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明細書 :単子葉植物の超迅速形質転換法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3141084号 (P3141084)
公開番号 特開2001-029075 (P2001-029075A)
登録日 平成12年12月22日(2000.12.22)
発行日 平成13年3月5日(2001.3.5)
公開日 平成13年2月6日(2001.2.6)
発明の名称または考案の名称 単子葉植物の超迅速形質転換法
国際特許分類 C12N 15/09      
A01H  5/00      
C12N  5/10      
FI C12N 15/00 A
A01H 5/00
C12N 5/00
請求項の数または発明の数 4
全頁数 8
出願番号 特願平11-206922 (P1999-206922)
出願日 平成11年7月21日(1999.7.21)
審査請求日 平成11年7月21日(1999.7.21)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】591127076
【氏名又は名称】農林水産省農業生物資源研究所長
発明者または考案者 【氏名】田中 宥司
【氏名】萱野 暁明
【氏名】宇垣 正志
【氏名】塩原 文緒
【氏名】渋谷 直人
【氏名】小野寺 治子
【氏名】小野 和子
【氏名】田切 明美
【氏名】西澤 八重子
個別代理人の代理人 【識別番号】100078282、【弁理士】、【氏名又は名称】山本 秀策
審査官 【審査官】加藤 浩
参考文献・文献 特開 平10-117776(JP,A)
特許請求の範囲 【請求項1】
単子葉植物の形質転換方法であって、所望の組換え遺伝子を含むアグロバクテリウムで、無傷の種子を感染する工程を包含し、ここで、該種子は発芽種子である、方法。

【請求項2】
前記種子が、播種後4~5日目の種子である、請求項1に記載の方法。

【請求項3】
前記単子葉植物が、イネ科植物である、請求項1または2に記載の方法。

【請求項4】
前記イネ科植物が、イネである、請求項に記載の方法。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【0001】

【発明の属する技術分野】本発明は、単子葉植物のアグロバクテリウム媒介性の形質転換方法に関する。

【0002】

【従来の技術】植物を改良するための手段の1つとして「形質転換法」が挙げられ、形質を改変するための所望の組換え遺伝子が植物に導入される。効率の良い、迅速な形質転換法は、有用な植物、特に、主食として重要な食糧である穀物を、分子育種するにおいて極めて重要である。

【0003】
穀物の多く(例えば、イネ、コムギ、オオムギ、およびトウモロコシ)は、単子葉植物に分類される。単子葉植物を形質転換するために、これまでに種々の形質転換法が開発されている。形質転換法は、直接的な形質転換法と間接的な形質転換法とに大きく分けられる。

【0004】
直接的な形質転換法としては、例えば、エレクトロポレーション法(Shimamoto K.ら、Nature、338:274-276、1989;およびRhodes C.A.ら、Science、240:204-207、1989を参照)、パーティクルガン法(Christou P.ら、Bio/Technology 9:957-962、1991を参照)ならびにポリエチレングリコール(PEG)法(Datta,S.K.ら、Bio/Technology、8:736-740、1990を参照)が挙げられる。エレクトロポレーション法およびパーティクルガン法は、遺伝子を比較的効率良く導入し得る方法として、単子葉植物を形質転換するために一般に使用されてきた。

【0005】
間接的な形質転換法としては、アグロバクテリウム媒介性の形質転換法(以下、アグロバクテリウム形質転換法と呼ぶことがある)が挙げられる。アグロバクテリウムは、植物病原細菌の一種である。アグロバクテリウムは、植物に感染すると、自らが有するプラスミド(例えば、TiプラスミドまたはRiプラスミド)上に存在するT-DNA領域を、植物に組込む性質を有する。アグロバクテリウム形質転換法では、植物に遺伝子を導入するための手段として、このT-DNA領域の植物への組込みを利用する。簡潔には、植物は、所望の組換え遺伝子含むアグロバクテリウムで感染される。感染後、所望の組換え遺伝子は、アグロバクテリウムから植物細胞内に移入され、そして植物ゲノムに組込まれる。

【0006】
アグロバクテリウム形質転換法は、双子葉植物については、十分に確立されており、現在までに、所望の組換え遺伝子を発現する安定な形質転換植物が数多く作出されている。

【0007】
対照的に、アグロバクテリウム形質転換法を単子葉植物に適用することは、従来、一般に困難であるとされてきた。例えば、Portrykusら(BIO/TECHNOLOGY, 535-542,1990)は、アグロバクテリウムは、単子葉植物に感染しないと報告している。しかし、他方で、アグロバクテリウムを使用して単子葉植物を形質転換する試みは数多く行われ、その結果、アグロバクテリウム形質転換法を単子葉植物に適用できる可能性が見出されてきた。

【0008】
例えば、Raineriらは、イネの胚盤部分を取り出し、傷をつけて、脱分化を誘導する培地に置床し、数日後に、その胚盤部分をアグロバクテリウムで感染した。その結果、正常な再分化個体を得るまでには至らなかったものの、外来遺伝子が導入されたカルスを誘導することに成功した(Raineri, D.M.ら、Bio/Technology,8:33-38、1990を参照)。

【0009】
国際公開WO94/00977号パンフレットは、イネおよびトウモロコシについての、アグロバクテリウム形質転換法を開示する。この方法では、アグロバクテリウムで形質転換するための植物試料として、脱分化過程にあるかまたは脱分化した培養組織(例えば、カルス)を使用することを必要とする。このため、アグロバクテリウムでの感染の前に、形質転換しようとする植物試料(例えば、葉切片)から脱分化された培養組織を作製するために、通常、3~4週間の脱分化誘導期間を必要とする。

【0010】
国際公開WO95/06722号パンフレットは、イネおよびトウモロコシの未熟胚をアグロバクテリウムで感染する方法を開示する。しかし、未熟胚を取り出すための作業は多大な労力を要する。

【0011】
従って、より迅速で、効率の良い、単子葉植物のアグロバクテリウム形質転換法が利用できれば、イネなどの穀物を含む、有用な単子葉植物の分子育種に大いに貢献できる。

【0012】

【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記課題の解決を意図するものである。本発明の目的は、単子葉植物のアグロバクテリウム形質転換法における改良を提供することにある。本発明の方法によれば、従来のアグロバクテリウム形質転換法よりも効率良く、はるかに迅速に、形質転換植物を作出することが可能である。

【0013】

【課題を解決するための手段】本発明は、単子葉植物の形質転換方法に関し、所望の組換え遺伝子を含むアグロバクテリウムで、無傷の種子を感染する工程を包含する。本発明の方法において、種子は、無傷の状態で感染され、形質転換しようとする植物試料を脱分化するなどの処理は必要とされない。

【0014】
アグロバクテリウムでの感染に供される種子は、播種後4~5日目の種子であり得る。また、感染の時点で、種子は、発芽した状態であり得る。

【0015】
形質転換される単子葉植物は、好ましくはイネ科植物であり、より好ましくはイネ(Oryza sativa L.)である。

【0016】

【発明の実施の形態】以下、本発明を詳しく説明する。

【0017】
本発明の方法が適用される「植物」は、単子葉植物である。好ましい単子葉植物としては、イネ科植物(例えば、イネおよびトウモロコシ)が挙げられる。本発明の方法が適用される最も好ましい植物は、イネであり、特に、ジャポニカイネである。また「植物」は、特に他で示さない限り、植物体、および植物体から得られる種子を意味する。

【0018】
(植物発現用ベクターの作製)単子葉植物に所望の組換え遺伝子を導入するために、所望の組換え遺伝子を含む適切な植物発現用ベクターが構築される。このような植物発現用ベクターは、当業者に周知の遺伝子組換え技術を用いて作製され得る。アグロバクテリウム形質転換法において使用するための植物発現用ベクターの構築には、例えば、pBI系のベクターが好適に用いられるが、これらに限定されない。

【0019】
「所望の組換え遺伝子」は、植物に導入されることが所望される任意のポリヌクレオチドをいう。本発明における所望の組換え遺伝子は、天然から単離されたものに限定されず、合成ポリヌクレオチドも含み得る。合成ポリヌクレオチドは、例えば、配列が公知の遺伝子を、当業者に周知の手法によって合成または改変することにより入手し得る。本発明における所望の組換え遺伝子としては、例えば、形質転換される植物において発現が所望される、その植物に対して内因性または外因性である任意のポリヌクレオチド、および植物においてある内因性遺伝子の発現制御が所望される場合の、その標的となる遺伝子のアンチセンス配列を含むポリヌクレオチドが挙げられる。

【0020】
植物において発現が意図される場合、所望の組換え遺伝子は、自己のプロモーター(すなわち、天然において該遺伝子が作動可能に連結しているプロモーター)を作動可能な様式で含むか、または自己のプロモーターを含まない場合もしくは自己のプロモーター以外のプロモーターをさらに含むことが所望される場合、任意の適切なプロモーターと作動可能に連結される。使用され得るプロモーターとしては、構成的プロモーター、および植物体の一部において選択的に発現するプロモーター、ならびに誘導性のプロモーターが挙げられる。

【0021】
植物発現用ベクターにおいて、さらに種々の調節エレメントが宿主植物の細胞中で作動し得る状態で連結され得る。調節エレメントは、好適には、選抜マーカー遺伝子、植物プロモーター、ターミネーター、およびエンハンサーを含み得る。使用される植物発現用ベクターのタイプおよび調節エレメントの種類が、形質転換の目的に応じて変わり得ることは、当業者に周知の事項である。

【0022】
「選抜マーカー遺伝子」は、形質転換植物の選抜を容易にするために使用され得る。ハイグロマイシン耐性を付与するためのハイグロマイシンフォスフォトランスフェラーゼ(HPT)遺伝子、およびカナマイシン耐性を付与するためのネオマイシンフォスフォトランスフェラーゼII(NPTII)遺伝子のような薬剤耐性遺伝子が好適に用いられ得るが、これらに限定されない。

【0023】
「植物プロモーター」は、選抜マーカー遺伝子に作動可能に連結される、植物で発現するプロモーターを意味する。このようなプロモーターの例としては、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)の35Sプロモーター、およびノパリン合成酵素のプロモーターが挙げられるが、これらに限定されない。

【0024】
「ターミネーター」は、遺伝子のタンパク質をコードする領域の下流に位置し、DNAがmRNAに転写される際の転写の終結、およびポリA配列の付加に関与する配列である。ターミネーターの例としては、CaMV35Sターミネーター、およびノパリン合成酵素遺伝子のターミネーター(Tnos)が挙げられるが、これらに限定されない。

【0025】
「エンハンサー」は、目的遺伝子の発現効率を高めるために用いられ得る。エンハンサーとしては、CaMV35Sプロモーター内の上流側の配列を含むエンハンサー領域が好適である。エンハンサーは、1つの植物発現用ベクターあたり複数個用いられ得る。

【0026】
(植物の形質転換)単子葉植物の形質転換に用いられるアグロバクテリウムは、任意のアグロバクテリウム属細菌であり得、好ましくはAgrobacterium tumefaciensである。アグロバクテリウムは、所望の組換え遺伝子を含む植物発現用ベクターで(例えば、エレクトロポレーションによって)形質転換される。形質転換されたアグロバクテリウムで種子を感染することにより、所望の組換え遺伝子を植物に導入し得る。導入された組換え遺伝子は、植物中のゲノムに組み込まれて存在する。なお、植物中のゲノムとは、核染色体のみならず、植物細胞中の各種オルガネラ(例えば、ミトコンドリア、葉緑体など)に含まれるゲノムを含んでいう。

【0027】
形質転換が意図される植物の種子は、籾殻を除去した後、無傷の状態で前培養される。種子に関して「無傷」とは、種子が、胚珠を除去すること、および胚盤を傷つけることなどの人為的な操作を受けていない状態であることをいう。

【0028】
前培養において、種子は、適切な濃度のオーキシン(例えば、2,4-D)を含む培地(例えば、N6D培地)に播種されて、代表的には4日~5日間、好ましくは5日間、保温され得る。前培養は、種子の組織が脱分化過程に入る前に完了される。このときの温度は、代表的には25~35℃、好ましくは27~32℃である。前培養の完了後、種子は殺菌され、次いで水で十分に洗浄される。次いで、種子は、無菌操作下で、形質転換されたアグロバクテリウムで感染され得る。

【0029】
アグロバクテリウムでの感染(共存培養)の間、種子は、暗黒下で、代表的には2日間~5日間、好ましくは3日間、保温される。このときの温度は、代表的には26~28℃、好ましくは28℃である。次いで、種子は、培地中のアグロバクテリウムを除菌するために、適切な除菌剤(例えば、カルベニシリン)による処理に供される。形質転換された種子が、選抜マーカー(例えば、ハイグロマイシン耐性などの薬剤耐性)を基準として選抜される。

【0030】
適切な除菌条件および選抜条件下での培養後、選抜された形質転換種子は、適切な植物調節物質を含む再分化培地(例えば、MS培地)に移され、適切な期間、保温され得る。植物体を再生するためには、再分化した形質転換体は、発根培地(例えば、植物調節物質を含まないMS培地)に移される。根の発育が確認された後、形質転換体は、鉢上げされ得る。

【0031】
植物に導入された所望の組換え遺伝子は、植物において意図される目的(例えば、目的とされる新たな形質の発現、またはある内因性の遺伝子の発現の制御)のために作用し得る。

【0032】
所望の組換え遺伝子が植物に導入されたか否かは、当業者に周知の手法を用いて、確認され得る。この確認は、例えば、ノーザンブロット解析を用いて行い得る。具体的には、再生した植物の葉から全RNAを抽出し、変性アガロースでの電気泳動の後、適切なメンブランにブロットする。このブロットに、導入遺伝子の一部分と相補的な標識したRNAプローブをハイブリダイズさせることにより、目的の遺伝子のmRNAを検出し得る。あるいは、所望の組換え遺伝子の導入によって、植物における内因性遺伝子の発現制御が所望される場合、標的となる内因性遺伝子の発現を、例えば、上記のノーザンブロット解析を用いて、試験し得る。標的となる内因性遺伝子の発現が、非形質転換のコントロール植物におけるその発現に比べて有意に抑制されている場合、所望の組換え遺伝子は植物に導入され、そして発現の制御に作用したことが確認される。

【0033】
従来の方法は、アグロバクテリウムでの感染の前に、通常、3~4週間の脱分化誘導期間を必要とする。対照的に、本発明の方法は、脱分化を誘導する工程を必要としないので、形質転換単子葉植物を作出するために必要な日数を短縮することが可能である。さらに、本発明の方法によれば、従来法における選抜に要する期間を短縮することも可能となり、培養変異の影響を低減することが可能となる。

【0034】
本発明の方法の好ましい1つの実施態様において、形質転換単子葉植物を作出するために必要とされる日数は約50日であり、従来のアグロバクテリウム形質転換方法(例えば、下記実施例2を参照)において必要とされる日数(約90日)の約3分の2以下である。また、本発明の方法によれば、日本晴の種子の場合で、10~15%の形質転換効率が得られる。どんとこい、キタアケなどの他のイネ品種でも同程度に高い形質転換効率が達成可能である。従って、本発明の方法を使用することによって、従来の形質転換法よりも効率良く、および迅速に、形質転換植物を作出することが可能である。

【0035】

【実施例】以下に実施例を挙げて、本発明を具体的に説明する。この実施例は、本発明を限定するものではない。実施例で使用した、材料、試薬などは、他に特定のない限り、商業的な供給源から入手可能である。

【0036】
(実施例1:本発明の方法によるイネ植物の形質転換)イネの代表的品種である日本晴の種子を、籾殻の除去後、無傷の状態で、2.5%次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)溶液中で殺菌した。水での十分な洗浄の後、イネを以下の無菌操作に供した。

【0037】
(前培養)種子を、2,4-Dを含むN6D培地(30g/lスクロース、0.3g/lカザミノ酸、2.8g/lプロリン、2mg/l 2,4-D、4g/lゲルライト、pH5.8)に播種し、5日間、27℃~32℃で保温した。この間に種子は発芽した(図1)。

【0038】
(植物発現用ベクター)アグロバクテリウムを形質転換するための植物発現用ベクターとして、ヒマのカタラーゼ遺伝子の第1イントロンを含むGUS遺伝子と、ハイグロマイシン抵抗性遺伝子とが連結されたプラスミドである、pIG121Hmを用いた(中村ら、植物バイオテクノロジーII、現代化学増刊、pp.123-132(1991))。pIG121Hmで、アグロバクテリウムEHA101を形質転換した(Hoodら、J. Bacteriol., 168:1291-1301(1986))。EHA101は、ヘルパープラスミドのvir領域が強病原性アグロバクテリウムA281由来の菌である。

【0039】
(アグロバクテリウム感染)形質転換されたアグロバクテリウムの懸濁液に、前培養した上記種子を浸漬した後、2N6-AS培地(30g/lスクロース、10g/lグルコース、0.3g/lカザミノ酸、2mg/l 2,4-D、10mg/l アセトシリンゴン、4g/lゲルライト、pH5.2)に移植した。暗黒下で3日間、28℃で保温して共存培養した。

【0040】
(除菌および選抜)共存培養の完了後、500mg/lカルベニシリンを含有するN6D培地を用いて、種子から、アグロバクテリウムを洗い流した。次いで、形質転換された種子の選抜を、以下の条件で行った。
第1回目の選抜:カルベニシリン(500mg/l)およびハイグロマイシン(25mg/l)を補充した、2mg/lの2,4-Dを含むN6D培地上に、種子を置き、7日間、27℃~32℃で保温した。
第2回目の選抜:カルベニシリン(500mg/l)およびハイグロマイシン(25mg/l)を補充した、2~4mg/lの2,4-Dを含むN6D培地上に、種子を置き、さらに7日間、27℃~32℃で保温した。

【0041】
(再分化)選抜された形質転換種子を、以下の条件で再分化させた。
第1回目の再分化:再分化培地(カルベニシリン(500mg/l)およびハイグロマイシン(25mg/l)を補充したMS培地(30g/lスクロース、30g/lソルビトール、2g/lカザミノ酸、2mg/lカイネチン、0.002mg/l NAA、4g/lゲルライト、pH5.8)上に、選抜した種子を置き、2週間、27℃~32℃で保温した。
第2回目の再分化:第1回目の再分化において使用したのと同じ再分化培地を使用して、さらに2週間、27℃~32℃で保温した。

【0042】
(鉢上げ)再分化した形質転換体を、発根培地(ハイグロマイシン(25mg/l)を補充した、ホルモンを含まないMS培地)上に移して、根の発育を確認した後に、鉢上げした(図2)。

【0043】
(実施例2:従来の方法によるイネ植物の形質転換)実施例1に記載の方法との比較のために、日本晴を形質転換の材料として使用して、従来の方法によるイネ植物の形質転換を、以下のように行った。

【0044】
(カルス誘導)日本晴の種子を、籾殻の除去後、滅菌し、そしてカルス誘導培地(2mg/lの2,4-Dを含むN6D培地)に播種し、これを明所下、30℃で保温した。カルス誘導開始から約4週間後、胚盤由来の増殖したカルスを、形質転換に使用した。

【0045】
(形質転換)実施例1に記載されるように植物発現用ベクターpIG121Hmで形質転換したアグロバクテリウムEHA101で、得られたカルスを感染し、2N6-AS培地上で、暗黒下で3日間、28℃で保温して共存培養した。

【0046】
(除菌および選抜)500mg/lカルベニシリンを含有するN6D培地を用いて、カルスから、アグロバクテリウムを洗い流した。次いで、形質転換されたカルスの選抜を、以下の条件で行った。
第1回目の選抜:カルベニシリン(500mg/l)およびハイグロマイシン(50mg/l)を補充した2mg/lの2,4-Dを含むN6D培地上にカルスを置き、2週間、27℃~32℃で保温した。
第2回目の選抜:カルベニシリン(500mg/l)およびハイグロマイシン(50mg/l)を補充した2~4mg/lの2,4-Dを含むN6D培地上にカルスを置き、さらに2週間、27℃~32℃で保温した。

【0047】
(再分化、発根および鉢上げ)選抜された形質転換種子を、実施例1と同様の条件で再分化させ、鉢上げまでを行った。

【0048】
(結果)従来の方法による形質転換の例と、本発明の方法による形質転換の例との比較を図3に示す。播種後、形質転換体の鉢上げまでに必要な日数は、従来法においては約90日であったのに対して、本発明の方法においては約50日であった(図3(a))。播種後約50日目の時点で比較すると、本発明の方法における形質転換体は鉢上げ可能な状態であったのに対し、従来法における形質転換体は、未だ再分化の過程にあった(図3(b))。まとめると、本発明の方法の実施により、形質転換に要する期間が、従来法の約3分の2以下に短縮された。

【0049】

【発明の効果】本発明によれば、改良された、アグロバクテリウム媒介性の単子葉植物の形質転換方法が提供される。本発明の方法においては、形質転換を意図される植物の無傷の種子が、所望の組換え遺伝子を含むアグロバクテリウムで感染される。本発明の使用により、より効率良く、そしてより迅速に、形質転換植物を作出することが可能となる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2