノ酸配列、該アミノ酸配列において1もしくは複数のアミノ酸が付加、欠失もしくは置換されたアミノ酸配列であって該COXVbと生物学的に同等の活性を有する配列またはそれらの断片である、タンパク質に関する。

【0017】
本発明は、イネCOXVbをコードするcoxVb遺伝子を有するポリヌクレオチドであって、該遺伝子のヌクレオチド配列が、配列番号2によって示されるアミノ酸配列、該アミノ酸配列において1もしくは複数のアミノ酸が付加、欠失もしくは置換されたアミノ酸配列であって生物学的に該COXVbと同等の活性を有する配列またはそれらの断片をコードする配列である、ポリヌクレオチドに関する。

【0018】
本発明は、さらにイントロンを含む、前記coxVb遺伝子に関する。

【0019】
本発明は、前記coxVb遺伝子を有する、組換えベクターに関する。

【0020】
本発明は、前記COXVbタンパク質を産生する方法であって、該タンパク質をコードする遺伝子が発現する適切な条件下で、該遺伝子を含有するベクターを有する細胞を培養する工程、およびそのように産生された該タンパク質を回収する工程を包含する、方法に関する。

【0021】
本発明は、前記coxVb遺伝子のヌクレオチド配列の全部または一部に相補的な配列あるいは該遺伝子のヌクレオチド配列と2本鎖を形成するに十分な相補的な配列を有するポリヌクレオチド配列に関する。

【0022】
本発明は、前記ポリヌクレオチド配列に相補的な配列を有し、前記ヌクレオチド配列と相補的なポリヌクレオチドを生産し得るようにプロモーターに接続されている、ベクターに関する。

【0023】
本発明は、細胞におけるcoxVb遺伝子の機能を抑制する方法であって、前記ベクターを該細胞に導入する工程を包含する、方法に関する。

【0024】
本発明は、前記ポリペプチドに結合する、抗体に関する。

【0025】
好適な実施態様においては、前記抗体は、ポリクローナル抗体である。

【0026】
好適な実施態様においては、前記抗体は、モノクローナル抗体である。

【0027】
本発明は、前記coxVb遺伝子を改変したヌクレオチド配列を有する、植物細胞に関する。

【0028】

【発明の実施の形態】本発明は、特に記載がない限り、分子生物学、生化学、遺伝学、遺伝子工学、微生物学、および植物育種学等の分野の従来技法を用いて実施し得る。

【0029】
本明細書において「ポリヌクレオチド」とは、ヌクレオチドの重合体を意味し、特定の鎖長に限定されない。

【0030】
本明細書において「ベクター」とは、外来のポリペプチドが、その転写および翻訳に必要なエレメントと作動可能に連結されており、さらに宿主細胞での複製および組換え体の選択に必要な因子を備えた、外来のポリペプチドを宿主細胞内に伝達する媒体をいう。好ましいベクターはプラスミドである。植物細胞もしくは酵母および/または細菌に伝達するものが特に好ましい。本発明の上記ベクターのタイプおよび使用される各調節エレメントの種類が、宿主細胞に応じて変更し得ることは、当該分野における周知事項である。

【0031】
本明細書において「オルガネラ」とは、真核生物に存在する一定の機能を有する構造単位をいい、ミトコンドリア、ペルオキシソーム、色素体、小胞体、ゴルジ体、リソソーム、エンドソーム、および分泌小胞を包含する。

【0032】
本明細書において「ライブラリー」とは、目的の遺伝子を含有するゲノムDNA、cDNAなどの核酸を、プラスミドまたはファージなどの適切なベクターに結合したものをいう。ライブラリーの種類が用いられるスクリーニングの方法に応じて変わり得ることは、当業者に周知である。

【0033】
本明細書において「相補的な配列」とは、特定の遺伝子の転写産物と水素結合により2本鎖のリボヌクレオチド複合体を形成し得るリボヌクレオチドをコードする配列をいう。

【0034】
本明細書において「抗体またはポリクローナル抗体」は、抗原またはレセプターでの免疫化に対して産生されるタンパク質を包含する。用語「モノクローナル抗体」は、細胞の単一のクローンに由来する免疫グロブリンを包含する。このクローンに由来する全てのモノクローナル抗体は、化学的および構造的に同一であり、1つの抗原決定基に特異的である。

【0035】
本明細書において「シグナル配列」とは、染色体上にコードされる、成熟タンパク質には通常見出されないポリペプチド配列であって、その配列の下流にコードされる前駆体タンパク質の局在化に関連するポリペプチド配列を包含する。

【0036】
本明細書において「ハイブリダイゼーション」とは、遺伝学的研究、生化学的研究、および臨床診断に使用されている、1本鎖分析物ポリヌクレオチドとその配列に相補的な1本鎖核酸プローブとをハイブリダイズさせ、標識2本鎖ポリヌクレオチドから放出されるシグナルを検出する技法であって、種々の改変された方法を包含する。例えば、Maniatisら、Mo lecular Cloning: A Laboratory Manual Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, N.Y. (1989)を参照のこと。

【0037】
本発明において、「プローブ」とは、検出可能なシグナルを提供し得る標識されたポリヌクレオチドであり、標識は、蛍光、放射活性、発色、磁性、酵素活性などを用いて行われ得る。

【0038】
本発明において、「1もしくは複数のアミノ酸の改変」とは、周知技術である部位特異的変異誘発法(例えば、Nucleic Acids Res.、10:6487-6500(1982)を参照のこと)あるいはPCR法(例えば、Saikiら(1988)、Science、230:1350-1354を参照のこと)により、付加、欠失または置換できる程度のアミノ酸の改変を意味する。

【0039】
本発明者は、リボソームタンパク質の一種であるミトコンドリアRPS11をコードするイネs11-1の前駆体配列のアミノ酸配列解析の結果から、イネs11-1が、植物由来のATPアーゼβサブユニットの前駆体配列のN末端と高い相同性を有していること、およびs11-1にコードされるRPS11のN末端に位置するポリペプチドがミトコンドリアへの輸送シグナルとして機能することを見出した。このことから、機能的に異なる複数のタンパク質前駆体が、相同性の高いシグナル配列を共有していることが示唆される。本発明者は、特定のシグナル配列が、遺伝子の重複と組換えにより、他の遺伝子の前駆体配列として機能しているという仮説を想定した。

【0040】
この仮説を実証するために、本発明者は、他の遺伝子(イネの核ゲノムに存在する、RPS11をコードするもう一つのコピー遺伝子s11-2)の5’末端のポリヌクレオチドをプローブとして用いて、プラークハイブリダイゼーションを行い、リボゾームタンパク質とは全く機能も構造も異なる、ミトコンドリアのチトクロムc酸化酵素複合体サブユニットVbをコードする新規遺伝子coxVbを単離することに成功した。以下、本発明について詳細に説明する。

【0041】
本発明は、機能が異なるタンパク質が、相同性の高いシグナル配列を共有し、その結果、特定のオルガネラに局在化されているという仮説をたてたことに起因する。まず表1は、s11-1遺伝子がコードするリボソームタンパク質RPS11の前駆体のN末端部分の35アミノ酸残基からなるアミノ酸配列(表中のrice RPS11)と、植物核ゲノムにコードされた3種のミトコンドリアタンパク質前駆体のN末端部分アミノ酸配列(46~55アミノ酸残基)とを、比較したものである。表中のNpBATPase、HbBATPaseおよびOsBATPaseは、各々、Nicotiana plumbaginifoliaHevea brasiliensisおよびOryzae sativa由来のミトコンドリアATPアーゼβサブユニットを表す。

【0042】

【表1】
JP0003357915B2_000002t.gif【0043】表1に示すように、機能も起源も異なるタンパク質であるイネの核ゲノムにコードされるRPS11前駆体のN末端部分のアミノ酸配列と、他の植物のミトコンドリアタンパク質前駆体のN末端部分のアミノ酸配列とは高い相同性を有していることがわかった。このことは、機能が異なるタンパク質が、相同性の高いシグナル配列を共有し、その結果、特定のオルガネラに局在化されているという本発明者の仮説を支持するものである。

【0044】
さらに、本発明者は、他のタンパク質前駆体間においても相同性の高いシグナル配列が保存されていることを想定し、イネゲノム中に存在するRPS11の他のコピー遺伝子s11-2の5’末端の推定上のシグナル配列を用いて、プラークハイブリダイゼーションを行った。その結果、核にコードされるミトコンドリアの新規遺伝子coxVbの単離に成功した。このことから、本発明者の仮説が正しいことが実証された。

【0045】
表2は、本発明の方法により単離された新規遺伝子イネcoxVbs11-2遺伝子の5’末端領域およびその近隣のヌクレオチド配列の比較表である。表中の-は欠失を、*は両者のヌクレオチド配列が同一であることを示す。イネcoxVbs11-2とのヌクレオチド配列の相同性は、145ヌクレオチドにわたり、86%同一である。これは、複数の遺伝子間で相同性が高い前駆体配列が保存されていることを示しており、本発明者の上記仮説をさらに支持するものである。

【0046】

【表2】
JP0003357915B2_000003t.gif【0047】なお、本発明の方法により単離された新規遺伝子が、イネcoxVbであると推定したのはアミノ酸配列の相同性解析の結果である。

【0048】
イネcoxVbと、イネs11-2、ヒトゲノムにコードされるチトクロムc酸化酵素複合体サブユニットVb(ヒトCOXVb)および酵母ゲノムにコードされるチトクロムc酸化酵素複合体サブユニットIV(酵母COXIV)との全アミノ酸配列の比較を表3に示す。

【0049】

【表3】
JP0003357915B2_000004t.gif【0050】各アミノ酸残基は1文字表記で表している。表中のrice COXVb、human COXVb、Yeast COXIX、s11-2は、各々イネCOXVb、ヒトCOXVb、酵母COXIV、イネs11-2タンパク質を表す。表中の-は欠失を示す。

【0051】
イネCOXVbとヒトCOXVbまたは酵母COXIVとのアミノ酸配列の相同性は、それぞれ49%および35%である。この上記アミノ酸配列相同性の解析結果に基づき、本発明の方法により単離された新規遺伝子が、イネにおけるチトクロム酸化酵素複合体を構成するサブユニットVbをコードするcoxVb遺伝子であることがわかった。

【0052】
このことから、本発明のシグナル配列をコードするポリヌクレオチドを用いることにより、これまで見出されなかった新規遺伝子が単離され得ることが証明された。

【0053】
本発明者は、上記の研究結果から、特定のタンパク質前駆体に存在するシグナル配列をコードするヌクレオチド配列を有するポリペプチドを用いて、ハイブリダイゼーションを行うことにより、相同なシグナル配列を有する異なる遺伝子を単離し得ることを見出し、本発明を完成させた。本発明によれば、真核生物において特定のオルガネラに局在化されるタンパク質をコードする新規遺伝子を単離することができる。

【0054】
以下、本発明を、オルガネラとしてミトコンドリアを例にあげて説明する。

【0055】
植物のミトコンドリアに局在するタンパク質をコードする遺伝子のクローニングは、s11-2遺伝子あるいはcoxVb遺伝子の5’末端に存在する少なくとも15個の連続したポリヌクレオチドをプローブとして植物由来のライブラリーをスクリーニングすることにより達成される。プローブとして用いられるポリヌクレオチドは、天然の材料から調製され得るか、または当該分野で公知の方法により合成され得る。例えば、ポリヌクレオチドのクローニング、化学的架橋技術、化学合成、酵素的組立、それらの組み合わせ、または他の適切な方法を用いて調製されるが、これらに限定されない。プローブは、配列番号4によって示されるヌクレオチド配列中に存在するヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドであるか、または配列番号5によって示されるアミノ酸配列、あるいは配列番号5によって示されるアミノ酸配列において1もしくは複数のアミノ酸が付加、欠失もしくは置換されたアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドであり得る。ここで「1もしくは複数のアミノ酸」とは、周知技術である部位特異的変異誘発法(例えば、Nucleic Acids Res.、10:6487-6500(1982)を参照のこと)あるいはPCR法(例えば、Saikiら(1988)、Science、230:1350-1354を参照のこと)により、付加、欠失または置換できる程度のアミノ酸を意味する。さらに、このようなプローブは、同一のアミノ酸をコードするが異なるヌクレオチド配列を有する複数のポリヌクレオチドの混合物、いわゆる「ミックスプローブ(mixed probe)」(例えば、Maniatisら、前出を参照のこと)の形態でもあり得る。

【0056】
他の新規遺伝子のクローニングは、オルガネラを有する真核生物由来のライブラリーをスクリーニングすることにより達成される。好ましくは、λファージクローニングベクターを用いる常法により、ミトコンドリアDNAライブラリー、cDNAライブラリーまたは核ゲノムDNAライブラリーが作成され、スクリーニングに使用され得る。市販のゲノムライブラリーも好適に使用され得る。

【0057】
5’末端に位置する、シグナル配列をコードするポリヌクレオチド断片をプローブとして用いて、プラークハイブリダイゼーションを実施し、該プローブと相同配列を有するcDNAクローンを選抜し得る。プローブに用いられるポリヌクレオチドは、特定のタンパク質のアミノ酸配列をコードする天然に存在するヌクレオチド配列、または該タンパク質のアミノ酸配列において1もしくは複数のアミノ酸が付加、欠失もしくは置換されたアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を有し得る。ハイブリダイゼーションは、当業者に公知の一般的な条件下で行われ得る。ストリンジェンシーの程度は、当業者に公知の範囲で変化し得る。例えば、Maniatisら、前出を参照のこと。得られた陽性クローンより、ライブラリー由来のDNA断片を取得する。次いで、当該分野で公知のヌクレオチド配列解析法(Sangerらのジデオキシ法等)または市販されている自動シーケンサーにより、上記DNA断片のヌクレオチド配列を決定し得る。決定されたヌクレオチド配列から推定されるアミノ酸配列を用いてホモロジー解析を行い、クローン化した遺伝子によりコードされるタンパク質を推定する。クローン化された遺伝子の発現は、クローン化DNAを挿入した適切な原核宿主または真核宿主に適合する発現ベクターの構築、宿主細胞への発現ベクターの導入、ならびに組換え宿主細胞の培養および生産物の回収により達成される。タンパク質の機能は、当該分野で公知の方法、例えば、このタンパク質をコードする遺伝子の欠損株または過剰発現株を作成し、それらの表現型を解析することにより、同定され得る。

【0058】
以下、coxVb遺伝子のクローニングおよびその発現等について記載するが、これらの方法が、他のオルガネラあるいはミトコンドリアの他のタンパク質のスクリーニングおよび発現に用いられることは言うまでもない。

【0059】
上記で得られた、s11-2遺伝子の5’末端に位置する、推定上のシグナル配列をコードするポリヌクレオチドをプローブとして用いて、イネ由来のライブラリーに対してハイブリダイゼーションを行うことによりcoxVb遺伝子を含有するクローンを選抜し得る。用いられるイネ由来のライブラリーは、λファージクローニングベクターを用いる常法により作成され、ミトコンドリアDNAライブラリー、cDNAライブラリーまたは核ゲノムDNAライブラリーがスクリーニングに使用され得る。市販のゲノムライブラリーも好適に使用され得る。ハイブリダイゼーションは、当業者に公知の種々の方法を用いて行われ得る。プラークハイブリダイゼーションが好適に使用され得るが、これに限定されない。ハイブリダイゼーションの条件は、当業者に公知の条件下で行われ得る。例えば、Maniatisら、前出を参照のこと。ハイブリダイゼーションにより得られたポジティブクローンを単離し、DNAを抽出し、塩基配列を決定し得る。塩基配列の決定は、一般的な塩基配列決定法により達成され得る。得られたヌクレオチド配列および推定されるアミノ酸配列を、一般に利用可能なデータベースを通じて、ホモロジー解析プログラムにより、ホモロジー解析を行い、coxVb遺伝子を同定する。このcoxVb遺伝子を用いて、本発明の方法を実施し得る。

【0060】
本発明のcoxVb遺伝子のクローン化は、イネ由来のライブラリーを用いて、上記と同様の方法により行われ得る。あるいは、配列番号1によって示される、coxVb遺伝子のヌクレオチド配列の一部を直接プローブとして、植物核ゲノムに存在するcoxVb遺伝子を含むクローンを単離し得る。

【0061】
さらに、上記ライブラリーに含まれるイネゲノムDNAまたはcDNAを鋳型として、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)(Saikiら(1988)、Science、230:1350-1354)を実施し、coxVb遺伝子を含む増幅されたヌクレオチド配列を使用することも容易である。あるいは、本明細書に開示されるヌクレオチド配列情報を基に、公知のDNA合成法(例えば、ホスホアミダイト法)により化学的に合成されたDNA断片もまた、本発明のcoxVb遺伝子として好適に用いられ得る。

【0062】
本発明のcoxVb遺伝子の作製において、配列番号3によって示されるCOXVbの天然に存在するアミノ酸配列内の一次構造の小さな変更が、本タンパク質が有するチトクロム酸化酵素複合体を構成するサブユニットとしての機能を失わない範囲で行われ得ることは、当業者であれば、理解し得ることである。このような変更には、本シグナルペプチドのアミノ酸配列内における、1もしくは複数のアミノ酸の付加、欠失もしくは置換が包含され、周知技術である部位特異的変異誘発法(site-directed mutagenesis)(例えば、Nucleic Acids Res.、10:6487-6500(1982年)を参照)あるいはPCR法(Saikiら(1988)、Science、230:1350-1354)により実施し得る。ここで「1もしくは複数のアミノ酸」とは、上記部位特異的変異誘発法あるいはPCR法により、付加、欠失または置換できる程度の数のアミノ酸を意味する。

【0063】
得られた本発明の遺伝子は、そのままもしくは適切なリンカーを連結させて以下に示す組換えベクターの構築に利用され得る。

【0064】
coxVb遺伝子と、該遺伝子を宿主細胞内で発現させるための種々の調節エレメント(プロモーター、リボゾーム結合部位、ターミネーター、エンハンサー、発現レベルを制御する種々のシスエレメントを包含する)とを包含する組換え発現ベクターの構築においては、当該分野でよく理解されている種々の制限酵素によるポリヌクレオチド切断技法(restriction)およびポリヌクレオチド断片連結技法(ligation)が用いられる。ベクターおよびその構築に使用される調節エレメントの種類は、宿主細胞のタイプに依存している。

【0065】
酵母を宿主とした場合の好ましいベクターは、2μプラスミド複製系(ori)を有するYEp型ベクターであるが、これに限定されず、他の発現ベクターも使用し得る。酵母と大腸菌とのシャトルベクターの使用が好ましい。使用するプロモーターとしては、酵母F1-ATPアーゼ、ジヒドロ葉酸還元酵素に関するプロモーター、あるいは種々の解糖系における酵素に関するプロモーター、例えば、アルコールデヒドロゲナーゼ、グリセルアルデヒド-3-ホスフェートデヒドロゲナーゼ、ピルベートキナーゼホスホグリコイソメラーゼ等に関するプロモーターが好適に使用され得る。

【0066】
これらのプロモーターをエンハンサー、オペレーター等の調節配列と共に使用する。レポーター遺伝子としては、酵母F1-ATPアーゼ遺伝子、ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子が好適に使用され得るが、これらに限定されない。酵母宿主としては、一般的なSaccharomyces cerevisiaeの他、Zygosaccharomyces rouxiiSchizosaccharomyces pombe、さらにPichiaおよびCandida等も使用し得る。アミノ酸要求性または塩基要求性株の使用が好ましい。

【0067】
植物細胞を宿主とした場合の上記ベクターの構築例を以下に説明する。プロモーターとして、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)の35Sプロモーター、ノパリン合成酵素(NOS)プロモーター等が一般的に使用され得るがこれらに限定されない。本発明の実施に用いられ得るターミネーターは、特に限定されない。CaMV35SあるいはNOSのターミネーター領域が好適に使用され得る。作製された上記遺伝子構築物を、アグロバクテリウム属細菌を介して植物に導入し得るプラスミド(例えばpBI系プラスミド(Clontech社製))あるいはpUC系プラスミドに導入することによって、植物細胞を宿主とする本発明の組換えベクターが構築され得る。

【0068】
本発明の組換えベクターは、上記ポリヌクレオチド構築物に加え、さらに選択可能なマーカー遺伝子を含有し得る。選択可能なマーカー遺伝子は、本発明のポリヌクレオチドを導入された宿主細胞を選択するために使用される。一般に使用され得る選択可能なマーカー遺伝子は、用いる宿主細胞によって異なる。例えば、酵母の場合は、栄養要求性を相補する遺伝子(LeuUraTrp等)、植物細胞の場合は、カナマイシン耐性を付与するネオマイシンホスホトランスフェラーゼII(NTPII)またはハイグロマイシン耐性を付与するハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ(HPT)等の抗生物質耐性遺伝子が好適に使用され得るが、これらに限定されない。

【0069】
使用する宿主細胞に依存して、その細胞に適する標準的技法を用いて、上記ベクターによる宿主細胞の形質転換を行い得る。

【0070】
原核生物細胞の場合、Cohen, S. N.ら(1972)(Proc. Natl. Acad. Sci. USA、69、2110頁)により報告された塩化カルシウム処理法が用いられ得る。電気穿孔法(エレクトロポレーション)は、原核生物細胞の他、酵母、植物細胞等の真核生物細胞にも適用できる。

【0071】
ある種の高等植物細胞においては、アグロバクテリウム<HAN>・</HAN>チュメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)を介する方法(Shaw, C. H.ら(1983)、Gene、23:315)が広く用いられ得る。この方法は、まず構築したベクター(pBI系プラスミド等)を、エレクトロポレーション等によってアグロバクテリウム<HAN>・</HAN>チュメファシエンスに導入し、次いで形質転換された該細菌を、リーフディスク法(Horsch, R. B.ら(1985)、Science、227:1229-1231)等の周知の手法により、宿主植物細胞に導入する。

【0072】
ベクターを導入してCOXVbタンパク質生産能力を獲得した宿主細胞による目的タンパク質の生産は、COXVbが発現するような適切な条件下で上記の宿主細胞を培養することにより達成される。適切な条件は、当業者に周知の方法を用いて決定され得る。例えば、本明細書で参考として援用するManiatisら、上記を参照のこと。培養物を遠心分離または濾過することによって宿主細胞を分離して上清を得る。この上清から通常の手段、例えば、塩析法、溶媒沈澱(例えばエタノール、アセトン等)によってタンパクを沈澱させる、あるいは、限外濾過(例えばダイヤフローメンブレンYC、アミコン社製)により濃縮させることにより、目的のポリペプチドを含む画分を得る。この画分に更に沈澱、濾過あるいは遠心分離、脱塩処理などの処理を行い粗ポリペプチドを得る。更にこの粗ポリペプチドを、凍結乾燥、等電点沈澱、電気泳動、イオン交換クロマトグラフィー、晶出等の通常のポリペプチドの精製手段を適宜組み合わせることによって、精製ポリペプチドを回収することができる。

【0073】
さらに本発明は、COXVbをコードするcoxVb遺伝子のヌクレオチド配列に相補的な配列を有するポリヌクレオチド、この相補的な配列を有するポリヌクレオチドを生産し得るベクター、およびこのベクターを細胞に導入する工程を包含するCOXVbタンパク質の機能を抑制する方法、いわゆる「アンチセンス法」に関する。coxVb遺伝子の発現を抑制することにより、ATPの生産が低下し、エネルギー使用と生産のバランスが崩れることによる花粉退化(雄性不稔)および花の変異などを生じる遺伝子組換え植物、菌類、あるいは酵母を作成し得る。COXVbをコードするヌクレオチド配列に相補的な配列を有するポリヌクレオチドは、前記のようにして得られたCOXVbをコードする遺伝子の相補鎖として入手可能である。従って、相補的な配列を有するポリヌクレオチドを生産し得るベクターは、COXVbをコードするポリヌクレオチドを前記のような適切なベクターに本来COXVbが発現される向きに対して逆向き(アンチセンス)にすることにより構築され得る。ベクターおよびその構築に用いられる調節エレメントの種類ならびに構築の方法の詳細は、前記と同様である。

【0074】
coxVb遺伝子の機能を抑制する方法は、前記COXVbをコードするヌクレオチド配列に相補的な配列を有するポリヌクレオチド配列を生産し得るベクターを宿主細胞に導入することにより達成され得る。ベクターを宿主細胞に導入するプロセスの詳細は、前記と同様である。

【0075】
さらに本発明は、COXVbタンパク質と特異的に複合体を形成し得る抗体を提供する。このような抗体は、イネミトコンドリアを内膜、外膜、およびマトリックスなどに分画する際のマーカーとして有用である。ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体を産生するための方法は、当該分野において周知事項である。本明細書中で参考として援用する、HarlowおよびLane、Antibodies:A Laboratory Manual, Cold Spring arbor Laboratory, New York (1988)を参照のこと。本発明のモノクローナル抗体の産生は、COXVbまたはその断片を動物、例えば、マウスあるいはウサギに導入することにより生物学的に実施され得る。手短には、このプロセスは、免疫源をマウス、または他の適切な動物に注射する工程を包含する。続いてその動物を屠殺し、そしてその脾臓から採取した細胞をミエローマ細胞と融合する。その結果、「ハイブリドーマ」と呼ばれるハイブリッド細胞が得られ得る。ハイブリドーマの集団をスクリーニングし、個々のクローンを単離する。各クローンは、抗原に対して単一の抗体種を分泌する。異なるハイブリドーマ細胞株をスクリーニングして所望の抗原に対する抗体を産生するハイブリドーマ細胞株を同定した後、個々のハイブリドーマ細胞株により産生される抗体を、好ましくは、スクリーニングして、COXVbに対して最も高い親和性を有する抗体を同定する。

【0076】
さらに本発明は、coxVb遺伝子の種々の改変体を含有するゲノムを有する細胞を作製することにより植物新品種を創出する方法に関する。coxVb遺伝子への変異の導入によりチトクロム酸化酵素の活性を上昇または低下し得る。変異の変異は、当該分野で公知の方法により行われ得、点変異導入法、ランダム変異導入法、挿入、欠失を導入する方法などを包含するが、これらに限定されない。例えば、Kunkel, T.A. Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82, 488 (1985) およびManiatis, Tら、前出を参照のこと。活性上昇した植物ではATP高生産により、成長速度が向上した高生産性植物を創出し得る。

【0077】
以下の実施例において、本発明をさらに詳細に説明するが、これらはなんら本発明を限定するものではない。

【0078】

【実施例】実施例1
(イネ核ゲノムからのcoxVb遺伝子の単離)
(1).ゲノムライブラリーの調製
100gのイネ成熟葉を、1リットルのホモジネーション緩衝液(0.44Mサッカロース、2.5%(w/v)Ficoll-400(Pharmacia社製)、5%Dextran 40、25mMのHepes(pH7.5)、10mMのMgCl2、10mMのβ-メルカプトエタノールおよび0.1%(w/v)ポリビニルピロリドン)中でホモジナイズした。このホモジネートを濾過後、3,000gで5分間遠心分離した。次いで沈澱物を、0.5%(w/v)TritonX-100を含む上記ホモジネーション緩衝液50mlに再懸濁し、さらに3,000gで5分間遠心分離した。得られた沈澱物を20mlの50mMトリス塩酸緩衝液(10mMのEDTA、0.4mg/mlのプロテイナーゼK、および2%(w/v)ザルコシルを含む、pH7.5)中に溶解した。不溶物は、20,000gで5分間の遠心分離によって除去した。得られたDNAをエチジウムブロミドの存在下で塩化セシウム密度勾配遠心法によって精製した。高分子量の核ゲノムDNAを制限酵素Sau3Aで切断し、得られた約15~20kb断片をしょ糖密度勾配遠心によって分離精製した。これらの断片をλファージベクターDASHII(Stratagene製)のBamHIサイトに挿入し、イネゲノムライブラリーを作製した。

【0079】
(2).cDNAライブラリーの調製
イネ成熟葉から全RNAを抽出し、常法に基づいてポリA付加RNAを調製した(Aus ubel, F. M.らの「Current Protocols in Molecular Biology」(JohnWiley & Sons, Inc., NY, 1987)を参照)。ファルマシア社製cDNA合成キットを用いて、上記ポリA付加RNAから合成したcDNAを、ラムダ ZAPIIベクター(Stratagene製)のEcoRIサイトに挿入し、イネcDNAライブラリーを調製した。

【0080】
(3).各ライブラリーのスクリーニングおよび陽性クローンの単離
イネcoxVb遺伝子
イネs11-2遺伝子の約0.8kbのXhoI-NotI断片をプローブとして用いた。マルチラベリングシステム(Amersham, Buckinghamshire, UK)を用いて、この断片を[α-32P]dCTPにより標識した。標識したプローブを用いる通常のプラークハイブリダイゼーション法(Sambrookら、1989)によって、上記(1).および(2).で調製した各ライブラリーをスクリーニングし、s11-2遺伝子のシグナル配列をコードするヌクレオチド配列にハイブリダイズした陽性ゲノムクローンおよびcDNAクローンを単離した。

【0081】
実施例2
coxVb遺伝子の配列決定)上記単離したポジティブクローンをベクターpBluescriptIISK-(Stratagene製)にサブクローンした。得られたサブクローンについて、エキソヌクレアーゼIIIを用いた通常のデリーション操作(Henikoff, S.(1984)、Gene、28:351)を施し、一連の欠失DNA断片を作製した。得られた一連の欠失DNA断片を用いて、市販のDNAシーケンサー(<HAN>ファルマシア</HAN>社製、A.L.F. DNA SeaquencerII)を製造者の提供した使用説明書に準じて使用して、ポジティブクローンのヌクレオチド配列を決定した。配列番号1に示す通り、このクローンは、5つのイントロンを挟んで、507bpのオープンリーディングフレーム(coxVb)を有することが明らかとなった。

【0082】
実施例3
coxVb配列のコンピューター分析)ヌクレオチドおよび推定上のアミノ酸配列を、コンピューターソフトウェアGENETYX(Software Development Co., LTD., Tokyo, Japan)により分析した。ヌクレオチドおよびアミノ酸配列の相同性の解析を、DDBJ/EMBL/GeneBankデータベースを通じて、FASTAプログラム(PearsonおよびLipman, 1988)およびBLAST(Altschulら、1990)により実施した。表3は、上記のCOXVbと、ヒトゲノムにコードされるチトクロムc酸化酵素サブユニットVb(COXVb)および酵母ゲノムにコードされるチトクロムc酸化酵素複合体サブユニットIV(COXIV)との全アミノ酸配列の比較表である。各アミノ酸残基は1文字表記で表している。表中の-は欠失を示す。白抜きで示したアミノ酸は、COXVbの当該位置のアミノ酸残基と同一であることを示す。COXVbとCOXVbまたはCOXIVとのアミノ酸配列の相同性は、それぞれ49%および35%である。

【0083】
本発明者は、上記アミノ酸配列相同性の解析結果に基づき、本COXVbが、イネにおけるチトクロム酸化酵素複合体を構成するサブユニットVbをコードするcoxVb遺伝子であることを見出した。

【0084】

【発明の効果】本発明によれば、オルガネラに局在するタンパク質をコードする核ゲノム由来の遺伝子を単離する方法が提供される。さらに、植物のミトコンドリアの呼吸鎖において機能するチトクロム酸化酵素複合体を構成するサブユニットをコードするcoxVb遺伝子が提供され、さらには、coxVb遺伝子の種々の改変体またはcoxVb遺伝子に相補的な配列を有する植物の新品種が提供される。

【0085】

【配列表】
配列番号:1
配列の長さ:507
配列の型:核酸
鎖の数:二本鎖
配列の種類:cDNA to mRNA
配列
ATGTGGCGCC GCCTCCAAAC CCTGGCCCCG GCCCTGCGCC GCGCCGCCTC CGCCTCCGCC 60
TCCGCGGCGG CATCGGGCGC CGCGGGCCCC GCCTCCCTCG CCCGCGCCGC GCCGCTCTCC 120
ACGGCGGCCG CCGCCGCCTT CCGCCGCACC AGCCCTCTCC TGTCCGGGGA CAAGCCGGCG 180
ACGGTGGAGG ACGTCATGCC CATCGCCACG GGGCTGGAGC GCGAGGAGCT CGCGGCGGAG 240
CTCAAGGGGG AGAAGCGGTT CGACATGGAT CCTCCCGTAG GCCCATTTGG TACCAAGGAG 300
GCCCCAGCTG TCATTGAATC CTACTATAAC AAGAGGATAG TTGGTTGTCC TGGTGGTGAA 360
GGAGAGGATG AGCATGATGT TGTATGGTTC TGGTTGAAAA AAGATGAACC GCATGAGTGC 420
CCAGTCTGTT CACAATATTT TGTGCTTAAG GTCATTGGTG ATGGTGGTGA TCCAGATGGA 480
CATGATGATG ACGACGAGCA TCACCAC 507
配列番号:2
配列の長さ:169
配列の型:アミノ酸
配列の種類:タンパク質
配列
Met Trp Arg Arg Leu Gln Thr Leu Ala Pro Ala Leu Arg Arg Ala Ala
1 5 10 15
Ser Ala Ser Ala Ser Ala Ala Ala Ser Gly Ala Ala Gly Pro Ala Ser
20 25 30
Leu Ala Arg Ala Ala Pro Leu Ser Thr Ala Ala Ala Ala Ala Phe Arg
35 40 45
Arg Thr Ser Pro Leu Leu Ser Gly Asp Lys Pro Ala Thr Val Glu Asp
50 55 60
Val Met Pro Ile Ala Thr Gly Leu Glu Arg Glu Glu Leu Ala Ala Glu
65 70 75 80
Leu Lys Gly Glu Lys Arg Phe Asp Met Asp Pro Pro Val Gly Pro Phe
85 90 95
Gly Thr Lys Glu Ala Pro Ala Val Ile Glu Ser Tyr Tyr Asn Lys Arg
100 105 110
Ile Val Gly Cys Pro Gly Gly Glu Gly Glu Asp Glu His Asp Val Val
115 120 125
Trp Phe Trp Leu Lys Lys Asp Glu Pro His Glu Cys Pro Val Cys Ser
130 135 140
Gln Tyr Phe Val Leu Lys Val Ile Gly Asp Gly Gly Asp Pro Asp Gly
145 150 155 160
His Asp Asp Asp Asp Glu His His His
165
配列番号:3
配列の長さ:59
配列の型:アミノ酸
配列の種類:タンパク質
配列
Met Trp Arg Arg Leu Gln Thr Leu Ala Pro Ala Leu Arg Arg Ala Ala
1 5 10 15
Ser Ala Ser Ala Ser Ala Ala Ala Ser Gly Ala Ala Gly Pro Ala Ser
20 25 30
Leu Ala Arg Ala Ala Pro Leu Ser Thr Ala Ala Ala Ala Ala Phe Arg
35 40 45
Arg Thr Ser Pro Leu Leu Ser Gly Asp Lys Pro
50 55
配列番号:4
配列の長さ:268
配列の型:核酸
鎖の数:二本鎖
配列の種類:genomic DNA
配列
ATCAAATCGA GAGAGAGCCC CCATCTCGCC TCGCCTCGCC GCCTCCTCCC TCCCCCCATT 60
CCCCCGCCGC CGCCGCTGCG AGCGCCGCGA CATGAGAGCA CGCCTCCAAA CCCTGGCCCC 120
GGCCCTGCGC CGCGCCGCCT CCGCCTCCGC CACGGGCCCC GCCTCCGCCT CCGCCGCGGG 180
CCCCGCCTCC CTCGCCAGCG CCGCGCCGCT CTCCACGGCG GCCGCCGCCG CCTTCCCACC 240
TCCTCAGTCT AAAACCGCTT CACGTATG 268
配列番号:5
配列の長さ:287
配列の型:核酸
鎖の数:二本鎖
配列の種類:genomic DNA
配列
ATCAAATCGA GAGAGAGCCC CATCTCGCCT CGCCTCCTCC TCCCTCCTCC CCATTCCCCC 60
GCCGCCGCCG CCGAGGGCGC CGCGACCTGA GAGCACACGC ACGCCCGCCA TGTGGCGCCG 120
CCTCCAAACC CTGGCCCCGG CCCTGCGCCG CGCCGCCTCC GCCTCCGCCT CCGCGGCGGC 180
ATCGGGCGCC GCGGGCCCCG CCTCCCTCGC CCGCGCCGCG CCGCTCTCCA CGGCGGCCGC 240
CGCCGCCTTC CGCCGCACCA GCCCTCTCCT GTCCGGGGAC AAGCCGG 287
配列番号:6
配列の長さ:59
配列の型:アミノ酸
配列の種類:タンパク質
配列
Met Arg Ala Arg Leu Gln Thr Leu Ala Pro Ala Leu Arg Arg Ala Ala
1 5 10 15
Ser Ala Ser Ala Thr Gly Pro Ala Ser Ala Ser Ala Ala Gly Pro Ala
20 25 30
Ser Leu Ala Ser Ala Ala Pro Leu Ser Thr Ala Ala Ala Ala Ala Phe
35 40 45
Pro Pro Pro Gln Ser Lys Thr Ala Ser Arg Met
50 55
配列番号:7
配列の長さ:59
配列の型:アミノ酸
配列の種類:タンパク質
配列
Met Trp Arg Arg Leu Gln Thr Leu Ala Pro Ala Leu Arg Arg Ala Ala
1 5 10 15
Ser Ala Ser Ala Ser Ala Ala Ala Ser Gly Ala Ala Gly Pro Ala Ser
20 25 30
Leu Ala Arg Ala Ala Pro Leu Ser Thr Ala Ala Ala Ala Ala Phe Arg
35 40 45
Arg Thr Ser Pro Leu Leu Ser Gly Asp Lys Pro
50 55
配列番号:8
配列の長さ:20
配列の型:アミノ酸
配列の種類:タンパク質
配列
Met Trp Arg Arg Leu Gln Thr Leu Ala Pro Ala Leu Arg Arg Ala Ala
1 5 10 15
Ser Ala Ser Ala
20
配列番号:9
配列の長さ:21
配列の型:アミノ酸
配列の種類:タンパク質
配列
Ala Ala Gly Pro Ala Ser Leu Ala Arg Ala Ala Pro Leu Ser Thr Ala
1 5 10 15
Ala Ala Ala Ala Phe
20