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明細書 :ヒトを除く哺乳動物受精卵の発生率向上方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4058509号 (P4058509)
公開番号 特開2002-272315 (P2002-272315A)
登録日 平成19年12月28日(2007.12.28)
発行日 平成20年3月12日(2008.3.12)
公開日 平成14年9月24日(2002.9.24)
発明の名称または考案の名称 ヒトを除く哺乳動物受精卵の発生率向上方法
国際特許分類 A01K  67/02        (2006.01)
FI A01K 67/02
請求項の数または発明の数 2
全頁数 5
出願番号 特願2001-082482 (P2001-082482)
出願日 平成13年3月22日(2001.3.22)
審判番号 不服 2004-011319(P2004-011319/J1)
審査請求日 平成13年3月22日(2001.3.22)
審判請求日 平成16年5月31日(2004.5.31)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】501203344
【氏名又は名称】独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
発明者または考案者 【氏名】平子 誠
【氏名】木村 康二
【氏名】羅 海玲
個別代理人の代理人 【識別番号】100063565、【弁理士】、【氏名又は名称】小橋 信淳
【識別番号】100118898、【弁理士】、【氏名又は名称】小橋 立昌
参考文献・文献 J Reprod Fertil Abs Ser No.23 p.7 (1999)
Molecular Reproduction and Development 53 p.376-383 (1999)
調査した分野 A01K67/02
特許請求の範囲 【請求項1】
ヒトを除く哺乳動物受精卵の発生培地に対し、所定濃度の血管内皮成長因子を添加して卵丘細胞との共培養を行い、上記ヒトを除く哺乳動物受精卵の正常発生率を高めることを特徴とするヒトを除く哺乳動物受精卵の発生率向上方法。
【請求項2】
上記血管内皮成長因子の添加濃度を1~10ng/mlとしたことを特徴とする請求項1記載のヒトを除く哺乳動物受精卵の発生率向上方法。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、獣医療、畜産などの分野において活用されるヒトを除く哺乳動物受精卵の発生率向上方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ヒトを除く哺乳動物受精卵を体外で発生させるためには、上記受精卵を、本方法の基材となった培養液で培養していた。そして、上記受精卵の正常発生率を高め、移植可能胚数を増加させるようにしている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記のようにヒトを除く哺乳動物受精卵を、基材となった培養液により培養するだけでは、上記受精卵の正常発生率を顕著に高めることができず、これを改善する技術が望まれている。
本発明は、上記の課題を解決すべく、ヒトを除く哺乳動物受精卵の正常発生率を高め、移植可能な胚数を増加させるようにしたヒトを除く哺乳動物受精卵の発生率向上方法を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために本発明は、以下の手段を有することを特徴としている。
【0005】
A.ヒトを除く哺乳動物受精卵の発生培地に対し、所定濃度の血管内皮成長因子(Vascular Endothelial Growth Factor)を添加して卵丘細胞との共培養を行い、上記ヒトを除く哺乳動物受精卵の正常発生率を高める。
【0006】
B.上記血管内皮成長因子の添加濃度を1~10ng/mlに設定した。
【0007】
【作用】
上記A.およびB.(請求項1および2)の手段により本発明のヒトを除く哺乳動物受精卵の発生率向上方法は、以下の作用をする。
【0008】
ヒトを除く哺乳動物受精卵の発生培地に対し、所定濃度の血管内皮成長因子を添加することで、卵丘細胞との共培養系において、ヒトを除く哺乳動物受精卵の正常発生率が高められ、移植可能な胚が増加する。また、血管内皮成長因子の添加濃度を1~10ng/mlに設定することで、血管内皮成長因子がヒトを除く哺乳動物受精卵に対し有効に働き、胚の発生率を向上させることができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明によるヒトを除く哺乳動物受精卵の発生率向上方法の実施の形態を、添付の表に基づいて詳細に説明する。
【0010】
本発明は、ヒトを除く哺乳動物受精卵の発生培地に対して所定濃度(この実施例では、好ましい添加濃度として5ng/mlに設定したが、1~10ng/ml程度の範囲で効果がある。)の血管内皮成長因子(Vascular Endothelial Growth Factor)を添加し、支持細胞との共培養を行ってヒトを除く哺乳動物受精卵の正常発生率を高めることにより、移植可能な胚数を増加させるにある。
実験手法は以下の通りである。
【0011】
実験例1.卵丘細胞との共培養系において、血管内皮成長因子を添加した発生培地と添加していない培地で媒精後の牛卵子を所定の期間培養し、発生率を比較した。
実験例2.血管内皮成長因子を添加した成熟培地で牛の卵丘卵子複合体を所定の期間培養した後、血管内皮成長因子を添加していない受精培地中で所定の期間媒精し、さらに、血管内皮成長因子を添加した発生培地と添加していない培地で所定の期間培養し、分割率、4~8細胞期への発生率を比較した。
実験例3.血管内皮成長因子を添加した発生培地と添加していない培地で卵丘細胞を除去した牛の媒精卵子を所定の期間培養し、分割率、4~8細胞期胚及び胚盤胞への発生率を比較した。
【0012】
【実施例】
上記実験例に基づく実施例の、牛受精卵の発生に及ぼす血管内皮成長因子の効果-1(成熟培養時に血管内皮成長因子を添加しなかった場合)を表1に、牛受精卵の発生に及ぼす血管内皮成長因子の効果-2(成熟培養時に血管内皮成長因子を添加した場合)を表2に、牛受精卵の発生に及ぼす血管内皮成長因子の効果-3(受精後卵丘細胞を除去し、受精卵のみを培養した場合)を表3に、それぞれ示す。
【0013】
【表1】
JP0004058509B2_000002t.gif【0014】
表1において、
1)卵丘細胞との共培養系で実験した。
2)血管内皮成長因子の添加濃度は5ng/mlであるが、1~10ng/mlの範囲で効果がある。
3)添加区の分割率及び発生率は無添加区より有意に高かった(P<0.05)。
その結果、発生胚数は、2細胞期以上、4~8細胞期とも、血管内皮成長因子を添加することにより、多くなることが明らかになった。
【0015】
【表2】
JP0004058509B2_000003t.gif【0016】
表2において、
1)卵丘細胞との共培養系で実験した。
2)処置は発生時の培養条件(媒精後48時間以降)で行った。
3)血管内皮成長因子の添加濃度は5ng/mlであるが、1~10ng/mlの範囲で効果がある。
4)添加区の分割率及び発生率は無添加区より有意に高かった(P<0.05)。
その結果、成熟培養持の血管内皮成長因子添加の有無にかかわらず、発生胚数は、2細胞期以上、4~8細胞期とも、血管内皮成長因子を添加することにより、多くなることが明らかになった。
【0017】
【表3】
JP0004058509B2_000004t.gif【0018】
表3において、
1)共培養系を用いず受精卵のみを培養した場合、発生培地に血管内皮成長因子を添加した効果は認められなかった。
その結果、受精後卵丘細胞を除去し、受精卵のみを培養した場合には、発生培地に血管内皮成長因子を添加した効果は認められないことが明らかになった。
【0019】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によるヒトを除く哺乳動物受精卵の発生率向上方法は、請求項1および2の手段を有することにより、以下の作用効果を奏することができる。
【0020】
イ.ヒトを除く哺乳動物受精卵の発生培地に対し、所定濃度の血管内皮成長因子を添加して卵丘細胞との共培養を行い、ヒトを除く哺乳動物受精卵の正常発生率を高めるので、卵丘細胞との共培養が行われることによりヒトを除く哺乳動物受精卵の正常発生率が高められ、移植可能な胚数を増加させることができる。
ロ.血管内皮成長因子の添加濃度を1~10ng/mlに設定したので、血管内皮成長因子がヒトを除く哺乳動物受精卵の発生培地に対し有効に働き、ヒトを除く哺乳動物受精卵の正常発生率を高めて移植可能な胚数を増加させることができる。