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明細書 :アサリ浮遊幼生特異的モノクローナル抗体

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B1)
特許番号 特許第2913026号 (P2913026)
登録日 平成11年4月16日(1999.4.16)
発行日 平成11年6月28日(1999.6.28)
発明の名称または考案の名称 アサリ浮遊幼生特異的モノクローナル抗体
国際特許分類 C07K 16/18      
C12N  5/10      
C12N 15/02      
C12P 21/08      
G01N 33/48      
G01N 33/53      
G01N 33/577     
C12R  1:91      
FI C07K 16/18
C12P 21/08
G01N 33/48
G01N 33/53
G01N 33/577
C12N 15/00
請求項の数または発明の数 7
全頁数 9
出願番号 特願平10-009516 (P1998-009516)
出願日 平成10年1月21日(1998.1.21)
審査請求日 平成10年1月21日(1998.1.21)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】594055387
【氏名又は名称】水産庁瀬戸内海区水産研究所長
発明者または考案者 【氏名】浜口 昌巳
個別代理人の代理人 、【弁理士】、【氏名又は名称】平木 祐輔 (外1名)
審査官 【審査官】本間 夏子
調査した分野 C07K 16/18
C12P 21/08
G01N 33/48
G01N 33/53 - 33/577
C12N 15/00 - 15/90
要約 【解決手段】 アサリのベリジャー期幼生で免疫化したマウス脾臓細胞とマウス骨髄腫細胞から、アサリ浮遊幼生特異的モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを得、更に該ハイブリドーマによる該モノクローナル抗体の製造方法、および該モノクローナル抗体を用いる幼生の同定方法。
【効果】 アサリ浮遊幼生特異的モノクローナル抗体を用いることで、従来熟練を要した浮遊幼生の同定を誰でも簡単に行うことができる。また、発育段階により反応特異性が異なる複数のモノクローナル抗体を組合わせることで、アサリの発育段階を推定することができる。
特許請求の範囲 【請求項1】
アサリのベリジャー期幼生で免疫化したマウス脾細胞とマウス骨髄腫細胞とを融合させて得られたハイブリドーマが生産するアサリ浮遊幼生特異的モノクローナル抗体。

【請求項2】
アサリ浮遊幼生が、トロコフォア期から、ベリジャー期、アンボ期、フルグロウン期、着底期に至るまでの全発育段階の幼生である請求項1記載のモノクローナル抗体。

【請求項3】
アサリ浮遊幼生が、発育初期(トロコフォア期~アンボ期)のアサリ浮遊幼生である請求項1記載のモノクローナル抗体。

【請求項4】
アサリ浮遊幼生が、アンボ期以降の浮遊幼生である請求項1記載のモノクローナル抗体。

【請求項5】
アサリのベリジャー期幼生で免疫化したマウス脾細胞とマウス骨髄腫細胞とを融合させて得られ、請求項1に記載のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ。

【請求項6】
請求項5に記載のハイブリドーマを培地に培養し、培養物よりアサリ浮遊幼生特異的モノクローナルを採取することを特徴とする、アサリ浮遊幼生特異的モノクローナル抗体の製造方法。

【請求項7】
請求項1に記載のモノクローナル抗体を用いるアサリ浮遊幼生の同定方法。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【0001】

【発明の属する技術分野】本発明は、アサリ浮遊幼生の同定に有効なアサリ浮遊幼生特異的モノクローナル抗体、該モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ、該モノクローナル抗体の製造方法、ならびに該モノクローナル抗体を用いるアサリ浮遊幼生の同定方法に関する。

【0002】

【従来の技術】現在、アサリの浮遊幼生の同定は殻の交装等の形態学的特徴を観察することによって行われている。しかし、二枚貝の浮遊幼生は形態学的な特徴の差が小さいので、その違いを識別するには熟練が必要となる。したがって、アサリの浮遊幼生の同定は一部の研究者によってのみ可能であり、誰もができるものではない。さらに、野外試料では、多種のプランクトンの中からごくわずかな形態の差異を見極めて、アサリであることを同定しなくてはならないので多大な時間を要し、多数の試料を調べることが困難である。そこで、誰もが短時間で判定できる新たな方法の開発が望まれている。

【0003】

【発明が解決しようとする課題】本発明は、アサリ浮遊幼生特異的モノクローナル抗体、該抗体を産生するハイブリドーマ、該モノクローナル抗体の製造方法、該モノクローナル抗体を用いるアサリ浮遊幼生の同定方法を提供することを目的とする。

【0004】

【課題を解決するための手段】本発明者は、上記課題に基づいて鋭意研究を行った結果、アサリのベリジャー期幼生で免疫化したマウス脾細胞とマウス骨髄腫細胞とを融合し、得られたハイブリドーマからアサリ浮遊幼生と特異的に反応するモノクローナル抗体を得ることに成功し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、アサリのベリジャー期幼生で免疫化したマウス脾細胞とマウス骨髄腫細胞とを融合させて得られたハイブリドーマが生産するアサリ浮遊幼生特異的モノクローナル抗体である。

【0005】
本発明のモノクローナル抗体は、下記の性質を有する。
アサリ浮遊幼生のベラム(浮遊幼生が有する遊泳および摂餌のための器官)にのみ反応する。
ムラサキイガイ、ホトトギスガイ、マガキ、ハマグリ、バカガイのベリジャー期幼生または着底期幼生には反応しない。
浮遊幼生採取時に出現する浮遊性植物や動物に対して交差反応性がない。
本発明はまた、アサリのベリジャー期幼生で免疫化したマウス脾細胞とマウス骨髄腫細胞とを融合させて得られ、上記モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマである。

【0006】
さらに、本発明は、上記ハイブリドーマを培地に培養し、培養物よりアサリ浮遊幼生特異的モノクローナルを採取することを特徴とする、アサリ浮遊幼生特異的モノクローナル抗体の製造方法である。さらにまた、本発明は、上記モノクローナル抗体を用いるアサリ浮遊幼生の同定方法である。以下、本発明を詳細に説明する。

【0007】

【発明の実施の形態】1.モノクローナル抗体の製造
本発明のアサリ浮遊幼生特異的モノクローナル抗体は、次の各工程を経て製造される。
(1) 抗原の調製
アサリのベリジャー期浮遊幼生を氷冷下で超音波処理した後、遠心分離によって採取した上清をフィルターでろ過したものを抗原とする。

【0008】
(2) 動物の免疫および抗体産生細胞の採取
上記のようにして得られた抗原を、3~10週齢、好ましくは4週齢のマウスに投与する。免疫は、既存の方法であれば何れの方法をも用いることができるが、主として静脈内、皮下、腹腔内に適当なアジュバンド、例えば市販のフロイント完全アジュバンド、フロイントの不完全アジュバンド、BCG、水酸化アルミニウムゲル、百日咳菌ワクチン等とともに注入するのが好ましい。免疫の間隔は特に限定されないが、例えば1~2週間おきに、2~5回免疫すればよい。抗原の免疫量は例えば1回にマウス1匹当たり、10~500μg 用いればよい。最終の免疫日から3~10日後に、抗体産生細胞を採集する。抗体産生細胞としては、脾臓細胞、リンパ節細胞、胸腺細胞、末梢血細胞が挙げられるが、脾臓細胞を用いるのが一般的である。かかる抗体産生細胞は、マウスから脾臓、リンパ節、胸腺、末梢血等を摘出または採取し、これら組織を破砕する。得られる破砕物をPBS 、DMEM、RPMI1640、E-RDF 等の培地または緩衝液に懸濁し、 200~250μm のステンレスメッシュ等で濾過後、遠心分離を行うこと等により目的とする抗体産生細胞を調製する。

【0009】
(3) 細胞融合
上記の抗体産生細胞と融合させる骨髄腫(ミエローマ)細胞としては、マウスから得られた当業者が一般に入手可能な株化細胞を使用する。使用する細胞株としては、薬剤抵抗性を有し、未融合の状態では選択培地(例えばHAT培地)で生存できず、抗体産生細胞として融合した状態でのみ生存できる性質を有するものが好ましい。一般的に8-アザグアニン耐性株が用いられ、この細胞株は、ヒポキサンチン-グアニンホスフォリボシルトランスフェラーゼを欠損し(HGPRT-) 、ヒポキサンチン・アミノプテリン・チミジン(HAT)培地に生育できない。骨髄腫細胞の具体例としては、Sp2/0-Ag14 [ATCC CRL-1581 ; Nature, 276, 271 (1978)]、P3X63Ag8[ATCC TIB-9; Nature, 256, 495-497(1978)]、P3 X63 Ag8U.1(P3U1) [ATCC CRL-1580; Current Topics in Microbiology and Immunology, 81, 1-7(1978) ]、P3X63Ag8.653[ATCC TIB-18; Europian J. Immunology,6, 511-519(1976) ]、P2/NSI/1-Ag4-1[ATCC CRL-1581; Nature, 276, 269-270(1978) ]等のマウス骨髄腫細胞株等が挙げられる。

【0010】
(2) で免疫した抗体産生細胞と上記で得られた骨髄腫細胞とを細胞融合させる。細胞融合はMEM 、DMEM、RPMI-1640 、E-RDF 等の動物細胞培養用培地中で107~108 細胞/mlの骨髄腫細胞と抗体産生細胞とを、混合比1:1~1:10で、例えば約1:5の割合で、融合促進剤存在下、30~37℃で1~3分間細胞同士を接触させることによって効率的に融合反応を進めることができる。細胞融合を促進させるためには、平均分子量 1,000~6,000 のポリエチレングリコール、ポリビニールアルコール、またはセンダイウイルス等の融合促進剤や融合ウイルスを使用することができる。また、電気刺激(例えばエレクトロポレーション)を利用した市販の細胞融合装置を用いて抗体産生細胞と骨髄腫細胞とを融合させてもよい。

【0011】
(4) ハイブリドーマの選択およびクローニング
細胞融合処理後の細胞から目的とするハイブリドーマを選別する。その方法として、選択培地における細胞の選択的増殖を利用する方法を用いることができる。細胞懸濁液を例えばHATサプリメント(Gibco BRL)およびインターロイキン-6(1unit/ml) を添加したイスコフ培地(IMDM)に103 ~107 細胞/ml となるよう希釈後、96ウェルの細胞培養用マイクロプレートに102 ~106 細胞/ ウェルまき、各ウェルに選択培地、例えば HAT培地等を加え、以後適当に選択培地を交換して培養を行う。

【0012】
骨髄腫細胞として8-アザグアニン耐性株、選択培地として HAT培地を用いた場合は、未融合の骨髄腫細胞は培養約7~10日目には死滅し、正常細胞である抗体産生細胞もインビトロでは長く生存できず、培養約7~10日目には死滅する。その結果、培養6~10日前後から生育してくる細胞をハイブリドーマとして得ることができる。

【0013】
増殖してきた細胞の培養上清につき、目的とするアサリ浮遊幼生抗体の産生があるか否かをスクリーニングする。ハイブリドーマのスクリーニングは通常の方法によれば良く、特に限定はされない。例えば、ハイブリドーマとして生育したウェルに含まれる培養上清の一部を採集し、固相化したアサリ浮遊幼生可溶性抗原に該上清を添加した後、標識した第二抗体を加えてインキュベートし、その結合能を酵素免疫測定法(EIA, ELISA) 、放射線免疫測定法(RIA)によって測定することができる。

【0014】
具体的には、まず、免疫源として使用したアサリベリジャー期浮遊幼生可溶性抗原を吸着させた96ウェルマイクロプレートにモノクローナル抗体を含む培養上清を添加して抗原と反応させる。次いで、結合した特異的抗体に酵素標識抗免疫グロブリン抗体を反応させるか、または結合した特異的抗体にビオチン標識抗免疫グロブリン抗体を反応させた後にさらにアビジン-酵素標識体を反応させる。最後に、各ウェルに酵素基質を加えて発色させる。免疫源として使用したアサリベリジャー期浮遊幼生可溶性抗原を固相化したウェルでのみ発色する培養上清を選別することにより、アセリ浮遊幼生に対して結合性を有する抗体を産生するハイブリドーマを検索することができる。ハイブリドーマのクローニングは、限界希釈法、軟寒天法、フィブリンゲル法、蛍光励起セルソーター法等により行い、最終的にモノクローナル抗体産生ハイブリドーマを取得できる。

【0015】
(5) モノクローナル抗体の採取
取得したハイブリドーマからモノクローナル抗体を採取する方法としては、通常の細胞培養法や腹水形成法等を用いる。細胞培養法においては、ハイブリドーマを10~20%仔ウシ血清含有IMDM、RPMI-1640 、MEM 、E-RDF または無血清培地等の動物細胞培養培地中で、通常の培養条件(例えば37℃,5%CO2 濃度)で2~14日間培養し、その培養上清から抗体を取得することができる。

【0016】
腹水形成法においては、骨髄腫細胞由来の哺乳動物と同種の動物の腹腔内にプリスタン(2,6,10,14-テトラメチルペンタデカン)等の鉱物油を投与し、その後ハイブリドーマ1×107 ~1×109 個、好ましくは5×107 ~1×108 個を腹腔内に投与し、ハイブリドーマを大量に増殖させる。そして、1~4週間、好適には2~3週間後に腹水または血清を採集する。

【0017】
上記抗体の採取方法において、抗体の精製が必要とされる場合は、硫安塩析法、DEAEセルロース等の陰イオン交換体を利用するイオン交換クロマトグラフィー、プロテインAセファロース等を用いるアフィニティークロマトグラフィー、分子量や構造によってふるい分ける分子ふるいクロマトグラフィー等の公知の方法を適宜に選択して、またはこれらを組み合わせることにより精製することが可能である。

【0018】
かくして、本発明のアサリ浮遊幼生特異的モノクローナル抗体を得ることができる。本発明において、アサリ浮遊幼生とは、トコロフォア期から、ベリジャー期、アンボ期、フルグロウン期、着底期に至るまでの全発育段階、またはそのいずれかの段階の幼生を言う。

【0019】
2.本発明のモノクローナル抗体の精度検定
本発明のモノクローナル抗体が雑多な生物が混入する野外試料を用いてアサリ浮遊幼生の同定に実際に使用できるかどうかを調べるには、次のようにして行うことができる。野外試料、例えばプランクトンネットで海水を濾過して採集したプランクトン試料にフルオレッセントイソチアネート(FITC)等の蛍光色素で標識した該モノクローナル抗体を反応させ、標識した蛍光色素の励起光に設定した蛍光顕微鏡下で該モノクローナル抗体と反応した個体を取り出す。取り出した個体からフェノールクロロホルム等で抽出したDNAまたは浮遊幼生をそのままテンプレートとしてPCR反応液に入れて、アサリのカルモジュリンの第3イントロンあるいはミトコンドリアのCOI領域にあるアサリ種特異的領域を増幅するためのPCRプライマーによってPCRを行う。PCR反応後、アガロース電気泳動を行い、アサリのDNAの種特異的領域が増幅されているかを確認することによって種の同定を行う。

【0020】
3.本発明のモノクローナル抗体を用いたアサリ浮遊幼生の検出
本発明のアサリ浮遊幼生の検出は、上記モノクローナル抗体を用いて酵素抗体法または蛍光抗体法により以下の通り行うことができる。酵素抗体法によるときは、プランクトンネットで海水を濾過して採集したプランクトン試料を-20℃以下、好適には-80℃で凍結し、解凍した後、TBS で 5,000×g 程度の遠心操作によって洗浄する。これをプラスチック試験管等に入れ、氷冷下で超音波処理を行い、続いて遠心操作によって得られた上清を試料とする。この試料を予めアフィニティークロマトグラフィー等で精製したアサリ浮遊幼生特異的モノクローナル抗体を吸着させた酵素抗体法(ELISA) 用96ウェルマイクロプレートに添加して一定時間インキュベートする。その後、プレートを洗浄し、ビオチンで標識した精製抗体を各ウェルに添加して一定時間インキュベートした後、プレートを洗浄し、酵素標識アビジンを添加してさらにインキュベートする。インキュベート後、プレートを洗浄し、発色基質としてオルトフェルレンジアミン等を添加して発色させ、比色法によって測定する。

【0021】
酵素抗体法においては、アサリの全発育段階の浮遊幼生に反応する抗体を用いてまずアサリ浮遊幼生を検出し、その後、発育段階の前期に反応する抗体、または発育後期に反応する抗体を用いてその反応性を調べることにより、試料中のアサリ浮遊幼生の発育段階を推定することもできる。

【0022】
また、蛍光抗体法によるときは、プランクトンネットで海水を濾過して採集したプランクトン試料を-20℃以下、好適には-80℃で凍結し、解凍した後、自然沈降法またはTBS で 5,000×g 程度の遠心操作によって洗浄する。これに精製したアサリ浮遊幼生特異的モノクローナル抗体を添加して反応させ、さらに蛍光色素で標識した抗免疫グロブリン抗体を加えて反応させ、蛍光顕微鏡にて発色を観察する。蛍光色素としては、FITC、TRITC 、TEXAS Red 等が挙げられ、これらを単独または多重で用い、種の同定を行う。また、同時に蛍光発色が認められる幼生の殻長をサイトメーター等で計測することによって幼生の発育段階を調べることができる。

【0023】

【実施例】以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
〔実施例1〕 モノクローナル抗体の製造
(1) 抗原の調製
受精後27時間または受精後21日のアサリのベリジャー期浮遊幼生を氷冷下で90秒間超音波処理した後、 5,000×g で遠心分離によって採取した上清を0.45μmのフィルターでろ過したものを抗原とした。

【0024】
(2) 動物の免疫および抗体産生細胞の採取
フロイントの完全アジュバンド0.5ml に、(1) で調製した抗原1,000 ~1,500μg 相当を含む500 μl の溶液を混合し、3~5分間エマルジョン化を行った。このエマルジョン100 μl を4週齢のマウス(BALB/c) の腹腔内に注入した。更に、初回免疫から2週間後に同様にしてフロイントの不完全アジュバントとのエマルジョンとして調製した抗原溶液100 μl を、腹腔内に注入して追加免疫を行った。更に、追加免疫から2週間後に、1 ~5 μg/μl となるよう PBSに溶解した抗原をマウス一匹あたり50~250 μg になるように尾静脈に注入した。最終免疫3~5日後にマウスから脾臓を摘出し、MEM中で破砕することにより浮遊細胞を得た。

【0025】
(3) 細胞融合
マウスミエローマSp2/0-Ag14 [ATCC CRL-1581 ; Nature, 276, 271 (1978)]を、8-アザグアニジン培地[IMDMにペニシリン(100unit/ml)、ストレプトマイシン(100unit/ml)、アンホテリシンB(2.5μg/ml) 、2-メルカプトエタノール(5×10-5M)、L-グルタミン(1.5mM)、インスリン(80μg/ml) 、トランスフェリン(50μg/ml)、ウシ胎児血清(15%) 、8-アザグアニン(1.5μg/ml) ]で継代した後、細胞融合の3~4日前に正常培地に継代し、融合当日2×107 以上の細胞数を確保した。このマウスミエローマ2×107 個と、(2) で得た脾臓浮遊細胞1×108 個とを50% (W/V) PEG (分子量1,500 ; Sigma 社製)中で融合した。

【0026】
(4) ハイブリドーマの選択およびクローニング
細胞懸濁液を HATサプリメント(Gibco BRL) およびインターロイキン-6(1unit/ml) を添加したIMDMに103 ~107 細胞/ml となるよう希釈後、96ウェルの細胞培養用マイクロプレートに102 ~106 細胞/ ウェルまき、各ウェルに選択培地としてHAT 培地[ヒポキサンチン0.01mM、アミノプリテン0.4 μM 、チミジン0.016mM 、およびIL-6を含むIMDM]を加え、培養約6~10日前後から生育してくる細胞をハイブリドーマとして得た。

【0027】
次に、ハイブリドーマとして生育したウェルに含まれる培養上清の一部を採集し、アサリベリジャー期浮遊幼生可溶性抗原を吸着させた96ウェルマイクロプレートに添加した後、標識した酵素標識抗免疫グロブリン抗体を加えてインキュベートした。得られた全ての抗体陽性ウェルを限界希釈法を最低3回繰り返すことによりクローン化した。得られた1個のクローンをIMDMで37℃で10日間培養することにより、アサリ浮遊幼生に特異的に反応するモノクローナル抗体を著量生産する株を得た。

【0028】
(5) モノクローナル抗体の採取
取得したハイブリドーマからモノクローナル抗体を以下の方法で採取した。
細胞用培地による方法
10~20% FCS添加IMDMあるいは無血清培地で上記モノクローナル抗体産生ハイブリドーマ細胞を10~14日培養した後、1000×g 以上の遠心操作によって固形分を除去した。得られた上清を33~50%飽和硫酸アンモニウムによって2~3回塩析し、PBS等に溶解後、同液で透析した。これをプロテインG等の固相カラムによってIgGもしくはIg画分を回収し、アフィニティー精製抗体とした。

【0029】
腹水からの製造
ハイブリドーマ作成に用いたマウス(BALB/c)と同系の4~8週齢のヌードマウス、または2週間前に用いた腹腔にブリスタン0.5mlを接種した8~10週齢の同系マウスに上記モノクローナル抗体産生ハイブリドーマ細胞2~4×106 細胞/匹を腹腔内接種した。接種後、10~21日でハイブリドーマが腹水癌化した。このマウスから腹水を採集し、1000×g 以上の遠心操作によって固形分を除去した。得られた上清を33~50%飽和硫酸アンモニウムによって2~3回塩析し、PBS等に溶解後、同液で透析した。これをプロテインG等の固相カラムによってIgGもしくはIg画分を回収し、アフィニティー精製抗体とした。

【0030】
かくして、本発明のアサリ浮遊幼生特異的モノクローナル抗体を得ることができた。本発明において得られたアサリ浮遊幼生特異的モノクローナル抗体Y2-44、Y4-12 、S3-33 のうち、Y2-44 は全発育段階のアサリ浮遊幼生に、Y4-12 は発育初期(トロコフォア期~アンボ期)のアサリ浮遊幼生に、S3-33 はアンボ期以降の浮遊幼生にそれぞれ反応する。

【0031】
なお、モノクローナル抗体Y2-44 、Y4-12 、S3-33 を産生するハイブリドーマ株をそれぞれY2-44 、Y4-12 、S3-33 と同様の名称とした。これらのハイブリドーマ株Y2-44 、Y4-12 、S3-33 は、平成10年1月14日付けで工業技術院生命工学工業技術研究所に、Y2-44 についてはFERM P-16583、Y4-12 についてはFERM P-16582 、S3-33 についてはFERM P-16581として寄託されている。

【0032】
〔実施例2〕(モノクローナル抗体の精度検定)
目合い 100μm のプランクトンネットで海水500Lを濾過して採集したプランクトン試料にフルオレッセントイソチアネート(FITC)等の蛍光色素で標識した精製抗体Y2-44 を反応させた。標識した蛍光色素の励起光に設定した蛍光顕微鏡下で反応した個体を取り出し、その個体よりフェノールクロロホルムでDNAまたは浮遊幼生を抽出し、これをテンプレートとしてPCR反応液に入れ、アサリのゲノムDNA特異的プライマーであるカルモジュリンの第3イントロンを標的とした種特異的プライマー (AS-1: 5'-CGAGGTGGATGCCGATGGTAAGT-3'/AS-2: 5'-TCGATTGTTCCATTTCCTGCATTCAA-3') 、またはミトコンドリアのCOI領域を標的とした種特異的プライマー (RP-1: 5'-CCTAAACACCAAGCTAACATACTACTAACGC-3''/ RP-2:5'-TGCCGGGGAAAATGTTAGATGATGGTC-3')を用い、PCR(PCRの反応サイクル:94℃60秒→94℃30秒, 58℃30秒, 72℃45秒を30~35サイクル→72℃600 秒) を行った。蛍光標識抗体との反応が認められた浮遊幼生は、PCR反応後、アガロース電気泳動を行うと、アサリのDNAの種特異的領域が増幅されていることが確認された(図1左;レーン2~4、図1右;レーン2~3)。

【0033】
〔実施例3〕(酵素抗体法によるアサリ浮遊幼生の検出・定量)
(1) 検量線作成用標準試料の調製
受精後27時間の幼生および受精後25日の幼生を5ml の滅菌海水にそれぞれ20、50、100 、150 、200 、300 、500 、1000個となるように懸濁して-80 ℃に凍結した。解凍後、幼生をTBS で 5,000×g の遠心操作によって洗浄した。これを5~10mlとって50mlプラスチック試験管に入れ、氷冷しながら超音波処理を1/2 間隔で90秒間行った。4℃、 5,000×g で10分間遠心分離を行って上清を採取し、これを試料とした。

【0034】
(2) 抗体感作プレート作成
精製抗体Y2-44, Y4-12, S3-33 を5μg/mlの濃度となるように溶解した TBS溶液50μl を酵素抗体法(ELISA) 用96ウェルマイクロプレートの各ウェルに添加し、4℃で一晩置いた。0.05% Tween20添加 TBSで2回洗浄した後、TBS に2%濃度となるように溶解したスキムミルク溶液で25~37℃で30分間ブロッキングし、0.05% Tween20添加 TBSで2回洗浄し、各抗体の感作プレートを作成した。

【0035】
(3) 反応
(1) で採取した各試料の上清を TBSで2倍希釈した希釈液50μl を(2) で作成した抗体感作プレートに添加した。37℃で1~2時間反応させたのち、0.05% Tween 20 添加 TBSで3回洗浄し、5μg/mlの濃度となるように TBSに溶解したマウス IgG溶液50μl を各ウェルに分注し、37℃で1時間反応させ、0.05% Tween20 添加 TBSで3回洗浄した。次に、5μg/mlの濃度となるように TBSに溶解したビオチン標識精製抗体Y2-44 、Y4-12 、あるいはS3-33 抗体50μl をそれぞれの感作プレートのウェルに添加し、37℃で1~2時間反応させたのち、0.05% Tween 20 添加 TBSで3回洗浄した。至適温度のパーオキシダーゼ標識アビジンを各ウェルに添加し、37℃で1~2時間反応させたのち、0.5% Tween 20 添加 TBSで5回洗浄した。オルトフェニレンジアミンを基質とした発色剤により発色し、マイクロプレートリーダーで各ウェルの吸光度を測定し、検量線を作成した(図2)。

【0036】
(4) 酵素抗体法と形態学的手法による同定の相関
三河湾および広島湾西部の海域より 500L の海水延べ100 余点をポンプで揚水し、100 μm の目合いのプランクトンネットで濾過した。濾液を 100μm のプランクトンネットで5~10mlに濃縮し、2等分して一方を-80℃で凍結し、もう一方は70% エタノールで固定した。凍結させた試料は(1) と同様に処理した後、(3) の方法に従って酵素抗体反応を行った。(3) で予め作成しておいた検量線からアサリ浮遊幼生の個数を算出した。一方、エタノール固定した試料は従来行われてきた形態学的手法によって同定を行った。アサリ浮遊幼生の酵素抗体法による定量結果と形態学的手法による同定結果の相関(r=0.961) を図3に示す。

【0037】
〔実施例4〕(蛍光抗体法によるアサリ浮遊幼生の同定試験)
500Lの海水をポンプで揚水し、 100μm の目合いのプランクトンネットで濾過し、濾液を-80℃で凍結した。解凍後、自然沈降法またはTBS で 5,000×g の遠心操作によって洗浄した。これに、予め求めておいた至適濃度のY2-44 産生細胞培養液または精製抗体Y2-44 、Y4-12 、S3-33 TBS 溶液を当量加え、25~37℃で0.1~1時間反応させたのち、TBS で 5,000×g の遠心操作によって洗浄した。次に、至適濃度の蛍光(FITC)標識抗マウスIgG抗体を当量加え、25~37℃で0.5~1時間反応させた。自然沈降法またはTBS で 5,000×g の遠心操作によって洗浄し、蛍光顕微鏡で発色を観察した(図4~6)。

【0038】
蛍光顕微鏡による観察で蛍光発色が認められる試料はアサリ浮遊幼生と判定され(図4)、蛍光発色が認められない試料はアサリ以外の貝類の浮遊幼生と判定される(図6)。また、スライドガラス上ではアサリ浮遊幼生は必ずしも一定の方向ではなく、角度が異なることがあるが、本法によれば蛍光の反応性が強いので判定可能である(図5)。

【0039】
〔実施例5〕(アサリ浮遊幼生の発育段階の推定)
精製抗体Y2-44 を用いて酵素抗体反応を行ってアサリ浮遊幼生を検出し(第1反応)、その後、発育段階判定用抗体(Y4-12 、S3-33)を用いて同様にしてその反応性を調べると、表1に示すようにアサリ浮遊幼生の発育段階を推定できた。

【0040】

【表1】
JP0002913026B1_000002t.gif【0041】
【発明の効果】本発明によれば、アサリ浮遊幼生に特異的なモノクローナル抗体が提供される。本発明のアサリ浮遊幼生特異的モノクローナル抗体によれば、従来熟練を要したアサリ浮遊同定の同定を誰でもが簡便に行うことができ、しかもこれまで同定することが不可能であった120μm以下のサイズの浮遊幼生の同定も可能となった。さらに、発育段階により反応特異性が異なる複数のモノクローナル抗体の組み合わせることより、アサリの発育段階を推定することもできる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
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【図4】
3
【図5】
4
【図6】
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