TOP > 国内特許検索 > 緑きょう病菌由来エクジステロイド22位酸化酵素とそれを用いた脱皮ホルモン不活性化システム > 明細書

明細書 :緑きょう病菌由来エクジステロイド22位酸化酵素とそれを用いた脱皮ホルモン不活性化システム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3530495号 (P3530495)
公開番号 特開2002-238583 (P2002-238583A)
登録日 平成16年3月5日(2004.3.5)
発行日 平成16年5月24日(2004.5.24)
公開日 平成14年8月27日(2002.8.27)
発明の名称または考案の名称 緑きょう病菌由来エクジステロイド22位酸化酵素とそれを用いた脱皮ホルモン不活性化システム
国際特許分類 C12N 15/09      
A01K 67/033     
C12N  9/04      
C12Q  1/02      
A01H  1/00      
C12R  1:01      
FI A01K 67/033 501
C12N 9/04
C12Q 1/02
A01H 1/00
C12R 1:01
C12N 15/00
請求項の数または発明の数 7
全頁数 11
出願番号 特願2001-046399 (P2001-046399)
出願日 平成13年2月22日(2001.2.22)
審査請求日 平成13年2月22日(2001.2.22)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】501167644
【氏名又は名称】独立行政法人農業生物資源研究所
【識別番号】501073884
【氏名又は名称】神村 学
発明者または考案者 【氏名】神村 学
【氏名】木内 信
【氏名】齋藤 準
【氏名】茗原 眞路子
個別代理人の代理人 【識別番号】100102842、【弁理士】、【氏名又は名称】葛和 清司
審査官 【審査官】斎藤 真由美
調査した分野 C12N 15/00 - 15/90
C12N 1/00 - 9/99
C12Q 1/68 - 1/70
C12P 21/00 - 21/08
C07K 14/00 - 16/46
A61K 31/00 - 48/00
A61P 1/00 - 43/00
G01N 33/00 - 33/98
A01K 67/033 - 67/04
特許請求の範囲 【請求項1】
以下の(a)または(b)のタンパク質。
(a)配列表配列番号2に示すアミノ酸配列を有するタンパク質。
(b)配列表配列番号2において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、もしくは付加されたアミノ酸配列を有し、かつ、エクジステロイド22位酸化酵素活性を有するタンパク質。

【請求項2】
以下の(a)または(b)のDNAからなる遺伝子。
(a)配列表配列番号1に示す塩基配列からなるDNA。
(b)(a)の塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつエクジステロイド22位酸化酵素活性を有するタンパク質をコードするDNA。

【請求項3】
請求項1に記載のタンパク質を節足動物に投与することによって、その脱皮ホルモンを不活性化する方法。

【請求項4】
請求項1に記載のタンパク質を用いて脱皮ホルモンを不活性化することによって、節足動物の成育を制御する方法。

【請求項5】
請求項1に記載のタンパク質を用いて脱皮ホルモンを不活性化することによって、昆虫の成育を制御する方法。

【請求項6】
請求項1に記載のタンパク質をカイコに投与することによって、カイコが吐糸する糸の径を制御してなる蚕糸の製造方法。

【請求項7】
請求項1に記載のタンパク質を形質転換体に投与することによって、脱皮ホルモン誘導性遺伝子の発現を抑制する方法。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【0001】

【発明の属する技術分野】本発明は、昆虫病原糸状菌である緑きょう病菌(Nomuraea rileyi)から単離されたエクジステロイド22位酸化酵素およびそれを用いた脱皮ホルモン不活性化システムに関する。

【0002】

【従来の技術】昆虫や甲殻類を初めとする節足動物の脱皮は、脱皮ホルモン活性を有する数種のエクジステロイドによって誘導されることが知られている。これらの脱皮ホルモンについては、少なくとも2つの利用法が開発されている。

【0003】
その一つは、個体の脱皮または変態時期を早めたり、蛹化を斉一化するなどの発育のコントロールにおける利用である。このことにより、例えばカイコにおいては、蚕糸産生のコントロールが可能になる。

【0004】
他の利用方法は、培養細胞系、トランスジェニック動物またはトランスジェニック植物において、脱皮ホルモン処理により、目的遺伝子を高レベルで、かつ発現時期をコントロールし得る遺伝子発現システムへの利用である。これは脱皮ホルモンが転写因子である脱皮ホルモン受容体に結合し、さらに脱皮ホルモン応答遺伝子上にある脱皮ホルモン応答配列に結合することにより、応答遺伝子の転写活性を制御するという知見に基づくものである。

【0005】
例えば、脱皮ホルモン受容体および転写制御領域に脱皮ホルモン応答配列を組み込んだ目的遺伝子をこれらの系に導入しておき、培養細胞系に添加(Christopherson, K. S. et al. (1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89, 6314 - 6318)、動物に注射(No, D et al. (1996) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93, 3346 -3351)もしくは植物の根から吸収させる(Martinez, A. et al. (1999) The Plant Journal 19, 97 - 106)などの方法を用いて、それぞれの細胞内脱皮ホルモン濃度を高めることにより、目的遺伝子産物の発現誘導を行うものである。これらのうち、培養細胞系に用いるものは、キットとして既に実用化されている。

【0006】
一方、脱皮ホルモン自体を用いずに、脱皮ホルモン活性を高める技術も開発されている。例えば、脱皮ホルモン活性の強いエクジステロイド、およびエクジステロイド骨格を持たない、より安定かつ強力な脱皮ホルモンアゴニストの害虫防除における利用がその例である。このように、脱皮ホルモン活性を上げる技術は既に開発がなされている。

【0007】
これに対して、脱皮ホルモン活性を下げる手法、すなわち、体内・細胞内に存在する脱皮ホルモンを不活性化する手法はほとんど開発されていない。現在、バキュロウィルス由来のエクジステロイドUDP-グルコシルトランスフェラーゼ遺伝子(特開平11-123079)が脱皮ホルモンの不活性化能をもつ酵素の遺伝子として注目されている。しかし、該酵素が作用するにはUDP-グルコースの共存が必須であるなどの欠点があるため、精製酵素標品もしくはリコンビナントタンパク質としては実用化されるには至っていない。

【0008】

【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、効率よく脱皮ホルモンを不活性化する物質およびシステムを提供することにある。

【0009】

【課題を解決するための手段】本発明者らは、脱皮ホルモンの不活性化が昆虫などの発育コントロールおよび目的遺伝子産物の発現誘導の制御などの応用に極めて重要であるという認識の下、脱皮ホルモン活性を有するエクジステロイドは全て22位に水酸基を持ち、この部位が修飾を受けると脱皮ホルモン活性が著しく低下することに着目し、さらに具体的に昆虫病原糸状菌である緑きょう病菌(Nomuraea rileyi)からエクジステロイド22位酸化酵素を単離し、該酵素もしくはその修飾タンパク質によってエクジステロイドの22位の水酸基をケト基に酸化することで上記の課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。

【0010】
すなわち本発明は、以下の(a)または(b)のタンパク質、すなわち、
(a)配列表配列番号2に示すアミノ酸配列を有するタンパク質。
(b)配列表配列番号2において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、もしくは付加されたアミノ酸配列を有し、かつ、エクジステロイド22位酸化酵素活性を有するタンパク質に関する。

【0011】
また、本発明は、以下の(a)または(b)のDNA、すなわち、
(a)配列表配列番号1に示す塩基配列からなるDNA。
(b)(a)の塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつエクジステロイド22位酸化酵素活性を有するタンパク質をコードするDNAからなる遺伝子に関する。

【0012】
さらに、本発明は、前記タンパク質を節足動物に投与することによって、その脱皮ホルモンを不活性化する方法に関する。また、本発明は、前記タンパク質を用いて脱皮ホルモンを不活性化することによって、節足動物の成育を制御する方法に関する。さらに、本発明は、前記タンパク質を用いて脱皮ホルモンを不活性化することによって、昆虫の成育を制御する方法に関する。また、本発明は、前記タンパク質をカイコに投与することによって、カイコが吐糸する糸の径を制御してなる蚕糸の製造方法に関する。さらに、本発明は、前記タンパク質を形質転換体に投与することによって、脱皮ホルモン誘導性遺伝子の発現を抑制する方法に関する。

【0013】
本発明によるタンパク質は、脱皮ホルモンの22位水酸基を酸化し、不活性化する活性を有する酵素である。そのため、該酵素を節足動物体内に投与すれば、脱皮ホルモンを不活性化することによってその生育を制御することができる。本発明による酵素は、カイコを初めとする昆虫類の生育制御に用いることができる。特に、本発明による酵素をカイコに投与することによって、通常の蚕糸より細いため、商品価値が高い蚕糸を産生させることができる。

【0014】
本発明による酵素は昆虫に対してのみならず、昆虫類と同様にエクジステロイドを脱皮ホルモンとして用いている甲殻類の生育制御に用いることも可能である。また、該酵素を得るには、配列表2に示した塩基配列からなる、本発明による遺伝子を導入したリコンビナント・バキュロウィルスにカイコを感染させ、その血中に前記タンパク質を大量に発現させて回収するシステムを用いることが可能である。

【0015】
本発明による酵素または遺伝子を用いれば、脱皮ホルモンを添加、注射または根部吸収させて細胞内脱皮ホルモン濃度を高めて目的遺伝子産物の発現誘導を行う系において、該目的遺伝子の発現を任意に停止させることができる。したがって、培養細胞、トランスジェニック動物またはトランスジェニック植物などの形質転換体において、脱皮ホルモンを用いた遺伝子発現系を負の方向に制御することも可能になり、これによって形質転換体を利用した遺伝子発現システムの応用の幅が大きく広がる。以下、本発明を詳細に説明する。

【0016】

【発明の実施の形態】配列表1に、本発明による、緑きょう病菌(Nomuraea rileyi)から単離されたエクジステロイド22位酸化酵素のcDNAおよびそれから予想されるアミノ酸配列を示した。また、配列表2に、該エクジステロイド22位酸化酵素のの予想されるアミノ酸配列を示した。cDNAのクローニングについては、まず、緑きょう病菌培養液から脱皮ホルモンの1種エクジソンの22位水酸基のケト化(酸化)活性を指標にタンパク質を精製し、N末端および内部アミノ酸配列を決定した。さらに、それらのアミノ酸配列をもとにしてPCRにより全長cDNAをクローニングした。

【0017】
図1Aに昆虫体内に見られるエクジステロイドと本発明による酵素によるその酸化産物の構造を示した。また、図1Bに示したように、これらのエクジステロイドはHPLCで簡便に検出することができる。すなわち、逆層カラム(TSKgelODS-80Ts, 4.6 mm x 150 mm TOSO)をHPLC(LC 10-AT、Shimadzu)に取り付け、通常のの紫外線検出器で245 nMの吸光度を測定することにより行った。なお、この際流速は0.6 ml/min、カラム保持温度は40℃で、アセトニトリル20-30 %のグラジエント中で40分間サンプルを流した。

【0018】
本発明によるcDNAの予想されるコード領域(配列表1中のA111-T1893)をバキュロウィルスを用いたタンパク質発現系(BAC-TO-BAC Baculovirus Expression Systems 、Gibco BRL)を用いて、SF-9セルで発現させたところ、培養開始7日目の培養液中に強いエクジステロイドの酸化活性が認められた(図2)。精製した本酵素に対するポリクロナル抗体を使ったウェスタン・ブロット解析でも、培養液中にエクジステロイド22位酸化酵素が分泌されていることが確認された(図3)。

【0019】
なお、一般に生理活性を有するタンパク質をコードするアミノ酸配列において、1個もしくは複数個のアミノ酸が付加、欠失もしくは置換されていても、その生理活性が維持される場合があることは当業者にとって自明のことである。本発明においても、このように修飾され、かつエクジステロイド22位酸化酵素活性を有するタンパク質をコードするDNA断片も含まれる。すなわち、配列表配列番号2において、1個もしくは数個のアミノ酸が付加、欠失、置換もしくは挿入されたアミノ酸配列からなり、かつ、エクジステロイド22位酸化酵素活性を有するタンパク質をコードするDNAも本発明の範囲に含まれる。

【0020】
ここで、「1個もしくは数個」とは、アミノ酸が付加、欠失もしくは置換されるアミノ酸残基のエクジステロイド22位酸化酵素タンパク質の立体構造における部位またはアミノ酸残基の脂累によって異なるが、通常2~20個、好ましくは2~15個程度を指す。そのような改変されたDNAは、例えば部位特異的変異法によって、特定のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されるように本発明のDNAの塩基配列を改変することによって得られる。

【0021】
また、本発明のDNAまたはこれを有する細胞に変異処理を行い、これらのDNAもしくは細胞から、例えば配列表の配列番号1に記載の塩基配列を有するDNAとストリンジェントナトリウム条件でハイブリダイズするDNAを選択することによっても改変されたDNAを得ることができる。

【0022】
ここでいう「ストリンジェントな条件」とは、特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件をいう。この条件を明確に数値化することは困難であるが、例えば、99.5%以上であるような相同性が高い核酸同士はハイブリダイズするが、それより相同性が低いDNA同士はハイブリダイズしないような条件が挙げられる。

【0023】

【実施例】以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1) 緑きょう病菌からのエクジステロイド22位酸化酵素の単離
緑きょう病菌をカイコの蛹の抽出液を含む液体培地中で9日間培養し、その培養液(目的酵素を含む)を0.45 μmのフィルターを通した後、4℃で保存した。十分量の培養液を回収後、以下の4ステップの抽出により酵素を単離した。
1.50% 硫酸アンモニウム(硫安)により沈殿させる
2.フェニル疎水クロマトグラフィー(phenyl-Sepharoseを使用)
3.ゲルろ過(Superdex 200pgを使用)
4.陰イオンクロマトグラフィー(HiTrap Qを使用)
2~3はHPLC(Model Bio-HPLC system, Tosoh)を用いて行った。それぞれの過程で、図1Aに記載のエクジソンを基質とする酵素反応を行い、酸化生成物をHPLCでモニターすることにより、目的酵素の含まれるフラクションを調べた。そして、最終的な精製後、SDS PAGEを行い銀染色により単一タンパク質が精製されていることを確認した。

【0024】
(実施例2) エクジステロイド22位酸化酵素遺伝子の配列決定
まず、実施例1に記載の方法に従って単離した酵素のN末端配列をアミノ酸シークエンサーにより解析し、N末端のアミノ酸配列を決定した。さらに、酵素標品をV8プロテアーゼにより部分分解した分解産物のN末端配列をアミノ酸シークエンサーにより解析することにより、この酵素の内部アミノ酸配列を決定した。このようにして決定した酵素のN末端配列および内部配列を基に、4種類ののディジェネレートプライマー、すなわち正方向のプライマーとしてE22o.6プライマー(配列表配列番号3;アミノ酸配列のLPQGGCR(21~27)をコード)およびE22o.2プライマー(配列表配列番号4;アミノ酸配列のCRCIPGE(26~32)をコード)を、ならびに逆方向のプライマーとしてInt.R1プライマー(配列表配列番号5;アミノ酸配列のQNVNNAW(74~80)を逆向きにコード)およびInt.R2プライマー(配列表配列番号6;アミノ酸配列のDQGQNVN(71~77)を逆向きにコード)を設計した。培養した緑きょう病菌から抽出したmRNAを鋳型にしてこれらのプライマーを用いたRT-PCRを行うことにより、この酵素の部分cDNAをクローニングした。

【0025】
PCRはプライマーセットを変えて2回行った。すなわち1回目は、E22o.6 プライマーとInt.R1プライマーを、2回目はE22o.2 プライマーとInt.R2プライマーを用いた。そして、最終的に脱皮ホルモン酸化酵素cDNA(全長1963塩基)中の206から320までの115塩基配列を増幅し、塩基配列を決定した。このクローニングできた部分cDNA内にプライマーを設計して、さらにRT-PCRの変法の一種である5'RACEおよび3'RACEを、SMART RACE cDNA Amplification Kit(CLONTECH社)を用いて行うことにより、この酵素のmRNAの全長をカバーするcDNAをクローニングした。なお、3'RACEにおいてはE22o.RF1プライマー(配列表配列番号7;E22o全塩基配列の209~231に相当)を用いて全塩基配列の209~1963の領域を増幅し、塩基配列を決定した。また、5'RACEにおいては、E22o.RR1プライマー(配列表配列番号8;E22o全塩基配列の268~290の逆鎖に相当)を用いて全塩基配列の1~290の領域を増幅し、塩基配列を決定した。以上のようにしてRT-PCR、5'RACEおよび3'RACEによりクローニングした領域を重ね合わせて、緑きょう病菌の脱皮ホルモン酸化酵素のcDNAの全長を決定した。

【0026】
(実施例3) エクジステロイド22位酸化酵素のカイコ幼虫の成育に対する影響
本発明による酵素を含む酵素液を、カイコの4齢または5齢幼虫に1.6units/20μl/頭注射し、その後の生育を調べた。なお、「1 unit」は、1分間に1 nMのエクジソンを酸化する酵素活性を表す。カイコの4齢(終前齢)幼虫は、通常約5日間で5齢(終齢)幼虫に脱皮し、5齢幼虫は7日ほどで繭を作り始め11日目に蛹化する。しかし、4齢期初めに本酵素をカイコ体内に注射すると、注射後約7日目に繭を作り始め、11日後に蛹化した(図4A)。一方、5齢7日に注射した場合には注射後10日以上幼虫の状態のままで、最終的には蛹化することなく死亡した(図4B)。

【0027】
また、それぞれにおける酵素液を注射した後の血中エクジステロイドを調べたところ、活性型脱皮ホルモンである20-ヒドロキシエクジソンとその前駆体であるエクジソンともほとんど検出できず、22位の水酸基が酸化された修飾産物が多量に蓄積していた(図5)。このように、本発明による酵素をカイコに注射することにより、カイコ体内の脱皮ホルモンが不活性化され、注射する時期に応じて早熟変態や吐糸期間の延長、変態阻害などの成長制御を行うことができた。

【0028】
(実施例4) 22位が酸化されたエクジステロイドの、脱皮ホルモン誘導性遺伝子に対する転写誘導効果
脱皮ホルモン受容体(EcR)遺伝子はリガンドである脱皮ホルモン自身により転写誘導を受けることが知られている。培養したカイコ前部糸腺に対して異なる濃度の20-ヒドロキシエクジソンまたは本発明による酵素によって22位が修飾された20-ヒドロキシ-22-デヒドロエクジソンを加え、数時間後のEcR mRNAの発現を調べた。その結果、20-ヒドロキシエクジソンを加えた場合には加えた量に依存してEcR mRNAの発現量が増加したが、20-ヒドロキシ-22-デヒドロエクジソンを加えた場合には全く発現誘導効果がみられなかった(図6)。このように、本発明による酵素によって22位が修飾されたエクジステロイドには脱皮ホルモン誘導性遺伝子に対する転写誘導活性がないことが確かめられた。

【0029】
以上のように、本発明によるエクジステロイド22位酸化酵素には強い脱皮ホルモン不活性化能があり、該酵素を用いることによって、効果的に昆虫の成長制御や脱皮ホルモン誘導性遺伝子の発現制御を行えることが示された。

【0030】

【発明の効果】本発明による酵素を用いれば、昆虫脱皮ホルモンの効率的な不活性化によって昆虫の成育を制御することができる。また、該酵素を用いることによって、通常より細い蚕糸の製造することができる。さらに、該酵素をコードする遺伝子を用いることによって、細胞内脱皮ホルモン濃度を高めて目的遺伝子産物の発現誘導を行う系における、該遺伝子の発現の制御も可能になる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図6】
4
【図5】
5