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明細書 :微細藻を用いた種苗飼育廃水等の海水浄化方法及び装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B1)
特許番号 特許第2976033号 (P2976033)
登録日 平成11年9月10日(1999.9.10)
発行日 平成11年11月10日(1999.11.10)
発明の名称または考案の名称 微細藻を用いた種苗飼育廃水等の海水浄化方法及び装置
国際特許分類 C02F  3/32      
C02F  3/34      
FI C02F 3/32
C02F 3/34
請求項の数または発明の数 3
全頁数 5
出願番号 特願平10-348344 (P1998-348344)
出願日 平成10年12月8日(1998.12.8)
審査請求日 平成10年12月8日(1998.12.8)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】595172344
【氏名又は名称】農林水産省水産庁西海区水産研究所長
発明者または考案者 【氏名】小林 正裕
【氏名】岡内 正典
【氏名】水上 讓
個別代理人の代理人 、【弁理士】、【氏名又は名称】平木 祐輔 (外1名)
審査官 【審査官】吉水 純子
参考文献・文献 特開 平9-106(JP,A)
特開 平10-5790(JP,A)
特開 昭53-117256(JP,A)
特開 昭48-64754(JP,A)
調査した分野 C02F 3/12
C02F 3/28 - 3/34
C02F 7/00
A01K 61/00 - 63/06
要約 【課題】 本発明は、高濃度の栄養塩を含有する海水の浄化方法を提供すること及び効率的な水質浄化装置の作製を課題とする。
【解決手段】 微細藻を高濃度の栄養塩を含有する廃水中で培養することにより、海水中の窒素及び/又はリンを含む栄養塩を効率的に除去し、その水質を改善することができることを見出した。
特許請求の範囲 【請求項1】
種苗飼育廃水等の高濃度の栄養塩を含有する海水の微細藻による水質浄化装置において、給水管、排水管及び通気装置を有し、明期に通気攪拌を行い暗期には通気攪拌を停止することを特徴とした微細藻による水質浄化装置。

【請求項2】
請求項1記載の水質浄化装置を用いて、種苗飼育廃水等の高濃度の栄養塩を含有する海水中で微細藻類を培養することにより、海水中の窒素及び/又はリンを減少させることを特徴とする水質浄化方法。

【請求項3】
請求項1記載の水質浄化装置において、暗期に沈殿部分を取り除くことを特徴とする微細藻類の除去方法。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【0001】

【発明の属する技術分野】本発明は、微細藻を用いた種苗飼育廃水等の海水の浄化方法及び浄化装置、さらに浄化した海水からの微細藻の除去方法に関する。

【0002】

【従来の技術】従来の種苗飼育廃水等の海水の浄化及び水質改善技術においては、大型藻類を用いる方法と細菌を用いる方法とがある。従来の大型藻類を用いた海水の浄化方法においては、大型藻類の生育可能な栄養塩濃度の範囲が狭く、種苗飼育廃水のような高濃度栄養塩存在下では枯れることがあった。また、極低濃度においても生育が不可能であったため、大型藻類を用いた海水浄化は汎用性に乏しかった。

【0003】
細菌を用いた海水の浄化方法においては、広い栄養塩濃度に対応できる細菌もあるが、増殖した細菌の除去が困難であるため種苗と混養にならざるを得なかった。また、増殖した細菌の二次利用の方策もなかった。すなわち、微細藻類による浄化は、微細藻1個体当たりの栄養吸収量が大型海藻に比して微々たるものであるから、高密度培養が必要となる。一方、その高密度で培養された微細藻類を放出すると、赤潮の原因になることから、微細藻を除去することが必須の要件であるにもかかわらず、浄化した後の微細藻を除去することが極めて困難であったため、実用化される段階に至っていなかった。

【0004】

【発明が解決しようとする課題】本発明は、高濃度の栄養塩を含有する海水の浄化方法を提供すること及び効率的な水質浄化装置の作製を課題とする。

【0005】

【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために、本発明者等は鋭意努力した結果、微細藻を高濃度の栄養塩を含有する廃水中で培養することにより、海水中の窒素及び/又はリンを含む栄養塩を効率的に除去し、その水質を改善することができることを見出した。また、浄化された海水からの微細藻の除去方法も開発した。

【0006】
すなわち、本発明は、(1)種苗飼育廃水等の高濃度の栄養塩を含有する海水の微細藻による水質浄化装置において、給水管、排水管及び通気装置を有し、明期に通気攪拌を行い暗期には通気攪拌を停止することを特徴とした微細藻による水質浄化装置、(2)(1)記載の水質浄化装置を用いて、種苗飼育廃水等の高濃度の栄養塩を含有する海水中で微細藻類を培養することにより、海水中の窒素及び/又はリンを減少させることを特徴とする水質浄化方法、(3)(1)記載の水質浄化装置において、暗期に沈殿部分を取り除くことを特徴とする微細藻類の除去方法に関する。

【0007】
本発明における種苗飼育廃水等の海水とは、海水を用いて飼育される全ての生物の飼育廃水及び種苗生産のための親魚等の親の飼育に用いられた廃水を包含する。本発明において、除去を目的とする栄養塩は、アンモニア態窒素、硝酸態窒素、亜硝酸態窒素、リン酸態リンの4種類の栄養塩である。

【0008】
本発明の方法を実施するには、種苗飼育廃水等の海水をそのまま、あるいは必要に応じてビタミン類を添加したものを微細藻の培養液として用いればよい。これらの海水を透明もしくは半透明の容器に入れ、そこに微細藻を微量加える。さらに通気することによって海水が常時攪拌されるようにする。この容器は室内もしくは屋外に設置し、室内ならば蛍光灯等により光を照射する。屋外の場合、太陽光が当たる場所に設置する。

【0009】
このような海水浄化用の容器を複数直列的に連結することによって、最終的には天然海水とほぼ同程度の栄養塩を含む海水にまで浄化し、水質を改善することが可能である。本発明では、より栄養塩吸収能の高い微細藻を選抜し、その高濃度栄養塩耐性株を用いることによって海水浄化及び水質改善がより効率的に行えるようにした。

【0010】
さらに、飼育廃水中に高濃度栄養塩耐性株を浄化初期から高密度に添加することによって、微細藻を微量加えた場合に比べてより短時間で種苗等の飼育廃水の浄化が可能となることがわかった。海水中の微細藻に光による明暗周期を与えることによって、その運動をある程度制御することができる。すなわち暗期に攪拌用の通気を止めることによって微細藻は培養容器の底部に沈殿し、培養容器上層の海水には比較的少量の微細藻しか存在しなくなる。この特徴を利用して暗期に培養容器上層から海水をポンプもしくはサイフォンの原理を用いて取り出すことによって、比較的微細藻の少ない浄化海水を得ることができる。

【0011】
上記のように栄養塩が除去され浄化された海水の用途は、さらに微細藻を除去して天然海域に放水する場合と、ある程度微細藻を残したまま再び種苗飼育用の海水として使用する場合とがある。さらに微細藻を除去する場合、不透明で黒色の容器内に微細藻を含有した浄化海水を移し、静置することによって残りの微細藻の大部分を沈殿させることができる。微細藻の沈殿後に上層水を天然海域に放出する。

【0012】
微細藻の多くの種は、水産動物飼育のための飼料生物として培養されており、海水浄化のための材料として入手が簡単である。そして、海水浄化によって増殖した微細藻の二次利用方法としては、飼料へ転用することができる。従って、微細藻を含む浄化海水を再び種苗飼育用海水として使用する場合、そのまま種苗用海水として使用するかあるいは適宜希釈して使用する。

【0013】

【発明の実施の形態】次に本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。本発明で用いた主な微細藻は、Tetraselmis tetratheleであるが、この他には、Chaetoceros gracilis,Isochrysis<HAN>タヒチ</HAN>株,Nannochloropsis oculata等も使用可能である。また、窒素及びリンを適宜添加した海水を浄化実験に用いた。

【0014】

【実施例1】リン酸二水素ナトリウム二水和物(NaH2PO4・2H2O:MW=156)
8.05mg/l及び硝酸ナトリウム(NaNO3:MW=85)158mg/lを添加したGuillardF液体培地に、微細藻Tetraselmis tetratheleを乾燥重量で50μg/lの初期濃度で添加して、リン酸態リン濃度及び硝酸態窒素濃度について、無添加のコントロールと比較したところ、図1及び図2に示すようにTetraselmis tetrathele添加区は、リン酸態リン及び硝酸態窒素を急速に吸収した。一方、無添加区は殆ど変化がみられなかった。

【0015】

【実施例2】実施例1と同様に、リン酸二水素ナトリウム二水和物(NaH2PO4・2H2O:MW=156)8.05mg/l及び硫酸アンモニウム((NH42SO4:MW=132)125.4mg/lを添加したGuillardF液体培地に、微細藻Tetraselmis tetratheleを乾燥重量で50μg/lの初期濃度で添加して、リン酸態リン濃度とアンモニア態窒素濃度の変化を、Tetraselmis tetrathele無添加区と比較したところ、図3、4に示すように添加区では、リン酸態リン、アンモニア態窒素ともに急速な減少を示したが、無添加区では殆ど変化が見られなかった。

【0016】

【実施例3】浄化した海水から微細藻を除去するために、培養器に光の明暗周期を与えて、培養器上層での微細藻の量を測定した。培養器には、12時間の明期と12時間の暗期を与えて、培養器水面下5cmでの微細藻の藻体乾重量とアンモニア態窒素濃度を2時間毎に測定した。その結果、図5に示すように藻体量は暗期に入って10時間後以降に極小となるが、アンモニア態窒素の吸収は暗期に入ってからも続いた。その結果、水質浄化システムの構築においては暗期10時間後程度に上層から浄化水を取り出すことによって、比較的微細藻の混入の少ない浄化海水を得られることがわかった。

【0017】

【実施例4】図6に示される例は、明期における水質浄化筒の断面図である。透明もしくは半透明の円筒状の容器に種苗等の飼育廃水を満たし、微細藻を加える。さらに廃水と微細藻がよく混ざるように通気して攪拌する。このままの状態で数日間放置し、微細藻による水質浄化を行う。微細藻による水質浄化が進行したら、浄化海水だけを浄化筒から取り出す。図7は暗期における水質浄化筒の断面図である。図6の状態で浄化筒内の海水が浄化されたら、暗期に通気装置を止め攪拌をやめる。暗期開始10時間後以降に浄化水中の微細藻の密度が減少するので、浄化筒の上層からポンプもしくはサイフォンの原理で静かに排水を行う。

【0018】

【実施例5】図8は水質浄化装置全体の断面図である。図7において水質浄化筒から排水された浄化海水を、さらに浄化するために次の浄化筒に集め上記同様の手順で浄化を行う。このような浄化筒による操作を複数回繰り返し最終的に天然海水と同程度の栄養塩濃度まで減少させる。浄化した海水は、さらに微細藻を除去した上で天然海域に放出するか、あるいは若干の微細藻を残したまま次の種苗の初期餌料入り飼育水として使用する。

【0019】

【発明の効果】本発明により、種苗等の飼育廃水から微細藻を用いて窒素及び/又はリン等の有害な無機栄養塩類を効率的に除去すると同時に、増殖した微細藻を明暗周期によって浄化海水より除去し、天然海域に影響を与えることなしに放出することができる。さらに、除去した微細藻は、再び種苗等の餌料として利用することが可能である。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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